6日間に渡るツアー・オブ・ジャパン最終日は恒例のごとく大集団スプリントへと持ち込まれ、マキシミリアーノ・リケーゼ(ランプレ・メリダ)の背後から飛び出した西谷泰治(愛三工業レーシング)が勝利。フォルッナート・バリアーニ(チームNIPPO・デローザ)が2年連続の総合優勝を達成した。

日比谷公園前をパレードスタート日比谷公園前をパレードスタート photo:Hideaki TAKAGI5月26日(日)に開催されたツアー・オブ・ジャパン最終ステージ。1週間前に大阪・堺をスタートしたレースは東京に到達し、この日でフィナーレを迎える。

大井埠頭へのルートでアタックする清水都貴(ブリヂストンアンカー)大井埠頭へのルートでアタックする清水都貴(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki TAKAGIコースとなったのは毎年恒例の日比谷公園をスタートし、旧海岸通りなどを走る14.7kmの移動区間を経て大井埠頭の周回コースへと入り、1周7kmのコースを14周回する全112.7km。周回コースに向かう途中のオーバーパスや運河に架かる橋を除きフラットで、完全なるスプリンター向けのレイアウトだ。

スタート前、日比谷公園にはファンやギャラリーが多数詰めかけ、選手との交流や記念撮影を楽しむ姿が。フォルッナート・バリアーニとジュリアン・アレドンドによる総合ワンツーをほぼ手中に収めたチームNIPPO・デローザのチームテントは一際明るい印象で、チームの枠を越えて選手同士が談笑するシーンも見受けられた。

11時に号砲が鳴らされると、1.2kmのパレードランを経てアクチュアルスタートが切られる。スタートアタックを狙う選手が急加速すると、集団は活性化の一途をたどった。

旧海岸通りを時速50km/hオーバーで南下する集団先頭からは清水都貴(ブリヂストン・アンカー)がアタックして10秒程のリードを稼ぐものの集団は見逃さない。アタックと吸収を繰り返した状態で大井埠頭の周回コースへと入っていく。

大井埠頭周回コースを走るメイン集団大井埠頭周回コースを走るメイン集団 photo:So.Isobe

安井雅彦(シマノレーシング)がメイン集団からアタック安井雅彦(シマノレーシング)がメイン集団からアタック photo:Hideaki TAKAGI終盤まで逃げ続ける中村誠(宇都宮ブリッツェン)終盤まで逃げ続ける中村誠(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI次いでマート・オハベー(チャンピオンシステム・プロサイクリング)や井上和郎(ブリヂストン・アンカー)のアタックにはOCBCシンガポールやランプレ・メリダも反応し、一時6名の逃げが形成されたがチームNIPPO・デローザが牽引する集団によって引き戻される。

更に阿部嵩之や清水都貴、澤田賢匠らが相次いでアタックするも、決定的なリードを奪えない。そしてスタートから20kmを経過した段階で、中村誠(宇都宮ブリッツェン)が単独アタック。集団はこの動きを容認するとペースダウンし、20秒、40秒とタイム差は徐々に開いていく。この日の逃げが決まった。

中盤からはヴィーニファンティーニがコントロールに加わり、タイム差を縮めていく中盤からはヴィーニファンティーニがコントロールに加わり、タイム差を縮めていく photo:So.Isobe一人先行する中村の背後で集団をコントロールするのはチームNIPPO・デローザ。福島晋一や中根英登、内間康平らが淡々と先頭を牽きリーダーチームとしての責務を果たす。レースが落ち着きを見せたことで中村もややペースを落として巡航体勢に入り、終盤までこの体勢のままレースは進んでいった。

チームメイトに守られて走るフォルッナート・バリアーニ(チームNIPPO・デローザ)チームメイトに守られて走るフォルッナート・バリアーニ(チームNIPPO・デローザ) photo:So.Isobe先頭チームNIPPO・デローザの後ろはブリヂストン・アンカーやヴィーニファンティーニが固め、次いでヒューオン・ジェネシスらが続く。マキシミリアーノ・リケーゼを勝たせたいランプレ・メリダは集団後方に控え、勝負のタイミングを待つ体勢。リーダージャージのバリアーニ、新人賞ジャージのアレドンドは共に集団前方に位置し落車による危険の芽を摘んでいく。

終盤にアタックしたクレイグ・ルイス(チャンピオンシステム・プロサイクリング)ら3名終盤にアタックしたクレイグ・ルイス(チャンピオンシステム・プロサイクリング)ら3名 photo:So.Isobe中間スプリントポイントではポイント賞ジャージを着用するピエルパオロ・デネグリ(ヴィーニファンティーニ)が争わずして集団の先頭を獲り、全体の2位通過。ペースの落ちた集団からは先頭中村を追って安井雅彦(シマノレーシング)が飛び出すものの、およそ2周を消化して吸収される。

中盤を過ぎてヴィーニファンティーニがコントロールに加わったことで集団はペースを上げ、中村のリードを徐々に奪い取っていく。そして残り2周回完了時点で遂に中村は吸収され、ここからカウンターアタックで堀孝明(宇都宮ブリッツェン)が数秒先行したものの、活性化した集団を振り切るには至らない。

そしてクレイグ・ルイス(チャンピオンシステム・プロサイクリング)、エリック・シェパード(CBCシンガポール)、フローリス・フーシンニン(ドラパックサイクリング)の3名が飛び出した。

