イタリア半島を北上後、ジロ・デ・イタリアはアルプスやドロミティの山岳へと入っていく。そこで姿を現すのが、オローパやモンテカンピオーネ、ガヴィア、ステルヴィオ、パナロッタ、チーマ・グラッパといった名立たる難関山岳の数々。ここではマリアローザ争いが本格化する後半ステージのコースを紹介。



5月20日(火)第10ステージ ☆
モデナ〜サルソマッジョーレ・テルメ 173km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第10ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第10ステージ高低図 image:RCS Sportフェラーリのお膝元モデナを発ち、広大なロンバルディア平原を堪能する一日。スタートからひたすら起伏のない平坦路が続く。レース主催者によるステージの格付けはもちろん一つ星だ。

しかしすんなりと平坦な道を選んでサルソマッジョーレ・テルメにフィニッシュしないのがジロらしい。残り10kmを切ってから、ぽっこりとした標高差100mに満たない小さな丘を越える。大集団ゴールスプリントに持ち込まれる可能性が高いが、この小さな丘で攻撃を仕掛けるアタッカーも出てくるだろう。単純な平坦ステージと侮るなかれ、総合狙いの選手たちは高速化するレース終盤にかけて警戒しなければならない。



5月21日(水)第11ステージ ☆☆☆
コッレッキオ〜サヴォーナ 249km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第11ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第11ステージ高低図 image:RCS Sportパルマ近郊のコレッキオをスタート後、2級山岳チェントクローチ峠をこえてリグーリア海岸へ。ジェノヴァ経由で海岸線を西進し、サヴォーナの街を通過後に2級山岳ナーゾ・ディ・ガットに向かう。249kmのロングステージの最大のトピックは、この残り28km地点に位置する2級山岳ナーゾ・ディ・ガット(直訳すると猫の鼻)だ。

平均勾配8.0%/登坂距離7.2kmの登りがビッグスプリンターたちを振るい落とすだろう。しかし翌日に重要な個人TTが控えているため、総合上位陣が動きを見せる可能性は低い。小集団によるゴールスプリントに持ち込まれることも考えられるが、極めて逃げ切りが決まりやすいコースレイアウトだと言える。この好機をつかむため、レース序盤のアタック合戦は熾烈を極めるはずだ。



5月22日(木)第12ステージ ☆☆☆☆
バルバレスコ〜バローロ 41.9km(個人TT) →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第12ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第12ステージ高低図 image:RCS Sportイタリア有数のワイン産出量を誇るバローロ一帯で行なわれる41.9kmの「時間との闘い」。辺り一面ブドウ畑が広がる丘陵地帯をTTバイクを駆った選手たちが駆け抜ける。

スタート後すぐにコースは登り基調となり、12.6km地点で標高650mの4級山岳をクリア。ハイスピードダウンヒルと平坦路を経て、残り4.5kmでもう一つ丘を越える。勾配10%オーバーの危険な下りと、5%ほどの緩斜面の先にフィニッシュラインが引かれている。主催者が想定している最速タイムは55分前後。バローロ中心部のコルベルト広場でマリアローザを受け取るのは果たして誰か。



5月23日(金)第13ステージ ☆☆
フォッサーノ〜リヴァローロ・カナヴェーゼ 157km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第13ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第13ステージ高低図 image:RCS Sportスプリンターに残されたチャンスはもう多くはない。ピエモンテ州のトリノ近郊に広がる平野を北上する第13ステージはスプリンター向き。残り34km地点に登場する4級山岳サリータ・ディ・リヴァーラはスプリンターの勢いを止めることは出来ない。3連続山岳ステージを前に、スプリンターたちの鼻息は荒い。

残り22.3km地点で一度フィニッシュラインを通過し、直線基調で平坦な周回をグルッと一周。ジロ初登場のリヴァローロ・カナヴェーゼの街でスプリントが繰り広げられる。残り300mに位置するロータリーの通過順がスプリントに大きく影響しそうだ。



5月24日(土)第14ステージ ☆☆☆☆
アリエ〜オローパ 164km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第14ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第14ステージ高低図 image:RCS Sportこの日からクライマックスに向けて怒濤の山岳ステージが続く。第14ステージはレース中盤から1級山岳アルペ・ノヴェイス(平均勾配11.4%/登坂距離4.5km)と2級山岳ビエルモンテ(平均勾配6.2%/14.0km)を立て続けにクリア。疲労した脚で挑むのが、ユネスコ世界遺産に指定されている聖地オローパの登りだ。

1級山岳オローパと言えば、1999年に故マルコ・パンターニがチェーンを落としながらも49人抜き&ステージ優勝を果たした場所。大聖堂の前に引かれたフィニッシュラインに向かって、平均勾配6.2%/登坂距離11.8kmの登りが続く。最大勾配13%のこの聖なる登りで、個人TTでタイムを失ったクライマーたちが再びリードを奪うだろう。



5月25日(日)第15ステージ ☆☆☆☆
ヴァルデンゴ〜モンテカンピオーネ 225km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第15ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第15ステージ高低図 image:RCS Sportロンバルディア州の平野を抜け、大都市ミラノの北部を東へ。225kmコースの大半はフラットだが、残り20kmを切ると同時にコースは山岳へと進路を取る。標高204mから標高1665mの頂上まで一気に駆け上がる1級山岳モンテカンピオーネこそがこの日唯一の登りだ。

モンテカンピオーネは故マルコ・パンターニが1998年のジロ総合優勝を決定づけた山。平均勾配は7.6%で、中盤を除けばコンスタントに9%近い勾配を刻む。そろそろ2週間走った脚が悲鳴を上げ始める頃。登坂距離が19.35kmと長いため、この登り一つで分差が付くことも考えられる。翌日は大会最後の休息日だ。



5月26日(月)休息日



5月27日(火)第16ステージ ☆☆☆☆☆
ポンテ・ディ・レーニョ〜ヴァルマルテッロ 139km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第16ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第16ステージ高低図 image:RCS Sportレース主催者RCSスポルトは挑戦的だ。昨年積雪によってキャンセルされた第19ステージのコースをそのまま第16ステージに持ってきた。最短クラスの139kmコースには3つの難関山岳が詰め込まれており、標高2618mの1級山岳ガヴィア峠(平均勾配8%/登坂距離16.5km)と、今大会のチーマコッピ(最標高地点)である標高2758mのステルヴィオ峠(平均勾配6.9%/登坂距離21.7km)を連続してクリア。さらにその先に標高2059mの山頂フィニッシュが待つスペシャルなレイアウトだ。

フィニッシュラインが引かれた1級山岳ヴァルマルテッロは登坂距離が22.4kmに及ぶ。7%ほどの勾配を刻みながら高度を上げ、ラスト1kmからは14%ほどの急勾配が続く。文句無しの5つ星ステージはサバイバルレースになる。



5月28日(水)第17ステージ ☆☆
サルノーニコ〜ヴィットーリオ・ヴェネト 208km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第17ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第17ステージ高低図 image:RCS Sport過酷な山岳ステージを終えた選手たちに束の間の安らぎを。ヴェネト州のヴィットリオヴェネトに至る第17ステージは平坦基調。グルペットで山岳をこなしてきたスプリンターたちにチャンスが回ってくる。

しかし、3つの4級山岳を含めた細かいアップダウンが続くため、完全なるスプリント向きステージとは言えない。特に残り20km地点の4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオは最大勾配18%の急坂。現地特産のワインを片手に応援するファンに後押しされ、逃げグループがスプリンターチームを振り切ることも充分に考えられるシナリオだ。



5月29日(木)第18ステージ ☆☆☆☆
ベッルーノ〜リフージオ・パナロッタ 171km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第18ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第18ステージ高低図 image:RCS Sport美しきドロミティ山塊を走る第19ステージ。ベッルーノから渓谷沿いに1級山岳サンペッレグリーノ峠を駆け上がり、切り立った山々に見下ろされながら次なる2級山岳レデブス峠へ。最後を締めくくるのは1級山岳リフージオ・パナロッタだ。

保養地レヴィコテルメの街中を抜け、16.85kmかけて標高1760mの頂上まで登る。実質的な平均勾配は8.4%。翌日もその翌日も重要なステージが続くため、総合上位陣は可能な限り体力を温存しながら互いをマークするだろう。消極的なレースになりがちだが、逆にそんなステージでこそ起死回生の一撃が生まれやすい。マリアローザの行方はこの日を含めた3日間で決まる。



5月30日(金)第19ステージ ☆☆☆☆☆
バッサーノ・デル・グラッパ〜チーマ・グラッパ 26.8km(個人TT) →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第19ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第19ステージ高低図 image:RCS Sportジロ名物とも言える山岳個人タイムトライアル。簡易DHバーを装着した軽量なノーマルバイクを駆り、1級山岳チーマ・グラッパを駆け上がる。前半の平坦区間を除いた純粋な登りは19.3kmで、その標高差は1538m。平均勾配は8.0%で、残り7kmを切ってからしばらくは11%の急勾配が続く。フィニッシュラインは第一次世界大戦と第二次世界大戦の犠牲者を偲ぶ軍慰霊地の横に引かれている。

優勝予想タイムは1時間前後で、コンディションによっては簡単に数分差がつく。すでに総合トップ10の中でも大きなタイム差が生まれているはずだ。最終ステージでの活躍を目指すスプリンターたちもタイムオーバーを気にしながら走らなければならない。



5月31日(土)第20ステージ ☆☆☆☆☆
マニアーゴ〜モンテ・ゾンコラン 167km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第20ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第20ステージ高低図 image:RCS Sportヨーロッパ有数の難易度を誇るモンテ・ゾンコランが3年ぶりに登場。2003年、2007年、2010年、2011年のジロに登場し、総合成績にインパクトを与えた悪名高き難関峠がマリアローザの最終的な持ち主を決める。

1級山岳プーラ峠と2級山岳セッラ・ラッツォを越えたのち、標高530mまで下りてから急激にコースは上昇を開始する。1級山岳モンテ・ゾンコランの登坂距離は10.1kmで標高差は1200m。中腹にかけて20%の区間が何度も登場する(中盤の平均勾配は14.9%)。残り2kmで勾配は一旦落ち着くが、再び16%まで跳ね上がってフィニッシュ。大歓声と怒号が飛ぶゾンコランの頂上で、究極のエンデュランスレーサーがマリアローザに袖を通す。



6月1日(日)第21ステージ ☆
ジェモーナ・デル・フリウリ〜トリエステ 172km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2014第21ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第21ステージ高低図 image:RCS Sport北アイルランドでの開幕から24日(例年より1日長い)。闘いを終えた選手たちが、マリアローザを先頭に終着地トリエステに凱旋する。ジェモーナ・デル・フリウリからゆったりと東に向かい、最後はトリエステの7.25km周回コースを8周。高低差50mほどの起伏ある周回コースだが、通例として、総合成績をひっくり返すような動きは生まれない。

そもそもどれだけのスプリンターがプロトンの中に残っているのか疑問だが、最後を締めくくるのは大集団のゴールスプリント。トリエステの海岸通りでジロはフィナーレを迎える。




text:Kei Tsuji in Belfast, Northern Ireland