残り10kmを切って飛び出したマルティン、ボーム、トーマスという強力な3名の逃げ切りは叶わず。ロット・ソウダルトレインに導かれたアンドレ・グライペルがスプリントを制し、今シーズン2勝目を飾ることに成功した。



スタート地点であるボーヴァル動物園のパンダを見学する一行スタート地点であるボーヴァル動物園のパンダを見学する一行 photo:A.S.O.パンダに囲まれて出走サインをするブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)パンダに囲まれて出走サインをするブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー) photo:A.S.O.パリ郊外からスタートし南を目指すパリ〜ニース(UCIワールドツアー)は3日目。ボーヴァル動物園からフランス中央部のサンタマン・モンロンへと至る172kmがその舞台で、その大部分はシェール川沿いの盆地地帯を通過するために平坦基調だ。ゴール手前40km地点には3級山岳コート・ド・ツール(標高284m)が1つ控えているものの、スプリンターの脚を削ぐものではない。

単独で逃げ続けたアルノー・ジェラール(フランス、ブルターニュ・セシェ)単独で逃げ続けたアルノー・ジェラール(フランス、ブルターニュ・セシェ) photo:CorVosスローペースの集団で走るラルス・ボーム(オランダ、アスタナ)らスローペースの集団で走るラルス・ボーム(オランダ、アスタナ)ら photo:CorVos選手たちはボーヴァル動物園でパンダを見学し、アルゼンチンで10人が無くなったヘリコプター事故を弔う黙祷を行ってからスタート。フラッグが振られた直後にアルノー・ジェラール(フランス、ブルターニュ・セシェ)が飛び出すと、同調する選手は現れず。ここからジェラールの140kmに渡る単独行が始まった。

2003年から2012年までFDJで過ごし、2013年から地元のプロコンチームであるブルターニュ・セシェに活躍の場を移したジェラール。レース開始後1時間の平均速度が35.3km/hというペースで巡航し、50km地点で集団とのタイムギャップは7分を超えた。

57km地点の中間スプリントではボーナスを狙った争いが集団内に発生し、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)がジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)に先着する。繰り下がりでマイヨヴェールを着用するクリストフは2点を稼ぎ、ポイント賞ランキングで首位に立ってみせる。

ユーロップカーやコフィディスが牽引を開始した集団では、次なるスプリントポイント(127km地点)でも争いが生じ、先ほど3位に甘んじたデゲンコルブが2位通過。2点+2秒のボーナスを獲得したことでトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)を逆転し、総合3位に浮上した。

2つの中間スプリント争いが発生したが、単独逃げだったことも手伝ってレースはスローペースで進む。マルティンは自身のFacebookに「集団内ではレース中の最低ワット数更新だね、とジョークを飛ばしていた。実際にも170Wだったからそれに近い数字」と記している。

ゴール40kmを残してジェラールの単独行が終了すると、キャノンデール・ガーミン勢がペースアップを開始。各チームが徐々にスプリントへの体制を整える中、残り10kmを切るとそのマルティンが攻撃に出る。

不意をついて先行したマルティンにはラルス・ボーム(オランダ、アスタナ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、マッティ・ブレシェル(デンマーク、ティンコフ・サクソ)が同調したものの、ブレシェルはパンクで離脱。強力な3名が逃げ切りを目指して全力で踏んでいく。

「3人がアタックしたとき、道が狭かったことも手伝って集団は軽くパニック状態になった。どのチームも牽こうとせず追走体制を組み上げるのに少し時間が掛かってしまった」と後に語るのはステージ2位に入ったアルノー・デマール(フランス、FDJ)。やがてオリカ・グリーンエッジとロット・ソウダルが牽引を行うと、粘る3名を残り1.5kmでキャッチ。そのまま大集団スプリントへとなだれ込んだ。



アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がスプリントで先行するアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がスプリントで先行する photo:CorVos


アルノー・デマール(フランス、FDJ)らを下したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)アルノー・デマール(フランス、FDJ)らを下したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:CorVos今シーズン2勝目を挙げたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)今シーズン2勝目を挙げたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:CorVosマイケル・マシューズ(オーストラリア)を連れたオリカトレインは上手く機能せず、代わってグレゴリー・ヘンダーソン(オーストラリア)が残り200mでグライペルを発射。力強く踏み続けたグライペルはデマールを振り切って先着。ダウンアンダーを欠場したドイツチャンピオンが今シーズン2勝目を飾った。

「オリカは上手く機能していたけれど、僕らは彼らの後ろに残り800m地点から入ることができた。向かい風でヘンダーソンが離れるタイミングが少し早すぎたが、何とか先着することができた。」とグライペルは振り返る。「昨ステージはチームとして上手く機能することができず、今日はそれを省みて臨んだ。マルティンやトーマス、ボームが先行したために通常通りのスプリント体制を築けなかったが、ガロパンやウェレンスの動きによって残り3km地点で集団の前に位置することができた」。

総合順位では前述の通りデゲンコルブが3位に浮上したが、首位のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)と2位ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)は変動無し。翌日は途中3つの3級山岳が登場するものの、ゴール手前はほぼ平坦基調。再びスプリンターたちの戦いが繰り広げられるはずだ。



パリ〜ニース2015第2ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
6位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
7位 モレノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
9位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、IAMサイクリング)
10位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
4h30'18"











個人総合成績
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
4位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
7位 ラルス・ボーム(オランダ、アスタナ)
8位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)
9位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
9h53'16"

+02"
+07"
+09"
+10"


+13"



ポイント賞
アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

山岳賞
ジョナタン・イヴェール(フランス、ブルターニュ・セシェ)

新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
BMCレーシング

text:So.Isobe
photo:CorVos,A.S.O.