標高1369mの超級山岳ヴァルモレルにゴールするクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージで、総合争いが勃発。ツール・ド・フランス前哨戦と呼ぶに相応しいバトルの末、コンタドールを振り切ったクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が勝利した。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第5ステージ・コース高低図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第5ステージ・コース高低図 image:A.S.O.ドーフィネは後半戦に突入。第5ステージはグレシー・シュル・エクスからヴァルモレルまでの139kmで行なわれた。前半から難易度の低い山岳が続き、標高1369mの超級山岳ヴァルモレル(登坂距離12.7km・平均勾配7%)にゴールする。

フランス東部の山岳地帯はこの日も好天に恵まれたフランス東部の山岳地帯はこの日も好天に恵まれた photo:Cor Vos勝負が懸かったこの重要なステージで逃げたのは15名。ツアー・ダウンアンダー覇者のトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)やブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)、フランティセク・ラボン(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)がエスケープ。山岳賞ジャージを着るトマ・ダムソー(フランス、アルゴス・シマノ)もしっかりこの中に入った。

ポルトに牽引されて登りを進むクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)ポルトに牽引されて登りを進むクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Cor Vosダムソーは3つのカテゴリー山岳を連続で先頭通過し、山岳賞トップの座をキープ。逃げグループのリードは5分を推移したが、ガーミン・シャープやカチューシャ、モビスターの集団コントロールによって縮小に転じる。逃げグループは超級山岳ヴァルモレルを前に細分化。2分ほどのリードで最後の登りに差し掛かった。

ゴールに向かって逃げ続けるマシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)ゴールに向かって逃げ続けるマシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Cor Vos勾配7%が続くヴァルモレルの登りで逃げグループの中から飛び出したのはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)。しばらくウェレンスの独走が続いたが、やがてマシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)が先頭を奪う。

一方のメイン集団はスカイプロサイクリングのハイペースによって見る見るうちに縮小。ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)はパンクで、ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)は落車の影響で遅れてしまう。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が数回アタックするシーンも見られたが、メイン集団を率いるリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)が落ち着いてこれを吸収。ラスト3kmを切ったところで、リーダージャージを着るローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)がついにメイン集団から脱落した。

ポルトの牽引が終わるといよいよリーダー対決が始まる。ラスト2kmを切って先手を打ったのは、前日の個人タイムトライアルでタイムを失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)。強烈なアタックによってメイン集団は崩壊する。タイミングを見計らってペースアップしたフルームだけがコンタドールに追いついた。

フラムルージュ(ラスト1kmアーチ)を過ぎ、先行するブッシュを視界に捉えたフルームとコンタドール。ツールでもバトルを繰り広げるであろう2人がハイペースで登りを進み、ラスト300mでついにブッシュを抜いて先頭へ。前を向いてひたすら踏み続けたフルームが、コンタドールを4秒引き離してゴールした。

超級山岳ヴァルモレルを制したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)超級山岳ヴァルモレルを制したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla
勝利に貢献したポルトと喜ぶクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)勝利に貢献したポルトと喜ぶクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferlaライバルを寄せ付けない抜群の登坂力を披露したたフルームは「このステージ優勝は登りでポジション取りをしてくれたチームメイトたちのおかげ」とコメントする。「ピーター・ケノーとリッチー・ポルトが全てのアタックに対応してくれた。コンタドールがアタックした時、彼はもはや総合で大きく遅れている選手なので、焦らずに見送ったんだ。レディオシャックの選手(ブッシュ)には追いつかないと思っていたけど、チームメイトに感謝するためにステージ優勝を狙った」。

「登りでロドリゲスやコンタドール、バルベルデを引き離すことが出来てよかったよ。この上ないほど良いコンディションだ。でもアルベルト(コンタドール)は残りの3週間で必ず調子を上げてくると思う」。チームメイトのポルトと52秒差、遅れたデニスから54秒差で総合首位に立ったフルーム。スカイプロサイクリングのリーダーとしてツール・ド・フランスに挑む準備は出来ている。

クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が総合首位に立つクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が総合首位に立つ photo:Riccardo Scanferla

選手コメントはレース公式サイトより。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第5ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)          3h28'39"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)           +04"
3位 マシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)               +10"
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)          +12"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
7位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
8位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)                 +21"
9位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)          +24"
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)                +29"

14位 ローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)           +59"
18位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)             +1'31"
48位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)               +4'50"
51位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              +5'29"
73位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)        +9'58"
133位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)                +19'22"

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)          16h08'44"
2位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)          +52"
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)            +54"
4位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)         +1'37"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                +1'47"
6位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)                +1'49"
7位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)               +1'52"
8位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)+1'58"
9位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)        +2'16"
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +2'20"

ポイント賞
ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)

山岳賞
トマ・ダムソー(フランス、アルゴス・シマノ)

新人賞
ローハン・デニス(オーストラリア、ガーミン・シャープ)

チーム総合成績
スカイプロサイクリング

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos