時計回りにフランスを巡る第101回ツール・ド・フランス。まずはアルプス山脈で総合争いが加熱し、続くピレネー山脈で更なる絞り込みが行なわれる。閉幕2日前に今大会唯一の個人タイムトライアルをこなし、今年もやはり花の都パリでツールはフィナーレを迎える。



7月16日(水)第11ステージ
ブザンソン〜オヨナ 187.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第11ステージツール・ド・フランス2014第11ステージ image:A.S.O.1回目の休息日を終え、ツールのプロトンはアルプス山脈へと向かう。スイス国境に佇むジュラ山脈を横目に南下し、残り60kmを切ってから山岳地帯へ。そこから4つのカテゴリー山岳を越えて、オヨナの街に至る。カテゴリー山岳の難易度が特別高いわけではないが、ピュアスプリンターにとっては厳しい闘いになると思われる。

最後の3級山岳がフィニッシュまで20km近く離れているため集団スプリントに持ち込まれる可能性が高いものの、曲がりくねったコースはエスケープグループにも味方する。ツール初登場のオヨナの街に引かれた下り基調のフィニッシュラインは、エリア・ヴィヴィアーニ(キャノンデール)が勝利した昨年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第2ステージと共通だ。



7月17日(木)第12ステージ
ブールガンブレス〜サンテティエンヌ 185.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第12ステージツール・ド・フランス2014第12ステージ image:A.S.O.マイヨヴェールを争うスプリンターたちにとって何としても獲っておきたい第12ステージの集団スプリント。ツールも後半戦に入った今、スプリンターに残されたチャンスはもう多くない。翌日からアルプス山岳2連戦が始まり、その後もピレネーの山岳ステージが連続する。この日を逃すと、残されたチャンスは実質的に第15ステージ、第19ステージ、そして最終日シャンゼリゼの第21ステージの3回だけだ。

ハイスピードリードアウトトレイン勝負が見物だが、第12ステージはシンプルな平坦コースとは言えない。185.5kmのコースに登場するカテゴリー山岳は4つ。前日に引き続きコースは曲がりくねっており、サンテティエンヌの最終ストレートは登り基調だ。



7月18日(金)第13ステージ
サンテティエンヌ〜シャムルース 197.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第13ステージツール・ド・フランス2014第13ステージ image:A.S.O.アルプス突入を告げるのが超級山岳シャムルースの山頂フィニッシュ。ヴォージュ山塊でたっぷりと3日間を過ごしたのに対し、本格的なアルプス山岳ステージはこの第13ステージと第14ステージの2日間に限定される。

リヨン南部に広がる丘陵地帯を進んだ後、まずはツール初登場の1級山岳パラキ峠(14.1km/6.1%)を高速で駆け上がる。高速と言っても下り区間を含んでいるため、登りの実質的な平均勾配は10%に近い。この急勾配の登りで人数を減らしたプロトンが、標高1730mの超級山岳シャムルース(18.2km/7.3%)に挑む。2001年にランス・アームストロングが山岳タイムトライアルで優勝した(後にタイトルは剥奪された)シャムルースで、マイヨジョーヌは早くも本命の手に渡るだろう。ここからマイヨジョーヌ争いは加熱して行く。



7月19日(土)第14ステージ
グルノーブル〜リゾル 177km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第14ステージツール・ド・フランス2014第14ステージ image:A.S.O.標高2058mの1級山岳ロタレ峠(34km/3.9%)と標高2360mの超級山岳イゾアール峠(19km/6%)を越え、標高1855mの1級山岳リゾル(12.6km/6.9%)にフィニッシュ。第14ステージには標高のあるアルプス山脈の醍醐味が詰まっている。しかもグルノーブルをスタート後すぐに登り勾配が始まるため、レースが高速化した場合はグルペットにとってもタフな一日になる。

今大会の最高地点であり、過去に33回ツールが通過している超級山岳イゾアール峠には「アンリ・デグランジュ賞」が設定されており、その下り区間に広がる月面のような風景「カス・デゼルト」にも注目。最後を締めくくるツール初登場の1級山岳リゾルは、麓から頂上まで7%の勾配が几帳面に続く。総合成績に衝撃を与えるほどのインパクトはないが、総合争いから脱落する選手は出てくるだろう。



7月20日(日)第15ステージ
タリアール〜ニーム 222km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第15ステージツール・ド・フランス2014第15ステージ image:A.S.O.アルプス決戦を終えたプロトンは足早にピレネーを目指す。222kmの長いルート上にカテゴリー山岳は存在しない。第15ステージは二つの山場を結ぶ、いわゆる"繋ぎステージ"。休息日を前に、第2週目がスプリントフィニッシュで締めくくられる。

コース後半はほぼ真っ平らだが、気象条件によっては難関山岳ステージ以上に厳しい一日になることも考えられる。平野を吹き抜ける強風や猛烈な熱波がプロトンを襲う可能性も。これまで何度も策士が試みたように、横風区間でプロトンを分断するような動きが見られるかもしれない。ニームの闘牛場前で台本どおりの集団スプリントとなるのか、それとも総合系チーム率いる小集団によるフィニッシュとなるのか。この日のキーワードは風だ。



7月21日(月)休息日



7月22日(火)第16ステージ
カルカソンヌ〜バニェール・ド・ルション 237.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第16ステージツール・ド・フランス2014第16ステージ image:A.S.O.最終週の幕開けは今大会最長の237.5kmコース。ピレネー山脈を駆け抜ける3日間の初日にあたる。6時間を超えるレース時間のうち、前半は休息日明けということも手伝って比較的平穏な空気が流れるはず。本命たちが動きを見せるのは155km地点の2級山岳ポルテ・ダスペ峠(5.4km/6.9%)からだ。

