ツアー・オブ・フレンドシップにニールプライド購入特典として参加した武井きょうすけ(フォルツァ!)の参戦・体験レポートをお届け。レース経験豊富な武井さんが、心の底から楽しめたというタイでのレース体験とは?

ニールプライド購入特典による混成チーム ニールプライド購入特典による混成チーム  (c)Glen.Gypsy日本の何かに飽きたら。出会いと旅を楽しみたいなら。
一番大切なのは「マンペンライ」=「All right」
意味は「気にしない。大丈夫だよ。楽しむ心で!」

タイには最高のレースと出会いがありました。私はツアー・オブ・フレンドシップに参加してきました。
この参加申し込みについて、なんと!日本のニールプライド正規代理店からバイクを購入するとTOF出場権がついてくるって! それは良いだろう!。

私はニールプライドBura SLを購入しました。クールで、軽量で、誰とも似ていない。そんなオンリーワンのフレームです。フレームを買うだけで、貴重なTOF経験がセットでついてくる。なんて素晴らしいプレゼントでしょうか。

武井きょうすけのニールプライドBura SL

武井きょうすけ選手の愛車 ニールプライド BURA SL武井きょうすけ選手の愛車 ニールプライド BURA SL (c)MakotoAYANO

ホイールはZIPP303のカーボンクリンチャーだホイールはZIPP303のカーボンクリンチャーだ (c)MakotoAYANOバックステーは驚くほど細いが、振動を吸収しつつも高剛性だというバックステーは驚くほど細いが、振動を吸収しつつも高剛性だという (c)MakotoAYANO


アジアで行われるレース用機材について考えたいこと。すべてにおいて信頼性と整備性を優先させたコンポーネント、パーツを選ぶこと。現地では満足な補修、部品の交換は難しい状況です。
特に強調したいのは、タイヤはすぐに交換が可能なWO(クリンチャー)を選択すること。幅は24C以上が好ましい。アジアは路面が悪い!日本と比べたら穴だらけです。

パワー計測機能付きのPower2MAXのチェーンホイールセットを使用するパワー計測機能付きのPower2MAXのチェーンホイールセットを使用する (c)MakotoAYANOデュラエースのワイヤー式を使用する。「海外レースや遠征で故障の心配なく使用できることを重視しています」デュラエースのワイヤー式を使用する。「海外レースや遠征で故障の心配なく使用できることを重視しています」 (c)MakotoAYANO


ボトルゲージは、ホールド性の高い、丈夫なタイプを選ぶこと。振動でボトルごと飛んでしまいます。ボルトもしっかり締め付けておくことが大事です。レース中にボトルごと脱落したボトルケージを何個見たことでしょう!
そして股ずれ予防のワセリンは忘れずに。食事の刺激が強いので、肛門にも最適です(笑)。これ、大事だよー。夜の部は、毎晩のタイ式マッサージが最高です。あとはお楽しみのシンハービール に屋台。美味しくて最高でしたよ。

クイックステップが使用しているスペシャライズドの24Cクリンチャータイヤ、S-Works TURBOを使用するクイックステップが使用しているスペシャライズドの24Cクリンチャータイヤ、S-Works TURBOを使用する (c)MakotoAYANOスペシャライズドのROMIN EVOサドルに、ゼルツ樹脂インサートのルーベシートピラーを組み合わせるスペシャライズドのROMIN EVOサドルに、ゼルツ樹脂インサートのルーベシートピラーを組み合わせる (c)MakotoAYANO


さて、肝心のレース。今回のレースの目標は、楽しみ切ること。当然、目標達成!

第1ステージの個人TTに臨む武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド)第1ステージの個人TTに臨む武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド) (c)Makoto.AYANO第1ステージ 個人TT 3位
皇居周辺で行われた個人タイムトライアルでした。いやー、暑かった。35度を超えた、まさに灼熱。
機材は同行参加した弊社メカニック、アズマ(東)からDHバーを強奪(笑)。ノーマルバイクにDHバー装備で楽しく走りきれました。

TTのポイントは、パワーメーターを見ながら、とにかく我慢。パワーウェイトレシオ値は6.2w/kgで、 AV405wで走りきりました。エアロポジションを意識しながら、苦しむ自分を楽しんで!

