5月24、25日に開催された数少ないアマチュアステージレース「2days race in 木祖村」。国内ホビーレース界のツール・ド・フランスといっても過言では無いこの大会、今年はシエルヴォ奈良の水野恭兵が総合優勝を達成した。



木祖村、味噌川ダム周回コースで開催された「2days race in 木祖村」木祖村、味噌川ダム周回コースで開催された「2days race in 木祖村」 長野県は木祖村、味噌川ダム周回コースで開催された「2days race in 木祖村」は、初日に距離8,5kmの個人タイムトライアルと81kmのロードレース、そして2日目に126kmのロードレースという全3ステージ構成で行われる、数少ないアマチュアステージレースだ。

素早い表彰式、ドクターカーやマヴィックのニュートラルサポートもある完璧なサポート体制、どんなレースよりも詳しい会場でのレース実況&Twitterでのレース報告など、ホビーレースとしては非常にハイレベルな運営に特徴がある。

ツール・ド・フランスを始めとするグランツールでは、リーダージャージを着た選手には、チームスポンサーが用意した同じ色のヘルメットやグローブ、自転車に揃えるのが近年の風潮となっている。今回の木祖村ではこれに習い、マヴィックから各賞ジャージの選手に渡されるヘルメットが提供され話題を呼んだ。



ステージ1a(8,5km個人タイムトライアル)+1b(81km)

強風のため今年の方が不利だったが、昨年と同じタイムを叩き出しTT2連覇したポール・ソールズベリー(イナーメ)強風のため今年の方が不利だったが、昨年と同じタイムを叩き出しTT2連覇したポール・ソールズベリー(イナーメ) 木祖村では恒例のチームカー付き個人タイムトライアル。快晴だが、時間が経つにつれ強風が選手たちを苦しめた。

ステージ1b、スタート前に並ぶ各賞ジャージの選手たちステージ1b、スタート前に並ぶ各賞ジャージの選手たち そんな中、強さを見せつけたのはポール・ソールズベリー(イナーメ)。昨年に続く2連覇だが、今年は強風にも関わらず去年と同じ11分11秒を叩き出した。

独走でゴールした水野恭兵(シエルヴォ奈良)独走でゴールした水野恭兵(シエルヴォ奈良) 「どんどん風が強くなってきて、コーナーでは横風になりTTバイクでは非常に走りにくかった。危ないところは攻めず、平坦は頑張って走りました。去年とタイムは同じですが、昨年の方が明らかに走りやすかった。今年の方がデータ的に良かったけれど風が強く良いタイムが出なかった」。と優勝したソールズベリーは語った。

午後3時から行われたステージ1bは、9kmを9周する81kmで、途中にはスプリントポイントが4回、ボーナスタイムの懸けられた周回賞が2回。レースが大きく動いたのは3周目、総合2位の中村龍太郎(イナーメ)含む7人の選手が飛び出した。

ステージ1b表彰式 3人とも同年代の良きライバルだというステージ1b表彰式 3人とも同年代の良きライバルだという 先頭にシエルヴォ奈良とGruppo Acqua Tamaは2人ずつ送り込んでいたため、積極的に動き集団との差を引き離す。途中のスプリントポイントはすべて金子大介(スワコレーシング)がトップ通過しポイントを重ね、スプリント賞を確実に。2人がちぎれ5人になった先頭は最終周回に入る直前に水野恭兵(シエルヴォ奈良)がアタックを仕掛け、そのまま単独でゴール。仲間たちが見守る中、後続に1分9秒差をつける余裕ぶりでゴールした。昨年は初日に落車でリタイアし、翌日のコンソレーションレース(通称残念レース)で優勝した水野、今年はメインレースで雪辱を果たした。

「去年リタイアですから、今日は狙ってました。調子も良く勝負できる集団を作ろうと思っていました。逃げが吸収された2周目から自分で行きました。上手く抜け出せ、後ろとの差がどんどん広がって、そこから勝負でした。スプリントをしても良かったけれど、ペースで踏んでいたら離れたので、ラスト周に入る手前残り200mくらいでアタック。前だけ見て踏みました。

逃げているメンバーも知り合いばっかりだったので、すごく回りやすくリラックスして走れました。それが良かったのかもしれないです。去年本当に悔しかったので嬉しかったですね。チームメイトにも助けてもらって、明日は全員で総合を取りたいと思います」と、ステージ優勝とリーダージャージを喜んだ。

1日目を終えて、スプリント賞は金子大介(スワコレーシング)、O-40賞はポール・ソールズベリー(イナーメ)、U23は紺野元汰(湘南ベルマーレ)が獲得した。



ステージ2(126km)

スタート前、リーダージャージ&リーダーヘルメットを被った各賞選手たちスタート前、リーダージャージ&リーダーヘルメットを被った各賞選手たち 2日目は、水野恭兵を擁するシエルヴォ奈良と、40秒差で総合2位につける中村龍太郎を擁するイナーメの戦いに注目が集まった。

序盤からオーバー40首位のソールズベリーが前方に位置し、逃げようと試みるもシエルヴォ奈良のマークが厳しい。集団はシエルヴォ奈良勢がコントロールし、逃げても潰される状況だった。

スプリントポイントを果敢に取りに行くスプリントジャージの金子大介(スワコレーシング)スプリントポイントを果敢に取りに行くスプリントジャージの金子大介(スワコレーシング) スプリント賞の金子(スワコレーシング)は、最初と3回目のポイントを獲得し、完走さえすればスプリント賞を決定付ける。ポイント周回の度に集団のスピードは上がり、やがて水野や中村、ブリッツェンの城田大和ら強力な8人による先頭グループが形成された。

逃げを試みる総合2位の中村龍太郎(イナーメ)、城田大和(TEAM BLITZEN)、中井路雅(京都産業大学)逃げを試みる総合2位の中村龍太郎(イナーメ)、城田大和(TEAM BLITZEN)、中井路雅(京都産業大学) 逃げる先頭では総合2位の中村が抜け出すもやがて捕まり、先頭は6人に。11周目ゴール前の登りで鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA)が抜け出し、これに同調した中井路雅(京都産業大学)と水野による3名の逃げが形成された。

ステージ2を制した鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA)。わずかに届かず2位に中井路雅(京都産業大学)ステージ2を制した鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA)。わずかに届かず2位に中井路雅(京都産業大学) リーダージャージを死守したい水野、U23を狙う中井、ステージを狙う鈴木の3人は協調体制を取り、タイム差はみるみる拡大。そのままゴールに向かうと総合優勝を確実にした水野は勝負することなく、最後は鈴木が中井を下してステージ優勝を飾った。

ステージ優勝した鈴木は、「序盤から積極的に動いて逃げを作ろうと思っていたら、8人のいい逃げができました。そこから絞り込みがあるという狙い通りの展開でした。このレースは3回目で得意ではありませんが、今日で印象が変わりました。自分の狙い通りにいけて良かった。昨日は全然ダメだったのでよりいっそう嬉しかったです」と昨日の不調を吹き飛ばしての勝利。

総合優勝した水野は「逃げを決めて抜け出して、総合ワンツースリーを決めようと協調体制が取れました。6人で逃げていた時も勝負の時に脚使えるよう備えてました。ローカルだけど暖かい雰囲気で走れる素晴らしいレースです」と言う。

また、総合2位の中村龍太郎とは同じ山梨県出身。「龍太郎(中村)はお互いいいライバルです。龍太郎が動けば僕が動く、僕が動けば龍太郎が動くという関係ですね。今日はチームの力が大きく、集団のコントロールや逃げのヘルプもしてくれました。感謝しかありません」とチームで掴んだ総合優勝を喜んだ。

