多くのサドルブランドが居を構えるイタリアから、また1つ新たなブランド”アスチュート”が誕生。多数の特許技術を用いて快適性とルックス両立し、イタリア国内で熟練の職人によって製造される新世代サドルのインプレッションをお届けする。

アスチュート SKYLITE VT(ホワイト/レッド)アスチュート SKYLITE VT(ホワイト/レッド) (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
アスチュートは異なるバックグラウンドを持つの3人のイタリア人デザイナーと、40年に渡ってサドルづくりの技を守り続けてきたベネチア地方の職人たちのコラボレーションによって誕生した新進気鋭のサドルブランド。その使命はプロにとってもアマチュアにとっても世界で最もスマートなサドルを生み出すこと。創業は2013年とその歴史は浅いものの、すでに3つの特許技術を取得していることから、高い技術力を有していることがお分かり頂けるだろう。

アスチュートはデビューモデルとして3種のサドルを発表し、ハイエンドモデル「SKYCARB」とミッドレンジの「SKYLITE」、エントリーグレードの「SKYLITE」がラインナップされている。いずれも座面形状や非穴あきタイプの”SR”と穴あきタイプの”VT”が用意される点などは共通で、主な差異は素材及び重量にある。

ノーズ部分には密度の異なる3層のパッドを配すノーズ部分には密度の異なる3層のパッドを配す 2枚のベースを重ねるダブル・ベース構造は強度と軽量性の向上に貢献する2枚のベースを重ねるダブル・ベース構造は強度と軽量性の向上に貢献する


今回インプレッションを行ったのはミドルグレードに当たるSKYLITE(スカイライト)の穴あきタイプVTだ。特殊ナイロン製ベースにカーボンレールを組合せたモデルで、ハイエンドモデルと同じく快適性に優れながらも、他社のレーシングバイク用サドルと同等の薄さとスマートなルックスを実現している。

ベースには軽さと強度を両立するために、2枚のベースを組み合わせる特許取得技術「ダブル・ベース構造」を採用しする。そして、ノーズから中央にかけてはU字型の溝が設けられた”オープンUシェイプ”とされており、豊富なパッド量とスマートなルックスが両立されている。

刺繍部分の仕上がりはとても丁寧だ刺繍部分の仕上がりはとても丁寧だ 後方のサドルとベースの接続部分には音鳴りを防止し振動吸収性を高めるSPASを配す後方のサドルとベースの接続部分には音鳴りを防止し振動吸収性を高めるSPASを配す

ノーズ部分にはベース表面が顔を出すノーズ部分にはベース表面が顔を出す レールにはセッティングの際に便利な目盛が設けられるレールにはセッティングの際に便利な目盛が設けられる


パッドには密度が異なる3層のフォームを組み合わせ快適性を高めた「TRI-DENSITY NES70」が使用される。低反発・高密度ながら、メモリーフォーム(形状記憶)システムによって長距離・長時間のライディング後でも型崩れすることなく、使用前の形状を正確に復元するため耐久性も高い。パッドを覆う表皮は高級感漂う質感のマイクロファイバー製。切れ端は全て2層のベース間に収められるため、美観性の高い仕上がりとなっている。

レールは高い強度と軽さを兼ね備える中空カーボン製で、ベースの接続部分には「SPAS(Shock Pad Absorber System)」と名付けられた赤いパッドが挿入される。ショックや振動を吸収し快適性の向上に貢献しながら、レールとベースの摩擦を除去する事により、不快な音鳴りが発生する可能性を低減した。

カラーはブラック/ブラックとホワイト/レッドの2種類カラーはブラック/ブラックとホワイト/レッドの2種類 カーボンレールを採用するSKYLITEの分解図カーボンレールを採用するSKYLITEの分解図


カラーはホワイト/レッドとブラック/ブラックの2種類が用意される。なお、2014シーズンからはレースシーンにも投入され、Team UKYOが使用する予定だ。それではインプレッションに移ろう。



ーインプレッション

「フラットな断面形状を好むライダーにお勧めなコンフォートサドル」山本雄哉(cyclowired.jp)

まずは、セッティングから。アスチュートは一般的なサドルとは異なり、ノーズ部分が柔軟性に富むことから前方へ滑ってしまうことを防止するため2°から3°程度上向きに傾けることを推奨している。そこで今回は2.5°前上がりにセットした。

薄手で非常にレーシーなルックス薄手で非常にレーシーなルックス
シートポストは一般的な2本締めを使用したが、カーボンレールゆえの強度的な不安は特に感じられなかった。また、レールとベース間の距離が大きく取られていることからセッティングは容易であった。実測重量は166gとカタログ値との誤差は少なく、刺繍部分など細部の作り込みも非常に丁寧だ。

2.5°前上がりにセットしインプレッションを行った2.5°前上がりにセットしインプレッションを行った インプレッションは通勤ライドや、荒れた路面を含む筑波山周辺での山岳ライドを含む200kmに渡って行った。サドルのフィット感には個人差があるが、確かに快適性が高いという第一印象を持った。特に中央部付近はパット量が豊富なこととベースがナイロン製であることが相まって、衝撃に対して十分に変形してくれる。

ノーズ付近はサドル上面からレールが見えてしまう程に細いことが特徴的で、足がやや太めな方や骨盤幅が狭いライダーでも大腿部の内側とサドルが擦れにくいはずだ。快適性については、パッド量こそ豊富だが、レールとベースの接続部分がやや前方に位置することから全体的な変形量が少ないため、標準的だと感じた。

実はこれまでもフラットな断面形状のサドルを幾つか試してきたが、坐骨付近に激しい痛みを感じることがほとんだった。しかしアスチュートは後端付近にやや硬めのパッドを配すことでサドルと坐骨の点接触を防止しており、今回のインプレッションではその効果を実感する事が出来た。実際に100km乗った後でも痛みは感じることは少なかった。また、尿道や腰の痛みは皆無であった。

実測166gと軽量で、ダンシングの振りも軽やか実測166gと軽量で、ダンシングの振りも軽やか 柔軟性に富むサドル中央部分柔軟性に富むサドル中央部分


アスチュートは決して万人向きではないが、フィットするライダーはとても多いはず。「薄手でフラットな断面形状を持つサドルが好みだけど、快適性がたりない」という方に是非試してもらいたいサドルだ。ただ、今回インプレッションで使用したカーボンレールモデルはレール形状が特殊な為、サドルバックによって装着できない可能性があることには留意がする必要があるだろう。また、表皮が多少汚れやすい様に感じたが、お手入れに関しては中性洗剤を溶かした水と真水で拭いた後によく乾燥させるだけと容易であり、末永く綺麗に使用することができるだろう。


アスチュート SKYCARB
ベース:カーボン
レール:中空カーボン
サイズ:135×275mm
重 量:145g(SR)、140g(VT)
カラー:ブラック/カーボン、ホワイト/カーボン
価 格:53,000円(税抜、SR)、54,500円(税抜、VT)

アスチュート SKYLITE
ベース:特殊ナイロン
レール:中空カーボン
サイズ:135×275mm
重 量:165g(SR)、160g(VT)※VTは実測166g
カラー:ホワイト/レッド、ブラック/ブラック
価 格:27,600円(税抜、SR)、28,500円(税抜、VT)


アスチュート SKYLINE
ベース:特殊ナイロン
レール:チタンバナジウム合金
サイズ:135×275mm
重 量:200g(SR)、190g(VT)※SRは実測207g
カラー:ホワイト/レッド、ホワイト/ブラック、ブラック/レッド、ブラック/ブラック
価 格:18,900円(税抜、SR)、19,900円(税抜、VT)


text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO


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