アルプス山岳初日のジロ・デ・イタリア第14ステージで、再び新城幸也(ユーロップカー)が落車に巻き込まれた。1級山岳オローパで勝ったのは逃げグループから飛び出したエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)。総合争いはマリアローザに対する攻撃が加熱し、より接戦となった。



マリアローザのリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)が登場マリアローザのリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)が登場 photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2014第14ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第14ステージ高低図 image:RCS Sportクライマックスに向けて第14ステージから怒濤の山岳ステージが続く。第14ステージはレース中盤から1級山岳アルペ・ノヴェイス(平均勾配11.4%/登坂距離4.5km)と2級山岳ビエルモンテ(平均勾配6.2%/14.0km)を立て続けにクリアする。

逃げグループを率いるニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)逃げグループを率いるニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji疲労した脚で挑むのが、ユネスコ世界遺産に指定されている聖地オローパの登りだ。大聖堂の前に引かれたフィニッシュラインに向かって、平均勾配6.2%/登坂距離11.8kmの登りが続く。実質的にジロ後半山岳決戦の幕開けを告げるステージで、21名もの大きなグループが序盤から逃げた。

第14ステージを走る新城幸也(ユーロップカー)第14ステージを走る新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsujiすでに総合でタイムを失っているニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)やダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、オリカ・グリーンエッジ)を含む強力なグループがハイペースで逃げ続ける展開に。

レース中盤に差し掛かる頃にメイン集団では落車が発生し、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)やピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ネーリソットリ)が落車。ここに新城幸也(ユーロップカー)も巻き込まれた。

「ロータリーで目の前の選手が落車して、避けきれずに突っ込んでしまいました。前転して腰から着地。痛めていたお尻を打ってしまったので、落車直後は立ち上がれなかった」と新城は振り返る。落車したシウトソウとウェーニングはともにリタイア。スペアバイクに乗り換えた新城は集団に復帰し、その後に形成されたグルペットでフィニッシュに向かった。

この落車の影響でメイン集団がペースを落としたため、逃げグループのリードは11分まで広がりを見せる。オメガファーマ・クイックステップの集団牽引によって、1級山岳アルペ・ノヴェイスに差し掛かる頃にはタイム差が8分に詰まった。



下り区間をこなすリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)や別府史之(トレックファクトリーレーシング)下り区間をこなすリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)や別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
1級山岳アルペ・ノヴェイスで集団先頭を走る別府史之(トレックファクトリーレーシング)1級山岳アルペ・ノヴェイスで集団先頭を走る別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsujiメイン集団から飛び出したライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)やピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)メイン集団から飛び出したライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)やピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji



メイン集団を牽引するオメガファーマ・クイックステップメイン集団を牽引するオメガファーマ・クイックステップ photo:Kei Tsuji別府史之(トレックファクトリーレーシング)らが集団前方で仕事をしながら急勾配の1級山岳アルペ・ノヴェイスを進み、大きな動きが生まれないまま頂上をクリアする。すると次なる2級山岳ビエルモンテでレースは動いた。

最終コーナーを抜けるダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)最終コーナーを抜けるダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji先頭ではロッシュが独走を開始し、メイン集団からはピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)とライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)がそれぞれアシストを従えてアタック。ここにリカルド・ゾイドル(オーストリア、トレックファクトリーレーシング)とゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)も加わった。

マリアローザを引き離したドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)らマリアローザを引き離したドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)ら photo:Kei Tsuji逃げ切りをほぼ確実なものにした逃げグループは活性化。先頭のロッシュが一旦逃げグループに吸収されると、今後はアルバート・ティマー(オランダ、ジャイアント・シマノ)とマヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)がアタック。クインツィアートがメカトラで脱落すると、ティマーが独走のまま最後の1級山岳オローパに差し掛かった。

先行したダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)にエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)が迫る先行したダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)にエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)が迫る photo:Kei Tsujiパンターニを偲ぶペイントが描かれた登りを独走で駆け上がるティマー。しかし後方からは逃げメンバーが追い上げ、ダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)とヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、コロンビア)が合流する。ここにヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)も追いついた。

カタルドを抜いてフィニッシュしたエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)カタルドを抜いてフィニッシュしたエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsuji残り1kmを切ったところでポランクがペースを上げ、そこからカタルドがリードする形で最終コーナーへ。カタルドとパンタノによる一騎打ちと見られたが、石畳の登りを猛烈な勢いで駆け抜けたバッタリーンがフィニッシュライン寸前でカタルドとパンタノに並ぶ。バッタリーンがカタルドを差しきった。

ライバルたちから遅れてフィニッシュするリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)ライバルたちから遅れてフィニッシュするリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji「勾配の厳しい区間で苦しみ、ライバルたちから遅れを取った。でも残り500mから全開で追い上げ、カタルドとパンタノに残り30mで何とか追いついた。とにかく100%の力を振り絞ったので、呼吸が整うまでに時間がかかったよ」と、バルディアーニCSFと開催国イタリアにステージ2連勝をもたらしたバッタリーン。ヴェネト生まれの24歳は昨年のジロ第4ステージでも優勝を飾っており、注目が集まる難関ステージで2年連続となる優勝を飾ってみせた。

約4分遅れで1級山岳オローパに差し掛かったメイン集団は、AG2Rラモンディアールのペースアップによって縮小。そこからドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)が飛び出すとすぐさまナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が反応した。

チームメイトに守られたマリアローザのウランを引き離しながら、ポッツォヴィーヴォとキンタナが先行する。先に飛び出していたヘシェダルとロランから遅れること約20秒で、ポッツォヴィーヴォとキンタナがフィニッシュした。

精彩を欠いたウランは3分04秒遅れのステージ22位でフィニッシュ。最終的にヘシェダルがウランから42秒、ロランが38秒、キンタナが25秒、ポッツォヴィーヴォが21秒、そしてカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)が5秒を奪う結果となった。ウランはマリアローザを守ったものの、そのリードは確実に縮小した。

1級山岳アルペ・ノヴェイスで仕事をこなした別府は21分58秒遅れの集団でフィニッシュ。「下りがトリッキーなので、チームリーダーのロバート(キセロフスキー)とリカルド(ゾイドル)とアレドンドを前で山岳を通過させるため、集団先頭で走った。リカルドがアタックしたのを見届けて集団から離れた」と言う。

落車の影響が心配される新城は「途中でやめようかと思った」と言いながらも、32分04秒遅れのグルペット最終便でオローパにたどり着いた。「治まっていた痛みが戻ってしまった。というよりも前よりも酷くなっている」と顔を歪ませながら、下山のためにチームカーに向かった。



ステージ優勝を飾ったエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)ステージ優勝を飾ったエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsuji
21分58秒遅れでフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング)21分58秒遅れでフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji32分04秒遅れのグルペットでフィニッシュする新城幸也(ユーロップカー)32分04秒遅れのグルペットでフィニッシュする新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2014第14ステージ結果
1位 エンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニCSF)
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)
3位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、コロンビア)
4位 ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)
6位 アルバート・ティマー(オランダ、ジャイアント・シマノ)
7位 エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
8位 マティア・カッターネオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)
10位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、オリカ・グリーンエッジ)

13位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
14位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
15位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
16位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
17位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
18位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
19位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
20位 ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
21位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
22位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)

116位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)
165位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
4h34'41"

+07"
+17"
+22"
+26"
+28"
+33"
+39"
+54"

+2'22"
+2'26"
+2'39"
+2'43"

+2'47"

+2'59"

+3'04"

+21'58"
+32'04"


マリアローザ 個人総合成績
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
5位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
8位 ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
57h52'51"
+32"
+1'35"
+2'11"
+2'33"
+3'04"
+3'16"
+4'01"
+5'07"
+5'13"


マリアロッサ ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)

マリアアッズーラ 山岳賞
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ

text&photo:Kei Tsuji in Oropa, Italy

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