今回のインプレッションで取り上げるテストバイクは、オールラウンドモデルとしてサーヴェロが永くカタログにラインナップするR3。2006年のデビュー以来、プロレースで輝かしい功績を残してきたこの名車について今一度掘り下げてお伝えする。その性能とは。その魅力とは。

サーヴェロ R3サーヴェロ R3 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

ご存知カナディアンブランドとして1995年に創業したサーヴェロ社。2013年現在、まだ創業20年を迎えていない歴史の浅いブランドではあるものの、そのブランドネームは今やヨーロッパの歴史あるブランドや、アメリカの巨大ブランドと比較しても全く遜色無いほどにポピュラーなものとなった。

それを支えるのは、たゆまぬトッププロチームへの機材供給と、そこから得たフィードバックを正確にかつ緻密にプロダクツに反映することのできる高い技術力だろう。カーボン素材が登場しだした2003年にはライバルブランドに先駆けてカーボンフレームをツール・ド・フランスに投入し、それを駆ったチームCSCは大きな活躍を見せ、飛躍的にサーヴェロという名を轟かせた。

シートチューブとダウンチューブ共にスクオーバル形状のチューブを採用シートチューブとダウンチューブ共にスクオーバル形状のチューブを採用 テーパーヘッドを採用したヘッドチューブ付近の造形テーパーヘッドを採用したヘッドチューブ付近の造形 フロントフォークはシンプルなストレート形状フロントフォークはシンプルなストレート形状


今回のテストバイクであるR3のデビューは2006年のこと。前モデルのR2.5を進化させ、驚くほど細いシートステーや太いダウンチューブなど、現在一般的となったフレームの各パートごとに性能の役割分担をさせる思想を一気に加速させた車両と言って良いだろう。ジャンルとしてはサーヴェロのRシリーズ、つまり衝撃吸収性を高めたオールラウンドモデルにあたる。

デビューしてからはや7年。マイナーチェンジを重ねつつ、R3は2008年にツール・ド・フランスを(R3 SL)制し、また持ち前の衝撃吸収能力の高さから北のクラシックにも積極的に投入され、パリ〜ルーベでは計3回の優勝、6回の表彰台という輝かしい成績を収めてきたのだ。

サーヴェロRシリーズの特徴の1つであるスクエア形状のチュービングサーヴェロRシリーズの特徴の1つであるスクエア形状のチュービング メインコンポーネントはシマノ105メインコンポーネントはシマノ105


ケーブル類はシンプルな外装タイプとしメンテナンス性を向上ケーブル類はシンプルな外装タイプとしメンテナンス性を向上 サーベロ独自の規格「BBright」を採用したBBシェル付近の造形サーベロ独自の規格「BBright」を採用したBBシェル付近の造形


Rシリーズに求められたのは、剛性と快適性、そして軽量性という3つの要素をバランス良く兼ね備えることだ。ルックス上での最大の特徴はやはり、極薄の扁平シートステーだろう。ストレート形状をとることで縦方向に積極的にしならせる仕様だが、一方でチェーンステー前半部分はBBシェル部分からそのまま繋がる大口径とすることで、単に乗り心地を高めるだけではない設計思想が見て取れる。

大口径のダウンチューブは「スクオーバルカーボンチュービング」と呼ばれる、どんな方向からの力にも対応できる丸形のオーバルチューブと、縦方向と横方向からの力に対して耐性のあるスクエアチューブを組み合わせた独自の形状だ。緩やかな丸みを持たせた角断面形状は剛性と軽量性の双方に寄与し、後継モデルR5にも採用されるなどサーヴェロRシリーズの特徴と呼べる部分だ。

ギリギリまで幅が拡張されたBBシェルによって剛性を高めるギリギリまで幅が拡張されたBBシェルによって剛性を高める FSA製BBright専用クランクを採用FSA製BBright専用クランクを採用


そこから繋がるボトムブラケットは非駆動側をBBシェル幅いっぱいまで広げることで性能の最適化を図ったサーヴェロオリジナルのBBright。クランクシャフト径は30mmで、それに伴って従来のフレームと比較して16%のワイド化を実現するテクノロジーだが、これはつまりQファクターを広げること無く横剛性を強化できるギミックだ。

ヘッドチューブはプロジェクトカリフォルニアでの教訓に基づいた設計、つまり特に優位性が認められた1-3/8インチ径のベアリングを採用することでパリ〜ルーベに代表されるような悪路から、超級山岳の下りでも安定したハンドリングとヘッド剛性を身につけた。オリジナル規格のヘッドやBBを採用するがシートポストは一般的な丸断面形状で、ワイヤー類は全て外装式とすることで汎用性・整備性にも寄与している。

