マイヨジョーヌのクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)がアタック。その瞬間、会場は大きなどよめきに包まれた。世界チャンピオンとマイヨヴェールを引き離し、Vサインでフィニッシュするフルーム。ツアー・オブ・ジャパンでのステージ優勝から6年、世界最高峰のライダーがさいたまで勝利した。



マイヨジョーヌにゼッケンを付けるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)マイヨジョーヌにゼッケンを付けるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji台風27号は南に逸れた。前座レースとして開催されたポイントレースは気温12度ほどの冷たい雨に包まれたものの、メインレースのクリテリウムがスタートする頃には雨も上がり、雲の切れ間から青い空が姿を見せ始めた。

晴れ間ののぞき始めたさいたま新都心をスタート晴れ間ののぞき始めたさいたま新都心をスタート photo:Kei Tsuji日本人選手たちの積極性が光ったのが、偶数と奇数のゼッケンで2組に分かれて行なわれたポイントレース(8周回)。

1組目では橋本英也(鹿屋体育大)や別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が独走を披露して会場を沸かせ、常に上位でポイントを獲得した畑中勇介(シマノレーシング)が勝利。2組目は中島康晴(愛三工業レーシング)と内間康平(チームNIPPO・デローザ)が長時間エスケープ。ゴール手前で吸収されながらも中島がトップを守った。

午後3時、ニュートラル周回を経て、20周回・全長54kmのクリテリウムレースが始まる。雨のレースを免れたことに選手たちの顔には安堵が浮かぶ。スタートを切ったのは55名の選手たち。

レースは1周目から高速化し、2周目に差し掛かる頃には日本人選手を中心にした逃げグループが形成される。この日の本命スプリンターであり、ツール・ド・フランスでステージ4勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)や、アルカンシェルを着るルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)らもこの中に入った。



観客が詰めかけたさいたま新都心の周回コース観客が詰めかけたさいたま新都心の周回コース photo:Kei Tsuji
観客が詰めかけたさいたま新都心の周回コース観客が詰めかけたさいたま新都心の周回コース photo:Kei Tsujiアンダーパスを抜けてUターンに向かうプロトンアンダーパスを抜けてUターンに向かうプロトン photo:Kei Tsuji



逃げグループを追う福島晋一(チームNIPPO・デローザ)逃げグループを追う福島晋一(チームNIPPO・デローザ) photo:Kei Tsujiさいたま新都心駅アンダーパス(高低差10m・勾配7%ほど)の出口に設置された山岳ポイントでは、世界チャンピオンのコスタがその瞬発力を見せつけて先頭通過を繰り返す。

逃げ続ける別府史之(オリカ・グリーンエッジ)逃げ続ける別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji逃げグループの後方では、現役引退レースを迎えた福島晋一(チームNIPPO・デローザ)が単独カウンターアタックを仕掛け、数周にわたる追撃の末に逃げグループに合流した。

4周毎に設定されたスプリントポイントで、西薗良太(チャンピオンシステム)らを振り切って先頭通過を繰り返したのは別府史之(オリカ・グリーンエッジ)。ポイントレースに続いて観客を沸かせた別府は、そのまま逃げグループから飛び出して独走を開始する。

スカイプロサイクリングやアルゴス・シマノ、キャノンデールプロサイクリング率いるメイン集団を相手に勝負を挑んだ別府。その闘志溢れる走りに大声援が飛ぶ。「たくさんの応援が力になりました」と語る別府は敢闘賞に輝いている。

残り3周で別府が吸収されると、集団スプリントに向けて加速して行くプロトン。キッテル擁するアルゴス・シマノが集団前方で目を光らせる中、ゴールまで2周を残して決定的な逃げが生まれた。



コクーン前のUターンを駆け抜けるプトロンコクーン前のUターンを駆け抜けるプトロン photo:Kei Tsuji
チームメイトに守られて走るクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)チームメイトに守られて走るクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsujiアルゴス・シマノがメイン集団を率いるアルゴス・シマノがメイン集団を率いる photo:Kei Tsuji



カウンターアタックで飛び出したルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)らカウンターアタックで飛び出したルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)ら photo:Kei Tsujiメイン集団から飛び出したのはマイヨジョーヌのフルーム、マイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)、そしてアルカンシェルのコスタというスペシャルジャージホルダー3名。最終周回に入ったこのトップスリーの中から、フルームが残り1kmから独走した。

アタックのタイミングを伺うクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)アタックのタイミングを伺うクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsujiサガンとコスタを振り切って、アルゴス・シマノ率いるメイン集団を振り切って、マイヨジョーヌのフルームが独走でフィニッシュ。2007年ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージでの勝利に続く「日本での2勝目」を意味するVサインでフィニッシュラインを駆け抜けた。

前回の来日時と比べて「遥かに自転車人気の高まりを感じることが出来た。こんなイベントが日本で行われるようになるとは、その当時想像することが出来なかった」と言うフルーム。ツール覇者としての威厳を見せつける勝利に、さいたま新都心が沸いた。

悪天候の中、初回大会を成功に結びつけた清水勇人さいたま市長は「天候が心配だったが、無事開催できたことにほっとしている。本日観戦にいらした皆様がどんな感想をもったかは分からないが、選手たちの素晴らしい走りを観ることができ、雰囲気からは成功だったという実感があります」とコメント。気になる今後の開催については「ASOとは来年度以降も大会を継続開催したいという意向で同意しています」と語っている。



Vサインでフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)Vサインでフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji
2位争いのスプリントはペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)に軍配2位争いのスプリントはペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)に軍配 photo:Kei Tsujiさいたまクリテリウム表彰台さいたまクリテリウム表彰台 photo:Kei Tsuji



さいたまクリテリウムbyツール・ド・フランス2013結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)       1h17'10"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)   +07"
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
4位 トム・フィーラース(オランダ、アルゴス・シマノ)           +12"
5位 窪木一茂(日本、マトリックスパワータグ)
6位 中島康晴(日本、愛三工業レーシング)
7位 小室雅成(日本、イナーメ・信濃山形)
8位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)
9位 吉田隼人(日本、シマノレーシング)
10位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)

ポイント賞
別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)

チーム成績
キャノンデールプロサイクリング

敢闘賞
別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)

川室賞(日本人最高位)
窪木一茂(日本、マトリックスパワータグ)

ポイントレース1組目
1位 畑中勇介(シマノレーシング)                 15pts
2位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)              13pts
3位 トム・フィーラース(オランダ、アルゴス・シマノ)       12pts

ポイントレース2組目
1位 中島康晴(愛三工業レーシング)                14pts
2位 内間康平(チームNIPPO・デローザ)              13pts
3位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)          13pts

text:Kei Tsuji

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