ツールに2005年以来4年ぶりに戻ってきたチームタイムトライアル。チーム力の差が大きいと個人総合争いにも取り返しのつかない差がついてしまうということで、2005年当時にはタイム差をそのまま個人のタイムに反映しない救済措置が取られていた。

凱旋門を駆け抜けていくサーヴェロ・テストチーム凱旋門を駆け抜けていくサーヴェロ・テストチーム photo:Makoto Ayano今回のTTTでは従来からある「5番目にゴールした選手のタイムがそれぞれ個人につく」という通常の方法が採用された。距離は39kmと短めなので、その点でもタイム差が直接つくほうが面白みは増しそうだ。

ちなみに2005年はデーヴィッド・ザブリスキー(当時CSC)がマイヨジョーヌを着て転倒し、ディスカバリーチャンネルがトップタイムで勝利。アームストロングがマイヨジョーヌを獲得している。

暑さの続くツール・ド・フランス暑さの続くツール・ド・フランス photo:Makoto Ayano平坦スピードの無いクライマーで、チームが平坦路の走力に乏しい場合、もうそれだけでその選手は総合争いに絡めなくなってしまう。もっとも今回のツールでその心配をすべき選手は有力選手にはあまりいない。総合上位を狙う選手を抱えるアスタナ、サクソバンク、コロンビア、ラボバンク、サーヴェロテストチームなどは、いずれもスピードのある選手ラインナップを揃える。

モンペリエ中心部をスタートする39kmのコースはコメディ広場をスタートし、街の中心部の歴史地区を通る。凱旋門のミニチュア版をくぐり、郊外を反時計回りに周回する。フォシュ通り、モンペリエ凱旋門の近くに撮影位置を取って選手たちを待つ。旧市街の街中はカーブが連続してテクニカルだ。

モンペリエの街中を駆け抜けるモンペリエの街中を駆け抜ける photo:Makoto Ayano2007年ツールでもこのコメディ広場スタート、凱旋門通過で通常のステージが行われた。マイヨジョーヌのラスムッセンに殺到したカメラマンが何人も足を滑らせて転倒していたのを思い出す。

早めにコースに出る必要があったので、今日は日本人2人への張り付き取材はお休み。心配事は新城のTTTの経験が薄いこと。しかしドーフィネリベレの帰りにあらかじめ試走を済ませて、コースの感じは掴んでいたようだ。

オーバースピードでコーナーに突っ込んだビンヘン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス)オーバースピードでコーナーに突っ込んだビンヘン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス) photo:Makoto Ayanoコースに早くから入ったが、バイクで試走していたチームは多くはなかった。あるいは午前中に走ったのだろうか。凱旋門からプロムナード・デ・ペイロウを回り込むカーブは、下りに逆カントがついているうえに、古いアスファルト舗装が磨かれたつるつるの路面だった。このコーナーをおっかなびっくりで下る選手たちの姿はあまり美しくないが、起こるアクシデントも想定して、ここに長めに留まって撮影することにする。

まず災難はラボバンクに。コーナーを抜け、2つ先のコーナーあたりで派手な転倒音がした。「シュット、メンショフ!」観客が騒然となった。しばらくして駆けつけたときには走り去った後だったが、相当のタイムを無駄にした。メンショフ、ジロから学習していないのか?

落車したぺーター・ヴロリヒ(オーストリア、ミルラム)落車したぺーター・ヴロリヒ(オーストリア、ミルラム) photo:Makoto Ayanoチームミルラムは目の前で見事に滑落。先頭の選手が転び、つられるようにアイダンスを踊る。
コフィディスの選手は観客側に膨らんで、人垣につっこみそうになった。そして同時に砂塵が舞い上がるほどの強い風が吹いている。テクニカルというよりデンジャラスだ。

下見をバイクで十分にした選手たちは極端にスピードを落としてコーナーをクリアするが、チームカーに乗っての下見で路面状況を確実に知らない選手は、ブレーキングもままならずにコースを外れる。その差が出た。ガーミン、アスタナ、コロンビアはさすが慎重にクリア。勝利を狙って念入りな試走をしたのだろう。