振動吸収性を担う、極限までシェイプされた細身のチェーンステー振動吸収性を担う、極限までシェイプされた細身のチェーンステー BBシェルに近いほど太くなるシートチューブBBシェルに近いほど太くなるシートチューブ 二股に分かれる形状を採用したシートステー集合部二股に分かれる形状を採用したシートステー集合部


2013モデルよりグラフィックを刷新したサーヴェロのラインナップだが、R3はシルバーをベースとしたカラーを纏い、より精悍な印象に生まれ変わった。完成車はアルテグラと105をそれぞれ装備した2バリエーションが揃い、フレームセット販売も行われている。今回のテストバイクは105完成車だが、ホイールが販売パッケージとは異なることを付け加えておく。

R3は、後継機R5の登場によってフラッグシップの座からは降りたものの、未だスタンダードモデルとしてカタログに並ぶだけの高い基本性能を持ったオールラウンドバイク。登場から7年を経て熟成された性能とは、どのようなものだろうか。早速インプレッションに移ろう。



ーインプレッション
「プロスペックのバイク 高い速度域で荒れた路面を走る際に真価を発揮する」江下健太郎(じてんしゃPit)

「プロスペックのバイク 高い速度域で荒れた路面を走る際に真価を発揮する」江下健太郎(じてんしゃPit)「プロスペックのバイク 高い速度域で荒れた路面を走る際に真価を発揮する」江下健太郎(じてんしゃPit) 粗い石畳の上を走るパリ〜ルーベで活躍した印象が強く、快適性が高いバイクと予想していました。しかし、フロント回りが想像以上にしっかりしており、予想と異なる乗り味です。上下で異なる径のベアリングを採用したテーパーヘッドチューブとストレートフォークがその剛性を生み出しているのでしょう。

加えて、BB周りの剛性もしっかりしており、プロの選手が500〜1000ワットの出力で踏んだ時に効率よく進むよう設計されていると感じました。時速40km以上で荒れた路面に突入した時のショック吸収性に特化している印象がありました。Rシリーズの特徴である細いシートステーはしっかりと振動の角を取っていますが、ロングライド向けバイクとは違い、ある程度の衝撃は伝わってきます。

上りではレースのような高い速度域を想定して走ってみましたが、ギアを掛けるよりも、ケイデンスを高めた方が良い印象です。大きなたわみやしなりが出ることはありませんが、僅かにリア周りが動くため若干のタメは感じます。振動吸収に繋がっているのでしょう。そのため前に加重をかけた場合により上ってくれるイメージですね。

下りはサドルの後ろにどっかりと座って、バックの動きを積極的に利用することで気持ちよくコーナリングできます。ヘッドチューブ角が73度と立っている割には切り込んでいく印象が無く、しっかりと体勢を整えてからコーナーに進入するべきかな、と思いました。

エアロフレームではありませんが、平地の巡航は得意です。BB周りの剛性感が絶妙で、ペダルを踏み込むことなく、回転重視でクルクルと回すだけで車体が前に進んでくれました。昨今のフレームの中にはBB回りの剛性が高すぎるためにペダリングスキルが必要となる車体もありますが、R3はそうではありません。誰が乗っても気持ち良く走ってくれるでしょう。

ゴールスプリントを想定して時速40kmからもがいてみましたが、そういった走りは少し苦手かもしれません。おそらく上りと同様にリア周りのよれが原因ではないでしょうか。しかし一方、パリ〜ルーベのように重いギアを掛けて腰を少し浮かしながら踏む場合には非常に向いています。

ビギナーや筋力の少ないライダーには少し硬さを感じる事があるでしょう。決して快適で疲れないフレームではありませんが、体重がある方やプロレベルのライダーであれば快適と感じるはずです。乗り心地だけを重視するのであれば他の選択肢があると思います。

平均的な日本人の体格を考えるとややヘッドチューブが長い気がしました。中には角度が大きいステムの使用や、1サイズ小さいフレームが必要になる場合もあるかと思います。ハンドル位置を低くしたい方はジオメトリーを注意して見ておく必要があるでしょう。

フレーム単体の質が高く、将来的にアップグレードを検討するのであれば決して高額ではないでしょう。ポジションを出すことが可能であればレースからブルベ、グランフォンドのロングライドまで幅広く活躍してくれる一台です。


「非常に安定感があるトータルバランスに優れたバイク まさしく優等生」澤村健太郎(Nicole EuroCycle)

