奈良県宇陀地方は「まほろば」と呼ばれる風光明媚で落ち着いた住みやすい場所だ。ここを舞台に初のサイクリングイベント「ツアー・オブ・奈良・まほろば」が2日間にわたって開催された。

心地よい大宇陀の小川沿いのサイクリングルート心地よい大宇陀の小川沿いのサイクリングルート photo:Hideaki TAKAGI
舞台は奈良県東部の宇陀市、山添村、曽爾村、御杖村を中心とした地域で、本会場は宇陀市の「心の森総合福祉公園」。初日の11月23日(土)はふれあい交流ドームでのコンサートなどが、2日目の11月24日(日)には3コースに分かれてのサイクリングツアーが行われた。

奈良県の自転車関係者が一堂に会した会場

この大会はツアー・オブ・奈良・まほろば実行委員会が主催するもので、主催者側名簿には奈良県をはじめ、奈良県サイクリング協会、奈良県自転車競技連盟、日本競輪選手会奈良支部、さらには県下の自転車チームなど多岐に渡る。副委員長には榛生昇陽高校の徳地末広教頭、倍巖良明法徳寺住職が。さらには発起人の一人、上司辰治氏も顔を見せる。

まんまさん夫妻あってのツアー・オブ・奈良・まほろばまんまさん夫妻あってのツアー・オブ・奈良・まほろば photo:Hideaki TAKAGI奈良をベースに活動する自転車競技チームが全面応援奈良をベースに活動する自転車競技チームが全面応援 photo:Hideaki TAKAGI


そう、中心となったメンバーは、ツアー・オブ・ジャパン奈良ステージ開催に当時奔走した人たちだ。彼らがふたたびこのイベントのために集まったのだ。事務局長の石津恵美子さんは、新薬師寺前のカレー屋さん、「まんま亭」の”まんまママ”だ。夫の佳也さんも名を連ねる。シエルヴォ奈良MERIDAサイクリングチーム、まんま-AO・HANI Cycling Teamメンバーもスタッフとして協力。奈良県下すべての自転車関係者が集ったと言ってもいいメンバーだ。

イベントたくさんの初日

11月23日(土)はふれあいサイクルカーニバルが開催された。安全・マナーアップ・メンテナンス講習や各コースの案内などがシエルヴォ奈良MERIDAサイクリングチームやガイドさんたちからなされる。ふれあい交流広場では日本競輪選手会奈良支部の選手などがタンデム車のサイクリング体験をアシストした。

園内をタンデム走行体験。競輪選手会奈良支部も応援園内をタンデム走行体験。競輪選手会奈良支部も応援 photo:Hideaki TAKAGI激しくダンスを踊るせんとくん激しくダンスを踊るせんとくん photo:Hideaki TAKAGI

ふれあい交流ドームでは、各市村のゆるキャラが子供たちと交流を深める。そして真打ちはもちろん”せんとくん”。ステージ所狭しとダンスを披露し、拍手喝采。とても機敏でジャンプもするせんとくんに、子どもも大人も目が釘付けという人気者でした。そしてたくさんのグッズがもらえるじゃんけん大会も。

河島翔馬さんが御杖小学校の生徒たちと交流

そしてお楽しみはシンガーソングライター・河島翔馬さんのコンサート。まずは名曲「野風増」を披露。力強く暖かい歌声が響く。そして会場を見渡すとたくさんの小学生が。御杖(みつえ)村立御杖小学校の生徒たちだ。この御杖小学校校歌の作詞作曲は父の故・河島英五さんなのだ。息子の翔馬さんと、御杖小学校の生徒たちが初めて一緒に校歌を歌う場面に、居合わせた皆の目頭が熱くなる。

御杖小学校校歌を歌う河島翔馬さんと生徒。父・河島英五さんの作詞作曲だ御杖小学校校歌を歌う河島翔馬さんと生徒。父・河島英五さんの作詞作曲だ photo:Hideaki TAKAGI晩秋の夕方に花火が晩秋の夕方に花火が photo:Hideaki TAKAGI

暖かいコンサートで心も温まったところで、ふれあい交流広場に花火が打ちあがる。晩秋の夕空を花火が彩ったところで初日のイベントはおしまい。参加者のうち70名ほどとスタッフは近くの奈良県野外活動センターへ。ロッジやログハウスでキャンプ気分を楽しんで翌朝へ備えた。

2日目はサイクリングツアー

まだあたりが暗い朝5時から受付が開始された。合計500人の参加者で会場は賑わう。7時から山添コースと曽爾・御杖コースのツアーがスタート。山添コースは90kmで紅葉の室生寺を通り、ツアー・オブ・ジャパンが走った布目ダムまで北上、針経由で大宇陀に戻る、上り標高差1443mのきついもの。
曽爾・御杖コースは92kmで曽爾高原に上がって室生寺を経由して大宇陀に戻る、上り標高差1632mのハードコース。朝9時30分スタートの宇陀サイクリングコースは、27kmで榛原近辺を巡る基本平坦のコースだ。

山添/曽爾・御杖コースがスタート、高校生が先導役山添/曽爾・御杖コースがスタート、高校生が先導役 photo:Hideaki TAKAGI適度なアップダウンが続きます適度なアップダウンが続きます photo:Hideaki TAKAGI

曽爾高原は一面ススキの原曽爾高原は一面ススキの原 photo:Hideaki TAKAGI苦行のあとには絶景が苦行のあとには絶景が photo:Hideaki TAKAGI

布目ダムではツアー・オブ・ジャパンのレース関係者には馴染み深い場所、奈良ステージのフィニッシュ地点がエイドステーションとなった。
曽爾高原はエイドステーションがもっとも高所にあり、一面がススキ野原の絶景。「参加者215名ぶんを仕込んできました」という鮎の塩焼きや、田舎こんにゃくなどが全員に振舞われた。

なんと一人1本、215本用意された鮎の塩焼きなんと一人1本、215本用意された鮎の塩焼き photo:Hideaki TAKAGI兜岩を背に下り基調の快適ルート兜岩を背に下り基調の快適ルート photo:Hideaki TAKAGI

成り立ちから今後へ 発起人の一人の上司辰治氏

最終走者とゴールの若杉圭祐(シエルヴォ奈良MERIDAサイクリングチーム)。おつかれさま!最終走者とゴールの若杉圭祐(シエルヴォ奈良MERIDAサイクリングチーム)。おつかれさま! photo:Hideaki TAKAGI2010年まで11回行われてきたツアー・オブ・ジャパンの奈良ステージだが、今は実施されていない。しかしここでの結びつきは多大なものがあった。
「”ツアー・オブ”という名前については複雑な気持ちがあります。でも当時、いろいろな組織が有機的に結びついたのがツアー・オブ・ジャパンです。こちらでは今でも「ツアー・オブ」と地元で言われています。そして今回、まんまママさんを軸に自転車に関わる人たちがふたたび結びついたのが実行委員会です。ツアー・オブの名前はひとつの歴史を次のステップとして何かしよう、というときに皆から出たものです」
実行委員会副委員長の徳地末広氏と発起人の一人、上司辰治氏実行委員会副委員長の徳地末広氏と発起人の一人、上司辰治氏 photo:Hideaki TAKAGI
そして今後については「いま、奈良県はじめ自治体が継続して協力・連携する支えがあります。そして来てもらうだけでなく、高校生がマラソンの先導などほかのイベントに出向く動きも出てきました。今後奈良でロードだけでなくシクロクロスやトラックレースがもっと開かれればと思います。それがいずれ国際レース、UCIレースになればという想いはあります。今ならば奈良出身の強力な選手がそういうレースに出られると思うので、そうなれば、と」と思いを語る。

当日は立哨で奔走した徳地副委員長は「練習でも走らないような場所を通るいい大会です。今後はサイクリングに加えて、競技性のある何かをできる範囲で考えていきたいですね。今回の大会は宇陀が自転車のメッカになるきっかけになると思います」と、競技に対する期待も。

初年度にもかかわらず500人の参加者を集めた大会。来年の開催が楽しみだ。
なお豪華賞品がたくさんのフォトコンテストは12月20日までの応募締め切りで現在受付中だ。

photo&text:高木秀彰

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