総合争いが加熱したアルプス最終日。リタイアしたエースに勝利を捧げたラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)や、早くも来シーズンに目を向けるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らのコメントを紹介。

ステージ優勝を飾ったラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

独走するラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)独走するラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleプロ初勝利なんだ。これまで2位や3位ばかりだった。何かツール・ド・フランスのステージのような大きな勝利が必要だった。(ジロに続いて)無理矢理ツールを走らされているなんて話もあるけどそれは間違い。ビャルヌ・リースGMとファブリツィオ・グイディ監督には「ツール1週目はとにかくイージーに走るように」と言われていた。

独走でフィニッシュするラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)独走でフィニッシュするラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleすべてはアルベルト(コンタドール)を2週目と3週目の山岳ステージでアシストするためだった。でもアルベルトは運悪くレースを去ってしまった。それ以降、チームはステージ優勝狙いにスイッチしたんだ。欠場したロマン・クロイツィゲルに代わって出場したという話も間違い。彼の出場不可に関わらず自分は出場する予定だった。

今朝のチームミーティングで、今日は逃げに乗ってステージ優勝を狙うと言ったんだ。最後の登り(1級山岳リゾル)の麓でタイム差は1分10秒ほど。アタックしてロドリゲスとキャノンデールの選手(デマルキ)を置き去りにした。何とか独走に持ち込んで、勝つために闘い続けた。長くて厳しいステージは僕向き。このリゾルでトレーニングキャンプを行なったことがあるので、勾配の変化に合わせて走る術を知っていた。

今日ティンコフ・サクソがまだまだ死んでいないことを見せつけることが出来たよ。ここまで4ステージ果敢に動き続けた成果が出た。アルベルトにこの勝利を捧げたい。大きな勝利であるのと同時に、開幕前には予想していなかった勝利だ。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

ペローを引き連れて1級山岳リゾルを登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ペローを引き連れて1級山岳リゾルを登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele「余力があるならアタックしろ」という指示をチームカーから受けたので仕掛けてみた。そのおかげでバルベルデを(ちょうど1分)引き離すことが出来た。ずっと付き位置を走っていたペローが最後スプリントしたのには驚いたけど、それもロードレースだ。マイカは勝利に値する走りを見せたと思う。彼は昨日逃げに乗って、今日美しき勝利を飾った。彼の勝利を嬉しく思うよ。でも故意に彼を逃げ切らせたわけじゃない。僕がアタックした時点で50秒のタイム差があったし、バルベルデを引き離すことだけに神経を尖らせていたから。

24秒遅れでフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)24秒遅れでフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleジロを総合6位で終えたマイカがこうしてツールでも活躍している姿を見て、ダブルツールも不可能ではないと思い始めている。これまでも2つのグランツールに出場したことがある(2008年ジロ11位&ツール20位、2010年ジロ3位&ブエルタ優勝、2011年ジロ2位&ブエルタ7位、2013年ジロ優勝&ブエルタ2位)けど、今は全くフィジカルが違う。来年の目標はジロとツールの連戦になるかも知れない。もちろんチームと綿密にスケジュールを練る必要があるけどね。

アルベルト・コンタドールとクリス・フルームのリタイアによって自分のマイヨジョーヌが低く評価されているということに納得がいかない。オレグ・ティンコフは「もしアルベルトが落車していなければ今ごろマイヨジョーヌを着ている」と言っているらしい。何ともティンコフらしい発言だ。でもパリ〜ルーベのステージ(第5ステージ)のような重要なステージですでにタイム差はついていた。ライバルたちに起こった落車やトラブルについては残念に思っている。落車はロードレースと切っても切れない関係で、昨日はチームメイトのフグルサングも落車してしまった。

確かなことは、トレーナーのパオロ・スロンゴと力を合わせて、真摯にトレーニングを積んできたという事実だけ。3週間トップコンディションで闘い抜くための準備をこなしてきた。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで自分より総合上位の選手たちは、みな失速して総合下位に沈んでいる。これまでもフルームとコンタドールと何度か闘ってきたけど、彼らに負けた回数よりも勝った回数のほうが多いんだ。

総合2位とのタイム差を13秒に詰めたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)

今日がチャンスだと判断してチームで動いた。ハードなレースに持ち込んだんだ。ジャンクリストフ・ペローが集団に残ってくれたおかげで、数の上で有利にレースを進めることが出来た。イゾアール峠の下りでピノに対してアタックしたわけじゃない。ピノだけじゃなくてバルベルデやヴァンガーデレンを相手に闘わないといけない。バルベルデが失速するとは思っていなかった。これまでのステージの中で今日が一番楽しかったよ。昨年は3週目に最も調子が良かったので、今年もそうであることを願う。

最後までニーバリに食らいついたジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)

ニーバリに食らいつくジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)ニーバリに食らいつくジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Makoto Ayano脚の感触が良かったのでピエール・ロランとともにアタック。でもそのアタックは封じ込められた。次にニーバリが動いたので飛びついたんだ。「行くのは今しかない。後のことは考えるな」と自分に言い聞かせた。すでに長距離を走っていたし、ニーバリのホイールに食らいつくことで精一杯だった。ニーバリと一緒にフィニッシュまで登り切ったことが自分にとって小さな勝利。彼がシャーク(鮫)というニックネームをもっていることを納得出来た。

ステージ7位に入ったフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)

レースから離れていた期間(出場停止中)ずっとトレーニングを積んだのでベース(基礎)が出来ている。そのおかげで山岳ステージで闘えている。アイマル(スベルディア)との良いコンビ。チームにも恵まれて、納得の結果を残すことが出来た。でも空白の6ヶ月を埋めることは出来ないし、振り返りたくもない。ツール・ド・スイスでの落車でエネルギーを奪われたものの、諦めずに集中してツールを闘っている。

総合2位を守ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

昨日は良い走りで総合ライバルたちを引き離せたけど、今日はハードな一日だった。これもツールの一部。完全に失速したわけじゃない。ピノとの小さな"いざこざ"の影響で、長い平坦区間で思うような援護を受けることが出来なかった。ニーバリが最強であることは間違いない。彼の力は飛び抜けているけど、他の選手たちの力は似通っている。総合表彰台争いにおけるライバルはピノとバルデ、そしてヴァンガーデレンだ。

0ポイント差でマイヨアポワを守ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

懸命にマイカを追うホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)懸命にマイカを追うホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール) photo:Tim de Waeleスタート直後からハイスピードな展開で、ラッキーなことに先頭グループに乗り込んだ。最初はニーバリも先頭グループに入っていたけど、後方集団のライバルたちにとって危険な選手ナンバー1なので、お引き取りいただいた。最初の2つの登り(ロタレ峠とイゾアール峠)では予定通りポイントを獲得。でも最後の登りでは失速してしまった。今はもう完全にマイヨアポワ狙いだ。自分のキャリアの中でマイヨアポワ狙いというのは珍しい。地元(カタルーニャ州)に近いピレネーで最高の走りを見せたい。

2日連続で敢闘賞を獲得したアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)

今日は逃げに乗る予定じゃなかったんだ。ペーター(サガン)にはとても感謝している。彼のおかげで先頭グループに残ることが出来た。まるで君主のような振る舞いを見せながらも、忠実な臣下のようにサポートしてくれた。でも最後はメイン集団とのタイム差が詰まっていて、脚の力も充分ではなかった。さすがに昨日の逃げの疲れが残っていたよ。今日は目標の半分しか達成出来なかった。一日中ずっと先頭でレースを展開することは決してイージーではない。ツールは残り1週間。引き続きステージ優勝を狙うよ。

text:Kei Tsuji