1級山岳アルト・ド・モンテ・ダ・グロバでフィニッシュを迎えるブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージ。異例とも言える大会2日目の山頂フィニッシュで、早速総合優勝候補の明暗が分かれた。ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)が嬉しいグランツール初勝利を手にしている。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第2ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第2ステージ高低図 image:Unipublic2013年のブエルタ・ア・エスパーニャには、実に11もの山頂フィニッシュが登場する。つまり半数以上のステージが山頂フィニッシュという稀に見るコースレイアウト。大会2日目にして早速最初の登りバトルがやってきた。

ガリシア州の海岸線を行くガリシア州の海岸線を行く photo:Vuelta a Espanaポルトガルとの国境に近いガリシア州南部を走る177.7kmのステージで、スタート直後からアレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・シャープ)、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)、ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)の3名が逃げ、最大13分のリードを得る展開。快晴のガリシア州を3名が快調に逃げた。

逃げグループを形成するハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)ら逃げグループを形成するハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)ら photo:Vuelta a Espanaメイン集団をコントロールしたのは前日のステージ優勝チームのアスタナで、ステージ優勝に興味を示すランプレ・メリダとヴァカンソレイユ・DCMが後半にかけて合流する。残り40kmで大西洋に面した海岸線に出ると、向かい風の影響でタイム差はグングン縮まっていく。

最後に待ち構える登坂距離11km・平均勾配5.6%の1級山岳アルト・ド・モンテ・ダ・グロバに向けて、メイン集団はポジション争いを繰り広げながら猛進。最大勾配10%の登りに差し掛かる頃には、逃げグループとメイン集団のタイム差は1分に。登り始めてすぐ、それまで逃げ続けていたラスムッセンらはあえなく吸収された。

逃げ吸収に呼応してカウンターアタックでアメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)が飛び出したものの、モビスターがハイペースを刻むメイン集団を引き離すことが出来ない。

このモビスターの牽引によって、まだ勝負が始まる前の段階で多くの選手が脱落する。決して遅れてはいけないサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)やセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)が力なく集団から千切れていった。

向かい風が吹く平坦区間でメイン集団を牽引するヴァカンソレイユ・DCMとランプレ・メリダ向かい風が吹く平坦区間でメイン集団を牽引するヴァカンソレイユ・DCMとランプレ・メリダ photo:Vuelta a Espanaマイヨロホを着て走るヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)マイヨロホを着て走るヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) photo:Vuelta a Espana

モビスター勢のペースアップはその後も継続。「集団はハイスピードで最後の登りを駆け上がったので、かなり多くの選手が苦しんでいた。調子は良くてそこまで苦しまなかったけど、まだまだブエルタは先が長いので、力をセーブするためにも自分のペースで登るべきだと判断した」と振り返るマイヨロホのヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)も集団から脱落する。

1級山岳アルト・ド・モンテ・ダ・グロバで集団のペースを上げるモビスター1級山岳アルト・ド・モンテ・ダ・グロバで集団のペースを上げるモビスター photo:Vuelta a Espanaやがてフィニッシュラインまで残り2kmを切って勾配が増すと、レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)が勢い良くアタック。これにダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)とニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)、そしてドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)が合流し、先頭4名でラスト1kmに差し掛かった。

ともにメイン集団から飛び出したモレーノやポッツォヴィーヴォを振り切ってゴールするニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)ともにメイン集団から飛び出したモレーノやポッツォヴィーヴォを振り切ってゴールするニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vos大西洋を見下ろす標高630mの頂上に向けて、ポッツォヴィーヴォがスパートを仕掛けたが決まらない。すると残り300mでロッシュが加速。下ハンドルを握って追撃したモレーノは届かず、ロッシュが苦しみながらもフィニッシュラインを先頭で駆け抜けた。

ロッシュから12秒遅れでゴールするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ロッシュから12秒遅れでゴールするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Cor Vos1987年にジロ・デ・イタリア&ツール・ド・フランス&ロード世界選手権制覇という「トリプルクラウン」を達成したステファン・ロッシュの息子として、デビュー当時から注目を集めていたニコラスが、11回目のグランツール挑戦で念願のステージ優勝を掴んだ。なお、父親ステファンはジロとツールでステージ優勝しているが、ブエルタでは勝っていない。

「ホッとしている」。それがグランツール初勝利を掴んだロッシュの最初の言葉。フィニッシュ地点では中野喜文マッサーや宮島正典マッサーらと勝利を喜んだ。「これまで勝てそうで勝てないレースが続いていたので、自分の能力を疑う時もあったし、フラストレーションが貯まっていた。チームメイトのマイケル・ロジャースに『近いうちに必ず勝てる』と言われていた通り、自分の好きなこのグランツールで勝つことが出来た。本当にハッピーだ」。

第2ステージを終えてロッシュは総合2位に浮上。このブエルタではクロイツィゲルやマイカとともに総合成績を視野に走る。「オフシーズンの段階で、アルベルト・コンタドールをツールでアシストすることは決まっていた。それと同時に、ブエルタでは自由な立場が与えられることも決まっていたんだ」。ロッシュはこれが5回目のブエルタ出場。2010年には総合6位に入っている。

総合首位のブライコヴィッチが47秒遅れでフィニッシュしたため、ライバルたちと同タイム(14秒遅れ)でゴールしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)の手に早くもマイヨロホが回って来た。ニーバリは「今日は一日中メイン集団がナーバスで、特に終盤は強い向かい風に見舞われたけど、最後の最後までチームはレースをコントロール出来ていた。マドリードに向けた長い道のりの第2ステージに過ぎないので、体力を浪費する無駄な動きは禁物。だからロッシュがアタックした時も、無理に追わず、タイム差が開かないようにペースを上げた」とコメントしている。最終的な総合優勝を狙うかどうかという質問に対しては「ブエルタはまだ始まったばかり。調子は良い。毎日毎日様子を見て走るよ」とはぐらかした。

集団から脱落したエナオモントーヤとサンチェスは2分41秒遅れ。アスタナのセカンドエースを担うヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)は2分55秒遅れでゴールしている。

念願のグランツール初勝利を手にしたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)念願のグランツール初勝利を手にしたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vosマイヨロホに袖を通したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)マイヨロホに袖を通したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Vuelta a Espana

選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。




ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第2ステージ結果
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)        4h37'09"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                +02"
3位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)       +06"
4位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)        +11"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +12"
6位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)        +14"
9位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)

11位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
12位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)
13位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
14位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
15位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)
16位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
17位 バルトス・フザルスキー(ポーランド、ネットアップ・エンドゥーラ)
18位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)
19位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)
20位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)

29位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)           +27"
40位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)             +47"
60位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)  +2'41"
65位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
67位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +2'55"

敢闘賞
アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・シャープ)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            5h07'22"
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)            +08"
3位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)       +10"
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
5位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)           +22"
7位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード)          +27"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)              +32"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)

プントス(ポイント賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          25pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               20pts
3位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)      16pts

モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          10pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               6pts
3位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)      4pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          4pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             20pts
3位 レオポルド・コーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)       20pts

チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード                      14h22'18"
2位 サクソ・ティンコフ                              +08"
3位 ネットアップ・エンドゥーラ                          +46"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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