4年を経てなおランス・アームストロング(アメリカ)の力は健在だ。ツール・ド・フランス第4ステージのチームタイムトライアルは、アームストロング率いるアスタナの勝利で幕を閉じた。マイヨジョーヌはファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が0.22秒差で死守している。

ラボバンクが晴れ渡るモンペリエを駆け抜けるラボバンクが晴れ渡るモンペリエを駆け抜ける photo:Makoto Ayano2005年以来4年ぶりにツールに復活したチームタイムトライアル(以下チームTT)が、南フランスの学園都市モンペリエで開催された。

市中心部を発着するコースは一見難易度の低い周回コースだが、実際には、地図や高低図に現れない細かなカーブやアップダウンが連続する。テクニカルな上に、この日は風が吹き付けた。

ステージ19位に沈んだBboxブイグテレコムステージ19位に沈んだBboxブイグテレコム photo:Makoto Ayanoレースは序盤から落車やパンク、機材トラブルが多発する展開。序盤スタートのデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)の落車を皮切りに、ランプレやサイレンス・ロット、ミルラムの選手が次々と落車してしまう。

日本人選手が所属する2チームもこの難コースで苦戦。新城幸也擁するBboxブイグテレコムは、コース中盤の右コーナーにオーバースピードで突っ込み、4名が落車。新城幸也は持ち前のバイクコントロールでこれを避けたが、チームは機材トラブルも重なって大きくタイムを失うことに。

スキル・シマノのメンバーが落車スキル・シマノのメンバーが落車 photo:Cor Vos別府史之擁するスキル・シマノも、同地点で落車が発生。激しく落車したピエト・ローイヤッケル(オランダ)はここでリタイア。ペースを取り戻せなかったスキル・シマノは、トップから5分23秒遅れでゴールした。スキル・シマノは前日貯金したリードを使い果たすどころか、総合成績で大きく後退してしまった。

開幕前からチームTTの優勝候補に挙げられていたのは、ガーミン、サクソバンク、チームコロンビア・HTC、そしてアスタナ。総合成績下位のチームから出走するため、これらの有力チームは後半スタートだ。

暫定トップタイムで帰ってきたガーミン暫定トップタイムで帰ってきたガーミン photo:Cor Vosまずトップタイムで飛び込んできたのは、レースの折り返し地点ですでに5名に絞られていたガーミン。スプリンター系の選手を切り離し、TTスペシャリスト5名でゴールまで走りきったガーミンが、それまで暫定トップを維持していたリクイガスを大きく上回ってトップに。

マイヨジョーヌのカンチェラーラ擁するサクソバンクも好走したが、ガーミンには22秒届かず。チームコロンビア・HTCは、前日の疲れの影響かは定かではないが、本来の力を発揮できずにガーミンから41秒遅れ。マイヨヴェールのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)は最後まで隊列に残った。

トップタイムを叩き出したアスタナトップタイムを叩き出したアスタナ photo:Cor Vosそして最終走者はアスタナだ。強力なオールラウンダー4名を揃えるアスタナは、3つの中間計測ポイント全てでガーミンを上回るタイムを連発。大きなトラブルを抱えることなく、6名でゴールに飛び込んだ。当然のようにタイム計時はトップタイムを表示。アスタナがライバルチームを圧倒した。

第3ステージ終了時、総合1位カンチェラーラと総合2位アームストロングの総合タイム差は40秒。第3計測ポイント(30.7km地点)でアスタナはサクソバンクを41秒上回っていたが、サクソバンクの最後の追い込みによって両チームはタイム差40秒でフィニッシュ。総合同タイムでカンチェラーラとアームストロングが並んだ。

表彰台で僅差をアピールするファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)表彰台で僅差をアピールするファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosアームストロング4年ぶりのマイヨジョーヌも囁かれたが、0.22秒差でカンチェラーラが総合トップの座を守り抜いた。カンチェラーラは「スイス時計の正確さには定評がある」と、安堵の表情を浮かべながらレース後にコメント。表彰台では「僅差だった」と指でアピールした。

アスタナやガーミン、サクソバンク、リクイガス、そしてチームコロンビア・HTCが順当に総合成績でリードを広げた。その一方で、早々にチームメイトを失ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)は苦戦を強いられ、ステージ13位でフィニッシュ。アスタナから実に2分35秒、サクソバンクから1分55秒のタイムを失ってしまった。メンショフもアスタナから2分20秒遅れ。このタイムロスは後々大きく響いてきそうだ。

ツール・ド・フランス2009第4ステージ結果
1位 アスタナ 46'29"
2位 ガーミン +18"
3位 サクソバンク +40"
4位 リクイガス +58"
5位 チームコロンビア・HTC +59"
6位 カチューシャ +1'23"
7位 ケースデパーニュ +1'29"
8位 サーヴェロ +1'37"
9位 アージェードゥーゼル +1'48"
10位 エウスカルテル +2'09"
11位 ラボバンク +2'20"
12位 クイックステップ +2'26"
13位 サイレンス・ロット +2'35"
14位 フランセーズデジュー +2'46"
15位 ミルラム +2'48"
16位 コフィディス +2'58"
17位 ランプレ +3'24"
18位 アグリチュベル +4'17"
19位 Bboxブイグテレコム +4'41"
20位 スキル・シマノ +5'23"

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)10h38'07"
2位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+00"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+19"
4位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+23"
5位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+31"
6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+38"
7位 アイマル・スベルディア(スペイン、アスタナ)+51"
8位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+52"
9位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)+1'06"
10位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)+1'07"
142位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+6'49"
155位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+7'35"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)70pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)54pts
3位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)36pts
14位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)22pts
20位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)9pts
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)6pts
3位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)6pt

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)10h38'59"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+39"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+44"

チーム総合成績
1位 アスタナ 30h20'33"
2位 サクソバンク +2'33"
3位 チームコロンビア・HTC +2'45"