1995年創業のカナディアンブランド、サーヴェロ。エアロロードバイクで知られるようになった同社のオールラウンドモデルが「R」シリーズだ。そのラインアップのなかでもエントリーグレードに位置づけられる「NEW R2」のインプレッションをお届けしよう。



サーヴェロ NEW R2サーヴェロ NEW R2 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
高性能なレーシングバイクのみをラインアップし、常にトップレースの現場において確かな存在感を示してきたサーヴェロ。50年以上にわたる歴史をもつヨーロピアンブランドの数々と比べると、今年にやっと20年目を迎えるというカナディアンブランドはいささか若く感じられるかもしれない。

しかし、ロードレースを愛する人達にとって、サーヴェロの名前は極めて大きな意味を持っている。それは、常にトップレベルのチームへの供給やスポンサードを通して、名だたるレースで戦績を残してきたことはもちろん、その活動を通じて開発してきたバイクが、その後の機材進化の方向性を指し示すような名作ぞろいであったから。

ホワイトベースに赤いラインがアクセントを与えるホワイトベースに赤いラインがアクセントを与える スクオーバル3形状のダウンチューブスクオーバル3形状のダウンチューブ NEW R2専用のフロントフォークNEW R2専用のフロントフォーク


サーヴェロの躍進は、トライアスロンやタイムトライアル向けの「P」シリーズの成功から始まった。水平なトップチューブ、リアホイールを包みこむようなシートステー。これらのデザインは、後のTTバイクへと大きな影響を与えている。今でもハワイ・アイアンマンで最も使用されているバイクブランドとして君臨している。

Pシリーズの成功をロードレースの世界に持ち込んだのが「S」シリーズ。かつてはソロイストと呼ばれていたこのシリーズは、翼断面形状をフレームに大々的に採用したロードレーサーとして鮮烈なデビューを飾り、エアロロードのさきがけとなった。その後のエアロロードの隆盛は、皆さんもご存じの通り。

リアブレーキワイヤーはトップチューブ下から入るリアブレーキワイヤーはトップチューブ下から入る 下ワン1-3/8のヘッドチューブ下ワン1-3/8のヘッドチューブ

左右非対称チェーンステーを採用左右非対称チェーンステーを採用 クランクはFSAがアセンブルされるクランクはFSAがアセンブルされる


そして、今回紹介する「R」シリーズもまた、その後のロードバイクの設計に大きな影響を与えてきた。現在、多くのバイクに採用されている、衝撃吸収性を向上させるための極細のシートステーを最も早いうちから採用したバイクがこのRシリーズなのだ。振動吸収するための部位と、推進力を生みだすための部位を外観から伝わるほど、分かりやすく設計したRシリーズは、多くのレーサーから高い評価をうけてきた。

NEW R2は、そんなオールラウンドバイクのなかでも最も身近なグレードに位置するモデル。とはいえ、そこは「すべてのバイクがハイエンドモデル」と豪語するサーヴェロらしく、非常にレーシーな雰囲気をまとったバイクとして登場した。

リアデイィレイラーワイヤーの出口も合理的リアデイィレイラーワイヤーの出口も合理的 BBは独自規格のBBrightBBは独自規格のBBright


それもそのはず。フレーム自体は、昨年モデルチェンジを果たした「NEW R3」と共通のものを使用しているのだ。エントリーモデルでありながら、ハイエンドモデル「Rca」にも採用されるダウンチューブ形状「SQUOVAL3」を採用することで、丸パイプに近い素直な剛性感と、エアロダイナミクスの向上を実現している。

また、運動性能の要となる部位の剛性も向上しており、従来モデルからヘッドチューブ剛性を24%、BBまわりの横剛性を8%高めることに成功している。もちろん、Rシリーズのアイコンともいえる細身のチェーンステーは変わらず採用されており、快適性の向上に貢献してくれる。

Rシリーズのアイコンともいえる細身のシートステーは健在Rシリーズのアイコンともいえる細身のシートステーは健在 複雑に割りがいれられることで応力分散を図っている複雑に割りがいれられることで応力分散を図っている シフトワイヤーはダウンチューブ上部から内蔵されるシフトワイヤーはダウンチューブ上部から内蔵される