強力な3名はローテーションを回し、25秒ほどのタイム差を持って残り1周回(7km)へと突入。この3名の勢いがスプリンターチームの計算を狂わせた。チームNIPPO・デローザが牽く集団はスピードが上がらず、逃げ切りを恐れたブリヂストン・アンカーが先頭に。

しかしタイム差は縮まる気配を見せること無く、スプリントに向けて脚を貯めていたランプレ・メリダもいよいよもってフルメンバーで追走を試みる。このペースアップが功を奏し、遂にラスト1kmを切って逃げは吸収。追走で力を使い、組織だったトレインを組むチームが現れない混沌とした状況のままスプリント体勢に突入していく。

そしてリケーゼが早めのタイミングで仕掛けたものの、背後につけていた西谷が急加速。一気に並びかけるとホイール半分程の差をもって先着。2年連続で力強いガッツポーズが大井埠頭のストレートで決まった。

2年連続で東京ステージを制した西谷泰治(愛三工業レーシング)2年連続で東京ステージを制した西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:So.Isobe

雄叫びを上げてゴールする西谷泰治(愛三工業レーシング)雄叫びを上げてゴールする西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:So.Isobe「富士山(第4ステージ)の後体調を崩してしまい、発熱もありました」とは西谷。「でも応援してくれる方がすごく多くて、その声援が力を与えてくれた。監督からは走るか走らないかは自分で決めるように言われましたが、ファンの前で走りを披露したかった。走るからには勝たなければいけませんでした」。

西谷は第1ステージの短距離タイムトライアルに続く今大会2勝目。「一発しか体力が持たないことを分かっていたので、中間スプリントは全て無視してゴールに掛けました」と語った。

そして終始レースをコントロールしたチームメイトに守られたバリアーニは2年連続の総合優勝を達成、アレドンドの新人賞やチーム総合成績優勝など、圧倒的なチーム力を見せつける結果となった。


柔らかな笑顔を見せるフォルッナート・バリアーニ(チームNIPPO・デローザ)柔らかな笑顔を見せるフォルッナート・バリアーニ(チームNIPPO・デローザ) photo:So.Isobeステージ表彰 西谷泰治(愛三工業レーシング)ステージ表彰 西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:So.Isobe


山岳賞はダヴィデ・ヴィガノ(ランプレ・メリダ)、ポイント賞はピエルパオロ・デネグリ(ヴィーニファンティーニ)が戴冠。中3日をおいた後、ほとんどのチームは木曜日から始まるツール・ド・熊野へと参戦予定。ハイレベルなレースが期待できそうだ。

山岳賞 ダヴィデ・ヴィガノ(ランプレ・メリダ)山岳賞 ダヴィデ・ヴィガノ(ランプレ・メリダ) photo:So.Isobeポイント賞 ピエルパオロ・デネグリ(ヴィーニファンティーニ)ポイント賞 ピエルパオロ・デネグリ(ヴィーニファンティーニ) photo:So.Isobe


4賞ジャージ表彰4賞ジャージ表彰 photo:So.Isobe圧倒的なチーム力を誇ったチームNIPPO・デローザ圧倒的なチーム力を誇ったチームNIPPO・デローザ photo:So.Isobe



ツアー・オブ・ジャパン2013 第6ステージ東京結果
1位 西谷泰治(愛三工業レーシング)                2h34′31″
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(ランプレ・メリダ)
3位 吉田隼人(シマノレーシング)
4位 アディック・オスマン(チャンピオンシステム・プロサイクリング)
5位 土井雪広(チームUKYO)
6位 シモーネ・カンパニャーロ(ランプレ・メリダ)
7位 清水都貴(ブリヂストン・アンカー)
8位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)
9位 ダヴィデ・ヴィガノ(ランプレ・メリダ)
10位 ピエルパオロ・デネグリ(ヴィーニファンティーニ)

個人総合成績
1位 フォルッナート・バリアーニ(チームNIPPO・デローザ)    15h39′44″
2位 ジュリアン・アレドンド(チームNIPPO・デローザ)     +1′11″
3位 ダミアン・モニエ(ブリヂストン・アンカー)          +1′36″
4位 トマ・ルバ(ブリヂストン・アンカー)              +2′39″
5位 ベンジャミン・ディボール(ヒューオン・ジェネシス)     +3′26″
6位 西薗良太(チャンピオンシステム・プロサイクリング)   +3′46″
7位 クリスティアーノ・モングッジ(ヴィーニファンティーニ)   +4′15″
8位 ダレン・ラプソーン(ドラパックサイクリング)         +4′19″
9位 ネイサン・アール(ヒューオン・ジェネシス)          +5′10″
10位 ロビー・ハッカー(ドラパックサイクリング)          +5′11″

個人総合ポイント賞 
1位 ピエルパオロ・デネグリ(ヴィーニファンティーニ)
2位 西谷泰治(愛三工業レーシング)
3位 マキシミリアーノ・リケーゼ(ランプレ・メリダ)

個人総合山岳賞
1位 ダヴィデ・ヴィガノ(ランプレ・メリダ)
2位 ロビー・ハッカー(ドラパック)
3位 ベンジャミン・ディボール(ヒューオン・ジェネシス)

個人総合新人賞 
1位 ジュリアン・アレドンド(チームNIPPO・デローザ)
2位 ベンジャミン・ディボール(ヒューオン・ジェネシス)
3位 ネイサン・アール(ヒューオン・ジェネシス)

チーム総合時間賞 
1位 チームNIPPO・デローザ
2位 ヒューオン・ジェネシス 
3位 ブリヂストンアンカー 


text:So.Isobe
photo:So.Isobe,Hideaki.Takagi
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