落車したピエト・ローイヤッケル(オランダ、スキル・シマノ)が治療を受ける落車したピエト・ローイヤッケル(オランダ、スキル・シマノ)が治療を受ける photo:Cor Vosその先、コースとは別ルートでゴールへ向かうとき、ラジオから流れる情報は落車につぐ落車。スキル・シマノ、ブイグテレコムも転倒だ。

ゴール後の取材では、スキル・シマノは5人が転倒し、3分ほど止まってしまったという。ピエト・ローイヤッケルは右腕を骨折し、靭帯を切って病院へ搬送された。ローイヤッケルは総合力があるオールラウンダーだった。

ブイグテレコムも先頭の選手が転倒。新城は転倒はしなかったものの畑にコースアウトした。パンクも2回。スプリンター(新城)の発射台として仕事ができるウィリアム・ボネも相当痛めつけられたようだ。

健闘はリクイガス。ツールにモチベーションを見せてこなかったイタリアンチームは今年、クロイツィゲルとニーバリという若い2人の総合に期待がかかる。チームコロンビアの前に割り込んだのはその仕上がりの証明だ。ともに将来的にはグランツールを制する逸材と呼ばれる2人。この夏に期待しても良さそうだ。


ランスの"ニアミス"マイヨジョーヌ

慎重にコーナーに入っていくアスタナ慎重にコーナーに入っていくアスタナ photo:Makoto Ayanoマイヨジョーヌを逃したもののカンチェラーラと同タイムの2位にまで上り詰めたアームストロング。サクソバンク(元CSC)からアームストロングとアスタナ(元ディスカバリー)がマイヨジョーヌを奪った4年前のツールのTTTの再現になるところだった。

アームストロングとアスタナ、ブリュイネール監督は開幕1週間前にすでに試走を済ませ、準備を完璧にしていたという。
自分では狙わないと言っていたマイヨジョーヌが早くもアームストロングの目前に近づいた。勝利者会見に登場したアームストロングはプレスに対してよく喋った。

トップタイムを叩き出したアスタナトップタイムを叩き出したアスタナ photo:Cor Vos「12ケ月前はマイヨジョーヌをまた着れると思った。打ち明けるけど、もっと簡単に着れると思っていたんだ。しかし6ヶ月前、そんな考えはばかげていると思った。ジロを走ったときにはそう思えなくなった。オー、シット!思ったよりずっとハードだ、とね。エヴァンスやサストレにまったく敬意が足りなかった。これはぜんぜん簡単じゃない」。

「そして今日マイヨジョーヌはリアルになってきた。しかし僕は両足を地面に着いている。2001年や2005年のようにやすやすと勝てるとは思っていない」。

アスタナの選手全員が表彰台に上がるアスタナの選手全員が表彰台に上がる photo:Cor Vosそしてアームストロングは名指しはしなかったが、2分35秒遅れることになったエヴァンスを筆頭に、メンショフ、サストレ、シュレク兄弟らに対して「今日、何人かの選手にとってのツール・ド・フランスは終わった」と告げた。「軽蔑しているんじゃなく、そのタイム差を取り返すのは難しいだろう」と。

今年のツールを決めるのは、山岳が厳しい第3週といわれている。ジャーナリストに対しては「このツールはエキサイティングだ。モンバントゥーの頂上にたどり着くまではストーリーを書き上げちゃダメだよ」と諭すアームストロングだが、アスタナの最強ぶりが、ライバルたちとの差を広げてしまった。

昨ステージでコンタドールを置き去りにしたことをメディアが強調して書きたてたが、コンタドールとの関係も良好んみ伺える。「ただ雑音を無視してレースを走ることに集中する」という。マイヨジョーヌに近いところにいるが、それを守るために力を使う必要が無いという、アスタナにとって理想的な展開にある。

第7ステージのアンドラ・アルカリス頂上ゴールで、はたしてアームストロングの4年ぶりのマイヨジョーヌ姿を見ることができるだろうか。あり得ないと思っていたことが本当に現実感を帯びてきている。それが最終的にシャンゼリゼでの優勝につながるとは思えないが、世界中のランスファンがもっとも期待したい展開だろう。アスタナにとってのベストは、アームストロングが着たマイヨジョーヌをコンタドールが引き継ぐことだ。アンドラではせめてコンタドールがランスをスキップしてマイヨジョーヌを取ってしまわないように願おう。


text:Makoto.AYANO
photo:CorVos,Makoto.AYANO

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