この日のクライマックスは超級山岳バレス峠(11.7km/7.7%)の登りと下り。頂上からバニェール・ド・ルションまでの21.5kmにわたる下り区間にはタイトコーナーが詰め込まれており、ダウンヒルを得意とするテクニシャンが飛び出す瞬間を待っている。パワー出力の差がタイムに反映されやすい山頂フィニッシュではなく、ライダーとしてのテクニックを問う予測不可能な下りフィニッシュだ。



7月23日(水)第17ステージ
サン・ゴーダンス〜サンラリ・プラダデ 124.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第17ステージツール・ド・フランス2014第17ステージ image:A.S.O.最長ステージの後は最短ステージ。ピレネーの峠を登っては下り、下っては登る。124.5kmという短いコースは、4つの難関山岳がギュッと詰め込まれた密度の高いもの。4時間以下という短いレースは目が離せないものになるだろう。

平坦路を50kmほど駆けて隣国スペインに入国後、1級ポルティヨン峠(8.3km/7.1%)を皮切りにノコギリの歯のようなアップダウンが始まる。フランスに戻った後、1級山岳ペイルスルド峠(13.2km/7%)と1級山岳ヴァル・ルーロンアゼ峠(7.4km/8.3%)を越え、最後は超級山岳プラダデ(10.2km/8.3%)にアタック。前半にかけて10%オーバーが続くこの登りで総合上位陣のタイム差は拡大するだろう。同時に、グルペットでフィニッシュを目指すスプリンターたちにとっても厳しい一日となるに違いない。



7月24日(木)第18ステージ
ポー〜オタカム 145.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第18ステージツール・ド・フランス2014第18ステージ image:A.S.O.ピレネー山岳決戦最終章。超級山岳トゥールマレー峠(17.1km/7.3%)と超級山岳オタカム峠(13.6km/7.8%)のコンビネーションで、第101回ツールの山岳バトルはフィナーレを迎える。ポーからオタカムに至るコースは2008年大会の第10ステージとほぼ同じだ。マイヨジョーヌを丸裸にするため、ツールで最も登場頻度の高いトゥールマレー峠でライバルチームは早めに攻撃を仕掛けてくるだろう。タイムトライアルを前にクライマーが総合リードを広げる(もしくは縮める)最後のチャンスだ。

また、同時に山岳賞争いもクライマックスを迎える。何と言っても最後のオタカムを先頭で登りきれば(ステージ優勝を飾れば)50ポイントが手元にやってくる。シャンゼリゼまで3日を残して、マイヨアポワの獲得者が実質的に決まる。



7月25日(金)第19ステージ
モブルゲ・ペイ・ドゥ・ヴァルダドゥール〜ベルジュラック 208.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第19ステージツール・ド・フランス2014第19ステージ image:A.S.O.ピレネー山脈に別れを告げて、プロトンはパリへの北上を開始する。その道中に大きな山や丘は存在しない。208.5kmの道のりはほとんど真っ平らであり、目立つ起伏と言えば残り13km地点で登場する4級山岳モンバジャック(1.3km/7.6%)だけだ。

山岳ステージをグルペットで乗り越えてきたスプリンターたちにとって、決して落とすわけにはいかない貴重なチャンス。しかしモチベーションが高いのはまだステージ優勝を掴んでいない逃げのスペシャリストたちも同様だ。山岳3連戦で疲労したスプリンターを振り切って、チームカーから叱咤を受けたファイターが勝機を掴む可能性も。どのスプリンターチームがどのタイミングでレースの主導権を握るかに注目したい。



7月26日(土)第20ステージ
ベルジュラック〜ペリグー 54km(個人TT) →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第20ステージツール・ド・フランス2014第20ステージ image:A.S.O.2014年、ツール主催者ASOが設定したタイムトライアルはたった一つだけ。これは1950年代から数えて初めての試みだ。標高100m〜200mの丘を登っては下る起伏に富んだコースは、TTスペシャリストというより登坂力に秀でたオールラウンダー向きと言われる。つまり、ここまで3週間にわたって力を見せたマイヨジョーヌがステージ優勝をもぎとる可能性は高い。

レース主催者の予想優勝タイムは1時間07分前後。コンディションによっては数分のタイム差が簡単についてしまうため、仮に総合タイム差が小さい状態でピレネーを終えた場合、この個人TTで総合逆転も充分に起こり得る。総合表彰台や総合トップ10を懸けた闘いにも注目だ。なお、個人TTを終えた選手たちは翌朝のフライトでパリまで移動。関係車両はパリまで約500km移動が待っている。



7月27日(日)第21ステージ
エヴリー〜パリ・シャンゼリゼ 137.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2014第21ステージツール・ド・フランス2014第21ステージ image:A.S.O.イギリスとフランスとベルギーとスペインを巡る3週間のお祭りが花の都パリに凱旋する。郊外のエヴリーを発ったプロトンがパリ中心部に向かってゆったりとパレード走行。達成感や安堵感、そして笑顔に包まれたプロトンの後ろで、マイヨジョーヌがシャンパンで乾杯するお決まりのシーンが見られるだろう。そしてパリが近づくとマイヨジョーヌチームが集団先頭で凱旋の準備を整える。

最後はシャンゼリゼの周回コースを8周。凱旋門の環状道路をグルリと回るレイアウトは継承される。暗闇のフィナーレとなった昨年よりもフィニッシュ時間は早められたが、相変わらず19時〜19時半(日本時間2時〜2時半)と遅めの設定だ。シャンゼリゼのビッグタイトル目がけて、スプリンターたちがラストバトルを繰り広げる。




text:Kei Tsuji