2週間前のアジア大会団体追抜きで4分08秒の日本記録を出し銅メダル獲得の窪木一茂(チーム右京)。ラスト6周の12分間を圧倒的なスピードで逃げ切って地元福島県での勝利を挙げた。



窪木一茂(チーム右京)が逃げ切って優勝窪木一茂(チーム右京)が逃げ切って優勝 photo:Hideki TAKAGI


熊野第1ステージ、白浜、湾岸で優勝の辻善光(湘南ベルマーレ)が、この決勝でロード選手を引退熊野第1ステージ、白浜、湾岸で優勝の辻善光(湘南ベルマーレ)が、この決勝でロード選手を引退 photo:Hideki TAKAGIテクニカルコースでハイスピードの展開のいわきクリテ。スプリンターとアタッカーの攻防に加え、今年はJプロツアー年間総合タイトルの個人とチームの両方が接戦。今年も速い展開となり最もスピードのある男が優勝した。
序盤から積極的に走る2012年覇者の小室雅成(ロヂャースレーシングチーム)序盤から積極的に走る2012年覇者の小室雅成(ロヂャースレーシングチーム) photo:Hideki TAKAGI中盤、チーム右京勢の仕掛けでこののちに逃げができる中盤、チーム右京勢の仕掛けでこののちに逃げができる photo:Hideki TAKAGI
10月5日(日)、いわきクリテリウムの決勝各種目が福島県いわき市の21世紀の森公園で行なわれた。公園内園路を使う1周1.63km(予選とP1以外クラスは1.23km)のコースは少しの起伏、カーブや直角コーナー、コースの幅の変化そして路面も石畳区間有など短いながら変化の大きいもの。P1は予選を勝ち抜いた40人による決勝が34周・55.42km行なわれた。
逃げ続ける8人。先頭は2012年大会、高校2年生で2位の岡篤志(EQA U23)逃げ続ける8人。先頭は2012年大会、高校2年生で2位の岡篤志(EQA U23) photo:Hideki TAKAGIメイン集団のペースを作るのは宇都宮ブリッツェンメイン集団のペースを作るのは宇都宮ブリッツェン photo:Hideki TAKAGI
スタートに先立って、この決勝でロード選手としてのキャリアを終える辻善光(湘南ベルマーレ)の引退セレモニーが行なわれた。辻は2010年ツール・ド・熊野(UCI2.2)第1ステージ優勝、Jプロツアーでは白浜クリテリウム2連覇、湾岸クリテ優勝、ほか国体ロード、同ポイントレース優勝などの経歴を持つスプリンター。立命館大学からマトリックスパワータグ、宇都宮ブリッツェン、チーム右京、そして湘南ベルマーレで活躍してきた。今後はシクロクロスなどに出場していくという。

P1クラスタは序盤からチーム右京と宇都宮ブリッツェンを中心に主導権争いが始まる。両チームは年間総合タイトルを争う立場にある。個人はホセ・ビセンテ(チーム右京)が、チームは宇都宮ブリッツェンがリーダーだが、たった1戦の結果で代わるほどの僅差だ。さらに2012年の覇者小室雅成(ロヂャースレーシングチーム)や、フランスから帰国したばかりのEQA U23メンバーなどが加わり、ペースは落ちない。

動きがあったのは中盤の13周目、土井雪広らチーム右京勢が先頭を固めペースを上げ、集団を一列棒状にする。そして15周目、その前方だけの6人が先頭集団を作る。メンバーは窪木、山本隼(チーム右京)、大久保陣・青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)、岡篤志(EQA U23)そして中山卓士(ロヂャースレーシングチーム)だ。さらにここへ小室、そして土井が単独で合流し8人の逃げが決まった。

メイン集団は「土井が合流したことから数的不利となり吸収するため」(ブリッツェン清水裕輔監督談)、宇都宮ブリッツェン勢が前方を固めて逃げを吸収する動きへ。差は15秒程度を維持し、終盤に向けて吸収する磐石の体制を保ったが、差が10秒ほどに縮まった残り6周で、先頭集団から窪木が鋭くアタック。一気にほか7人との差を広げていく。
ラスト6周で先頭集団からアタックした窪木一茂(チーム右京)ラスト6周で先頭集団からアタックした窪木一茂(チーム右京) photo:Hideki TAKAGIメイン集団は鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)先頭でゴール。5位ホセ・ビセンテ(チーム右京)は7位増田成幸(宇都宮ブリッツェン)に135点差をつけたメイン集団は鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)先頭でゴール。5位ホセ・ビセンテ(チーム右京)は7位増田成幸(宇都宮ブリッツェン)に135点差をつけた photo:Hideki TAKAGI
先頭の窪木を目指して岡、小室が追走するが窪木以外は全員、最終周回目前で吸収される。窪木は差を保ったまま余裕を持ってフィニッシュ。メイン集団はチーム総合ポイントを巡って上位でフィニッシュするため宇都宮ブリッツェンが主導権を持ち鈴木譲が先頭でフィニッシュ。個人年間総合2位で7着の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)は、同リーダーで5着のホセ・ビセンテ(チーム右京)からの遅れを最小限に食い止めている。

