第68回ブエルタ・ア・エスパーニャはとにかく厳しい。連日休む間もなく頂上ゴールが続き、ピレネー山脈の3連続頂上ゴールでマイヨロホ争いは加熱。最終日前日の「魔の山」アングリルで総合争いは決着する。ここでは個人タイムトライアルで始まる後半戦のステージを紹介。



9月4日(水)第11ステージ → コースマップ
タラソナ〜タラソナ 38.8km(個人TT)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第11ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第11ステージ高低図 image:Unipublic頂上ゴールが11ステージで登場する2013年のブエルタは間違いなくクライマー向きだ。タイムトライアルの距離が短いことがその傾向に拍車をかけている。アンダルシア州からアラゴン州まで大移動後、休息日明けの選手たちは今大会唯一の個人タイムトライアルに挑む。

グランツールの中では短めの部類に入る全長38.8kmのコースは、TTスペシャリストが圧勝するような単純なものではない。中盤には標高差600mの3級山岳アルト・デル・モンカヨが登場。勾配は緩くテクニカルコーナーが少ないため、どの選手もTTバイクで38.8kmを走り抜くと見られる。ここでついたタイム差は最終日まで尾を引くはずだ。



9月5日(木)第12ステージ → コースマップ
マエリャ〜タラゴナ 164.2km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第12ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第12ステージ高低図 image:Unipublicマイヨロホ狙いの選手たちにとって、第12ステージと第13ステージは束の間の休息だ。アラゴン州のマエリャから地中海に向かって一路東進。中盤に標高560mの3級山岳アルト・デル・コレットを越えると、あとはカタルーニャ州のタラゴナまで平坦路が続く。イベリア半島の西岸で開幕したブエルタは、ここで同半島の東岸に達する。

スプリンターがレースに残っていればの話だが、スプリンターチームが主導権を握ってレースをコントロールするだろう。地中海沿岸の街タラゴナではハイスピードバトルが繰り広げられる。一方、ピレネー決戦を控える総合上位陣はリカバリーに励む。



9月6日(金)第13ステージ → コースマップ
バルス〜カステルデフェルス 169km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第13ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第13ステージ高低図 image:Unipublic地中海に面したカタルーニャ州を駆ける一日。翌日から厳しいピレネーステージが始まるため、スプリンターたちの鼻息は荒い。

スプリンターにとって最大の難所は、ゴール50km手前に登場する1級山岳アルト・デル・ラトペナットだ。登坂距離4.3km・平均勾配10.6%という急勾配の登りであり、ここでの集団縮小は避けられない。風が強い地域のため、このアルト・デル・ラトペナットでポジションを落とした選手や、集団分裂の煽りを受けた選手が大きくタイムを失う可能性も。ピレネーを前に、奇襲作戦を仕掛けてくるチームがあるかも知れない。



9月7日(土)第14ステージ → コースマップ
バガ〜アンドラ/コリャーダ・デラ・ガリーニャ 155.7km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第14ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第14ステージ高低図 image:Unipublic第14ステージはカタルーニャ州を離れてピレネー山間のアンドラ公国へ。39km地点から登りが始まり、今大会の最高地点である標高2410mの超級山岳ポルト・デ・エンバリラ(距離26.7km・標高差1390m・平均5.2%・最大15%)に向かってひたすら登りを進む。頂上通過後に折り返し、2つの2級山岳とアンドラ市街地を経て1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャ(距離7.2km・標高差580m・平均8%・最大15%)に挑む。

ゴール15km手前の2級山岳アルト・デ・コメーリャと1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャの組み合わせは、バルベルデとロドリゲス、コンタドールが三つ巴のバトルを繰り広げた昨年の第8ステージと共通だが、この第14ステージには他にも多くの山岳が登場。より難易度が高いこのステージで、総合優勝候補は更に絞り込まれる。



9月8日(日)第15ステージ → コースマップ
アンドラ〜ペイラギュード 224.9km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第15ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第15ステージ高低図 image:Unipublicピレネー山脈を縫うように走る今大会最長ステージ。登場するプエルト・デル・カント、プエルト・デラ・ボナイグア、ポル・ド・バレ、ペイラギュードの4つの峠はいずれも標高1600〜2000mの1級山岳で、登坂距離は20km前後。一日の獲得標高差は軽く4000mを超える。序盤からアタックが数時間続くような激しい展開になれば、グルペット組のスプリンターたちの完走が危うくなるかも知れない。

この日は150km地点で隣国フランスに入国。今年記念すべき100回目の開催を迎えたツール・ド・フランスへのオマージュとして、2003年以来10年ぶりにブエルタがフランス国内でゴールを迎える。長い長い登りをこなし、疲労した脚で1級山岳ペイラギュードを駆け上がる選手たち。まだまだピレネーの洗礼は終わらない。



9月9日(月)第16ステージ → コースマップ
グラウス〜サジェント・デ・ガジェゴ 146.8km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第16ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第16ステージ高低図 image:Unipublicピレネー最終日、2週目を締めくくるのは、フォルミガルスキー場に至るカテゴリー1級の頂上ゴールだ。標高1800mの1級山岳サジェント・デ・ガジェゴは、登坂距離15.8km・平均勾配4%。数値だけを見ると決して険しくないが、スペインにありがちな勾配がころころ変わる登りであり、小刻みなリズムの変化に対応しなければならない。

