超級山岳アンドラ・アルカリスの頂上ゴールが登場したツール・ド・フランス第7ステージ。序盤から逃げた選手がゴールまで逃げ切り、23歳の新鋭ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)が大金星を挙げた。総合争いはコンタドールが攻撃を仕掛けるも、リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)が6秒差で首位に浮上した。

大都市バルセロナを離れて山岳地帯へ大都市バルセロナを離れて山岳地帯へ photo:Cor Vos今大会最初の本格的な山岳ステージは、早速一つ目の頂上ゴールが姿を現した。地中海沿いの大都市バルセロナから山岳地帯を抜け、アンドラ国内、ピレネー山脈に佇む超級山岳アルカリスにゴールする。今大会最長224kmのロングステージの先に待っていたのは、ステージ優勝と総合優勝が同時進行する激しい山岳バトルだ。

大観衆が集まったバルセロナをスタート後、早速レースは8km地点でエゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)ら3名の逃げが決まる。

逃げグループを形成するジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)やリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)逃げグループを形成するジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)やリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) photo:Makoto Ayanoこの3名には遅れてリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)やブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)を含む6名が追いつき、32km地点から9名の逃げが始まった。

逃げグループでクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)が積極的に山岳ポイントを加算する中、メイン集団はペースが上がらずにタイム差は14分20秒(55km地点)まで広がる。レース後半に入るとメイン集団はアスタナがコントロールを始めたが、追撃する様子を見せず、ゴールまで30kmを残して逃げグループは11分のリードを保った。

アンドラに向けて幾つもの山岳を越えていくアンドラに向けて幾つもの山岳を越えていく photo:Cor Vos超級山岳アンドラ・アルカリスの上りが近づくとメイン集団はようやくスピードが上がり始めたが、先頭9名を捉えるには時すでに遅し。逃げグループの中でステージ優勝争い、メイン集団内で総合優勝争いが繰り広げられることに。

平均勾配7.1%、登坂距離10.6kmの本格的なアルカリスの上りが始まると、先頭グループではアタックの応酬。ベテラン勢の攻撃は功を奏さず、残り5kmでアタックを成功させたのは、プロ一年目のルーキー、23歳のフェイユだ。

独走で超級山岳アルカリスを駆け上がるブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)独走で超級山岳アルカリスを駆け上がるブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル) photo:Cor Vos集団スプリントで上位に絡むロマンを兄に持つブリース・フェイユは、初出場のツール、初山岳ステージで飛び立った。九十九折りの上りで勢いを持続したフェイユは、ジャージのジッパーを閉め忘れる新人らしいポーズでゴールに飛び込む。ルーキーが大金星を挙げた。

昨年スタジエール(研修生)として兄が所属するアグリチュベルに合流したフェイユは、同年パリ〜コレーズで清水都貴(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)に次いで総合2位&新人賞に輝いている選手だ。

観客が詰めかけた超級山岳アルカリスをアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が駆け上がる観客が詰めかけた超級山岳アルカリスをアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が駆け上がる photo:Cor Vos「何が起こったのか実感が無い」(レース公式サイト)。そう語るフェイユは同時にマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)も獲得している。フランスの新鋭クライマーがここに誕生した。

アスタナが主導権を握って超級山岳アルカリスの上りに突入したメイン集団からは、別府史之(スキル・シマノ)や新城幸也(Bboxブイグテレコム)、総合首位ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が脱落。日本人選手2人はグルペットで上りに挑み、フミは23分23秒遅れの108位、ユキヤはグルペット後方の174位・28分29秒遅れでゴールしている。

トップから23分遅れの集団で超級山岳アルカリスを上る別府史之(日本、スキル・シマノ)トップから23分遅れの集団で超級山岳アルカリスを上る別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoパウリーニョ(ポルトガル)、スベルディア(スペイン)、ポポヴィッチ(ウクライナ)のアスタナの3選手が段階的に引くメイン集団は、ハイペースにより徐々に縮小。アタックの口火を切ったのは、すでに総合成績で3分近く遅れていたカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)だった。

エヴァンスが吸収されると、伏兵ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)がカウンター。このファンデンブロックを追従する形で集団から飛び出したのは、大本命アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)だ。

グルペット後方で超級山岳アルカリスを上る新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)グルペット後方で超級山岳アルカリスを上る新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano凄まじいスピードで超級山岳アルカリスと対峙したコンタドール。これを追うのはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)やエヴァンスが引く10名ほどの追走グループで、この中にはランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)が入り、ライバルたちの動きに目を光らせた。

結局コンタドールは先頭から3分26秒遅れでアルカリス登頂に成功。ライバルたちはその21秒遅れでゴールした。これにより総合成績には大変動が起こり、マイヨジョーヌからカンチェラーラから、コンタドールの3分前でゴールしたノチェンティーニの手に。

独走でアルカリスの頂上ゴールに飛び込むブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)独走でアルカリスの頂上ゴールに飛び込むブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル) photo:Cor Vos山岳アタックを成功させたコンタドールは総合2位に浮上。「マイヨジョーヌは重荷になる。早い時期に獲得するのはチーム戦略に沿わない」(レース公式サイト)と冷静だ。実質的な総合争いにおいてライバルたちからリードを稼ぎ、総合優勝のポールポジションにつけたことは間違いない。

アスタナが総合上位に4名を送り込む鉄壁の走り。その中にブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)とトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)のTTスペシャリスト2人が食い込んだ。新鋭フェイユの優勝やコンタドールの攻撃もさることながら、トラック世界選手権で計6個の金メダルを獲得しているウィギンズの好走も目を見張るものがあった。

マイヨジョーヌに袖を通すリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)マイヨジョーヌに袖を通すリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) photo:Cor Vosその一方で新人賞候補のロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)が同賞対象選手のAシュレクやマルティンから1分近く遅れてゴール。他にもキム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア・HTC)やリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)が総合争いから脱落。山岳初日で総合優勝候補は早くも絞り込まれた。


ツール・ド・フランス2009第7ステージ結果
1位 ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)6h11'31"
2位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)+05"
3位 ヨハネス・フレーリンガー(ドイツ、ミルラム)+25"
4位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)+26"
5位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)+45"
6位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)+1'05"
7位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)+2'32"
8位 ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)+3'14"
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+3'26"
10位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+3'47"
11位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
12位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)
13位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
14位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)
15位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)
16位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
17位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)
18位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)
19位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)
20位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)
108位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+23'23"
174位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+28'29"

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)25h44'32"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+39"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
7位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
9位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
156位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+37'33"
161位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+38'34"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)106pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)105pts
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)66pts
19位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
43位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ブリース・フェイユ(フランス、アグリチュベル)49pts
2位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)46pts
3位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)46pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)25h45'32"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"

チーム総合成績
1位 アスタナ 75h39'51"
2位 アージェードゥーゼル +1'48"
3位 チームコロンビア・HTC +4'42"

第7ステージ敢闘賞
クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)

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