新城幸也(ユーロップカー)が出場を予定しているアムステル・ゴールドレース(UCIワールドツアー)が4月20日に開催される。オランダ最大のワンデーレースは、オランダのイメージからはほど遠い起伏に富んだコースが特徴だ。



「1000のカーブ」と「34の登り」を含む251kmのアップダウンコース

アムステル・ゴールドレース2014アムステル・ゴールドレース2014 image: Amstel Gold Raceいよいよアルデンヌ3連戦が始動する。アムステル・ゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催される。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手も「北のクラシック」とは異なる。

急勾配のグルペルベルグを登るプロトン急勾配のグルペルベルグを登るプロトン photo:Riccardo Scanferlaオランダと聞いて思い描くのは、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る平原だ。確かに国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下。国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味するほど、国土の大部分は起伏に乏しい。

1回目のカウベルグに向かって進むメイン集団1回目のカウベルグに向かって進むメイン集団 photo:Kei Tsujiしかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステル・ゴールドレースは、上りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部の丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルグ州を駆け巡る(プロが試走中に間違うほど!)複雑な周回コースが設定される。登場する短い登りの数は34カ所。251kmのコースはまさにアップダウンの連続だ。

コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続。アップダウンとワインディングを繰り返すため、ときに「ジェットコースター」と形容される。

これらの試練を“フレッシュな状態”で乗り越え、最後のカウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。

ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いしがちだが、その名前はメインスポンサーのアムステル社からきている。アムステル社はオランダを代表するビール会社。レース公式サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。

合計30個の坂をこなした後、選手たちは最後の周回コースに突入する。この周回コースは2012年ロード世界選手権の周回コースと似通ったもので、カウベルグとグールヘンメルベルグ(世界選には登場せず)、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、再びカウベルグに挑む。

合計4回通過することになるアムステル名物のカウベルグは、登坂距離1200m、高低差68m、平均勾配5.8%、最大勾配12%。長年にわたってカウベルグの頂上でフィニッシュを迎えていたが、昨年から2012年ロード世界選手権同様にフィニッシュラインがカウベルグ頂上の1.8km先に変更されている。



アムステル・ゴールドレース2013コースプロフィールアムステル・ゴールドレース2013コースプロフィール image: Amstel Gold Race


前年度覇者クロイツィゲルを取り巻く強力なライバルたち

2013年 ラスト7kmから独走態勢に入ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)2013年 ラスト7kmから独走態勢に入ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ) photo:Riccardo Scanferla2013年大会を制したのはロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)だった。残り7kmから独走したクロイツィゲルが、後続を22秒振り切ってフィニッシュ。優勝候補の一角であることは間違いないが、連覇が懸かった今年は厳しいマークにあうだろう。

フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele直前のブラバンツペイルで勝利したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)は、2010年と2011年大会の優勝者だ。さらに同じフィニッシュレイアウトの2012年ロード世界選手権で優勝しており、登りでもスプリントでも勝てる。サムエル・サンチェス(スペイン)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)という心強いアシスト陣を従えて3度目のアムステル制覇を目論む。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Riccardo Scanferlaアルデンヌ・クラシックの上位常連であるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らスペイン勢も優勝争いに絡んでくるだろう。

新城幸也(ユーロップカー)新城幸也(ユーロップカー) photo:Riccardo Scanferla今シーズン好調のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)やカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)も登り&スプリントを得意とする選手だ。

2012年大会の覇者エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)は、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)をアシストすることになるだろう。イタリア勢としては、2008年大会覇者のダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)も出場。ランプレ・メリダは世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル)とのダブルエース体制を敷く。

地元オランダの期待を背負うのはバウク・モレマ(オランダ、ベルキン)やトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)だ。2001年以降海外選手に奪われ続けている国内最大のタイトルを取り戻せるか。

カウベルグを集団で越えることが出来れば、スプリント力のあるサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)にチャンスが回ってくる。スプリント力では劣るが、2006年大会を制したフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)はここで復活をアピールしておきたいところだ。

ユーロップカーの新城幸也は、直前のブラバンツペイルを12位で終えている。ゴール手前の登りで精鋭グループからアタックを仕掛けるなど、成績以上に目立つ走りをしてみせた。アムステルでは昨年24位。カウベルグを乗り越えればチャンスが回ってくる。

text:Kei Tsuji