ツール・ド・おきなわの市民100kmアンダー39カテゴリーで優勝した、永瀬勝彬(イナーメ・信濃山形)による直筆優勝レポートをお届けします。



毎週水曜早朝に有志で開催されている「矢野口おはサイ」のメンバー毎週水曜早朝に有志で開催されている「矢野口おはサイ」のメンバー 飛行機を降りて那覇空港のめんそーれの看板を見たとき、またここに戻ってきたことにわくわくした。今年こそは。

お守りでもらった高野山の飴お守りでもらった高野山の飴 ツール・ド・おきなわの市民100kmに参加するのは今回で3回目。初めて出場した2012年は3位、去年がラスト1キロで落車してしまい、かなり悔しい思いをした。

6月に2人目の子供が産まれたことで6・7月はあまり乗れず、レースでも思うように走れない。自分の中のイメージと現実との差に苦しむが、どうにもならない。まずは練習量を増やさないと考え、朝ならばできそうと朝練を始める。

毎週水曜早朝に有志で開催されている「矢野口おはサイ」は以前から知っていたので、お邪魔することに。仲間がいれば、眠い朝も頑張れた。加えて自分が得意ではない平地練(多摩堤練、通称:恐竜練)の情報も掴み、行ける日には参加した。

すると調子が徐々に上がり、レースに出ても、自分のイメージに近い走りが出来るようになってきた。秋になり沖縄も近付いてきたころ、迎えたジャパンカップオープンレース。今まで完走出来たことは無いこのレースで初めて完走。

しかもただ完走するだけでなく、最終局面まで先頭集団に喰らいつき走り切った。沖縄に向けて手応えを感じたが、それでも不安な部分もあった。翌日のジャパンカップ本戦は観ずに群馬へ。不安な長距離でのスタミナ不足を考え、JCRCのZクラスに出場。最終局面でいい走りができ、夏から頑張ってきた練習が間違っていなかったことを自信として沖縄に乗り込んだ。

木曜は午前中に仕事をして午後から沖縄に出発。今までは自転車を輪行袋で運んでいたが、今年は何としても勝ちたかったので、安全で確実に自転車を運べる方法を。チームメイトが使っていた『バイクサンド』を選んでみる。これは大正解で、自立してくれるので子どもを2人連れていても楽に移動することが出来、もちろん自転車は無傷だった。

金曜は少しゆっくり起きて、羽地ダムへ。最終局面がここなのは間違いない。レースをイメージしながら登り、斜度や距離を再確認する。移動の疲れか脚が浮腫んでいる感じだったので、コースを逆走するかたちで東村まで海岸線のアップダウンを走ることにした。でも目的の半分はおいしい「テビチ」を食べに行くこと♪

土曜日は雨が降っていたこともあり、自転車には乗らず家族とゆっくり観光して過ごす。独りだったら緊張してしまうのだろう。家族がいることに感謝。

夕方前に受付に行き、自転車を綺麗にしてチップとナンバープレートをつけて自転車を預けた。夕食は消化の良い物を選び、食べ過ぎないように。レースジャージにゼッケンをつけるとついに明日が決戦の日だと実感した。やはり夜は緊張からか眠りが浅く、幾度か目が覚めてしまう。気が付けば勝負の朝だった。

スタート前の愉快な仲間たちスタート前の愉快な仲間たち 日曜日はオクマからバスに乗りスタート地点の奥へ。朝食を食べたりアップオイルを塗ったり仲間と談笑したり。緊張しないように淡々とこなす。少し雨がぱらついていたが、登りでアップしていると、チャンピオンの先頭が近付いてきているアナウンス。いよいよだ。

市民100kmアンダー39 逃げ切りを目指す3名。後ろが優勝した永瀬勝彰市民100kmアンダー39 逃げ切りを目指す3名。後ろが優勝した永瀬勝彰 photo:Hideaki.Takagiジュニアの選手が通過し、先導車のもとレースがスタート。奥の登りは比較的落ち着いて進んでいく。海岸線に出ると風も強くペースが上がらないため、消耗しないように集団内で安全に与那まで。登りに入るとなるべく前にポジショニングし、先頭に出てくるメンバーをチェックしたり、様子見でペースを上げたりするが集団は大きいままで下りに。下りはノーブレーキで行けることが分かっていたので、ある程度の力で踏んでいると一人で抜け出す形に。

