ランカウイ島で開幕したツール・ド・ランカウイは、西海岸に沿って線でつないでついにマレー半島の南端に。シンガポールにほど近いポンティアンでゴールスプリントが繰り広げられ、ヴァカンソレイユ・DCMから移籍したケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)が勝利した。



椰子の森を駆け抜けるプロトン椰子の森を駆け抜けるプロトン photo:Kei Tsuji
愛三工業レーシングチームのバイクは3台愛三工業レーシングチームのバイクは3台 photo:Kei Tsuji第2ステージの落車で穴が開いたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)のシューズ第2ステージの落車で穴が開いたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)のシューズ photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2014第6ステージツール・ド・ランカウイ2014第6ステージ image:Tour de Langkawi高い湿度と排気ガス、山火事や野焼きによる煙が混ざりあい、独特の灰色の雲に覆われたスタート地点。他の地域よりも空気抵抗が大きいのではないかと思うほどの密度の濃い空気に包まれる。

マレーシア国旗で選手たちに声援を送るマレーシア国旗で選手たちに声援を送る photo:Kei Tsujiマラッカ海峡の語源になった歴史的な街マラッカ(マレー語でムラカ)を、ツール・ド・ランカウイ第6ステージはスタートする。晴れているものの太陽の光は地面に届かない。現地出身者曰く、夜に星が見えるのは稀らしい。

縦に長く伸びた状態で進むプロトン縦に長く伸びた状態で進むプロトン photo:Kei Tsujiイスラムや中国に加えてヨーロッパの文化が混ざりあう世界遺産の街を発ち、マレー半島の西海岸をひたすら南進する第6ステージ。シンガポールに近いポンティアンのゴール地点に向かって、ほぼフラットなコースが199.1kmにわたって続く。ここまで100〜150kmのステージが続いていたが、この日を皮切りに200km前後のロングステージが3日連続で登場する。

小学校や中学校の生徒が沿道に出て声援を送る小学校や中学校の生徒が沿道に出て声援を送る photo:Kei Tsujiマラッカの喧噪を抜けてアクチャルスタートが切られると、1時間半にわたる断続的なアタック合戦が始まる。ヤニック・マルティネス(フランス、ユーロップカー)とエルチン・アサドフ(アゼルバイジャン、シナジーバクサイクリング)の逃げが一時的に形成されるも、しばらくしてユーロップカーのエーススプリンターを務めるマルティネスはチームの指示で集団に戻り、取り残されたアサドフも吸収される。

逃げらしい逃げが形成されたのは、レース中盤に差し掛かってからだった。

第6ステージは言うならばシンガポールに向かうステージ。ここまで存在感ある走りを見せているOCBCシンガポールが動かない理由がない。

前日ステージ2位のトマス・ラボウ(オランダ)とエリック・シェパード(オーストラリア)のOCBCシンガポールコンビと、イーフイ・ニー(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)の3名がエスケープ。スプリントポイントを先頭通過したラボウはスプリント賞のリード拡大に成功している。

しかし逃げ切りを狙うには分が悪すぎた。タブリスペトロケミカル、アスタナ、アンドローニ・ベネズエラ、オリカ・グリーンエッジ、ベルキン、ネーリソットリのコントロール下に置かれたメイン集団は、前日のような過ちを繰り返すまいと、フィニッシュまで余裕を残して逃げを捉える。横風が吹くゴール前で位置取りを繰り広げた。



懸命に逃げ続けるトマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール)ら懸命に逃げ続けるトマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール)ら photo:Kei Tsujiレースに興味がない牛レースに興味がない牛 photo:Kei Tsuji
アンドローニ・ベネズエラやアスタナが牽引するメイン集団アンドローニ・ベネズエラやアスタナが牽引するメイン集団 photo:Kei Tsuji
並んで走る福田真平、平塚吉光、西谷泰治(愛三工業レーシング)並んで走る福田真平、平塚吉光、西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji並んで走る西谷泰治と平塚吉光(愛三工業レーシング)並んで走る西谷泰治と平塚吉光(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji


タブリスペトロケミカル、ネーリソットリ、ベルキンがメイン集団をコントロールタブリスペトロケミカル、ネーリソットリ、ベルキンがメイン集団をコントロール photo:Kei Tsuji「ラスト2kmからベルキンが前を引いて、グリーンエッジが別のラインで上がろうとしたものの上がりきれず、そのままベルキンがリードアウトする形でスプリントになりました」と、愛三工業レーシングのスプリンターを務める西谷泰治は回想する。ベルキンはテオ・ボス(オランダ)のために強力なリードトレインを組んだが、上手くスプリントに持ち込めない。

ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)のスプリントが伸びるケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)のスプリントが伸びる photo:Kei Tsujiベルキンに対抗したのは、勢いに乗っているユナイテッドヘルスケア。ロベルト・フェルスター(ドイツ)とケン・ハンソン(アメリカ)の2人がスプリントに持ち込み、これにファンヒュンメルとアイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)が反応した。

ステージ優勝を飾ったケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)ステージ優勝を飾ったケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ) photo:Kei Tsuji「横風が吹く中、ユナイテッドヘルスケアのリードトレインを利用した。パーフェクトな位置に食らいついて、自分のスプリントに持ち込めたんだ。クリーンで真っすぐなスプリント。全力で、フルスピードでもがいた」と語るファンヒュンメルが先着し、右手を突き上げる。ヴァカンソレイユ・DCMの解散によってチームを失い、アンドローニ・ベネズエラに拾われる形で現役を続行した32歳が嬉しいシーズン初勝利を飾った。

集団内で第6ステージを終えた平塚吉光と福田真平(愛三工業レーシング)集団内で第6ステージを終えた平塚吉光と福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji「昨年の終わりに契約を失ったが、プロのプロトンに残りたいと強く思った。今はこのチームにとても感謝している。この勝利は彼らへのちょっとしたプレゼントだ」。にこやかな表情で記者会見を見つめるジャンニ・サヴィオ監督に向かって、ファンヒュンメルは感謝の気持ちを述べた。

西谷泰治は上手くスプリントに持ち込めず、ステージ17位でフィニッシュ。「1人では限界があるものの、自分の力で前に上がり、残り300mの時点で10番手あたりにいました。ポイント圏内に入れるかなと思ったんですが、前の選手が詰まったので結局スプリント出来ずに終わってしまった」と、不完全燃焼の結末を振り返る。

しかしその気持ちはポジティブだ。「明日も、逃げよりスプリントをメインに考えたいと思います。感触は悪くないので、スプリントさえ出来れば間違いなく一桁は行ける。今日は場所取りで落車が発生してナーバスになっていたので、明日はもうちょっとシビアに行こうと思います」。

翌日の第7ステージは今大会最長の230.1km。西谷は「気温が上がれば他チームのアシスト陣が消耗して、違う展開になるかも」と読む。マレー半島の南端に達したツール・ド・ランカウイは、残り4日間、終着地クアラトレンガヌに向かって東海岸をひたすら北上する。

その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!



第6ステージのトップスリーが表彰台に上がる第6ステージのトップスリーが表彰台に上がる photo:Kei Tsujiステージ優勝を飾ったケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)がジャージをアピールステージ優勝を飾ったケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)がジャージをアピール photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2014第6ステージ結果
1位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ) 4h29'46"
2位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ケン・ハンソン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
4位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ユナイテッドヘルスケア)
5位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)
6位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)
7位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
8位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
9位 モルガン・ラモワソン(フランス、ユーロップカー)
10位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
17位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)
58位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)
65位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)

個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)  19h43'50"
2位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)               +08"
3位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)           +11"
4位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)          +20"
5位 ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)                 +36"
6位 ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)        +40"
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン)               +52"
8位 ジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)      +1'09"
9位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル)            +1'27"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)            +1'41"

アジアンライダー賞
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)  19h43'50"
2位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル)            +1'27"
3位 アミール・コラドザグ(イラン、タブリスペトロケミカル)           +2'48"

スプリント賞
1位 トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール)              48pts
2位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)       47pts
4位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)             46pts

山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)       34pts
2位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)          31pts
3位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)    25pts

チーム総合成績
1位 MTNキュベカ                              59h14'17"
2位 タブリスペトロケミカル                           +1'38"
3位 アンドローニ・ベネズエラ                          +8'52"

text&photo:Kei Tsuji in Johor Bahru, Malaysia