NEW R2が上位モデルと異なるのはフロントフォーク。クラウン部分が幅広く設計され太めのタイヤにも対応するフォークがアッセンブルされ、近年流行りの25c幅のタイヤでも余裕をもって装着することができる。このフォークによって、より安定感の高いライディングフィールを実現している。

上位モデル譲りの走行性能を持つ、サーヴェロの新たなエントリークラスとしてデビューしたNEW R2。今回インプレッションしたバイクには、ゼンティスのXBL 4.2にコンチネンタルのGP4000sをアッセンブルした1台。コンポーネントはシマノ105をメインに、クランクとブレーキがFSA ゴッサマーを使用している。それでは、インプレッションに移ろう。



―インプレッション

「非常に乗りやすい剛性バランスをもったバイク」小畑郁(なるしまフレンド)

「非常に乗りやすい剛性バランスをもったバイク」小畑郁(なるしまフレンド)「非常に乗りやすい剛性バランスをもったバイク」小畑郁(なるしまフレンド)
エントリーグレードながら、サーヴェロらしい乗り味がしっかりと形にされていて、非常に上質な乗り味を持っているバイクですね。ロードレーサー自体への入門としても、サーヴェロの世界観への入り口としても、まさにエントリーグレードとしてしっかりとした性能を持っている一台です。

最初期のRシリーズはかなり硬質な乗り味を売りにしていたのですが、その後は少しウィップ感を出して、どんなレベルの人でも乗りやすい、オールラウンダーとして世代を重ねてきました。このNEW R2もその進化の方向性の中にあって、非常に乗りやすい剛性バランスをもったバイクに仕上がっています。

しっかりと芯がありつつ、バネ感もあり、硬すぎないフィーリングで登りでも非常に良く進んでくれます。とくに、トップチューブの剛性が落としてあるため、ダンシングでねじったときに、上半身にダメージが来ず長い間ダンシングが続けられるのは魅力的なポイントです。

確かに、ハイエンドモデルのような乾いたパリッとした剛性感で、打てば響くような反応性の良さといった面では一歩譲りますが、そういったモデルとはまた違った良さを持っている、ユニークなフレームです。その絶妙な剛性感を活かして、どんな勾配や距離の登りでも苦も無く超えていけるでしょう。

もともとクライミングバイクとして売れていたRシリーズのエッセンスはこのバイクにもしっかりと受け継がれています。とくに、軽量ホイールを履かせてあげれば踏み出しの軽さや反応性といった部分も改善されるため、修善寺などの急こう配でアタックがかかるようなレースでも、アドバンテージとなってくれるでしょう。

前方に突き出すようなフォークエンド前方に突き出すようなフォークエンド 一方で下りも必要十分なだけの性能を持っています。小さいサイズのジオメトリーを適正にするために、フォークオフセットが多く設定されており、そのためにフォークエンドが前方に突き出すような形になっているのですが、見た目ほどの違和感は全くといって良いほどありません。

平地でも良い加速感と巡航性能をもっているため、登りから下りまで、オールラウンドに活躍できるバイクです。数年前のハイエンドバイクに引けを取らない性能を持っています。くわえて、クラシックレースで成績を残すだけの振動吸収性を持っていて、路面が荒れているところでも、振動をいなしつつトラクションをかけてくれるので、速く、安定して走ることができますね。

総じて、どんな局面でも活躍できるバイクです。クリテリウム、ヒルクライム、ロードレース、エンデューロ、ロングライド、どんな楽しみ方をする人にとっても、このバイクで不満がでるようなシチュエーションというのはそうそうないでしょう。電動コンポにも対応しており、アップグレードもしやすいですし、長く付き合える一台ですね。


「しなる感じがありつつも、それが推進力へと変換されていく」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)

「しなる感じがありつつも、それが推進力へと変換されていく」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)「しなる感じがありつつも、それが推進力へと変換されていく」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
しなる感じがありつつも、それが推進力へと変換されていく、いかにもサーヴェロといったライディングフィールのバイクです。例えるならば、硬質ゴムの様な踏みごたえで、非常に低重心でどっしりとした乗り味に仕上がっているバイクでした。

