延々と続く幹線道路で繰り返されたアタック合戦。ようやく形成された8名の逃げを、メイン集団は完全に容認した。独走に持ち込んだソ・ジュンヨン(韓国、KSPO)が優勝。中島康晴(愛三工業レーシング)は悔しいステージ4位に終わった。



中島康晴(愛三工業レーシング)を含む逃げグループがようやく形成中島康晴(愛三工業レーシング)を含む逃げグループがようやく形成 photo:Kei Tsuji
前後ともディープリムのホイールをチョイスしたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)前後ともディープリムのホイールをチョイスしたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji日本の若手コミッセールが現地研修中日本の若手コミッセールが現地研修中 photo:Kei Tsuji


この日も沿道には立派なモスクがいくつも登場この日も沿道には立派なモスクがいくつも登場 photo:Kei Tsuji選手たちを押し出すように海風が南に向かって吹く。200kmの長丁場となったツール・ド・ランカウイ第5ステージ。序盤からハイスピードな展開となったレースの主役は、アタック合戦をかいくぐって飛び出した8名の逃げ選手たちだった。

逃げグループのローテーションに加わる中島康晴(愛三工業レーシング)逃げグループのローテーションに加わる中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiスタート後60kmにわたって繰り返されたアタックと吸収の応酬。中島康晴を含めた8名が飛び出すとようやくメイン集団はスピードを落とした。逃げメンバーは全員が総合で25分前後遅れ。つまり第3ステージの1級山岳で遅れ、総合争いから脱落した選手たちだ。

リーダージャージ擁するオリカ・グリーンエッジも、スプリント4勝目がかかったアスタナも集団牽引に興味を示さない。タイム差の拡大は止まらず、ちょうどレース中間の100km地点でタイム差は15分に。距離にして10kmもの開きが生まれる。

逃げグループ通過後にレースが終了したと勘違いした一般車両が大量にコースに流れ込むほど、その後もタイム差は拡大する。追い風に乗ってハイペースを刻んだ先頭8名のリードは、残り90kmの時点で18分をマークした。

サウスイーストとMTNキュベカが集団牽引を開始したものの時すでに遅し。タイム差は14分まで縮まったものの、8名を捕まえるには追撃開始が遅すぎた。



晴れ渡ったものの暑さは控えめ晴れ渡ったものの暑さは控えめ photo:Kei Tsuji
露店に並ぶトウモロコシ露店に並ぶトウモロコシ photo:Kei Tsujiリーダージャージを着るカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを着るカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
MTNキュベカがメイン集団のペースアップを開始するMTNキュベカがメイン集団のペースアップを開始する photo:Kei Tsujiカウンターアタックで飛び出したフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)カウンターアタックで飛び出したフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ) photo:Kei Tsuji
追走グループを率いる中島康晴(愛三工業レーシング)追走グループを率いる中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji


レース中盤のアップダウンをこなすメイン集団レース中盤のアップダウンをこなすメイン集団 photo:Kei Tsujiフィニッシュまで60kmを残してメイン集団は再びペースダウン。フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)らのカウンターアタックは捕らえられ、メイン集団は完全逃げ切り容認ペースに戻った。

独走でフィニッシュに向かうソ・ジュンヨン(韓国、KSPO)独走でフィニッシュに向かうソ・ジュンヨン(韓国、KSPO) photo:Kei Tsuji逃げ切りが確定的となった8名の中では、残り20kmを切ったところでステージ優勝を懸けた駆け引きが始まる。単独で飛び出したのはKSPOのソ・ジュンヨン。韓国のナショナルチャンピオンが独走に持ち込んだ。「コーナーで先行して、後ろを振り向いてからそのままもがいて行った」と中島は回想する。

懸命に追走グループを率いる中島康晴(愛三工業レーシング)懸命に追走グループを率いる中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiアジア人選手にとって、ツール・ド・シンカラやツール・ド・イーストジャワ、ツアー・オブ・ハイナンでステージ優勝を飾り、昨年ツアー・オブ・タイランドで総合優勝に輝いた中島康晴は有名な存在だ。ソ・ジュンヨンを追走する立場となった逃げグループの協調体制は崩れ、中島は徹底マークを遭うことになる。