非常に安定感がバイク。高い直進安定性、振動吸収性や掛かりの良さなどトータルバランスに優れていますね。上りと下り共に目立った不満点が一切なく、まさしく優等生と言えるのではないでしょうか。

スピードレンジとしては30km~40kmが最も気持ち良く走れると感じました。ただし、ゴール前スプリントの様な高い速度域でもロスする事無くしっかりと対応でき、未舗装路で低速で走った際にも非常に安定しているので、どんな速度域でも十分に走ってくれると感じます。

シリアスなレーサーでも好みが合えば気に入ると思いますし、非常に安定性が高いため、ビギナーライダーにもと思います。最近のフレームと比較する決して軽くはないですが、しっかりとした耐久性がありそうなので、万人受けするバイクですね。

「非常に安定感があるトータルバランスに優れたバイク まさしく優等生」澤村健太郎(Nicole EuroCycle)「非常に安定感があるトータルバランスに優れたバイク まさしく優等生」澤村健太郎(Nicole EuroCycle)

試しにグラベルや芝生の上を思いっきり走ってみましたが非常に安定していて、パリ〜ルーベで多くの勝利を獲得してきた理由が分かった気がします。太いタイヤが入るクリアランスとカンチブレーキの台座があればシクロクロス車として使用したいぐらいです。

上りではリア周りがしっかりと作られているせいか突き上げを軽減しつつも、よれて力が逃げる様な印象はありませんでした。これは、BB回りにボリュームがあることと、チェーンステーの根元(BB側)が太いこと影響していると思います。下りは路面追従性が高いため、テストコースの途中にある荒れた路面で乱暴に踏んでも跳ねることはありませんでした。フォークの性能がとても優秀で、トラクションが非常に良いのでしょう。直進安定性の高さはなかなかのものです。

安定性の高さからグランフォンドを楽に走りたい方におすすめですが、掛かりが良いのでクリテリウムで使っても良いと思います。例えば実業団のレースでいえば、いわきクリテの様な路面が荒れてるコースでは、コーナー脱出の早い段階から踏んでいけるのでアドバンテージになるのではないでしょうか。

今回の試乗車にアッセンブルされていたフルクラム・レーシング7のような、剛性の高いアルミリムのホイールとの相性が良いと感じました。上位グレードであるレーシングZEROなどとはベストマッチでしょう。

105完成車は少し割高に思えますが、フレームのポテンシャルが非常に高く、将来的にアップグレードを考えるならば決して高くないと思います。飽きの来ないタイプだと思いますので、長く付き合えるでしょう。また、フレームの造りが非常にオーソドックスで、ワイヤーが外装なので非常に整備がしやすい点は良いですね。

R3が持つトータルバランスの良さは完成の域に達しているのではないでしょうか。発売開始から長い年月が立ちましたが、各社のハイエンドモデルと乗り比べても見劣りすることはありません。

サーヴェロ R3サーヴェロ R3 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

サーヴェロ R3
サイズ:48、51、54、56
フォーク:Cervelo UltraLight 1-3/8"
ヘッドセット:FSA IS-3
シートポスト:FSA SLK
ボトムブラケット:SRAM PF30
価 格:309,750円(税込、フレームセット)、383,250円(税込、105完成車)、498,750円(税込、アルテグラ完成車)




インプレライダーのプロフィール

澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢) 澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)

東京都世田谷区駒沢に2010年12月にオープンした「Nicole EuroCycle 駒沢」のチーフメカニック。実業団ロードレースチーム「Maidservant Subject」ではキャプテンを務め、シクロクロスレースにも積極的に参戦している。同時にトレイル巡りやツーリングなど楽しく自転車に乗ることも追求しており「誰とでも楽しめるサイクリスト」が目標。愛称は「アルパカ」。

Nicole EuroCycle




江下健太郎(じてんしゃPit)江下健太郎(じてんしゃPit) 江下健太郎(じてんしゃPit)

ロード、MTB、シクロクロスとジャンルを問わず活躍する現役ライダー。かつては愛三工業レーシングに所属し、2005年の実業団チームランキング1位に貢献。1999年MTB&シクロクロスU23世界選手権日本代表。ロードでは2002年ツール・ド・台湾日本代表を経験し、また、ツール・ド・ブルギナファソで敢闘賞を獲得。埼玉県日高市の「じてんしゃPit」店主としてレースの現場から得たノウハウを提供している。愛称は「えしけん」。

じてんしゃPit



ウエア協力:bici

text:So.Isobe&Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO

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