20年以上に渡る選手生活にピリオドを打った福島晋一(NIPPO・デローザ)。最後のレースとなったさいたまクリテリウムbyツール・ド・フランスのレース終了後に引退セレモニーが行われた。日本ロード界を牽引してきた功績者は、清々しい笑顔と共に自転車を降りた。



この日も福島は自身のモットーとする熱い走りを見せた。まずは、マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)ら強豪を含む最初の強力な逃げグループに単独で追走。一度メイン集団に引き戻された後、新たに形成された逃げグループに再び単独で追走を仕掛け、合流後にはルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)らを相手にアタックを見せるもシーンも。この日会場が最も湧いた瞬間の1つだった。最終的にはトップから12秒遅れのメイン集団内でゴールし、現役最後のレースを14位で終えた。

長きに渡る現役生活を振り返る福島晋一長きに渡る現役生活を振り返る福島晋一 photo:Makoto.AYANO
セレモニーが行われたのはさいたまクリテリウムの全表彰が終了した後、つまり今大会のフィナーレ。声援と共に、眩しいくらいのフラッシュを浴びながらセレモニーに登場した福島。頬に涙が伝うファンもいる一方、福島は達成感と充実感に満ちた表情を見せた。

ポディウムガールから花束を受け取った後、今大会で司会を努め、長きに渡って親交がある飯島美和さんのからの挨拶と共に、福島は引退に対する思いやレースの感想、そして今後の活動について語った。



福島晋一のコメント

引退する福島晋一(チームNIPPO・デローザ)と全日本チャンピオンの新城幸也(ユーロップカー)引退する福島晋一(チームNIPPO・デローザ)と全日本チャンピオンの新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji(引退に対する思いを一言でと言う質問に)一言では語り尽くせないと思いますが、今日は沢山の応援を頂きありがとうございました。35歳から引退のことを考えて走ってきましたが、42歳まで走り続けて、最後にさいたまを走れて本当に良かったです。

単独で逃げを追う福島晋一(チームNIPPO・デローザ)単独で逃げを追う福島晋一(チームNIPPO・デローザ) photo:Kei Tsujiレースについてですが、自分はいつも時間に遅れる癖がありまして、今日も逃げに乗ろうと思っていましたが、逃げが先行してから「あっ、やべっ」と思って追走しました。1回目の逃げには追いつかなかったですが、2回目の逃げを追う時に「ここで追いつかなかったら僕を応援してくれているアラフォーのファンに絶対に悪い影響が出る」と思い、後の事を考えずに一踏み一踏み全力で走りました。

単独で追走を図る福島晋一(チームNIPPO・デローザ)単独で追走を図る福島晋一(チームNIPPO・デローザ) photo:So.Isobe追いついたら更にアタックするしか無いと思い、アタックしましたがさすがに世界チャンピオン(ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター))が許してくれませんでした。

引退レースを走り終えた福島晋一(チームNIPPO・デローザ)引退レースを走り終えた福島晋一(チームNIPPO・デローザ) photo:Kei Tsuji(選手生活の中で)中々満足出来たレースが少ない中、負けたレースの悔しさを次のレースにぶつけながら選手生活を送ってきましたが、今日のレースでこれまで溜まってきた悔しさを成仏することが出来ました(笑)。ただ、(新城)幸也には今日のレースで勝って貰いたかったのですが、幸也のリザルト(29秒遅れの49位)は僕に対して「まだ引退してほしくない」というメッセージなのかとも思いました。

これからフランスのマルセイユに渡り、今回来日した世界チャンピオンやツール・ド・フランスのチャンピオンに日本人選手がどうやったら近づけるのかを勉強してきます。これからも日本の自転車選手に応援よろしくお願いします。

最後に、これまで一緒に戦ってきたチームメイトや僕を育ててくれた浅田顕監督、この会場に来て下さった方を含めこれまで応援して下さったファンの皆様、そして今日はまだ会えていませんが僕の奥さんと子供たちに感謝を伝えたいと思います。本当にありがとうございました。

また、セレモニーの終了後にはシクロワイアードのインタビューにも応えてくれた。

ー最後のレースをエキップ・アサダ時代のチームメイトである新城幸也や増田幸成、清水都貴、中島康晴と共に走れたことについて

ツール・ド・フランス出場を目指して同じチームで走っていた当時はお互いに切磋琢磨し、衝突することもありましたが、当時はそれだけ本気で取り組んでいたということです。今は違うチームに所属していますが、彼らは全員仲間です。きっと、(選手とは)違う形で一緒に仕事できる日が来ると思います。



眩しいくらいのフラッシュと歓声を受けながら現役生活を終える眩しいくらいのフラッシュと歓声を受けながら現役生活を終える photo:So.Isobe涙を見せる事なく、終始笑顔で引退セレモニーを終えた福島晋一。レース中やセレモニーで向けられた歓声は来日した海外選手に対するそれと同等、もしくはそれ以上であった。

「お兄ちゃん」の愛称で親しまれてきた熱き男が歩む、第2の人生の門出に成功を願わずにはいられない。


text&movie:Yuya.Yamamoto