独走逃げ切り勝利を飾ったソ・ジュンヨン(韓国、KSPO)独走逃げ切り勝利を飾ったソ・ジュンヨン(韓国、KSPO) photo:Kei Tsuji中島が積極的に牽引する追走グループからカウンターアタックがかかり、吸収し、ペースが落ち、再びアタック。淡々とペースを刻んだ先頭ソ・ジュンヨンは10秒強のリードを得てフィニッシュ地点クアンタンの街に差し掛かる。最終ストレートに入った韓国チャンピオンの後ろに追走グループの姿はなかった。

13秒遅れのスプリントで4位に入った中島康晴(愛三工業レーシング)13秒遅れのスプリントで4位に入った中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji追い風の影響もあり、平均スピード46.4km/hという高速レースを制したソ・ジュンヨンは2009年EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインに所属した26歳(3月14日に27歳)。この日と同じクアンタンにフィニッシュする2012年ツール・ド・ツール・ド・ランカウイ第7ステージでも逃げて2位、2013年のツアー・オブ・ジャパン堺ステージで2位。昨年ツール・ド・北海道の最終ステージでスプリント勝利を飾っている。

「序盤から順調にリードを築いたものの、タイムボードに書かれたタイム差を見て驚いたよ。逃げ切りが確定的になったので、残り25kmを切ってから飛び出したんだ」と、ソ・ジュンヨンは語る。「自分の走りを誇りに思う。ランカウイでステージ優勝したアジア人選手は11人しかいない。毎日勝利を追い求めて、今日、ようやく掴むことが出来た」。

追走グループはスプリントの末、ジャマリディン・ノバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)を先頭に13秒遅れでフィニッシュ。中島はスプリントでステージ4位に入ったものの、フィニッシュ後は落胆で肩を落とした。

「自分はセオ(ソ・ジュンヨン)の強さを知っているので追いたかったんですけど、マレーシアとインドネシアの選手に徹底的にマークされて、まぁそれがレースなんですけど、悔しいですね。セオに行かれたことも悔しいけど、最後に2位を取れなかったことも、表彰台に上れなかったことも。今日は勝ちたかった。チャンスでしたけど、チャンスを生かしてこそ選手ですから」。悔しさに潰されそうにながらも中島は気丈に振る舞う。「また気を取り直して明日から戦いますよ」と笑いながらチームカーに戻って行った。

メイン集団は急ぐことなく13分38秒遅れでフィニッシュ。総合トップ10やポイント賞、山岳賞、アジアンライダー賞に変動は起こらなかった。



フィニッシュ後に倒れこむモハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)フィニッシュ後に倒れこむモハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング) photo:Kei Tsuji悔しい思いを噛み締めながらレースを振り返る中島康晴(愛三工業レーシング)悔しい思いを噛み締めながらレースを振り返る中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji
アジア人選手が表彰台を独占アジア人選手が表彰台を独占 photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2015第5ステージ
1位 ソ・ジュンヨン(韓国、KSPO)                     4h18’47”
2位 ジャマリディン・ノバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)  +13”
3位 モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
4位 中島康晴(日本、愛三工業レーシング)
5位 パトリア・ラストラ(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)
6位 メヘル・ハスナウイ(チュニジア、スカイダイブドバイ)
7位 フアン・モラノ(コロンビア、コロンビア)                  +15”
8位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム)         +35”
9位 マ・ガントン(中国、ヘンシャンサイクリング)               +5’20”
10位 バイ・リジュン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム)

個人総合成績
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      19h24’29”
2位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ)               +17”
3位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)              +20”
4位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア)                 +22”
7位 フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ)            +23”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム)        +24”
9位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
10位 ロビン・マヌリアン(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)         +25”

ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)

アジアンライダー賞
チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)

チーム総合成績
MTNキュベカ

アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル

text&photo:Kei Tsuji

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