2級山岳モンテカステロベに至る山岳バトルでファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がアタック。ぎくしゃくするスパニッシュトリオを振り切ったアルが2勝目を飾り、フルームが総合2位に浮上した。



2級山岳モンテカステロベを登るプロトン2級山岳モンテカステロベを登るプロトン photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第18ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第18ステージ image:Unipublicガリシアの海岸線を行くブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージ。内陸のラ・エストラーダをスタート後、リアス式海岸の語源にもなった入り組んだオーシャンロードへ。毎年のようにブエルタに登場するサンシェンショやポンテベドラの街を抜け、終盤にかけて2級山岳モンテカステロベを2度登る。

逃げグループを率いるルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)逃げグループを率いるルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル) photo:Unipublic平坦路でのポジション争いを経て、標高515mの2級山岳モンテカステロベに向かって平均勾配7%/最大勾配12%の登りを突き進む。残り700mで最後の頂上通過し、軽く下ってフィニッシュ。翌々日に控えた最終山岳決戦に向けた脚試しだ。

メイン集団のペースを上げるカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)メイン集団のペースを上げるカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ) photo:Unipublicこの日、家族に付き添うため帰国する総合7位ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)を始め、世界選手権を見据えるファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)、トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)はDNS。合計165名の選手たちが、50.5km/hという猛烈な勢いで最初の1時間を駆け抜けた。

高速化した集団から飛び出したのはヨアン・レボン(フランス、FDJ.fr)、ユベール・デュポン(フランス、AG2Rラモンディアール)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)。ガリシア地方の海岸線を逃げる3名を、総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)擁するモビスターが追走する展開でレースは後半へと向かう。タイム差は4分をピークに下降を開始。1度目の2級山岳モンテカステロベに差し掛かる頃には2分にまで縮まっていた。

アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)らのカウンターアタックは決まらず、ティンコフ・サクソとチームスカイが集団前方を陣取って登りを進む。急勾配区間を含むこの2級山岳モンテカステロベで集団はおよそ50名に絞り込まれた。



2級山岳モンテカステロベでアタックするジェローム・コッペル(フランス、コフィディス)2級山岳モンテカステロベでアタックするジェローム・コッペル(フランス、コフィディス) photo:Unipublic2級山岳モンテカステロベの麓でアタックを仕掛けるアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)2級山岳モンテカステロベの麓でアタックを仕掛けるアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル) photo:Tim de Waele
残り3.5kmでアタックを仕掛けたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)残り3.5kmでアタックを仕掛けたファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele


コンタドールらを引き離すクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とファビオ・アル(イタリア、アスタナ)コンタドールらを引き離すクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Unipublic山岳賞ジャージのLLサンチェスが独走で2級山岳モンテカステロベを先頭通過したものの、下りでメイン集団に飲み込まれてしまう。するとチームスカイが猛烈な勢いで集団を率い、スプリントポイントでクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)を発射。ここをしっかりと2番手通過したフルームがボーナスタイム2秒を獲得し、総合逆転への意思を示した。

アルとフルームを追走するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)アルとフルームを追走するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleそして迎えた最後の2級山岳モンテカステロベ。クリストフ・ルメヴェル(フランス)とジェローム・コッペル(フランス)のコフィディスコンビがそれぞれ果敢にアタックしたが決まらない。すると頂上まで3.5kmを残したところで総合5位ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がアタック。第11ステージですでに勝利を収めているイタリアの新星がリードを奪うことに成功する。

協調出来ないまま先頭を追うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら協調出来ないまま先頭を追うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら photo:Unipublic後方ではアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、そして出遅れ気味のフルームが追走。そこから動いたのはフルームだった。

フルームを振り切って勝利したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)フルームを振り切って勝利したファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleシッティングで加速したフルームはそのまま先頭アルまでジャンプ。2人で協力してハイペースを刻み、そのまま頂上をクリアする。一方、コンタドール、ロドリゲス、バルベルデの3人はローテーションが回らず、ペースも上がらない。どこかぎくしゃくしたスパニッシュトリオを振り切って、アルとフルームが逃げ切った。

後続を引き離すことに力を尽くしたフルームを振り切って、スプリントでアルが先着。フルームが1秒差、そしてスパニッシュトリオが13秒差でフィニッシュする結果に。

「監督の指示で、最も勾配がキツいところでアタックした。1度目の通過の際にアタックポイントの目星を付けていたんだ。フルームが合流したことが逃げ切りに繋がった。彼は本当に強力だった。偉大なチャンピオンたちと肩を並べて闘っていることを誇りに思う。土曜日(第20ステージ)でも先頭争いに加わりたい」と、ステージ2勝目を飾ったアル。ジロ・デ・イタリア総合3位の新鋭がアウェーの地で総合5位の座を守っている。

攻撃を成功させたフルームはタイム差12秒とボーナスタイム合計8秒を稼ぎ、バルベルデを抜いて総合2位に浮上。「またステージ2位。でも総合順位を上げることが出来たので満足している」というフルームは、コンタドールとの総合タイム差を1分19秒にまで縮めている。コンタドール、フルーム、バルベルデの三強が最終日まで僅差の総合争いを繰り広げることになりそうだ。

選手コメントはレース公式リリースより。



ステージ2勝目を飾ったファビオ・アル(イタリア、アスタナ)ステージ2勝目を飾ったファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第18ステージ結果
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
10位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
3h47'17"
+01"
+13"


+17"
+33"
+48"



マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
8位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
9位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
71h38'37"
+1'19"
+1'32"
+2'29"
+3'15"
+6'52"
+6'59"
+9'12"
+9'44"
+9'45"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
149pts
130pts
120pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
58pts
30pts
24pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7pts
7pts
14pts


チーム総合成績
1位 カチューシャ
2位 モビスター
3位 ティンコフ・サクソ
214h54'51"
+26'32"
+32'55"


ステージ敢闘賞
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele