ジュニア選手の世界選手権など出場に直接関わる大会がUCIジュニアネイションズカップ。その第2戦が4月24日からクロアチア西部のイストリア半島で行われた。レースに帯同した代表選手団監督の柿木孝之氏によるレポート。



3つのステージで争われるUCIジュニアネイションズカップ第2戦、ツアー・オブ・イストリアに今年も日本ジュニアナショナルチームが参加した。今年で54回を迎えるこの大会にオーストラリア、アメリカ、スペイン、スウェーデン以外の世界の強豪国24か国が参加し、世界選手権の参加枠に関わるネイションズポイントの獲得を目指した。

強化合宿で選ばれた6名

スタート前のチーム紹介 左から孫崎、冨尾、石上、水谷、小山、草場スタート前のチーム紹介 左から孫崎、冨尾、石上、水谷、小山、草場 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF今回のイストリアでは毎日必ず雨が降り、落車も多く、山脇メカニック(チクロ・イプシロン)の仕事も多い今回のイストリアでは毎日必ず雨が降り、落車も多く、山脇メカニック(チクロ・イプシロン)の仕事も多い photo:Takayuki KAKINOKI/JCF日本からは昨年10月からの強化合宿で選ばれた6名をエントリーした。登りに強く、常に攻撃的な走りを見せる石上優大(横浜高校)、オールラウンドな能力をもち、スプリント力のある孫崎大樹と草場啓吾(ともに北桑田高校)、国内のレースでは常にアタックをし続け、1年で大きく成長した小山貴大(前橋育英高校)。まだ他のメンバーと比べると力差はあるが、登坂力も向上しつつあり、可能性のある冨尾大地と平坦のスプリント力のある水谷翔(ともに南大隅高校)。

この中で石上、冨尾、水谷の3名はジュニア1年目の選手である。今回のメンバーには昨年ネイションズカップを経験した選手はおらず、同世代の世界レベルの走りをこのレースで初めて経験することになる。

今年のコースは第2ステージが登り区間が多く、このステージでの順位で個人総合成績がほぼ決まる。今年のジュニア強化指定選手の中で登りに1番の強さをみせるジュニア1年目の石上をエースにして、個人総合20位までの選手に与えられるネイションズポイントの獲得を目指す。各ステージでは6位までにネイションズポイントが与えられるため、集団スプリントの際には孫崎、水谷のスプリント力に期待した。

第1ステージ 114km

第1ステージ コースプロフィール第1ステージ コースプロフィール photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第1ステージのニュートラル区間を走る選手。ジュニアレースではここでもすでに激しい場所取りが行われる第1ステージのニュートラル区間を走る選手。ジュニアレースではここでもすでに激しい場所取りが行われる photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第1ステージ スタート直後に落車しは小山、冨尾、水谷の3人でまとまって登りで遅れた選手を吸収しながら集団復帰を目指す第1ステージ スタート直後に落車しは小山、冨尾、水谷の3人でまとまって登りで遅れた選手を吸収しながら集団復帰を目指す photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第1ステージは全体的にアップダウンの多い114kmのコース設定。昨年はラスト30km地点の2kmの登りで15名のアタックが決まりそのままゴールまで逃げ切ったが、ラスト15kmはほぼ平坦であり50人ほどの集団でゴールする可能性が高いと予想された。スタートして3km地点の10名ほどの落車に小山、冨尾、水谷が巻き込まれる。3人でまとまって追いかけるが、集団のスピードは速くなかなか復帰できない。

途中3kmほどの登り区間で集団からこぼれた選手を拾いながら追い続け、一度は大きく集団から離されたが40kmの追走の後3名とも集団に復帰する。小山は追いつく直前に、落車でまがったホイールを交換する。集団では細かなアタックがあるが長くは続かず速いペースで進む。90km地点の登りでは集団は40名ほどに絞られ、石上、孫崎、草場はここに入る。

集団は危険な下りでいくつか落車があったが大きく分かれることはなく、集団ゴールではスプリント力のある孫崎に期待がかかる。ラスト10kmからラスト5kmまでの平坦区間で登り区間で遅れた選手らが後ろから続々と30名ほどが合流して70名ほどでの集団スプリントになる。孫崎のために石上、草場が良い位置をキープするように動くが、ゴール手前で囲まれてしまい、さらにゴール前の集団落車の影響もあり孫崎もストップせざるを得ず、スプリントには誰も絡めなかった。

孫崎でスプリント勝負に持ち込みたい日本だったが

このナショナルチームで初めてのレースの中で、石上、草場はチームの作戦通りゴール前で孫崎を良いポジションを確保するために動いたが、結果的にははぐれてしまいうまくはいかなかった。しかし選手たちは、強豪国がどこもゴール前に隊列を作り、良いポジションに自国のスプリンターを送り込むことに力を注ぐということを実際に見ることが出来た。

集団スプリントの際には、ただスプリントが強いというだけでは勝つことは難しい。いかに良いポジションをキープして、スプリントが出来る場所までスプリントのできる選手をチームから送り込むか、ジュニアの段階から経験して身につけていかねばならない。ゴール前の殺気立った集団での走りというのを選手らは今回初めて経験することになったが、世界の自転車レースで勝つためにはこの中で勇気を持って挑まねばならない。

レース結果 ツアー・オブ・イストリアstage1
1位 PARET PEINTRE Aurelien (フランス) 2時間41分59秒
2位 BOZIC John(スロベニア) 同タイム
3位 KULIKOVSKII Alexandr(ロシア)同タイム
52位 石上優大(横浜高校)同タイム
55位 草場啓吾(北桑田高校)同タイム
66位 孫崎大樹(北桑田高校)同タイム
105位 小山貴大(前橋育英高校)4分9秒差
106位 冨尾大地(南大隅高校)同タイム
114位 水谷翔(南大隅高校)同タイム



第2ステージ 98km

第2ステージ コースプロフィール第2ステージ コースプロフィール photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージ ジュニアのレースではスタート前に必ず毎日ギアチェックを受ける第2ステージ ジュニアのレースではスタート前に必ず毎日ギアチェックを受ける photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージ ニュートラルスタート直後の集団第2ステージ ニュートラルスタート直後の集団 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージ 下りで落車して壊れた変速器を山脇メカに直してもらい走り出す草場第2ステージ 下りで落車して壊れた変速器を山脇メカに直してもらい走り出す草場 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージ ラスト10km 先頭の8名を追うスピードの上がったメイン集団の中で孫崎、石上は個人総合リーダーの横に位置して前に上がるポイントを伺う第2ステージ ラスト10km 先頭の8名を追うスピードの上がったメイン集団の中で孫崎、石上は個人総合リーダーの横に位置して前に上がるポイントを伺う photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージ 遅れたグループでゴール前の石畳の登りをいく冨尾、水谷、小山第2ステージ 遅れたグループでゴール前の石畳の登りをいく冨尾、水谷、小山 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージ 下りで落車して大きく遅れてゴールした草場第2ステージ 下りで落車して大きく遅れてゴールした草場 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第2ステージは第1ステージと同じく全体的にアップダウンの多い98kmのコース設定で、30km過ぎからは毎年落車が多発する5kmの危険な下り坂とその直後に2kmの登り区間が2か所あり、ここで最初のふるい落としがかかる。さらに60km地点で2kmの登りがあり、その後はアップダウンがあるものの下り基調で、ゴール前5.5kmからゴールまでは登りが続き、特にラスト500mは石畳の12%以上の勾配の登りになっている。

個人総合を決定する非常に厳しいコースであり、この日の区間順位が最終的な個人総合成績になるといってもよい。日本チームとしては最終的な個人総合20位以内を狙い石上をエースにして、前半の危険箇所では小山、冨尾、水谷らが石上を集団前にキープさせ、ステージ後半区間は中盤の登りで前のグループに残ることが予想された草場、孫崎がその仕事を担う。

山岳コースを石上で狙う

スタートから草場、孫崎、石上は集団前方をキープして危険な下り箇所に入る。下り前から激しく雨が降り、多くの選手が落車する。草場も良い位置で下りに入っていったが落車してしまう。石上、孫崎は下りを集団前方でクリアする。今年は雨で路面が滑るということで集団もスピードを落として安全に下ったため、大きな中切れというのは起こりにくい状況ではあった。

その後の2か所の2kmの登りでは集団はふるい落としのために速いペースで進み、30名以下に減った先頭グループが形成される。日本チームからは石上、孫崎が残る。水谷、冨尾、小山は下りで大きく遅れ、落車した草場も集団に再び戻ることは出来なかった。

石上、孫崎を含む先頭集団からはフランスの選手が1人飛び出し45秒まで差をつける。先頭グループは総合で上位を狙える選手が多く、ゴール前の登りまで脚を温存するためペースを落とし、60km地点あたりで30名以上の第2グループに吸収されて60名ほどの集団になる。その後4名の追撃が決まり、さらに3名が加わり8名の先頭グループが形成される。

最大1分30秒差をつけたが、集団内の個人総合リーダーで勝負したいフランスが先頭グループに自国のクライマーがいるにも関わらずペースを上げて、最後の登り口までに1分までタイム差を縮める。登りは勾配がきつくなく、さらに先頭の選手とのタイム差が1分あったため、フランスのコントロールにより一定ペースで進むが、登れない選手が続々脱落していく。

孫崎が石上をサポートし集団3番手へ

先頭グループの中からラスト4kmでドイツの選手が攻撃して独走を開始する。登り口までのスピードの上がった平坦区間で孫崎が石上をサポートして前の場所をキープして登りに入ったおかげで、石上は良い位置で登りに入ることが出来た。ラスト500mの石畳区間に入る際には集団の3番手という最高のポジションを確保する。

先頭の8名が人数を減らしながらメイン集団の目の前に見える位置まで近づく中で、最後の石畳の登り区間では力勝負となり、体重の軽い石上は苦戦するが粘り続けてトップと16秒差の17位でゴールした。優勝は最後の登りを先頭グループから抜け出して独走したドイツの選手で、フランスの個人総合リーダーが最後は猛迫したが3秒届かなかった。

石上はネイションズポイント獲得に必要な個人総合20位以内に入ったかと思われたが、個人総合では19位から22位までタイム差なしの22位となり、ポイント圏内に入れなかった。石上にはレース前のミーティングで、中盤の登りを超えた後のゴールまでのアップダウン、平坦区間では逃げが出来てもそこには乗らずに、最後の登りでの個人総合狙いの選手との力勝負を求めた。

ジュニア1年目の選手であるが登坂力に優れ、最後のパワー勝負となる石畳の登り勝負でも個人総合20位圏内に入る力があると読んでいたが、8人の逃げのメンバーがバラバラになりながらも最後まで粘り続けたこともあり、20位圏内とは同タイムながら個人総合でのネイションズポイント獲得圏内に入るのを逃した。

選手同士が築く信頼関係

孫崎は自分の調子の良さを感じながらも、より好成績を出す可能性の高い石上のために誰もが脚を使いたくない平坦区間で風よけになり、石上を登りの前に良い位置まで引き上げてその位置をキープした。自分自身のためだけに走りたい気持ちを殺して、他の選手のサポートをすることは簡単なことではないが、このサポートがなければ今のジュニアの世界大会では結果を残すのは難しい。

ジュニア世代の海外遠征、国内合宿で選手同士が築く信頼関係は、U23、エリートのカテゴリーに上がっても日本チームの大事な財産となる。

レース結果 ツアー・オブ・イストリアstage2
1位 KAMNA Lennard (ドイツ)
2位 PARET PEINTRE Aurelien (フランス) 2時間34分17秒
3位 IDJOUADIENNE Pierre(フランス) 3秒差
17位 石上優大(横浜高校) 16秒差
53位 孫崎大樹(北桑田高校)1分3秒差
81位 冨尾大地(南大隅高校)13分46秒差
83位 水谷翔(南大隅高校)13分56秒差
88位 小山貴大(前橋育英高校)14分20秒差
107位 草場啓吾(北桑田高校)19分44秒差



第3ステージ 112km

第3ステージ この日はホテルから10km離れたスタート地点まで自走する第3ステージ この日はホテルから10km離れたスタート地点まで自走する photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージ コースプロフィール第3ステージ コースプロフィール photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージ スタート前の日本チーム第3ステージ スタート前の日本チーム photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージ パンクから集団復帰を図る水谷。チームカーの隊列の使い方も学んでいかねばならない第3ステージ パンクから集団復帰を図る水谷。チームカーの隊列の使い方も学んでいかねばならない photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージ 遅れた小山はオランダ選手と一緒に集団復帰する第3ステージ 遅れた小山はオランダ選手と一緒に集団復帰する photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージゴール後 レース後に悔しい表情を見せる石上第3ステージゴール後 レース後に悔しい表情を見せる石上 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージゴール後の選手第3ステージゴール後の選手 photo:Takayuki KAKINOKI/JCF第3ステージ前 3日間、他のチームを圧倒する力をみせたフランスチーム。今年のフランスチームは強い第3ステージ前 3日間、他のチームを圧倒する力をみせたフランスチーム。今年のフランスチームは強い photo:Takayuki KAKINOKI/JCF最終ステージとなる第3ステージは、登り区間が前半に1か所あるのみで、アップダウンの多い112kmで争われた。日本チームがネイションズポイントを獲得するために、個人総合19位の選手とは同タイムで22位の石上がスプリントポイントでのボーナスタイムを1秒でも獲得して個人総合順位を上げることと、集団スプリントになる可能性が高いこのステージでは、ラスト15kmからは孫崎のゴールスプリントのためにチームの力を使うことをレース前に確認した。

最終ステージは2年前に行なわれたコースと同じであり、その時は最終的には集団は40名ほどと小さくなった。石上が何もせずに集団にとどまっていても総合順位で20位以内に入る可能性はあるが、この日は日本チームで動いて石上の個人総合成績のジャンプアップを狙うことを選んだ。

石上のスプリントポイントを狙う日本

24km地点のスプリントポイントでのボーナスタイムを獲得するためにはスプリント力のない石上はスプリントポイントの遠くから逃げる必要がある。スプリントポイントの8km前にある山岳ポイント後の平坦で草場、孫崎のどちらかと攻撃して3位までが獲得できるスプリントポイントを狙う。そこが無理な場合は途中のアップダウン区間で攻撃をかけて、勝ち逃げに乗ることを目指す。

孫崎、草場は前半のスプリントポイントで石上を助ける以外は最後の集団ゴールスプリントにかける。レースはスタートしてすぐにペースアップして、集団からは抜け出すのが難しい状況が続く。最初の登りで抜け出したイギリスの選手がスプリントポイントまで逃げ続け、集団はカザフスタン、ベルギー、イタリア、ノルウェーらが強力に引っ張る。

これらの国は集団スプリントでのボーナスタイムを狙ってきたため、石上ら日本チームはここでは動くことが出来ず、ボーナスタイムを獲得できない。このスプリントポイント直後で水谷がパンクする。アップダウン区間では逃げに入ることを狙い石上、小山が攻撃するが、集団のスピードは速く大きくは抜け出せない。

60km地点で5人の逃げが決まり15秒ほど先行する。65km地点で個人総合リーダーのフランスの選手がパンクした際にも攻撃がかかり続け、さらに8人が合流して13人の先頭グループが集団に45秒差をつける。この先頭グループにはスロべニアが3名入り、また個人総合で27秒遅れの総合5位のカザフスタンの選手が入ったが、フランスチームも総合3位の選手を入れた。

日本チームとしては個人総合20位以内に入る可能性にかけてこのグループに石上を入れたかった。ただ個人総合2位の選手を擁するドイツも先頭グループに入っておらず、この逃げグループはゴールまでの逃げ切りを考えると危険な逃げではない。個人総合リーダーを擁するフランスチームが5人でまとまって先頭グループを追いかけると一気にタイム差が縮まり集団は1つになる。

集団はここでさらにペースが上がり、水谷、冨尾、小山が遅れる。石上は集団先頭付近に位置取っていたが、ラスト20kmあたりでイギリスの選手が落車したのに巻き込まれて前転する形で落車してしまう。ハンドルが大きく曲がり再走するまでに時間がかかったが、最後まであきらめずに集団を追いかけ続ける。

重なる不運

ラスト5kmで集団の隊列に戻るところまできたところでさらなる落車が発生して、チームカーにより道を塞がれてしまい集団復帰がかなわなかった。メイン集団には草場、孫崎が残っており、孫崎のスプリントでゴールを狙う。孫崎はラスト500mでは第1ステージの集団スプリントを勝っているフランスの個人総合リーダーのすぐ後ろにつけるが、目の前でその選手と総合2位のドイツ選手が絡まってしまい、それに乗り上げて落車する。

