全長54.8kmのテクニカルな個人TTとなった第8ステージ。アレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)が、元チームメイトでTT巧者のウィギンズを10秒差で下した。総合1位はヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)に移行した。

ステージ優勝のアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)

ジロ・デ・イタリア初出場でステージ優勝を挙げたアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)ジロ・デ・イタリア初出場でステージ優勝を挙げたアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター) photo:Kei Tsuji(今日の戦略は)やれることをやるだけだった。(スタートしてない)選手がたくさん残っていたので、目の前にニンジンをぶら下がっていても、それを手に入れるのが難しいのもわかっていた。
待ち時間はとても怖かった。腰を上げる瞬間が3回あった。1回目はタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)が、ぼくのタイムに肉薄したときだ。2回目は元チームメイトのウィギンズについて。彼が復調したのはわかっていた。3回目はニーバリが逆転したとのを知ったとき。こういう曲がりくねったコースはニーバリが得意なことはわかっていた。でも、後半のパワーが必要な区間では、ぼくのほうが良かった。それが決め手だった。

ゴールに向かって最後の登りを走るアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター)ゴールに向かって最後の登りを走るアレックス・ダウセット(イギリス、モビスター) photo:Kei Tsuji(モビスターへの移籍については)難しい決定じゃなかった。スカイ時代はとても楽しかったし、プロとして最初の2年を過ごすには最適のチームだった。でも、ぼくは大きなレースに参加できなかったし、そのメンバーに選出されるとは自分でも思えなかった。
モビスターがぼくを欲しがっていただけじゃなくて、ぼくを大きなレースに出場させるつもりだったのも重要だった。チームには感謝している。今日のステージに備えて、チームはできるだけ、ぼくを休ませてくれた。彼らの努力に報いることができて、とてもうれしい。

(血友病について)自分が血友病患者でなかったら、いまこの場にいることはなかったと思う。ぼくは生後18ヵ月で血友病だと診断された。(イギリスの)国民保健サービスと両親のおかげで、いまがある。ぼくは治療には水泳がベストだとすすめられて、1週間のうち5〜6日は泳いでいた。あの運動のおかげで自転車が速くなった。だから、若い血友病患者に次のメッセージを送りたい。患者の子供たちは過度に大切に育てるべきだと思われているけど、それはよくある誤解だ。


総合1位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

ついにマリアローザを手にしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ついにマリアローザを手にしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji今日のタイムトライアルは難しかった。とくにペース配分が。今日はクライマー向きのコースだった。ヘジダルやエヴァンスのような選手が、今日のような長距離タイムトライアルで結果を出すだろうと思っていた。最初の25km過ぎまでは、ぼくのほうが強かった。それで彼らは火がついて、後半に盛り返した。このマリア・ローザはしっかりと守っていくつもりだけど、彼らも必ずこれを狙ってくるだろう。

ぼくは性格的にも落ち着いている。まわりで何が起きようとも、しっかり落ち着いて100%の力で走ることができる。これは、ぼくの家族や妻、そしてチーム・アスタナのメカニックやマッサーたちのサポートのおかげでもある。今日は、ずっと後ろにサポートカーがいたけど、まったくストレスを感じなかった。マルティネッリ監督やシェーファー監督の声は、とても穏やかだだから。

(ステージ3位に入ったタネル・カンゲルトについて)ジロの最初の数日は、カンゲルトは不調だったけど、だんだんと良くなってきた。昨日は、ぼくと一緒に上位にいた。今日のタイムトライアルの結果も良かった。今日のカンゲルトは勝ちに行こうとしていた。このジロでは、彼はぼくにとって大切な役割を持つ選手になると思う。ぼくたちはジロに参加した理由と、チーム全体として期待されていることを全員が認識している。


1分以上のロスを取り戻したステージ2位・総合4位のブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)

最後の登りで追い込むブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)ステージ2位・10秒差最後の登りで追い込むブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)ステージ2位・10秒差 photo:Kei Tsuji事前の準備で失敗したと思う。このステージは勝ちたかった。この2〜3日はずっと大変な日が続き、昨日は落車まであった。そこから取り戻せた。今日は簡単なコースではなかった。レース中はずっと、3〜4分の遅れを取り戻せるようなステージではないと考えていた。それほど、スタート地点がテクニカルだった。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)の新型TTバイク「Bolide」ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)の新型TTバイク「Bolide」 photo:Kei Tsujiパンクとバイク交換のおかげでリズムが狂ってしまったのは、まったく良くなかった。でも、コースの2番目の区間が完璧に自分向きだったので、そこでタイムをたくさん稼げた。困難な状況だったのは間違いないが、今はこうして戻ってきた。これからの2週間は、レースはさらに過酷になるだろう。

(最後の1kmは)かなり巧く走れたと思う。バイク交換のおかげで少しイラついていたこともあって、コースのテクニカルな区間で思ったほどベストな結果を出せなかった。それで少し落ち込んで、ちょっと慎重になった——昨日の落車の件もあったからだ。ペザロを過ぎたころにしっかり踏めるようになって、前のような好調さを身体的にも感じていた。今までが悪い状況だったからね。それは、これから解決すべき問題だ。それから(元チームメイトの)アレックス・ダウセットを祝福したい。彼のグランツールのキャリアとしては輝かしいスタートになるはずだ。

残りは2週間。最終週はかなりハードになっていくけど、タイム差もまだまだそれほど開いていない。昨日の落車もあって、ニーバリとの差は1分16秒だけど、勝負をあきらめるほどの悪くはない。グランツールではトップが防衛するのは簡単じゃない。だから悪くない成績だと思う。

チームは好調で、トップ10に3人がランクインしている。チームとしては、勝負できるカードを2〜3枚を手に入れたことになる。


新人賞のウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)

新人賞のウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)新人賞のウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ブランコプロサイクリング) (c)CorVos今日のTTは満足な結果だ。残念なのは、前がずっと詰まっていて、下りの落車で失ったタイムを取り戻せなかったことだ。でも、新人賞ジャージが手に入った。とてもうれしい。

初めてのグランツールで、白い新人賞ジャージを着ることができて格別だ。ツール・ド・ロマンディで新人賞を獲得して以来、ジロで同じことを再現したいと思っていた。でも、実際にそうなるのは、とても素晴らしい。今後はしばらく、ロバート・ヘーシンクのサポートに集中する。このジャージを維持できるかは、時間が経てばわかるだろう。


ソースは現地取材、記者会見、チーム公式ウェブサイト、主催新聞ガゼッタ・デッロ・スポルト紙、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。

translation & text: Seiya.YAMASAKI