週末に長い距離を乗ったり、毎日1時間くらいの通勤をしているような人にとっても身体にダメージが少なく、無理なく距離をこなすことができるバイクです。といっても、柔らかく感じるようなことは無く、ペダリングパワーはしっかりと受け止めてくれるだけの剛性を持っています。

ただ、いわゆるパリッと乾いた剛性感ではなく、ゼロ発進でのわかりやすい加速のキレというのは少し感じづらいです。一方で、中速域、具体的には時速30km/hから先の伸びは非常にスムーズで、スルスルとどこまでも速度が乗っていくような加速感を味わうことができます。エアロダイナミクスも優れているのか減速感も少なく、クライミングバイクのイメージでしたが平地でも高い性能を発揮してくれます。

「地面に吸いつくような乗り味で非常にトラクションがかかりやすい」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)「地面に吸いつくような乗り味で非常にトラクションがかかりやすい」山崎嘉貴(ブレアサイクリング) フォークエンドが前方向にオフセットしているデザインとなっているのがマイクロサスペンションのように働いており、路面追従性が高く、地面に吸いつくような乗り味で非常にトラクションがかかりやすいバイクです。登りでもぐいぐいと地面を掴んで登っていきますし、下りでも非常に安定感があります。コーナーリングの最中でも挙動の変化が素直でコントロールしやすいのは大きな美点ですね。

もちろん、快適性という意味でもその性能は発揮されていて、高い振動吸収性をもちながらも必要なロードインフォメーションは残す、極めて上質な乗り味を実現しています。

105の完成車ですが、フレーム性能を考えるとすこしもったいないと感じるほど、素姓の良いバイクです。デュラエースやレコードといったハイエンドコンポで組み上げても不思議ではない性能を秘めたフレームですね。かといって、ハイエンドモデルほど尖った方向性を持っているわけではなく、懐の深さもあるので、はじめての一台としても間違いのないバイクでしょう。

自分がどういった乗り方が向いているか、例えば重いギアを踏み込むのがあっているのか、それとも回転重視のペダリングが得意なのか。そういったことは初心者は分からないわけですが、どちらの脚質の人も受け入れてくれるだけの性能をもっているので、エントリーモデルとしても最適です。

フレームから組むにしろ、完成車からグレードアップするにしろ、組み合わせるホイールは少し柔らかめのものがいいでしょう。ステンレススポークのカーボンディープリムホイールがベストマッチでしょうね。硬めのホイールだと、フレームの絶妙な柔軟性をスポイルしてしまうと感じます。どのメーカーも軽く、硬く、という方向で開発を進める中でこういったしなって進むタイプのフレームは非常に希少です。クロモリバイクの乗り味が好きで、でも重いバイクは嫌だ、という人にとってもすごくピッタリな一台ではないでしょうか。

サーヴェロ NEW R2サーヴェロ NEW R2 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ NEW R2
フォーク:サーヴェロ All-Carbon, Tapered R2 Fork
ヘッドパーツ:FSA IS2 1-1/8 X 1-3/8"
メインコンポーネント:シマノ 5800系105
クランク:FSA Gossamer BBright 50 x 34
ボトムブラケット:BBright PF-30
ハンドル:3T Ergonova
ステム:3T Arx
サドル:セラロイヤル Seta
ホイール:シマノ WH-RS010
タイヤ:ヴィットリア Rubino Pro 150 tpi(700x23c)
サイズ:48、51、54、56
価 格:430,000円(税抜)



インプレライダーのプロフィール

山崎嘉貴(ブレアサイクリング)山崎嘉貴(ブレアサイクリング) 山崎嘉貴(ブレアサイクリング)

長野県飯田市にある「ブレアサイクリング」店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。

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小畑郁(なるしまフレンド)小畑郁(なるしまフレンド) 小畑郁(なるしまフレンド)

その圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高いなるしまフレンド神宮店の技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。現在もなお、メカニックと競技者の双方の視点から自転車のディープで果てしない世界を探求中。

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ウェア協力:GRIDE

text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
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