結局この日のステージは草場の16位が最高位であった。石上が落車に巻き込まれなければ、またはラスト5kmでの落車で道を塞がれず集団に復帰できていれば個人総合で20位に入り、ネイションズポイントが獲得できていた。ゴールスプリントの際にベストポジションで最終コーナーに入った孫崎も、この日はスプリントのためだけに脚をためていたが運がなかった。

ジュニアでは力はあっても集団走行に慣れていない選手も多く、ネイションズカップや世界選手権のようなレベルの高いレースであっても集団の前でも後ろでも落車が起こる。ロードレースはトラブルがつきものなのだが、チームとしては厳しい結果となった。

石上はラスト20kmをきったところで落車した際にハンドルが大きく曲がってしまい、再走に時間がかかった。前方での大きな落車であったためチームカーが道を塞いでしまう中で、その前に集団に復帰していた小山はチームカーがサポートに向かうまで石上を連れて遠く離れてしまった集団目指して走った。

残り距離とコースを考えると集団復帰は現実的には難しいと思ったが、石上の「最後まで諦めたくありません」という言葉を聞いて集団スプリントに備える孫崎、草場のサポートではなくゴールまで石上につくことにした。結果的に追いつくことはかなわなかったが石上は最後までチームのエースとして戦い抜く姿勢を見せた。

孫崎、草場、石上はこの3日間で集団内での厳しい位置取り争いにも順応して、ヨーロッパでのレースをこなせば結果を残すことが出来るだけの力は備えている。ただやはり世界のトップ選手との運動能力の差も大きいことは認めなければならない。水谷、冨尾、小山はまだ集団走行に慣れておらず、そこで脚を使ってしまい本来の力をみせることが出来なかった。

ジュニア選手が海外で戦うために必要なことは

日本のジュニアレースとは異なるレースの流れ、集団密度の高さ、日本のような安全なコースだけではないコース設定に順応するのに要する時間には個人差はある。ただジュニアナショナルチームでの海外遠征の数はヨーロッパの強豪国と比べると多くはなく、1つ1つのレースにおいて経験が出来る位置で走らなければ学べることは少ない。

また毎年のことであるが、語学力の必要性は事前にジュニア選手にどれだけ説明しても海外遠征で困らなければその重要性には気が付かない。今回も落車による変速トラブルを抱えた選手に対してチームカーが上がる前にニュートラルサービスが対応してくれた場面で、トラブルの事情を説明できず、ニュートラルカーも対応できなかった。

その時間が致命的になり集団に戻れなかった。最低限の語学力も選手として身につけなければならない必要な能力である。強化指定の選手だけではなく、世界を目指す選手らは中学、高校レベルの英語をまずはしっかり身につけてもらいたい。次の日本チームが参加するUCIネイションズカップは5月末にカザフスタンで行なわれるアジア選手権となる。



レース結果 ツアー・オブ・イストリアstage3
1位 WOUTERS Enzo (ベルギー) 2時間47分02秒
2位 ROVSTOVTSEV Sergei (ロシア)
3位 ROMANO Francesco(イタリア) 同タイム
16位 草場啓吾(北桑田高校)同タイム
74位 孫崎大樹(北桑田高校)同タイム
77位 石上優大(横浜高校) 1分差
98位 小山貴大(前橋育英高校)14分18秒差
99位 冨尾大地(南大隅高校)同タイム
104位 水谷翔(南大隅高校)同タイム

2014 ツアー・オブ・イストリア 個人総合成績 
1位 PARET PEINTRE Aurelien (フランス) 2時間41分59秒
2位 KAMNA Lennard (ドイツ)
3位 IDJOUADIENNE Pierre(フランス)
39位 孫崎大樹(北桑田高校)1分16秒差
42位 石上優大(横浜高校)1分29秒差
90位 草場啓吾(北桑田高校)19分57秒差
100位 冨尾大地(南大隅高校)32分26秒差
101位 水谷翔(南大隅高校)32分36秒差
102位 小山貴大(前橋育英高校)33分差

photo&text: JCFロード部会員 柿木孝之/Takayuki KAKINOKI
edit:Hideaki TAKAGI