大集団のゴールスプリント…と思いきや、先頭でフィニッシュラインに飛び込んできたのは23歳のドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)だった。愛三工業レーシングは福田晋平を12位に送り込んだものの、伊藤雅和を落車で失い、綾部勇成が怪我を負う苦いスタートとなった。



ホテル「リゾートワールドランカウイ」前のスタートラインに並ぶホテル「リゾートワールドランカウイ」前のスタートラインに並ぶ photo:Kei Tsuji


チームメイトたちと談笑しながらスタートの時を待つ福田真平(愛三工業レーシング)チームメイトたちと談笑しながらスタートの時を待つ福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiツール・ド・ランカウイ第1ステージは、午前9時という早い時間にスタートが切られた。101.1kmという短いステージにも関わらず、前日夜遅くまでチームプレゼンテーションが行なわれていたにも関わらず、朝早くにスタート。その理由は、ゴール後にマレー半島本土への移動が待っているため。

山の稜線から姿を現したばかりの太陽に照らされて、選手やスタッフが慌ただしくスタートの準備を整える。UCIコンチネンタルチームの中には、当日の朝になってようやくチームバイクが全て組み上がったというチームも。

大会スポンサーの一つであるホテル「リゾートワールド」の正面玄関前で出走サインを済ませたのは126名の選手たち。5つの4級山岳が設定されたショートステージが始まった。



ツール・ド・ランカウイ2014第1ステージツール・ド・ランカウイ2014第1ステージ image:www.ltdl.com.myツール・ド・ランカウイ2014第1ステージツール・ド・ランカウイ2014第1ステージ image:www.ltdl.com.my
座ってスタートを待つマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)座ってスタートを待つマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji日焼け止めを塗り込むテオ・ボス(オランダ、ベルキン)日焼け止めを塗り込むテオ・ボス(オランダ、ベルキン) photo:Kei Tsuji


TOJ富士山ステージで優勝経験のあるジョンリー・オーガスティン(南アフリカ、MTNキュベカ)TOJ富士山ステージで優勝経験のあるジョンリー・オーガスティン(南アフリカ、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji大会最初の逃げはスタート後すぐ生まれる。ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)、ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)、マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)、モハマドサイフル・アジス(マレーシア、トレンガヌサイクリング)、チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)が集団から飛び出し、ランカウイ島の海岸線アップダウンをこなしていく。

午前9時にスタートする選手たち午前9時にスタートする選手たち photo:Kei Tsuji最初の4級山岳を先頭通過したのはアイルランドチャンピオンジャージを着るブラマイヤー。過去にHTCハイロードやオメガファーマ・クイックステップに所属し、今季チャンピオンシステムからアゼルバイジャンのシナジーバクサイクリングに移籍した28歳は、そのまま全ての4級山岳を先頭通過してみせた。

スタートを切る平塚吉光、伊藤雅和、福田真平(愛三工業レーシング)スタートを切る平塚吉光、伊藤雅和、福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji逃げグループとのタイム差が7分まで広がったところで、メイン集団の前方ではUCIプロチームを中心にした追撃が組織される。しかし「ペースを上げたと思ったらまた下げたり、ペースが安定しなかった」とレース後に西谷泰治(愛三工業レーシング)が振り返る通り、タイム差の縮小は鈍い。集団のペースダウンの隙に追走グループが形成されるほど。

逃げメンバーを振り切ったドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)が独走でフィニッシュ逃げメンバーを振り切ったドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)が独走でフィニッシュ photo:Kei Tsuji快調に逃げる先頭グループからマレーシアのアジスが脱落。4名に絞られながらも、リードを守ったままレース後半へと入っていく。

1分18秒遅れでやってきたメイン集団 盛一大が福田真平(愛三工業レーシング)を解き放つ1分18秒遅れでやってきたメイン集団 盛一大が福田真平(愛三工業レーシング)を解き放つ photo:Kei Tsujiツール・ド・ランカウイに出場しているのは1チーム6名ずつ。どのチームもゴールスプリントに向けた位置取りに人数を残しておきたいため、1チームが主導権を握って逃げを捕まえる体制にはならない。残り25kmで5分あったタイム差は、残り10kmに差し掛かった時点で依然として3分。キンテロ、ブラマイヤー、クラーク、ゴーの逃げ切りが決まり、残り2kmで逃げメンバーを振り切ったキンテロが勝利した。