このTTではLeeことリー・ロジャース選手がトップ。私は8秒差の3位で、気合が入ってきました。

DHバーを使って走る武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド)DHバーを使って走る武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド) (c)Makoto.AYANO

第2ステージ 平坦170km 5位

カメラを見つけるとすかさずサインを送る武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド)カメラを見つけるとすかさずサインを送る武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド) (c)Makoto.AYANO平坦のロードレース。最後の最後にぐぐっと標高150mの丘を越えます。レース人生で、初めて選手にパンチされました。
スタートからパニック。タイの高速道路を爆走! 穴ぼこだらけの道を抜け、まさにサバイバル。50km/hを超えるスピードで走る集団。コースマップと違うんだけど…。距離も長いし。が、これもマンペンライ(笑)。

最後の登りを気持よく登りきり、4人に。前に逃げた1名が逃げ切りか。見えるが、10秒差はある。
ここから私は展開して前を追いたいのだが、なぜか全く引かない選手が2名。これがアジアのロードレース。そのひとりと言い合いになっている間に、Lee選手が強烈な追走。一瞬の隙で20mほど先行され、その追走中に突然、ジャージを引っ張られ、背中にパンチを受けた!
いやー、びっくりしたけど「You are Ban!」と怒ってみた。

ゴールはマップ上は登りなんだけど、いきなりゴールが表れた。これがアジアのレース。油断大敵だな。
パンチをした選手は、やっぱり元プロ選手。選手間では有名なドーピング崩れでした。心がすさむEPO、やっちゃだめだよ。レース後、その選手と議論をしたのだが、また胸を突かれ、ほんと悲しくなった。レースで、走りで見返してやる。
今日も夜はタイマッサージ♪
Lee選手との差は若干開き、約20秒。気合充分。明日は攻める。

第3ステージ 山岳 170km 優勝 
今日は強烈に暑い。アップダウンもきついので、逃げ切りを目指してスタート。

ゼッケンをつける。しかし手違いによりピンクの女子クラスのゼッケンだゼッケンをつける。しかし手違いによりピンクの女子クラスのゼッケンだ (c)Makoto.AYANO大きな登りループを2回登る、獲得標高2000mのコース。約90km過ぎ、2回目の登りで気持ち強めに踏む。
こんな時は、パワーメーターが本当に役立つ。自分の出力と、相手の呼吸を読みながら、強弱をつけて。
Lee選手は、しっかり私をマーク。気にせず、そのまま踏み続けるとうまく2人で逃げだせた。レースリーダーは後方集団で苦しんでいる。

が! サポートチームカーがいない! サポート隊はのんきに写真を撮っていた! この暑さの中で、補給を十分に受けられないと、本当に生死にかかわる。
登りきり、アップダウンで苦しむLee選手を切らずに、そのまま一緒に逃げることを選択。なぜなら、Lee選手のチームカーからサポートを受ける必要があるためだ。我慢だ。

後は、自分のやるべきことをこなし、最大限の差を後方につける。先に逃げていた「パンチ選手」がうまくジョイントしてきて、全くローテーションを行わないが、それは無視して走る。彼は80km近くついたまま。
パンチ選手を振り切りたいのだが、Lee選手を切るわけにはいかない。

レースが終わるとマーケット散策を楽しんだレースが終わるとマーケット散策を楽しんだ 集中してアップダウンを先頭固定で走る。楽しく、苦しい瞬間だけど、自分の心に火が灯る。東日本大震災の後から、完全に消えていた自分の火が灯る。

逃げ切り、最後はLee選手がしっかりとまとめてくれ、無事に優勝できた。
白人を相手に、アジア選手がトップアマチュアのレースで優勝する。これは本当に難しいのです。歴史のあるロードレースでアジア人が勝つことは。

Lee選手とはお互いに尊敬しあえ、ライバルであるが、その前に一選手として認められる良い関係だ。ロジャース選手とのタイムギャップは20秒と変わらず。今日も夜はタイマッサージ♪

第4ステージ 山岳登りゴール 170km 5位 

レッドブル発祥の地でオリジンのエナジードリンクを飲んでみる!レッドブル発祥の地でオリジンのエナジードリンクを飲んでみる! (c)Makoto.AYANO登りゴール設定の、獲得標高2300mのコース。総合逆転の最後のチャンスだ。

大きな登りループを2回登り、3回目が登りゴール。さすがに昨日の疲れは少しある。が、読まれると一気に攻撃されるので静かに待機する。攻めるときは強気に、余裕を見せて。

Team CBの高橋選手はツール・ド・おきなわで3位を取ったこともある実力のある選手だ。まずは、高橋選手を確実に勝たせ、私もタイムギャップを詰める作戦で動く。

アジアのレースを知り尽くしたリー・ロジャースさん(イギリス・ラピエール・アジア)アジアのレースを知り尽くしたリー・ロジャースさん(イギリス・ラピエール・アジア) (c)MakotoAYANO登りの2回目の直前、良いタイミングでするすると高橋選手が抜けだし、その瞬間にLee選手の大切なアシスト選手が落車。一気に集団はおしっこタイムと、復帰待ち状態に。

その後、Lee選手といろいろ話す。いや、楽しい方ですね。一緒に走れたら最高だな。
で、「今逃げている彼は強いのか?」と聞かれたので「ううん、そこまで強くないよ」と答える(笑)。

日本人が2日連続でステージ優勝すれば、アジア選手に対しての見方も正しい評価へと変わるだろう。幸いなことに、エスケープと追走のタイム差が表示されない。これもアジア流だ。

今日はサポートは完璧! 綾野隊長がチームカーに乗り込み、コーラにレッドブル、そして愛と気合と勇気を頂く(笑)。

が、問題もあり。1回目の登り、頂上フィードで差し出された、私のコーラを目の前の他の選手が手を伸ばし、盗り損ね、はじけ飛ぶ私のコーラ。「Fuck!」叫んでしまいましたよ。これもレース。いろいろなマージンをみて、しっかりと神経を張り巡らせて、万全の戦う気持ちでいかなくては。

カメラを見つけるとサインを送る武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド)カメラを見つけるとサインを送る武井きょうすけ(フォルツァ!ニールプライド) (c)Glen.Gypsy最後の登り。あとは、私は私の勝負の時間。マークがすごくきつい。最後の登りは斜度が少し足りない。が、全力で攻める。
残り4kmから、ほぼ先頭固定。330wから400w前後で登る。集団は減り続け、残り3名に。
イギリスのLee選手に、フランスのパンチ選手、オージーのマイケル・トロイ選手。興奮してきた。心にまた火が灯る。

最後の1kmは斜度が少しだけきつくなる。700w超で登りをもう一段上げ、負荷を断続的にかける。残りは2人。少し負荷を落とした瞬間。ここで全く引かないパンチ選手が抜けだす。

ディナータイムの定番ドリンクはもちろんシンハービールディナータイムの定番ドリンクはもちろんシンハービール (c)MakotoAYANO「うぅ」厳しい状況だ。総合3位のパンチ選手とのタイムギャップは15秒ほど。
ここはこらえどころ。が、先頭固定できたので、出力は維持されてもロジャース選手は少し休めていた。
ここで、Lee選手に先行を許す。5mほど差が開きかけたとき、あきらめモードに入る寸前で、また心に火が灯る。ぬぉ!っとパワーを出し、Lee選手を抜き、パンチ選手を抜く気持ちで目を見開く! そしてゴール。

パンチ選手と5秒で私、さらに5秒ほどのタイム差でロジャース選手。素晴らしいレースが出来たことに感謝!

なんと! うれしいことに高橋選手が会心の逃げ切り優勝! やったぜ日本人!
高橋選手の「後ろの2人(チームメイトと私)を信じて逃げ続けました!」という言葉にウルッと涙が。
ご機嫌で、今日もタイマッサージ♪

第5ステージ アップダウン 90km 3位

レースの合間に屋台でタイ料理を楽しんだレースの合間に屋台でタイ料理を楽しんだ (c)Makoto.AYANOアップダウンのきついジェットコースター。そこを2周。
最終日。疲れは少しあるけど、終わっちゃうなー、の気持ちが大きい。Lee選手とのタイムギャップは16秒。

最初から断続的に攻撃を続ける。チームCBの高橋選手を先に逃がし、私がブリッジジョイントを試みる。
Lee選手と、パンチ選手が強い! 1周目、攻撃後少し隙を見せた瞬間にLee選手とパンチ選手が振り返りながら抜け出す。私は少しお疲れモードもあり、見送ってしまう。
が、さすがに2名も疲れが出ているのか、2周目直前で吸収。この周回コースはアップダウンが強烈なのだ。

2周目に入り、こう着状態から高橋選手が攻撃をするが、マークがきつい。2日連続で逃げはさせてもらえない。攻撃後、なんと高橋選手がチェーン落ちトラブル。瞬間、パンチ選手が強烈にアタック。回復している私もここは飛びついてジョイントする。

後は、パンチ選手と私が登りを攻め、Lee選手が耐える時間が続く。そしてLee選手は強い。攻め続けたが、振り切れず。後は3名での逃げ切りとなる。

パンチ選手に優勝をプレゼントするのはしゃくに触るが、まぁいい。で3名逃げ切りでゴール。

Lee選手と握手を交わす。が、やっぱり「パンチ選手はドープマン」と言う。許せないんだな。その気持ちは分かります。が、すべては過ぎたことだ。

オープンクラスで総合2位の武井きょうすけ選手(フォルツァ・ニールプライド)オープンクラスで総合2位の武井きょうすけ選手(フォルツァ・ニールプライド) (c)MakotoAYANO結果は総合2位。今の自分は楽しめました。目標もしっかりと見つけることが出来ました。また、世界に挑戦したいと思えます。

ステージレースするならTOFでしょう!。スタッフは最高にフレンドリー。タイの皆さま、最高に「ゆるい」、食事は最高に楽しい・美味しい!  来年が今から楽しみです。
日本の何かに飽きたら。出会いと旅を楽しみたいなら。

一番大切なのは「マンペンライ」「All right」。 意味は、気にしない。大丈夫だよ。楽しむ心で! 

(Team FORZA 武井きょうすけ)