シクロクロスレーサーのパワーとテクニックを問うマキノ高原のコースで繰り広げられた竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)の闘い。若手の走りも光ったエリート男子の模様をお伝えします。



エリート男子 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)を先頭にスタートエリート男子 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)を先頭にスタート photo:Kei Tsuji


エリート男子 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)率いる先頭パックエリート男子 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)率いる先頭パック photo:Kei Tsuji前日の雨は朝まで降り続いたが、全日本チャンピオンを決めるエリート男子レースが始まる午後1時にはすっかり晴れ模様に。雨と朝露によって濡れた路面はほぼドライな状況。スタート94名というシクロクロス全日本選手権史上最も大きな集団が、マキノ高原スキー場へと解き放たれていった。

エリート男子 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が先頭でペースを緩めないエリート男子 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が先頭でペースを緩めない photo:Kei Tsuji狭いキャンバー区間と高速ダウンヒルを経て、竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が下馬評通りに先行する。しばらく武井亨介(TEAM FORZA!)と前田公平(TEAM SCOTT)、横山航太(篠ノ井高校)が食らいついたものの、2人の1988年生まれ・25歳が徐々にリードを広げていく。

エリート男子 先頭を走る竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)エリート男子 先頭を走る竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji「スタートは良かったんですが、2〜3周目はペースが上がらなかった。(小坂)光はとても調子が良かったんだと思います。踏めていたし、自分が光のペースに引っ張られるように周回しました。『やばい、これは絡んだ展開になる』と思った」と、竹之内は序盤の展開について振り返る。確かに小坂が積極的にペースを上げるシーンが多く見受けられた。

竹之内と小坂が先頭で攻防を繰り広げるその後方では、スタートで少し出遅れた沢田時(チームブリヂストンアンカー)が横山と武井を抜いて3番手にジャンプアップ。その後方に濱由嵩(SNELシクロクロスチーム)や小坂正則(スワコレーシングチーム)が続く。

合計8周回のうち、中盤に差し掛かる4周目で先頭に動きが。パンクした小坂が踏み続けながらも遅れ、竹之内の先行が決まる。「これから!という時にパンクしてしまった。調子も良かったし、自分のペースで走れていた。後半に上げて行こうと思っていたタイミングでした。ピットの横を過ぎてすぐにパンクに気付いて半周をそのまま走った」という小坂は、追い上げてきた沢田にも抜かれて3番手に後退。先頭竹之内、2番手沢田、3番手小坂の順で後半戦へと入っていく。



エリート男子 小坂のパンクにより2番手に上がる沢田時(チームブリヂストンアンカー)エリート男子 小坂のパンクにより2番手に上がる沢田時(チームブリヂストンアンカー) photo:Kei Tsujiエリート男子 階段を駆け上がる小橋勇利(愛媛県自転車競技連盟)らエリート男子 階段を駆け上がる小橋勇利(愛媛県自転車競技連盟)ら photo:Kei Tsuji
エリート男子 誰よりも速いペースで下りをこなす竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)エリート男子 誰よりも速いペースで下りをこなす竹之内悠(コルバ・スペラーノハム) photo:Kei Tsuji


エリート男子 三連覇に向かって走る竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)エリート男子 三連覇に向かって走る竹之内悠(コルバ・スペラーノハム) photo:Kei Tsujiピットに頻繁に入り、ブルーとピンクのバイクを乗り換えながら落ち着いて周回を重ねる竹之内。「ピットと相談してバイクを整え、自分がペースを上げようと思ったタイミングで光がパンク。後ろとの差が開いていることを確認しながら、確実に勝てるように、少しでもタイヤに不安があればすぐピットでバイクを交換しました」。

エリート男子 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が沢田時(チームブリヂストンアンカー)に合流エリート男子 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が沢田時(チームブリヂストンアンカー)に合流 photo:Kei Tsujiそのまま竹之内は後方を引き離したまま最終周回へ。「とても気にいっているので、このバイクでフィニッシュしたかった」というレース初投入のピンクのバイクに乗り換え、余裕をもってフィニッシュラインを駆け抜けた。

エリート男子 歓声に包まれてフィニッシュにやってきた竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)エリート男子 歓声に包まれてフィニッシュにやってきた竹之内悠(コルバ・スペラーノハム) photo:Kei Tsuji終わってみれば後続と57秒差。傍から見れば大きなリードでの三連覇だが、レース後の表情は決して明るくない。「今日は辻浦(圭一)さんがピットに入られていて、しょうもない走りをしたら怒られると思いながら走っていました。師匠(辻浦)が来てくれたことで緊張感をもって走ることが出来た。2年前に初めてタイトルを穫った場所なので、もっとしっかり良い走りを見せたかった。精進します」。

「今年は1月から12月までフルでレースを走っているので、もう年内の国内レースは走らないかも知れません。世界選手権を見据え、レースを控えてトレーニングに集中します」。竹之内はしばらく国内で過ごした後、再びヨーロッパにわたり、世界選手権を目標に闘っていく。

後続は沢田と小坂の一騎打ちに。追い上げた小坂がスプリントで沢田を下して2番手に入ったが、その顔には喪失感が浮かぶ。「全日本選手権にコンディションが合い、自信もあって勝ちたかった。でもこれも実力のうちです。後方から追い付いた沢田君と協力して、最後まで集中して走りましたが、届かなかった」。小坂は2年連続の全日本選手権2位。「1年間が終わった」と語る小坂の1年間が始まる。

U23対象選手ながら3位に入った沢田にはAJOCCのU23チャンピオンジャージが授与。また、沢田にシクロクロスの手ほどきを受けたという小橋が横山を振り切って4位に入っている。トップ10の選手のうちU23対象選手は5名。なお、100名近い選手でのスタートとなったエリートレースの人数を減らすためにも、2014年はU23カテゴリーを設ける方向で動いているという。



エリート男子 2位争いのスプリントを繰り広げる小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)と沢田時(チームブリヂストンアンカー)エリート男子 2位争いのスプリントを繰り広げる小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)と沢田時(チームブリヂストンアンカー) photo:Kei Tsujiエリート男子表彰台エリート男子表彰台 photo:Kei Tsuji



エリート男子
1位 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)             57'44"(Ave.22.7km/h)
2位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)           +57"
3位 沢田時(チームブリヂストンアンカー)
4位 小橋勇利(愛媛県自転車競技連盟)              +1'37"
5位 横山航太(篠ノ井高校)                   +2'01"
6位 濱由嵩(SNELシクロクロスチーム)              +2'42"
7位 小坂正則(スワコレーシングチーム)             +3'09"
8位 中原義貴(キャノンデール)                 +3'35"
9位 山田誉史輝(DIRTFREAK/LITEC)              +3'46"
10位 丸山厚(JP SPORTS TEST TEAM-MASSA-ANDEX)     +4'12"

text&photo:Kei Tsuji