うだるような暑さのマレーシアで行なわれたツール・ド・ランカウイ第5ステージ。この日のためにゲンティンハイランドで力を温存した西谷泰治(愛三工業レーシング)だったが、展開と機材トラブルで勝負に絡めなかった。



集団内で走るリーダージャージのミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)集団内で走るリーダージャージのミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2014第5ステージツール・ド・ランカウイ2014第5ステージ image:Tour de Langkawi2007年に福島晋一(当時NIPPO・梅丹本舗)がステージ優勝を飾ったカラクの街で第5ステージはスタートが切られる。スタートエリアは屋台が並ぶ広場で、その路地裏にチームカーが列をなす。気温は33度で湿度は70%以上。肌にまとわりつくようなねっとりとした熱気に、屋台の調理場や残飯の臭いが混ざる。

地元マレーシアの期待を背負うトレンガヌサイクリング地元マレーシアの期待を背負うトレンガヌサイクリング photo:Kei Tsuji前日にゲンティンハイランドの涼しさを経験した身体にはこたえる熱帯特有のコンディション。なお、ゲンティンハイランドのフィニッシュ後すぐに雷を伴うスコールが一帯に降ったが、東南アジアでは現在水不足が深刻な問題になっている。

陰に入ってスタートを待つアレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)ら陰に入ってスタートを待つアレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)ら photo:Kei Tsuji隣国シンガポールで1mm以上の降水を記録したのは1月12日。つまり1ヶ月半以上にわたってまともな雨が降っていない。これはシンガポールにとって記録的な少雨で、天気ニュースによると、例年の20%ほどしか降っていないと言う。

笑顔でスタートラインに向かう西谷泰治(愛三工業レーシング)笑顔でスタートラインに向かう西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiこのドライコンディションは選手にとって朗報だが、水不足や農作物への影響、山火事の心配が出ている。実際に第3ステージの残り60km地点で自然発火による小さな山火事が発生し、選手たちは煙と熱を避けるようにしてその場を通過した。

せっせと出走サインに向かう選手たちを見守るせっせと出走サインに向かう選手たちを見守る photo:Kei Tsuji野焼きを行なったような黒い草地が至る所に点在しており、各地の山火事の影響でマレー半島全体が薄らとした煙に覆われている。晴れていてもクリアな青空となかなか出会わない。

そんな暑さに関係なくロードレースはスタートする。ゴール10km手前に高低差100mほどの3級山岳をクリアする第5ステージ。スタートからゴールまで、139.3kmにわたって曲がりくねった内陸の幹線道路が続く。「スプリンター向きだが、アタッカーにもチャンスはある。コースプロフィールは参考にならないから、実際に走ってみないと分からない」と、カチューシャのヴィアチェスラフ・エキモフ監督はレースブックを眺めながら頭を掻く。

この第5ステージに照準を合わすために、温存してゲンティンハイランドをクリアした西谷泰治(愛三工業レーシング)の選択肢は3つ。1.メンバーの良い序盤の逃げに乗る、2.終盤の3級山岳のアタックに加わって逃げ切りを狙う、3.ゴールスプリント。メンバーが3名に絞られた今、愛三の活躍は西谷に懸かっていると言ってもいい。

この日もスタート後すぐにUCIプロコンチネンタルチームやUCIコンチネンタルチームがアタックに選手を送り込み、6名が先行する形で展開する。逃げに入った総合14位・3分遅れのルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)の存在を警戒しながら、タブリスペトロケミカルが集団をコントロールした。

やがて先頭はマインティーズ、ブラドレー・ホワイト(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)、トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール)の3人に絞られ、5分前後のリードを保ったままスプリントポイントやKOMを先頭で通過して行く。

レース後半に差し掛かってもタイム差は縮まらず、集団スプリントに持ち込みたいアスタナが集団コントロールに加わったが、タイム差は残り40km地点で依然として5分30秒。3級山岳でメイン集団から飛び出す選手も現れたがいずれも成功せず、先頭3名が2分リードのまま最後の3級山岳をクリアした。



レース序盤に形成された6名の逃げレース序盤に形成された6名の逃げ photo:Kei Tsuji
この日も集団後方で走る福田真平(愛三工業レーシング)この日も集団後方で走る福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji曲がりくねったコースを逃げる先頭の6名曲がりくねったコースを逃げる先頭の6名 photo:Kei Tsuji



