残り2.5kmからコースは登りに転じ、フィニッシュラインに向けて高低差100mを駆け上がる。ハイスピードな登りアタック合戦の中からダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)が抜け出し、後続を振り切って勝利した。



カンタブリア州の内陸から海に向かう逃げグループカンタブリア州の内陸から海に向かう逃げグループ photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第13ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第13ステージ image:Unipublicブエルタは大西洋に面したカンタブリア州に達する。内陸のベロラドをスタートし、3つのカテゴリー山岳をこなして高度を下げる。総合争いが加熱するような山岳ステージではないが、残り2.5kmを切ってから高低差100mの登りが登場する。

逃げグループを率いるルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)逃げグループを率いるルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル) photo:Unipublic動物園として親しまれているカバルセノ自然公園に至る登りは、レース主催者によると「急勾配ではない」。しかし蓋を開けてみるとコンスタントに10%を超える登りが続き、ピュアスプリンターの立ち入りを許さなかった。

レース前半からオリカ・グリーンエッジが徹底的に集団をコントロールレース前半からオリカ・グリーンエッジが徹底的に集団をコントロール photo:Unipublic開始直後から50km/h近いスピードで巡行した集団から11名がアタック。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)、ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)を含む逃げグループが形成された。

逃げに選手を送り損ねたユーロップカーが懸命に追走したためタイム差は広がらず、オリカ・グリーンエッジがバトンタッチしてタイム差は3分以内に押さえ込む。レース中盤に差し掛かったところで、昨年のアングリル覇者ケニー・エリッソンド(フランス、FRJ.fr)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)がバイクを降りている。

やがてフィニッシュまで50kmを切ったところで逃げグループは崩壊。2級山岳カラコル峠で先頭はLLサンチェス、クネゴ、ダミアン・ゴダン(フランス、AG2Rラモンディアール)、アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)、ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)の5名に絞られ、2分差で頂上をクリアする。

オリカ・グリーンエッジの懸命な追撃によってタイム差は縮まり、逃げ吸収の可能性を感じたFDJ.frがナセル・ブアニ(フランス)のために集団牽引を開始。FDJ.frによるアクセル全開のリードによって残り17km地点でタイム差は1分を下回る。先頭で独走に持ち込んでいたルトセンコもろとも、残り7km地点で逃げは全て吸収された。



3級山岳エスタカス・デ・トゥルエバ峠の下り3級山岳エスタカス・デ・トゥルエバ峠の下り photo:Tim de Waele
3級山岳エスタカス・デ・トゥルエバ峠の下りを進むアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)3級山岳エスタカス・デ・トゥルエバ峠の下りを進むアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele終盤にかけて独走に持ち込んだアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)終盤にかけて独走に持ち込んだアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:Unipublic



登りに向かってトレインを組むカチューシャやティンコフ・サクソ登りに向かってトレインを組むカチューシャやティンコフ・サクソ photo:Unipublic9月4日に亡くなったジョヴァンニ・ピナレロ氏を追悼して黒い喪章を付けて走ったチームスカイの他、ティンコフ・サクソやオリカ・グリーンエッジ、キャノンデール、カチューシャが先頭に立ってポジション争いを繰り広げる。

登りで最初に動いたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)登りで最初に動いたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Tim de Waeleそして始まった残り2.5km地点からの登りバトル。キャノンデール率いる集団からジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)が先手を打ってアタックすると、勾配が増したところでダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)がカウンター。ブランビッラを抜き去ったナバーロが牽制気味の総合上位陣を一気に引き離した。

集団先頭で上りをこなすアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら集団先頭で上りをこなすアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら photo:Unipublicダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が攻撃を仕掛けるシーンも見られたが、マイヨロホのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が落ち着いて状況をコントロールする。20名弱の精鋭グループの中にはスプリンターとして唯一ブアニの姿もあった。

登りアタックを成功させたダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)登りアタックを成功させたダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) photo:Tim de Waele先頭でフラムルージュを駆け抜け、テクニカルコーナーをこなしたナバーロが独走。この日33歳の誕生日を迎えたダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)による追走は届かず、ナバーロが2秒差でフィニッシュした。

コンタドールの忠実な山岳アシストとしてリバティーセグロス、アスタナ、サクソバンクで共に走り、2013年からコフィディスでエースを担っているナバーロ。2013年ブエルタ・ア・ブルゴスでの落車大怪我から復活した31歳のクライマーが輝きを放った。

「ツール・ド・フランスでは冷たい雨とプレッシャーによって調子を落としてリタイア。家でツールを観戦するのは精神的にきつかったよ。このブエルタには総合ではなくステージ狙いで出場したんだ。今年のブエルタは史上最高と言えるほどレベルが高く、間違いなくキャリアの中で最高の勝利だ」と語るナバーロがグランツール初勝利を飾った。翌日から始まる地元アストゥリアス州の山岳ステージでは再び優勝を狙うという。

集団から抜け出したモレーノとケルデルマン、そして20秒遅れた総合8位ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)を除き、総合上位陣は5秒遅れの集団でフィニッシュ。総合争いの行方を決める3連続山頂フィニッシュを前に、コンタドールとバルベルデの総合タイム差は20秒のままだ。

選手コメントはレース公式リリースより。



独走でフィニッシュするダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)独走でフィニッシュするダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第13ステージ結果
1位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
6位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
4h21'04"
+02"

+05"







マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
8位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
48h59'23"
+20"
+1'08"
+1'20"
+1'35"
+1'52"
+2'13"
+2'37"
+2'55"
+3'51"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
112pts
90pts
78pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
20pts
18pts
18pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
8pts
14pts
22pts


チーム総合成績
1位 モビスター
2位 カチューシャ
3位 オメガファーマ・クイックステップ
146h41'39"
+2'54"
+4'40"


ステージ敢闘賞
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele