ロヂャースレーシングチームと湘南ベルマーレが合併し、「レモネード・ベルマーレ」として刷新したチーム。今季限りで引退した宮澤崇史が監督に就任し、ユニークな運営方法でチームを育てていくことを発表した。

レモネード・ベルマーレチームのコンセプトをプレゼンする宮澤崇史監督レモネード・ベルマーレチームのコンセプトをプレゼンする宮澤崇史監督 (c)Makoto.AYANO

レモネード・ベルマーレの2015チームジャージレモネード・ベルマーレの2015チームジャージ (c)Makoto.AYANO12月20日、平塚市で開催された「湘南バイシクル・フェス」で体制を発表した新チーム「LEMONADE BELLMARE(レモネード・ベルマーレ)。基盤となったのはロヂャースレーシングチームと湘南ベルマーレの2チーム。しかしほぼ生まれ変わった新チームと言って良い新体制だ。湘南ベルマーレトライアスロンチームとの合同発表会でロードチームの陣容が発表された。

新チーム名ともなっているLEMONADE(レモネード)は、サイクリストにも好評を博している、エクササイズのログをモバイルアプリで記録・分析したり仲間とシェアできるサービスやコミュニティを提供している。新ジャージのデザインもさっそくお披露目された。

チーム所属選手メンバーは、林航平、中里仁、小清水拓也、才田直人、大村寛、菱沼由季典(欧州ではアモーレ・エ・ヴィータ所属)、加地邦彦(スポンサー兼)、内山靖樹(GM兼)、宮澤崇史(監督兼)、福田昌弘(トレーナー兼)。

宮澤崇史監督宮澤崇史監督 (c)Makoto.AYANO注目を集めたのは選手の顔ぶれ以上に監督となる宮澤崇史の存在だ。先のインタビュー記事で今後は各方面の仕事を請け負うフリーランスとしての活動を開始すると語った宮澤が、仕事のひとつとして選んだのはこの新チームのプレイングマネジャー的な監督業だった。
そして宮澤自身もチームジャージを着て選手と同じレースを走るという。しかし”現役復帰”というわけではなく、あくまで監督として、チームの選手たちの動きを査定するために走るのだという。

ユニークなのは「報奨金制度」だ。これは宮澤が自分のアイデアを元に設定したもので、「レース中に自分の体調を把握し、すべき役割を監督に伝えた」ら500円〜1,000円。「レース中に選手同士の体調・役割を確認し合った」ら3,000円。「ゴールまで残り1kmで3番手以内からスプリントに入った」ら10,000円などと、選手として適切な動きができたことに対して細かく報奨金額が設定されている。極めつけは「ヨーロッパのコンチネンタルチームと契約できた」ら百万円だ。
つまり、優秀な選手がレースで行っている大切な項目を細かく洗い出し、それを金額で具体的に数値化したもの。それを意識してレースを走ることで、選手にとってのゴールが明確化することになる。発展途上の選手にとっては、すべきことが細かな項目として具体的に示されることになり、ひいてはそれらを加算してゆくことが報酬増加につながり、モチベーションアップにもつなげがるという。

宮澤崇史監督、加地邦彦(スポンサー兼選手)、福田昌弘(トレーナー兼選手)宮澤崇史監督、加地邦彦(スポンサー兼選手)、福田昌弘(トレーナー兼選手) (c)Makoto.AYANOチームコンセプトには、「情熱とモチベーションに溢れたチーム作り」「個々が自分の役割を理解し、判断できる選手育成」「成功報酬制度で選手自身が稼げるチーム」という項目がある。その査定をするために監督の宮澤自身が選手と同じレースを走るという。

宮澤が目指すのは「選手自身が自立できることにフォーカスし、成功体験を多くする中で、チームがそれを評価し、Passion、motivasion、Coolな選手を育てる。ヨーロッパでステップアップする選手を育てているチームNIPPO、エキップアサダに輩出できる選手を育成する」ことだという。

