獲得標高が3,500mに達するハードなUSAプロチャレンジ2014第5ステージ。逃げ集団からさらに飛び出したローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)が共に逃げたガーミンコンビを振りきってステージ優勝。現ルクセンブルクTTチャンピオンが待望のプロ初勝利を掴んだ。



荒涼としたコロラドの山岳地帯を行くプロトン荒涼としたコロラドの山岳地帯を行くプロトン (c)CorVos


USAプロチャレンジ2014第5ステージUSAプロチャレンジ2014第5ステージ image:USA Pro Challenge実にコースの8割弱を登りが占める、ウッドランドパークからブリッケンリッジまでの168kmで争われたUSAプロチャレンジ第5ステージ。獲得標高が3,500mに達し、さらに冷雨が吹き付けるという過酷な山岳バトルの勝負を分けたのはゴール前4km地点に設定されたボリーズ峠だった。

リーダージャージを着るティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)リーダージャージを着るティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) (c)CorVos小雨が降るなかウッドランドパークを発ったプロトンは平均時速48kmで西へと進む。13km地点で8名が集団から飛び出すも、オプティム・ケリーベネフィットの追走によって37km地点で吸収され、レースは一旦振り出しに戻る。なおも高速で突き進む集団から、この日の展開を握る逃げ集団が飛び出したのは48km地点でのこと。

序盤から逃げに入りたいライダー達によるアタックの応酬が続く序盤から逃げに入りたいライダー達によるアタックの応酬が続く (c)CorVosロブ・ブリットン(カナダ、スマートストップ)、ルイスエンリケ・ダヴィラ(メキシコ、ジェリーベリー・マキシス)、ホセ・メンデス(ポルトガル、ネットアップ・エンドゥーラ)、リチャード・ハンドレイ(イギリス、ラファコンドールJLT)、ベンジャミン・キング(アメリカ、ガーミン・シャープ)、ハニエル・アセベド(コロンビア、ガーミン・シャープ)、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)ら11名は84km地点で4分半のタイム差を稼ぎだす。

この日メイン集団をコントロールし続けたBMCレーシングこの日メイン集団をコントロールし続けたBMCレーシング (c)CorVosこの後、段々と勢いを増す冷雨に先頭11名が体力を激しく消耗させ、プロトンとのタイム差が徐々に縮まり始める。そして、106km地点ではロビン・カーペンター(アメリカ、ヒンカピースポーツウェア)が脱落し、先頭は10名に。雨の勢いが落ち着いた後の126km地点のスプリントポイントはダヴィラが先頭で通過する。

先頭がアルマの町に到着したタイミングで、リーダージャージのティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)を擁するBMCレーシングが本格的に追走を開始し、タイム差は3分にまで縮まる。

一方の先頭10名からは、平均勾配が6%、最大勾配が8%に達するフーザー峠の頂上までの2km弱で数名が先行する。

気温9℃と冷え込む標高3,517mのフーザー峠の頂上はディディエがトップで通過し、アセベドとキングのガーミンコンビが追う展開に。一旦遅れながらも追いついたブリットンを含め、8kmを残して勝負は4名に絞られる。その45秒後方には先頭から遅れた5名、プロトンと続く。



セベドとキングのガーミンコンビを振りきったローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリー  レーシング)がプロ初優勝セベドとキングのガーミンコンビを振りきったローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリー レーシング)がプロ初優勝 (c)CorVos


総合勢はセルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ジェリーベリー・マキシス)先頭にゴール総合勢はセルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ジェリーベリー・マキシス)先頭にゴール (c)CorVosそして、フーザー峠を下り切り、すぐさま現れるボリーズ峠の登りに入ると再びディディエがアタックし、トップで頂上を通過するとそのまま独走。再びアセベドとキングは追走を余儀なくされ、協調しながらディディエの吸収を目論むも僅かに届かず。タイム差無しでディディエが逃げ切った。

ステージ表彰台ステージ表彰台 (c)CorVos2012年はロードで、今年はTTでナショナル選手権を制した経験をもつ30歳のディディエだが、これがプロ初優勝。「ブエルタに出場する予定だったから、アメリカに来るのが他の選手よりも遅く、第1ステージからここまで高地に身体が慣れることに集中した。一昨日は0km地点からアタックして、昨日は逃げに入り、そして今日は勝つことができた。今朝はあまり調子が良くなかったし、1日を通して寒かったけど、運良く逃げに入れて、最後の展開まで残ることができた。ボリーズ峠は自分が得意そうなコースプロファイルだったから、そこでペースアップしたことが今日の勝因になった。プロ初優勝は格別だ」とコメントした。

総合は、ボリーズ峠でのヴァンガーデレンのアタックにより変動。前週のツアー・オブ・ユタを制し、今大会もここまで3位につけていたトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)やヴァンガーデレンのチームメイトであるベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)が順位を落とした。



USAプロチャレンジ2014第5ステージ
1位 ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)
2位 ハニエル・アセベド(コロンビア、ガーミン・シャープ)
3位 ロブ・ブリットン(カナダ、スマートストップ)
4位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ガーミン・シャープ)
5位 ホセ・メンデス(ポルトガル、ネットアップ・エンドゥーラ)
6位 ダニエル・イートン(アメリカ、ビッセルデヴェロップメント)
7位 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ジェリーベリー・マキシス)
8位 リチャード・ハンドレイ(イギリス、ラファコンドールJLT)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
3h50'38"


+15"
+1'11"
+1'26"
+1'33"





個人総合成績
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
3位 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ジェリーベリー・マキシス)
4位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)
5位 マシュー・ブッシュ(アメリカ、トレックファクトリーレーシング)
6位 ジョゼフ・ロスコプフ(アメリカ、ヒンカピースポーツウェア)
7位 カーター・ジョーンズ(アメリカ、オプティム・ケリーベネフィット)
8位 バルトス・フザルスキー(ポーランド、ネットアップ・エンデューラ)
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
10位 ジュリアン・カイヤー(アメリカ、スマートストップ)
16h55'56"
+20"
+37"
+39"
+51"
+1'14"
+1'22"
+1'28"
+1'49"
+1'55"


ポイント賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)

山岳賞
ベン・ジャックメイネス(アメリカ、ジェーミス・ハーゲンスベルマンス)

ヤングライダー賞
クレメン・シェヴリエ(フランス、ビッセルデヴェロップメント)

チーム総合成績
ガーミン・シャープ


text:Yuya.Yamamoto
photo:CorVos