休息日を控えたピレネー山岳3日目。サイン台にやってきたユキヤを捉まえてようやくまとまった話を聞くことが出来た。改めて落車の影響がどう身体に出ているのかを聞いた。

レースに持っていくパワーバーを選ぶ新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)レースに持っていくパワーバーを選ぶ新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayanoユキヤ「問題は打ち身なんです。落車で打ったお尻の筋肉が固まってしまっているんです。マッサージすることができないので...。ずっと踏み続けるのがつらいんです。脚を休められるところがあるコースだといいんですけど、山岳だから登りはお尻を使うじゃないですか」。

調子自体は良く、「完走することに不安はまったく無い」と言う。表情は明るくなってきた。そしてスタッフに聞くところ睡眠も十分取れているようで、ホテルではリラックスしている様子だとのこと。

スタートする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)スタートする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayanoアスパンとツールマレー、2つの峠を目指すこのステージ。ユキヤはカンパ・ボーラをハイペロンに換えて臨む。普段はどんなコースでもすべてボーラで通すが、「人生2度目のハイペロン」だとか。

スタート前にはパワーバーのブースに立ち寄って、ジェルやバーなどの補給食をあれこれ見比べながら選び、一式ポッケに詰め込む。長い一日のお供、味は大切?

フミはポラールの発信機をつけて走ることになったとか。心拍センサーからの情報を飛ばす機器をサドルの後ろにサドルバッグで取り付けるが、それなりに重量が増えるので、(精神的)な余裕がある選手でなければ受けてくれない。フミにはその余裕があるということだろう。2人とも、今日を乗り切れ!

アスパン峠は超定番の峠

ガーミンの選手はジロの新型ヘルメットを使用、アタマのてっぺんには無線がつくガーミンの選手はジロの新型ヘルメットを使用、アタマのてっぺんには無線がつく photo:Makoto Ayanoヘルメットの上にパワーメーターの計測器、あるいは無線のレシーバーと思われる発信器を載せたザブリスキーの姿はちょっと滑稽だ。数人のみ軽量タイプ(?)の白いヘルメットをかぶるのはラボバンクの選手たち。まだ目を引く山岳仕様は登場していないか。

今日も朝から快晴。不快な暑さはなく、爽やな気候だ。最高気温の予想は28℃。ピレネーの小さな街サンゴーダンを出発していくプロトン。街中をぐるりと一回りしてからのスタートだ。

観客が詰めかけたアスパン峠頂上観客が詰めかけたアスパン峠頂上 photo:Makoto Ayanoピレネーの麓のこの一帯は、毎年のようにツールで訪れる。山に向かう道には小さな村が続き、手作りの横断幕やデコレーションが目を楽しませてくれる。観客たちも観戦を心得ているのだろう、余裕が感じられる。そして山道に入ると道化系の応援が登場。

アスパン峠頂上に登っても肌寒さは感じない。昨年リッコのアタックに震撼したこの峠で、同じポジションに位置して先頭を待つことに。頂上手前50m、崩れそうな山の右斜面の、草地と土の間の窪み。落っこちる危険もあるけど、後で駆けつけても観客にブーイングされない定位置。アスパンは「これまでツールに登場すること70回以上」とのことだが、このピレネー山脈定番の峠の、この同じ場所にツール取材12回目の小生がカメラ持って立つのは何度目だろう? 自分でも数えて5本程度は指が立ちそうだ。

ピエロッ、ペッリ、イェンス!

アスパン峠を上るピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)アスパン峠を上るピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) photo:Makoto Ayanoフェドリゴの先導でアスパンに現れた先頭3人。フェドリゴ、ペッリツォッティ、フォイクト。フェドリゴはドーフィネリベレでの好調を持ち越し、ペッリツォッティはジロの表彰台という目標を果たし、ツールではステージと山岳賞狙いに焦点を絞る。フォイクトは年齢を重ねるごとに上りも強くなっているように見えるのは気のせいか。

追走マイヨジョーヌ集団はアージェードゥーゼルが先頭責任を果たす。アスタナが先頭に出て仕事をするのが当たり前になっていたからか、違和感を覚えるほどだ。ノチェンティーニも集団前方につける。

フランス−イタリア同盟

アスパン峠を先頭で通過するフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)アスパン峠を先頭で通過するフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Makoto Ayano優勝候補たちが動きを見せないのは、すでにアルプスでの闘いに頭を切り替えているからだろうか、それとも今日のゴールの街タルブが、ツゥールマレー峠下ってから、延々と平坦路をこなした先だからだろうか。いずれにせよ山岳ステージであるのにゴールの設定がこのステージの面白さを奪っているのは確実だ。

「アスタナを倒すためには総合を狙うチームが同盟を組むことも必要だ」と昨ステージのゴール後に話してくれたのはサイレンス・ロットのヘンドリック・ルダン監督。しかし今はまだその動きは見えない。逆にアームストロングが力を誇示するかのような動きを見せている。

ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)のスプリント対決ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)のスプリント対決 photo:Makoto Ayano逃げのペースをつくったフォイクトはトゥールマレーで遅れてしまった。もし2人に着いて行ければ集団にはもっと大きな差がついたはずだ。

