「ユイの壁」に至る第79回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)が、4月22日、ベルギー南部のワロン地方を舞台に開催される。別府史之(トレックファクトリーレーシング)と新城幸也(ユーロップカー)が出場する「ワロンを貫く矢」の見どころをチェックしておきましょう。



「ユイの壁」を通過するプロトン「ユイの壁」を通過するプロトン photo:Tim de Waele


名物「ユイの壁」の手前にコート・ド・シュラーブが追加

フレーシュ・ワロンヌ2015フレーシュ・ワロンヌ2015 image:A.S.O.アルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、毎年アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスやリエージュと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンデーレースで、今年で開催79回目を迎える。

フレーシュ・ワロンヌ2015 残り8kmプロフィールフレーシュ・ワロンヌ2015 残り8kmプロフィール image:A.S.O.レースの舞台となるのはベルギー南東部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北西部のフランデレン地域ではフラマン語が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。「フレーシュ」はフランス語で「矢」を意味しており、レース名は「ワロンを貫く矢」の意味。

距離の短い上りが連続して登場するコースレイアウトはアルデンヌ・クラシックならでは。第79回大会はワレンメをスタートし、そこから右回りに螺旋を描きながらユイに向かう。ユイに至るワロン特有のアップダウンコースは例年同様だ。

3つの登りを越えたのちに1回目の「ユイの壁」を越え、そこからユイを起点とした大小2種類の周回コースに入る。2回目の「ユイの壁」を通過するとフィニッシュまで残り29km。2015年は新たに平均勾配8.1%のコート・ド・シュラーブが残り5.5km地点に追加されたことがポイントだ。勾配のあるコート・ド・シュラーブで必然的にセレクションがかかるため、例年よりも集団が縮小した状態で最後の「ユイの壁」に突入すると見られる。

長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の登りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%(公称19%)に達する激坂ぶりにある。登りの全長は1300mだが、前半は比較的幅の広い緩斜面。ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタートする。登りが進むにつれて勾配が増し、勝負が決まるのはラスト400mから始まる急勾配区間。スローモーションのようなプロトンの中から勢い良く飛び出した選手が栄冠を手にする。

7月のツール・ド・フランス第3ステージも「ユイの壁」にフィニッシュするためフレーシュ・ワロンヌに集まる注目度は例年よりも高くなっている。マイヨジョーヌを狙うオールラウンダーたちも試走を兼ねて「壁」に挑む。



登場する11カ所の登り(登坂距離/平均勾配)
1 22.0km地点 Cote des 36 Tournants 2900m/4.8%
2 92.0km地点 Cote de Bellaire 1000m/6.3%
3 100.0km地点 Cote de Bohisseau 2400m/5.5%
4 118.0km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m/9.6%
5 131.0km地点 Cote d'Ereffe 2100m/5%
6 150.0km地点 Cote de Bellaire 1000m/6.3%
7 158.5km地点 Cote de Bohisseau 2400m/5.5%
8 176.5km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m/9.6%
9 189.0km地点 Cote d'Ereffe 2100m/5%
10 200.0km地点 Cote de Cherave 1300m/8.1%
11 205.5km地点 Mur de Huy(フィニッシュ) 1300m/9.6%



フレーシュ・ワロンヌ2015フレーシュ・ワロンヌ2015 image:A.S.O.


バルベルデやロドリゲス、クヴィアトコウスキーらが激坂に挑む

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleフレーシュ・ワロンヌに出場するのは17あるUCIワールドチームにブルターニュ・セシェ、コフィディス、MTNキュベカ、ユナイテッドヘルスケア、ユーロップカー、ルームポット、トップスポートフラーンデレン、ワンティ・グループグベルトを加えた合計25チーム。

ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele優勝候補としてまず名前が挙がるのが、ディフェンディングチャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だ。今シーズン好調のバルベルデは直前のアムステルでスプリントに破れて2位。ツール・ド・フランスを見据えるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)を引き連れての出場となる。

フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele続いて激坂の名手と言えばホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)の名前が挙がる。ロドリゲスは2012年大会の覇者であり、翌年の2013年大会を制したダニエル・モレーノ(スペイン)とタッグを組む。ロドリゲスは約1年間勝てない状態が続いていたが、ブエルタ・アル・パイスバスコでステージ2連勝。勝ち癖を取り戻している。

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleアムステルを制したばかりのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)は2014年のフレーシュで3位。スプリントだけでなく、激坂の走り方も心得ている。リゴベルト・ウラン(コロンビア)が心強いアシストになるだろう。

キンタナ同様、ツールを見据えるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の出場も決定した。2週間にわたってテネリフェでトレーニング合宿を行っていたフルームは火曜日に現地入り。フルームは新コースを試走しておらず、2013年大会2位のセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)をアシストする可能性が高い。なお、フルームにとっては5年ぶりのフレーシュ出場。リエージュには出場せず、ツール・ド・ロマンディに出場予定だ。

地元ワロン出身のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)は2011年に続く2度目のフレーシュ制覇を狙う。アムステルのカウベルグで最も強力なアタックを仕掛けたジルベールは、サムエル・サンチェス(スペイン)、ベン・ヘルマンス(ベルギー)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)らのアシストを受ける。

アムステルに続く出場の別府史之(トレックファクトリーレーシング)は、2014年大会で4位に入ったバウク・モレマ(オランダ)やジュリアン・アレドンド(コロンビア)のアシストに回る。ブラバンツ・ペイルで好走した新城幸也(ユーロップカー)はブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンで総合優勝を飾ったピエール・ロラン(フランス)とともにスタートラインに並ぶ。

アルデンヌ・クラシック上位の常連ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)や、アムステルで積極的な走りを見せたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)も上位に絡んでくるだろう。アムステルで2位に入ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は近年登坂力を磨いているものの、「ユイの壁」では22歳のサイモン・イェーツ(イギリス)に勝負を託すと見られる。

また、同日開催のフレーシュ・ワロンヌ・フェミニンには全日本チャンピオンの萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)も出場予定だ。

text:Kei Tsuji in Waremme, Belgium