全長146.8kmのステージは、前日&前々日の悪夢のようなステージと比べると難易度は低い。しかしサプライズが起こるのは決まってそんな侮りがちなステージ。連日の山岳決戦による疲労によってコンディションを落とす選手も出てくるだろう。



9月10日(火)休息日



9月11日(水)第17ステージ → コースマップ
カラオラ〜ブルゴス 189km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第17ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第17ステージ高低図 image:Unipublic大会2回目の休息日を過ごしたプロトンは、ラ・リオハ州のカラオラで3週目をスタートさせる。最終決戦地アストゥリアスの山岳地帯に向けて西に駒を進める。カスティーリャ・イ・レオン州のブルゴスに至る189kmの道のりは、2つの3級山岳を含んでいるものの、スプリンター向きのイージーコースだ。

大人数の逃げグループが形成され、スプリンターチームがモチベーションを失ってしまわないかぎり、大集団によるゴールスプリント勝負に持ち込まれる可能性が高い。総合上位陣は平野を吹き抜ける風に注意したい。



9月12日(木)第18ステージ → コースマップ
ブルゴス〜ペーニャカバルガ 186.5km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第18ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第18ステージ高低図 image:Unipublic標高890mのブルゴスをスタート後、4つのカテゴリー山岳をこなしながら大西洋に向けて高度を下げる。186.5kmのステージを締めくくるのは、1級山岳ペーニャ・カバルガの頂上ゴールだ。ペーニャ・カバルガは登坂距離5.9km・平均勾配9.2%というパンチの効いた登りで、特にラスト3kmは勾配が10%台後半まで跳ね上がる。ゴール1km手前で最大勾配が20%に達する激坂だ。

ブルゴスをスタートしてペーニャ・カバルガにゴールする行程は、ロドリゲスが勝利した2010年大会の第14ステージに近似している。なお、ペーニャ・カバルガは翌年再び登場しており、フルームが第17ステージで優勝を飾った。カンタブリア州の州都サンタンデールが近いため、観客をかき分けて進むような闘いが見られるだろう。



9月13日(金)第19ステージ → コースマップ
サンビセンテ・デラ・バルケラ〜オビエド/アルト・デル・ナランコ 181km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第19ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第19ステージ高低図 image:Unipublicついにブエルタは最終決戦地アストゥリアス州に突入する。第19ステージは翌日のアングリル決戦を前にした足慣らし。序盤はカンタブリア州の海岸線で、終盤にかけて3級山岳が2つ連続。オビエド郊外にある標高580mの2級山岳アルト・デル・ナランコの頂上にゴールする。

平均5.8%の登りではそこまで大きなタイム差はつかないと思われる。難易度が低いだけにハイスピードな展開に持ち込まれるだろう。このステージで最も注目したいのは、エウスカルテルに所属するオビエド出身のサムエル・サンチェス(スペイン)。地元が生んだ五輪金メダリストに声援を送ろうと、大勢のファンが登りに詰めかけるはずだ。



9月14日(土)第20ステージ → コースマップ
アビレス〜アルト・デ・アングリル 142.2km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第20ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第20ステージ高低図 image:Unipublic平均勾配10.2%・最大勾配23.5%の悪名高き超級山岳アルト・デ・アングリルが、142kmコースの最後に待っている。トップ選手でもバイクが蛇行するほどの激坂アングリル。ヨーロッパで一二を争うほどの難易度を誇る「魔の山」で、第68回大会はクライマックスを迎える。

ゴール7km手前で一気に勾配が増し、そこから断続的に13%の急斜面が続く。残り3kmで勾配は23.5%まで跳ね上がる。ここまで順調に登れていながら、激坂でガクンと失速する選手も出てくるだろう。ゴール21km手前に位置する距離5.3km・平均9.6%の1級山岳アルト・デル・コルダルも侮れない存在だ。なお、2011年大会第15ステージと全くコースレイアウトが一緒であり、当時はコーボがステージ優勝と総合優勝を射止めた。



9月15日(日)第21ステージ → コースマップ
レガネス〜マドリード 109.6km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第21ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第21ステージ高低図 image:Unipublicアングリル決戦を終えた選手たちは、レース後にマドリードまでおよそ450kmの大移動。ツール・ド・フランスのパリ・シャンゼリゼと同様に、ブエルタも首都の目抜き通りにゴールする。郊外のレガネスを発ち、リーダーチームを先頭に、選手たちがマドリードに凱旋する。

最後は5.7kmの周回コースを8周。2つの90度コーナーと3つの180度ターンを含むT字型の平坦サーキットコースで3週間の闘いが締めくくられる。この日の主役は(どれだけの数が残っているのか疑問だが…)厳しい山岳ステージを乗り越えて来たスプリンターたち、そして表彰台の頂上でマイヨロホを受け取る総合優勝者だ。




text:Kei Tsuji
image:Unipublic