市民100kmアンダー39 先頭を追う4位集団市民100kmアンダー39 先頭を追う4位集団 photo:Hideaki.Takagi行けるとこまで行こうと思ったものの登り返しで吸収され、その後のアップダウンでは抜け出す人もいたものの、結局は集団で進む。途中で後ろに下がり、集団全体をチェック。冷静に走れている自分に自信も感じる。

慶佐次の前で抜け出すも(本当は天仁屋でペースを上げるつもりが間違えてしまった)、風が強く1人で行くには無理がある。やはり最後の羽地からが勝負だろう。ここから積極的に補給を摂るように心掛ける。今思い出すとこの時も、残ったメンバーのどの選手が強いかを冷静に考えてチェック出来ていた。

集団は淡々と海岸線の平地を進み、大浦湾へ。羽地ダムへの登りが近づく。羽地でのプランは中盤あたりからジリジリペースをあげていくか、それとも下からのアタックに対応するかのどちらかだと決める。どちらでも対応できるように準備していると、いよいよ羽地に入った。その瞬間、木下(翔平:コムリン)さんがアタックしたので、すぐにフォロー。チームメイトの香川(博)さんも合流して3人で抜け出す形に。これ以上無い理想的な展開になる。

トンネルを抜けて右折するときに振り返ると、集団はまだそこにいる。ダムが近付くと時折風も強く辛い区間もあり、後ろに追いつかれないかヒヤヒヤしながらも、3人で逃げきることを考えローテーション。
頂上までも追いつかれず、下りに突入。下り終わった所で「後ろと30秒!」と聞こえたため、メイン集団の状況が少しだけわかった。

58号に入ると追い風が3人に味方する。ローテーションしながら進んでいくが、2人いるイナーメとしては有利。チームメートに感謝しながらも、残り1kmあたりからはローテーションの順番や最後どこで仕掛けるかを冷静に考えながら走る。勝つのは自分だ。ゴールが見える距離になり、残り300mの看板あたりでは香川さん→木下さん→自分。

ここだ!と思い、後ろにつかれないように一気にラインを振って発射!!(丁度、妻が観ていた前だったようです。)少し離すことができたので渾身の力で一気にもがき、ゴール寸前で勝ちを確信し初ガッツポーズ!最高の瞬間!!ゴール後、気が付けば雄叫びをあげていた。

市民100kmアンダー39 3名によるゴール勝負を永瀬勝彬が制す市民100kmアンダー39 3名によるゴール勝負を永瀬勝彬が制す photo:So.Isobe
市民100kmアンダー39 表彰を待つ永瀬勝彬ら市民100kmアンダー39 表彰を待つ永瀬勝彬ら photo:So.Isobe市民100kmアンダー39 表彰台市民100kmアンダー39 表彰台 photo:Hideaki.Takagi


今回、勝つことができて本当に嬉しかった。これまで色々とサポートしてくれたチームメイトの金子(広美:女子国際優勝)さんには沖縄に来てからもお世話になりっぱなしで感謝しています。一緒に練習をしてくれた仲間にも感謝しています。

そして何より子どもが2人もいる中で練習やレースに送り出してくれた妻には「ありがとう」と言いたい。勝つことで少しは恩返しができたかな!?(笑)

来年は苦手なエンデューロレースでも優勝を狙い、おきなわでは140kmにステップアップして挑んでみたいと思います!(今度は息子を表彰台に!)応援してくださった皆様、ありがとうございました!



使用機材
フレーム:グラファイトデザイン ZANIAH
コンポ:シマノ 6800 ULTEGRA
ホイール:コリマ AERO
タイヤ:コンチネンタル GP4000

アイテム
ヘルメット:MET Stradivarius UL
サングラス:OAKLEY Radar Path
ソックス:武田レッグウェア RxL TBK-500R(←履き心地、カラー共にお気に入りです)
シューズ:ディアドラ JETRACER

text:永瀬勝彬