そして「こんなチーム作り」をしたい理由として、宮澤は次のように考えている。
「今の若い選手を見ていると、選手自身がリスクの少ないことを望み、なんとかお金を稼げる環境で、できるだけ長く自転車選手を続けることを目的に走っているように見えました。それでは世界と戦う選手の育成は難しいと感じています。
そこで、選手が常にリスク・意識・高いモチベーション・情熱を持つために、小さなことから成功体験を増やし、選手が自信をもち、大きな目標に立ち向かう選手になってほしい。
チームリーダーの才田直人 フランスで活動してきたクライマーだチームリーダーの才田直人 フランスで活動してきたクライマーだ (c)Makoto.AYANOレースを通し選手自身が何をするべきかを考え、チームのために価値あるレースをし、自身の価値を高める為に、レースに取り組む所から結果を出すまで、責任を持てる育成を目指します。
私は2年後、3年後は、10代の選手を中心にプロフェッショナルな選手になるための育成をしていきます。プロ選手になるために」。

レモネード・ベルマーレは2015シーズンよりJプロツアーなど日本の最高レベルのレースを中心に活動することになる。初戦は3月15日の宇都宮クリテリウムだ。
「従来チームの補強というよりは、ここからスタートをする新チームというイメージに近いです。自分たちが何を目指すのかということをはっきりさせて、上を目指すチーム、ヨーロッパを目指すチーム、そして2020年東京オリンピックで闘える選手を出すために長いスパンでやっていきたい」。

チームのエースに指名された才田直人選手(ニールプライドメンズクラブより移籍)のコメント
フランスでの活動をいったん止めて日本に戻る決断をしました。日本でフルに走るのは初めてになります。
報奨金制度などは日本に今までになかったものなので、確かにモチベーションアップになりますね。日本の若手に本場の文化を伝えるにはいい方法だと思います。タカシさんから教わることは多いでしょうね。エースに指名されましたが、登りが得意なので結果を出したいです」。

レモネード・ベルマーレレモネード・ベルマーレ (c)Makoto.AYANO
LEMONADE BELLMARE チームコンセプト(一部抜粋)
・情熱とモチベーションに溢れたチーム作り
・個々が自分の役割を理解し、判断できる選手育成
・成功報酬制度で選手自身が稼げるチーム
・身近にレースのある環境を作り、レーススクールを実施
・主催イベントを平塚から関東へ(地元密着から、より広域へ)

評価制度 (例)
難易度A 500〜1,000円 各自体調を把握し、すべき役割を監督に伝えた
難易度B 3,000円 レース中に選手同士の体調・役割を確認し合った
難易度D 5,000〜8,000円 ゴール前3kmでトレインを形成した 
難易度E 10,000円〜20,000円 残り1kmで3番手以内からスプリントに入った
難易度F 1,000,000円 ヨーロッパのコンチネンタルチームで活躍出来る
選手に成長した

JPTレースで優勝 30万円 2位10万円 3位5万円

チーム規約
・レース中は自分の役割、チームメイトの動きを見て最善の努力をし、結果につなげる
・レースに集中する環境は皆で作る
・レース会場でビブが出てる状態や、地面に座ってダラダラしない
・表彰台には綺麗なジャージで、喜びを全面に出す
・レース会場では全ての人に明るく接する
・スポンサーメーカー様には挨拶をし、自分の名前を覚えてもらい信頼関係を築く

【地域密着とイベント】
平塚を中心にコンセプトのあるレースイベントを作り、その実績を南関東に広めていくことで、より身近にレースがあり、選手を発掘、育成しやすい環境作りをめざします。

宮澤崇史が考える選手に必要な要素宮澤崇史が考える選手に必要な要素
宮澤崇史が考える選手の評価制度宮澤崇史が考える選手の評価制度

photo&text:Makoto.AYANO