逃げてU23賞を獲得、総合も2位となった中井は「今日はステージ取る気でいましたが、現時点ではいい走りができたかなと思います。」と言う。



総合1位の水野恭兵(シエルヴォ奈良)、2位の中井路雅(京都産業大学)、3位の鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA)総合1位の水野恭兵(シエルヴォ奈良)、2位の中井路雅(京都産業大学)、3位の鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA)
スプリント賞1位で鹿の毛皮をもらった金子大介(スワコレーシング)と2位の水野恭兵(シエルヴォ奈良)スプリント賞1位で鹿の毛皮をもらった金子大介(スワコレーシング)と2位の水野恭兵(シエルヴォ奈良) 各賞リーダーの4人。大きな水野とソールズベリーに抱きかかえられる中井と金子各賞リーダーの4人。大きな水野とソールズベリーに抱きかかえられる中井と金子



小さな日本一レースを開催するレースディレクターの藤森信行氏小さな日本一レースを開催するレースディレクターの藤森信行氏 また、この日集団はまったりペースで進んでいたのかと思ったが、そうではなかった。後半にはジロ・デ・イタリア並みのマリアローザ争いが行われていたようだ。「3人でのマリアローザ争いだったんですが、最後のは必死でした。チームメイトの山下君と他の動きをカバーしながらジャージを守りきりました。マリアローザ、結構重要ですね。達成感があって嬉しいです」と言う今年40歳になったばかりのソールズベリーがマリアローザに袖を通した。

こうして、昨年の残念レースの覇者が今年総合優勝に輝き、木祖村での2日レースは幕を閉じた。

最後にレースディレクターの藤森氏は言う。「小さな小さなレースですが、いくつかの日本初がありました。初めてリーダーヘルメットを導入しました。落車1件、パンクも1件は初めて木祖村史上最小です。猿の出現は8件(笑)去年は熊でしたけど。」と振り返った。



2days race in 木祖村2014
ステージ1a結果
1位 ポール・ソールズベリー(イナーメ)
2位 中村龍太郎(イナーメ)
3位 ステファノ・ジョルダノ(Fast Lane Racing)
4位 丸山厚(スワコレーシング)
5位 中井路雅(京都産業大学) 
11分11秒
+11秒
+33秒
+40秒


ステージ1b結果 81km(9km×9周)
1位 水野恭兵(シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDAサイクリングチーム)
2位 金子大介(スワコレーシング)
3位 中村龍太郎(イナーメ)
4位 紺野元汰 (湘南ベルマーレサイクルロードチーム)
5位 若松達人(Gruppo Acqua Tama) 
2時間00分36秒
+1分09秒
+1分13秒
+1分21秒
+1分45秒


ステージ2結果 126km(9km×14周)
1位 鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA) 
2位 中井路雅(京都産業大学) 
3位 水野恭兵(シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDAサイクリングチーム)
4位 中村龍太郎(イナーメ) 
5位 城田大和(TEAM BLITZEN)
3時間08分32秒

+19秒
+3分22秒
+3分26秒


総合結果
1位 水野恭兵(シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDAサイクリングチーム)
2位 中井路雅(京都産業大学) 
3位 鈴木龍(筑波大学&SEKIYA feat MASAKA) 
4位 中村龍太郎(イナーメ) 
5位 若松達人(Gruppo Acqua Tama)
5時間21分10秒
+1分44秒
+2分30秒
+3分47秒
+5分15秒


個人総合時間賞:水野恭兵(シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDAサイクリングチーム)
個人総合スプリント賞:金子大介(スワコレーシング)
U-23賞:中井路雅(京都産業大学)
O-40賞:ポール・ソールズベリー(イナーメ)

ジュニア&コンソレーション 72km(9km×8Laps )
1位 吉原健太郎(アクアメニティDESTRAロードマンオイル)
2位 鈴木亮(桜台レーシングチーム) 
3位 大田尚之(中野立志館高校)
4位 山下玲(桜台レーシングチーム) 
5位 浅野直輝(飯田風越高校)
1時間55分18秒
+11秒
+12秒
+16秒
+54秒


text&photo:Chiho.Iwasa

フォトギャラリー(CW FaceBook)

最新ニュース(全ジャンル)