キンテロの正式な名前はドゥベルアルマンド・キンテロアルトゥンダガ。2012年にスタジエールとしてチームコロンビアに合流し、2013年にプロデビューしている。ローカルレースを含めてまだ結果を残せていなかった23歳が、風穴を開ける大きな勝利を手にした。

「逃げグループの中では良い協調体制を築けていた。レース後半にメイン集団が慌てて追撃し始めたけど、動き出しが遅すぎたようだ。自分はスプリンターではないので、独走に持ち込むしか勝ち目がなかった。残り2kmで少し牽制した瞬間を突いてアタック。そのギャンブルが成功したんだ」。黄色いリーダージャージに袖を通したキンテロは満面の笑みでそう話す。

「このジャージを最後まで着続けるのは難しいかも知れないけど、挑戦しない理由は無い」。翌日からコロンビアはUCIプロチームを相手に闘うことになる。ゲンティンハイランドでキンテロがどこまで登れるかに注目だ。

1分18秒遅れのメイン集団は、アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)を先頭にフィニッシュ。「西谷さんに引いてもらって位置取りし、最後は後ろから上がってきた盛さんについてスプリントしました。なだれ込む結果になりましたが、スプリントの形は出来た」と言う福田真平(愛三工業レーシング)が集団の前から8番目、全体の12番目でフィニッシュした。



チームメイトと勝利を喜ぶドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)チームメイトと勝利を喜ぶドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) photo:Kei Tsuji消防車による放水の中に入っていく消防車による放水の中に入っていく photo:Kei Tsuji


頭から水を浴びる福田真平(愛三工業レーシング)頭から水を浴びる福田真平(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji「今日は逃げに選手を送ることなく、他のスプリンターチームと同じ動きをするよう指示しました。でもその結果、他のスプリンターチームと共倒れになってしまった」と、チームカーのハンドルを握る別府匠監督。リードアウトトレインは完全に機能しなかったが、福田はアジアンライダー賞3位の成績を残している。

痛々しい姿で戻ってきた綾部勇成(愛三工業レーシング)痛々しい姿で戻ってきた綾部勇成(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiスピードが上がったレース終盤には落車が多発し、砂が浮いたコーナーでハンドルを取られた伊藤雅和が落車リタイア。ゴール前で落車した綾部勇成は、腰や背中から血を流してチームカーに帰ってきた。

ゴールまでおよそ20kmを残して落車した伊藤は、再スタート出来ずにそのまま病院へ搬送された。チームによると大腿骨に異常が見られるという。今後、伊藤はクアラルンプールの病院に搬送され、そこで正式な診断を受ける予定。診断結果が出たのち、続報をお伝えします。

別府監督は「今日は落車もあり、レースもうまくいかず厳しい一日でした。しかしながら福田が前の方でゴールできているので、希望を次につなげます」と、先のステージを見ている。

第1ステージが終了したのは午前11時半。選手たちは一旦ホテルに戻ってシャワーを浴び、午後のフェリーで1時間かけて本土に戻り、そこから車で第2ステージのスタート地点に向かった。翌日からはマレー半島を南下する平坦ステージが始まる。



第1ステージのトップスリーがステージに上がる第1ステージのトップスリーがステージに上がる photo:Kei Tsujiリーダージャージを獲得したドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)リーダージャージを獲得したドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア) photo:Kei Tsuji



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ツール・ド・ランカウイ2014第1ステージ結果
1位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)              2h21'40"
2位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)        +11"
3位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)
4位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)           +15"
5位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)              +1'18"
6位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
7位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)
8位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)
9位 ミハエル・シュワイザー(ドイツ、シナジーバクサイクリング)
10位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
12位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
25位 盛一大(日本、愛三工業レーシング)
93位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)                   +1'40"
95位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)
117位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシング)                  +1'18"(集団同タイム)
DNF 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)

個人総合成績
1位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)              2h21'21"
2位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)        +22"
3位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)        +24"
4位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)           +33"
5位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)              +1'37"
6位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
7位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、アンドローニ・ベネズエラ)
8位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)
9位 ミハエル・シュワイザー(ドイツ、シナジーバクサイクリング)
10位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)

アジアンライダー賞
1位 チョンフアット・ゴー(シンガポール、OCBCシンガポール)        2h21'54"
2位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)          +1'04"
3位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)

山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング)       20pts
2位 ドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)                8pts
3位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)       5pts

text&photo:Kei Tsuji in Langkawi, Malyasia