フェドリゴとペッリツォッティの逃げはフランス−イタリア同盟。それぞれの国を代表するキャラの選手だ。ゴール直前まで協力しあい、ゴールは正々堂々、駆け引きなしの「ガチンコ勝負」だった。肩と肩をぶつけ合うようにして最終コーナーの位置取りを争いあい、
フェドリゴが勝利した。

手を挙げてゴールに飛び込むピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)手を挙げてゴールに飛び込むピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano"シャポー・ピエロ(帽子をかぶったピエロ)"の愛称がつくフェドリゴ。前回のツールでのステージ優勝は、2006年にガップにゴールするステージでサルヴァトーレ・コンメッソ(当時ランプレ)と一騎打ちのゴール勝負に勝ってのものだった。

同じように山岳で逃げた2人はゴール前の一騎打ちバトルに。そのときも利用しあううような駆け引きがなく(無いように見えた)、真っ向勝負過ぎるようなコンメッソの、早めのゴールプリントに冷静に対処したフェドリゴがゴールラインでコンメッソを楽々交わした。

そのときフェドリゴが見せたのは、今日と同じような威風堂々ガッツポーズ。そしてコンメッソは呆然としてしばらく道路に座り込んでいた。ペッリツォッティは正々堂々と闘って負けた末、「負けたのはただフェドリゴが強かっただけ」と、言い訳も無い爽やかさだった。ペッリはこの先、山岳賞を狙っている。


山岳ステージで集団スプリント?

後続のメイン集団はオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)先頭後続のメイン集団はオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)先頭 photo:Makoto Ayanoメイン集団は最終的に80人にも膨らみ、そのなかでのゴールスプリント争いになった。山岳ステージであるはずなのに80人のゴール勝負になるとは、やはりコース設定の悪さのせいにしても良いはず。本来ならルルドでゴールさせるぐらいが丁度いいはずだ。

昨年のマイヨヴェール獲得者オスカル・フレイレ(ラボバンク)はアスパン峠でも先頭を逃げる小集団に入り込み、登れるスプリンターであることを披露した。ポイント賞総合争いは首位フースホフトの117ポイントに対しフレイレは5位で62点。地道にコツコツ稼げば、あるいはまだチャンスはあるかもしれない。


ブイグが賞金獲得No.1チームに

ピレネー3連戦を闘い終えた新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)ピレネー3連戦を闘い終えた新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano新城はグルペットの前の小集団でゴール。チームメイトのフェドリゴの勝利はまだ走っているときにオートバイ審判から教えられたという。

ピレネーを無事乗り切って、ひとまずツールの最初の山を越えた。フミもユキヤも完走は当たり前にできそうだ。

ユキヤへ質問「休息日は何をする?」。 「寝ます!」

ブイグテレコムは2勝目でチームの積算賞金獲得額は31,650ユーロとチーム首位になったことがコミュニケで出された。3百数十万円相当の賞金だ。

波紋呼ぶアームストロングの発言

「ランス、王の帰還」「ランス、王の帰還」 photo:Makoto Ayano選手たちはすぐ飛行場に向かい、明日の休息日を過ごすリモージュまで飛行機で飛ぶ。プレス陣や陸路移動スタッフたちはまたクルマを運転して(せっかくの休日だというのに)500km程度の移動に半日を費やす。

さっそく移動したいのに、プレスセンターで仕事をしているとアームストロングがフランステレビジョンのインタビューに生出演して喋りだした。今一番話題になっているコンタドールとのことを質問に答える形でしゃべるのだが、その内容はなかなか刺激的で、ツールのこの先の展開を一層分からなくしてくれた。

「コンタドールのアンドラ・アルカリスでのアタックは素晴らしかったが、着いていこうと思えば着いて行けた。だがライバルたちの動きをマークするために(しかたなく)留まった。それが自転車レースというものだ」(残念気に)。

コンタドールに対して勝負を挑むような発言内容は、ランスの本心か。やはりこの男は少なからず優勝を狙ってツールに来ている。コンタドールとの間に緊張感があるのは、決してメディアが作り上げるストーリーというワケではなさそうだ。

ブイグのシャンパン駆けつけ3杯

休息日にリラックスする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)休息日にリラックスする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayanoこのテレビ生出演が原因か、選手たちを乗せた飛行機は大きく遅れた。アームストロングが到着するのを待ってから出発したようだ。ブイグの選手はこの30分ほどの待合いの間にシャンパンを空港のバーで飲んでいた。

そしてリモージュについてからもホテルでシャンパンやワインで乾杯が続いたそうだ。

無線廃止の第10、13ステージ

休息日にリラックスする別府史之(日本、スキル・シマノ)休息日にリラックスする別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoレースラジオ=無線、インカム の使用を止めようという試みが第10ステージと13ステージに行われる。レースの原点に返り、選手たちが走りながら自分で判断することで面白さの原点に返ろうという動きだ。しかし選手側からは「パンクや落車の状況が分からないとレースに支障が出るし、危険」という不安の声が上がっており、この廃止案に対してボイコットする可能性もあるという。


※長距離移動のため現地レポートの送稿が遅れました。リモージュについてからの情報も付け加えてアップします。ご了承ください。

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