3名のゴールスプリントで勝利したブラドレー・ホワイト(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)3名のゴールスプリントで勝利したブラドレー・ホワイト(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsuji総合ジャンプアップを目指すマインティーズの懸命の牽引も功を奏し、先頭3名が1分以上のリードを保ったままフィニッシュ地点にやってきた。賑やかな歓声に包まれて、ホワイトがスプリント勝利。メイン集団は1分15秒遅れでミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)を先頭にゴールした。

1分15秒遅れのメイン集団がスプリントを繰り広げる1分15秒遅れのメイン集団がスプリントを繰り広げる photo:Kei Tsuji第4ステージのゲンティンハイランドに続いて、この日もUCIプロチームの選手がトップ3に入らない結果に。テオ・ボス(オランダ、ベルキン)やアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)らは、山岳を越えながらもスプリントに持ち込めなかった悔しさに表情を曇らした。

ゴールしてすぐ放水に入る平塚吉光(愛三工業レーシング)ゴールしてすぐ放水に入る平塚吉光(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji金星を飾ったホワイトはアメリカ出身の32歳。これまでアメリカやアジアレースに積極的に出場しているが、目立った結果はこの日のステージ優勝が初めて。3日連続で逃げを仕掛け、その積極性が勝利に繋がった。

「連日の逃げで脚に疲労を感じていたけど、挑戦し続けた甲斐があったよ」とホワイトは笑う。前日のイサーク・ボリバル(コロンビア)に続く活躍により、存在感を増しているユナイテッドヘルスケア。今年パリ〜ルーベとフレーシュ・ワロンヌのワイルドカードを獲得したチームにとって良い起爆剤になるはずだ。

ステージ2位のラボウはスプリント賞ジャージを獲得し、ステージ3位のマインティーズは総合で1分11秒挽回して総合トップ10に割り込んだ。同時にマインティーズはMTNキュベカのチーム総合成績のリード拡大に貢献している。なお、総合トップ10の選手の中で、非UCIプロチーム所属選手は7割を占める。

ゴールスプリントに備えて3級山岳を集団内でクリアした西谷泰治はステージ72位。レース終盤に発生したリアホイールの故障を解消出来ず、勝負に持ち込めなかったことに肩を落とした。平塚吉光は同集団内のステージ76位、福田真平は7分55秒遅れのステージ115位で完走。ツール・ド・ランカウイは後半戦に入って行く。

レースの模様はフォトギャラリーにて!



怪我を負っている左手のグローブを脱ぐ福田真平(愛三工業レーシング)怪我を負っている左手のグローブを脱ぐ福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji第5ステージのトップスリーが表彰台に上がる第5ステージのトップスリーが表彰台に上がる photo:Kei Tsuji




ツール・ド・ランカウイ2014第5ステージ結果
1位 ブラドレー・ホワイト(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)        3h03'28"
2位 トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール)
3位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)              +04"
4位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)              +1'15"
5位 ディーントーマス・ロジャース(ニュージーランド、OCBCシンガポール)
6位 オマール・ベルタッツォ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)
7位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)
8位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
9位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
10位 ダニエル・クレンメ(ドイツ、シナジーバクサイクリング)
72位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)
76位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)
115位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)                  +7'55"

個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)  15h14'04"
2位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)               +08"
3位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)           +11"
4位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)          +20"
5位 ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ)                 +36"
6位 ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)        +40"
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン)               +52"
8位 ジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)      +1'09"
9位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル)            +1'27"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)            +1'41"

アジアンライダー賞
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)  15h14'04"
2位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル)            +1'27"
3位 アミール・コラドザグ(イラン、タブリスペトロケミカル)           +2'48"

スプリント賞
1位 トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール)              40pts
2位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)      40pts
4位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)             35pts

山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)       32pts
2位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)          31pts
3位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)    25pts

チーム総合成績
1位 MTNキュベカ                              45h44'59"
2位 タブリスペトロケミカル                           +1'38"
3位 アンドローニ・ベネズエラ                          +8'52"

text&photo:Kei Tsuji in Melaka, Malaysia