ホアキン・ロドリゲスの勝利から1年。ユイの壁の激坂を制したのは同じカチューシャのジャージを着るダニエル・モレーノだった。ベタンクールの早めのアタックにリズムを狂わされたジルベールら優勝候補たちはリズムを狂わされてしまった。

ユイの壁には観客たちが詰めかけ、人垣をつくるユイの壁には観客たちが詰めかけ、人垣をつくる (c)CorVosアルデンヌ・クラシックの2戦目、ベルギーのワロン地方で開催される第77回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)。「ワロンの矢」を意味するレースは近年のスタートの街シャルルロワからバンシュに変更となったことでコース全長は205kmになり、登りの数は10カ所から12カ所に。距離、上りともに例年より難易度が上がった。

サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)とローレンス・テンダム(オランダ、ブランコプロサイクリング)が逃げるサイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)とローレンス・テンダム(オランダ、ブランコプロサイクリング)が逃げる (c)CorVosレースの歴史上まったく初のスタート地点となったバンシュを走りだした196選手たち。天候は快晴。20kmの早い段階でのアタックを決めたのはジル・デビリャース(ベルギー、クレラン・ユーフォミー)とピルミン・ラング(スイス、IAMサイクリング)。ユルゲン・ヴァンゴーレン(ベルギー、アクセントジョブス)が合流し、3人逃げが形成される。
集団とのタイム差は一時10分近くに広がった。しかし今日12ある坂の1つ目に差し掛かった時点でメイン集団はペースを上げ、差を縮めだす。108.5km地点にあたる最初のユイの坂では約7分差に。集団を主に引くのは優勝候補フィリップ・ジルベール擁するBMCレーシング。赤いジャージの軍団に守られたレインボージャージが順調に駒を進める。3人は7つ目の坂でメイン集団に捕まった。

次なるアタックをかけたのは ローレンス・テンダム(オランダ、ブランコプロサイクリング)とロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)。脱落したバルデに代わってサイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)がテンダムに合流。ふたりのランデブーが始まった。

ゲスクとテンダムの逃げはラスト9.3kmまで続く。集団はマークス・ブルグハートらBMCレーシングが強力に牽引し、ジルベールの勝利のためのお膳立てを続ける。3回めのユイの坂に入る前の坂、コル・ド・ヴィレルブイエで2人が捕まった瞬間、トラヴィス・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)のアタックを皮切りに集団は急激に活性化する。

「ユイの壁」を登るプロトン「ユイの壁」を登るプロトン (c)CorVosスピードが上がり数を減らす集団。アンディ・シュレク(ルクセンブルグ・レディオシャック・レオパード)がふるい落とされるものの優勝候補たちはいずれも前に残る。BMCレーシングの制御は崩壊しだし、アムステルゴールドレースで負傷したロドリゲス擁するカチューシャも集団前方に数を揃え、勢いを見せる。

集団はスピードを上げてポジションを争うように最後のユイの坂の上りへと突入する。
「ユイの壁」は長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%、コーナー内側の最大勾配が26%に達する激しい登り。腰を上げて急勾配をこなす集団の前方にはジルベールが位置し、睨みをきかせる。ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)はその後方につける。
しかしまだ頂上まで700mある早い段階で仕掛けて一気に差をつけたのはカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)。ジルベールらはこれを見送ったが、しかしベタンクールの勢いは衰えず、大きな差がついてしまう。逃げ切りの可能性がみえてくる。

ジルベールも早めに追走に入らざるを得ず、マークするライバルたちに対して不利な状況に。そしてラスト200mで鮮やかな加速を見せたのはダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)。ジルベールはラスト100mで失速してしまう。
ベタンクールを交わしてゴールに向かうモレーノ。有力選手の一角にリストアップされていたものの、驚きの勝利。両手を突き上げて歓喜するモレーノ。そしてカチューシャのジャージは連覇を達成した。

ベタンクールを追うフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)ベタンクールを追うフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) (c)CorVosその後方では、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)がベタンクールを交わして2位に上がる。ベタンクールも粘りに粘り、コロンビア人のツー・スリーフィニッシュとなった。
4位にダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、5位に好調のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)、昨年覇者ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は6位に。
鮮やかなスパートを見せたダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)鮮やかなスパートを見せたダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) (c)CorVos期待されたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)は12位、そして優勝候補のジルベールは15位と、いずれもトップ10圏外に沈んだ。

軽量でパンチ力のあるクライマーのモレーノ。2011年ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージや2012年クリテリウム・ドーフィネ第2・7ステージの勝利などがあるが、これがキャリア最大の勝利と言える。2009年ジャパンカップにも来日し、2位となっているため日本のファンにもお馴染みの選手だ。(当時ケースデパーニュ所属。JC優勝者はクリスアンケル・セレンセン)

キャリア最大の勝利を挙げたダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)キャリア最大の勝利を挙げたダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) (c)CorVos優勝したモレーノのコメント
この勝利はとてもハッピーだ。フレーシュ・ワロンヌはその重要度からも自分向きのコースからももっとも好きなレースの一つ。最後の坂はとくに僕向きで、このレースに勝つことはずっと夢だったんだ。プリート(ロドリゲス)はアムステルゴールドレースでの落車の怪我の影響から今だに最好調じゃなかった。だからふたりで「お互いのレースをしよう」とあらかじめ話し合っていたんだ。

ラスト100mで失速し15位に沈んだフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)ラスト100mで失速し15位に沈んだフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) (c)CorVos自分が年々進化していること、そしてカチューシャがますます強くなっていることの両方を証明できて嬉しいね。ロドリゲス、そして他のチームメイトをアシストすることも喜びなんだ。僕は彼の負うようなプレッシャーには勝てない。
ツール・ド・ロマンディではチームリーダーになるというチャンスがあるけれど、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャではロドリゲスの総合のために喜んでアシストする。そして今日みたいなチャンスがあればものにしたいね。

15位に終わったフィリップ・ジルベールのコメント
速いレースだった。チームはレースのすべてをコントロール下において強さを誇示した。こんなとき、最後に勝てないのはとても残念だ。でも僕は挑戦したんだ。勝てなかったけれど、数パーセント足りなかっただけ。僕の調子は毎日良くなっている。これをリエージュ(リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ)に持ち越したいね。


フレーシュ・ワロンヌ2013 結果
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 4h’52”33
2位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)+”3
3位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+”8
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
8位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
9位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコプロサイクリング)
10位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)

photo:CorVos
text:Makoto.AYANO
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