「窪木が強すぎた」と各チームの選手がレース後に口にするほど、この日の窪木の走りは冴えていた。持ち前のスピードもさることながら、アタックのタイミングが絶妙で、土井との連携もあり、個人とチームの両方の力で得た勝利だ。地元福島県の学法石川高校出身の窪木は嬉しい勝利を挙げた。

地元で優勝の窪木一茂(チーム右京)
中盤に逃げているときは泳がされているとも感じていたので、土井さんが合流してリードしてもらい心強かった。チームとしては大量得点獲得の目標もあったが、逃げメンバーを見て自分が抜け出すことに作戦変更した。

チーム右京桑原忠彦ゼネラルマネージャー
窪木はいま調子がいいし、勝ちたい気持ちがずっとあったので今日は勝てて良かった。チーム総合逆転はつねに頭に入れるようにはしているが最優先ではない。ホセのルビーレッド、チーム総合、その都度のレースの優勝、すべてを狙っている。それは圧倒的な強さを見せなければならないチームの宿命だ。

宇都宮ブリッツェン清水裕輔監督
まず、窪木が強かった。チームとしては作戦通りに展開できたことは良かった。中盤の逃げに土井が入っていなければあのまま行かせていた。終盤に青柳が落車してそのあとに窪木がアタックしていたので、最終盤に人数が不利だったことが唯一の誤算。当初の目標は集団でのゴールスプリント。大久保、鈴木譲で狙い増田を上位でゴールさせることであり、まずまずの形で終えることは出来た。あと2戦あるクリテリウムでこれができたことは意義ある。



P1 表彰P1 表彰 photo:Hideki TAKAGI
Fクラスタ 花の谷を走るFクラスタ 花の谷を走る photo:Hideki TAKAGIFクラスタ 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)が優勝Fクラスタ 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)が優勝 photo:Hideki TAKAGI



結果
P1クラスタ 55.42km
1位 窪木一茂(チーム右京)1時間18分34秒
2位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)+10秒
3位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン)
4位 中村龍太郎(イナーメ信濃山形)
5位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)+11秒
6位 ガルシア・リカルド(チーム右京)
7位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
8位 岡篤志(EQA U23)+12秒
9位 平井栄一(チーム右京)
10位 小室雅成(ロヂャースレーシングチーム)

Jプロツアーリーダー ホセ・ビセンテ(チーム右京)
U23リーダー 堀孝明(宇都宮ブリッツェン)

Fクラスタ 25.83km(Sコース)
1位 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)45分23秒
2位 西加南子(LUMINARIA)+01秒
3位 伊藤杏菜(Champion System Japan-中京大学)+01秒



E1 優勝の川田優作(Honda 栃木)E1 優勝の川田優作(Honda 栃木) photo:Hideki TAKAGIE2 優勝の柳沼龍佑(TOKYO VENTOS)E2 優勝の柳沼龍佑(TOKYO VENTOS) photo:Hideki TAKAGI

E3 優勝の渡邉正光(左、LinkTOHOKU)E3 優勝の渡邉正光(左、LinkTOHOKU) photo:Hideki TAKAGIE3でチーム結成デビューウィンのLinkTOHOKUE3でチーム結成デビューウィンのLinkTOHOKU photo:Hideki TAKAGI



E1クラスタ (以下ポイントレース形式)
1位 川田優作(Honda 栃木)31点
2位 伊藤舜紀(ボンシャンス)12点
3位 小野康太郎(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)12点
4位 古知屋一成(竹芝サイクルレーシング)5点
5位 雑賀大輔(ブランシュ・レーシング・チーム)4点
6位 水間健(Honda 栃木)3点

E2クラスタ
1位 柳沼龍佑(TOKYO VENTOS)25点
2位 山口雄大(Pinazou Test Team)9点
3位 高橋良輔(竹芝サイクルレーシング)6点
4位 清野淳(SUBARU RT)5点
5位 藤澤直人(竹芝サイクルレーシング)4点
6位 秋本昌夫(Honda 栃木)4点

E3クラスタ
1位 渡邉正光(LinkTOHOKU)23点
2位 福本元(チーム・Y)10点
3位 半澤雄高(LinkTOHOKU)9点
4位 荘一樹(チーム・Y)5点
5位 曽我部正道(ブラウ・ブリッツェン)3点
6位 越智崇裕(湘南ベルマーレクラブ)1点

photo&text:高木秀彰