4月1日、スペイン北東部のバスク州で第53回ブエルタ・アル・パイスバスコ(UCIワールドツアー)が開幕した。ラスト7kmの2級山岳頂上で大落車が発生する中、アルデンヌ・クラシックに照準を合わすサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が得意のゴールスプリントで勝利している。

逃げるアメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)とローラン・ディディエ(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)逃げるアメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)とローラン・ディディエ(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード) photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com今年で開催53回目を迎えるブエルタ・アル・パイスバスコ(バスク一周レース)。ベルギーやフランスで「北のクラシック」が盛り上がりを見せる中、アルデンヌ・クラシックを見据える軽量級クラシックハンターたちや、グランツール狙いのオールラウンダーたちがバスクに集まる。

メイン集団をコントロールするサクソ・ティンコフメイン集団をコントロールするサクソ・ティンコフ photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com17あるスペインの自治州の中でも、伝統的に多くのロードレーサー、特にクライマーを輩出してきたバスク州。同州が誇るUCIワールドツアーレースの第1ステージが、山間部のエルゴイバルを発着する156kmで行なわれた。カテゴリー1級から3級までの山岳が6つ詰め込まれた中級山岳ステージで、最後の2級山岳サンミゲル峠はゴールから7kmしか離れていない。

バスク州の山岳地帯を走るプロトンバスク州の山岳地帯を走るプロトン photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com今シーズン、地元チームであるエウスカルテル・エウスカディは財政難によってバスク出身ライダーを放出。海外スポンサー獲得を狙い、代わりに海外選手を積極的にリクルートした。その煽りを受けてエウスカルテルを離れ、カハルーラルに移籍したアメツ・チュルカ(スペイン)が逃げを試みた。

ゴールスプリントを制したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)ゴールスプリントを制したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com2007年ツール・ド・フランスで総合敢闘賞に輝いたチュルカは、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)とともに最大5分のリードを得てエスケープ。チュルカは5つのカテゴリー山岳を先頭通過してみせる。

メイン集団はアルベルト・コンタドール(スペイン)を中心に、CAセレンセン、エルナンデス、ロジャース、ロッシュ、ツァウグ、クロイツィゲル、パウリーニョというグランツール並の一軍選手を揃えるサクソ・ティンコフがコントロール。計算通り、ゴール7km手前の2級山岳で逃げをキャッチした。

平均勾配5.4%の2級山岳で大きな動きは見られず、メイン集団は大きな状態のまま頂上をクリア。そのまま大集団によるゴールスプリントに持ち込まれると思われたが、2級山岳の頂上で大規模な落車が発生する。集団前方に位置していた17名が飛び出す形となった。

先行したのはコンタドールやリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)、ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)という錚々たるメンバー。

一方で、落車で足止めを食らったディフェンディングチャンピオンのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)や昨年のジロ・デ・イタリア覇者ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)、世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)らは追走を余儀なくされる。

トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)やアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)は更にその後方。落車によって肘から流血したユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)は5分もタイムを失った。

コンタドールら17名はハイスピードなダウンヒルを攻め、後続グループを振り切ってゴールへ。タイミング良く仕掛け、ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)を振り切ったゲランスが勝利した。

ゲランスは同じくUCIワールドツアーレースのボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第6ステージに続く勝利。ツアー・ダウンアンダーでもステージ優勝を飾っており、今シーズンの3勝は全てUCIワールドツアーレースでの結果だ。

「総合狙いのピーター(ウェーニング)が素晴らしい走りで僕を勝利に導いてくれた。カタルーニャとバスクの両方で、目標としていたステージを射止めた。パーフェクトだった」。ゲランスは毎年アルデンヌ・クラシックで上位に絡むクラシックハンター。2011年にアムステル・ゴールドレースで3位に入った32歳は自信を見せる。登りで人数が絞られた精鋭グループによるスプリント勝負にめっぽう強い。「ミラノ〜サンレモに向けての調整には失敗したけど、逆に今になって調子の波がやってきた。次なる目標のアルデンヌ・クラシックに向けてもっと調子を上げて行きたい」。

先頭集団でゴールしたコンタドールやポルトに対し、サンチェスやヘジダルを含む後続グループは5秒遅れでゴール。マルティンは28秒、Aシュレクは1分のビハインドを食らっている。

ブエルタ・アル・パイスバスコは4月6日まで合計6ステージで行なわれる。2級山岳の頂上ゴールが設定された第3ステージや、1級山岳頂上ゴールの第4ステージ、最終日の個人タイムトライアルに注目だ。

選手コメントはオリカ・グリーンエッジ公式サイトより。


ブエルタ・アル・パイスバスコ2013第1ステージ結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      4h06'33"
2位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 アンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)
4位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
9位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
10位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)

個人総合成績
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      4h06'33"
2位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 アンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)
4位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
9位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
10位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)

ポイント賞
サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)

スプリント賞
アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)

チーム総合成績
アスタナ

text:Kei Tsuji
photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com

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