氷点下近い低温&積雪という季節外れの天候によって、コースを短縮して行なわれた第75回ヘント〜ウェベルヘム(UCIワールドツアー)。逃げの展開に持ち込んだペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)が得意のウィリーでウェベルヘムのゴールに飛び込んだ。

本来ヘント〜ウェベルヘムは、その名の通りヘント近郊のデインセからウェベルヘムまでの区間で行なわれる。しかし現在ヨーロッパには真冬の寒波が居座り続けており、季節外れの寒さと降雪がベルギーを襲う。ヘント〜ウェベルヘムのコースも例外ではなく、雪によって通行止めの箇所が続出。一時はレースの中止や延期も噂されたが、レース主催者はスタート地点を内陸部のデインセから海側のギステルに移し、合計10カ所登場する急坂の一つ「カッセルベルグ」を省くことで開催にこぎつけた。

スタート前に暖を取るブランコプロサイクリングのメンバースタート前に暖を取るブランコプロサイクリングのメンバー photo:Cor Vos耳当てをつけて登場したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)耳当てをつけて登場したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos

新たなスタート地点ギステルは、本来コースの50km地点で通過する街。つまりコースは50km短縮され、全長190kmで行なわれることに。チームバスに乗ってギステルに移動した選手たちは、防寒対策を万全にし、予定より遅れてスタートを切った。

沿道ではベルギー国旗が振られる沿道ではベルギー国旗が振られる photo:Riccardo Scanferla「チームバスでスタート地点に向かいながら身体中にワセリンを塗りたくり、少しでも寒さの軽減をしています。ただこのレースは毎年スタートから速いから着込み過ぎるのも考えよう」と語るのは、直前にレース出場が決まった別府史之(オリカ・グリーンエッジ)。その言葉通り、スタート後すぐにペースが猛烈に上がり、海からの風も手伝って集団は粉砕された。

農道のような細いコースを走る農道のような細いコースを走る photo:Riccardo Scanferla第1集団にボーネンやカヴェンディッシュ、サガンが入り、カンチェラーラを含む第2集団が追走する場面がしばらく続いたが、この2つの集団は一つに戻る。一旦緩んだ集団からフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)、マチュー・ラダニュ(フランス、FDJ)、アッサン・バザイエフ(カザフスタン、アスタナ)が飛び出すと、レースはようやく落ち着きを取り戻した。

ケンメルベルグの登りをクリアするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ケンメルベルグの登りをクリアするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vosキャノンデールプロサイクリングとスカイプロサイクリング、BMCレーシングチームがコントロールするメイン集団に対し、2分のタイム差で逃げるフレチャら3名。この安定した状態は、ゴール72km手前に位置する「バネベルグ」でのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)のアタックで崩される。

断続的なアタックによって集団は50名ほどに縮小。すると、ゴール65km手前、ヘント〜ウェベルヘム名物の「ケンメルベルグ」を前にしたタイミングでトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が落車。沿道に打ち付けられたディフェンディングチャンピオンは、悲痛な表情を浮かべながら時間をかけて再スタートを切ったが、しばらくしてリタイア。詳細は明らかにされていないが、ボーネンは右膝を打ち付けた。

ボーネンのフランドルならびにパリ〜ルーベの連覇に黄信号が灯る。また、E3ハレルベークを制したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)もリタイア。その他、多くの選手が補給ポイントでバイクを降りた。

ビッグネームの相次ぐリタイア。それでもレースは続く。ゴール64km手前の「ケンメルベルグ」で2009年大会の覇者エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)がアタックを仕掛けると、集団は中切れによって2つに分裂。そこから断続的にカウンターアタックがかかる。

サガンやアイゼル、ファンアフェルマートを含む先頭グループサガンやアイゼル、ファンアフェルマートを含む先頭グループ photo:Cor Vos農道のような細いコースを走る農道のような細いコースを走る photo:Riccardo Scanferla

すると平坦区間でハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)が集団から抜け出すことに成功。2010年大会の覇者ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、スカイプロサイクリング)やサガンら9名がハウッスラーに追いつき、そのまま先頭のフレチャらに合流する。

ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)自ら先頭グループを率いるペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)自ら先頭グループを率いる photo:Cor Vosこうして、ゴールまで52kmを残して、フレチャ、ラダニュ、バザイエフ、アイゼル、サガン、ハウッスラー、ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)、ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック・レオパード)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)、マチェイ・ボドナール(ポーランド、キャノンデールプロサイクリング)、イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ベリソル)という13名の先頭グループが形成された。

ラスト3.5kmでアタックするペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ラスト3.5kmでアタックするペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vos先頭13名の1分後方に位置するメイン集団ではカウンターアタックがかかり続ける。メイン集団内に残ったフミは、集団牽引&アタックに反応するなどして、リー・ハワード(オーストラリア)をサポート。しかし先頭13名とのタイム差は拡大傾向に。

ゴールまで30kmを切ると、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)擁するオメガファーマ・クイックステップやアンドレ・グライペル(ドイツ)擁するロット・ベリソル、その他ブランコプロサイクリングやカチューシャが集団ペースアップを開始。本格的に先頭グループを追うが、タイム差1分30秒の膠着状態が続く。

先頭グループの人数を絞るためにハウッスラーがアタックを繰り返したが決まらない。ボドナールがサガンのために献身的な引きを見せ、ウェベルヘムの街に突き進む。メイン集団とのタイム差はラスト9kmで遂に1分を切ったが、結局追いつくことはなかった。

アシストのボドナールが力つきると、ゴールまで3.5kmを残してサガンが動く。強烈なアタック一発でライバルを引き離したサガンが独走を開始。ファンアフェルマートやアイゼルは追いきれず、タイム差はぐんぐん広がっていく。サガンのペースは最後まで落ちなかった。

後続を23秒引き離したサガンが、得意のウィリーを繰り出しながらゴール。23歳57日という史上2番目に若いヘント〜ウェベルヘム優勝者が誕生した。
ゴールでウィリーを決めるペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ゴールでウィリーを決めるペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla

「ウィリーで勝利をアピールする絶好のチャンスだと思ったんだ。でも、疲れていて上手く出来なかった」。ミラノ〜サンレモとE3ハレルベークで2位に甘んじていたサガンが、ようやくUCIワールドツアーのクラシックで頂点に立った。

ヘント〜ウェベルヘム2013表彰台ヘント〜ウェベルヘム2013表彰台 photo:Riccardo Scanferla「スプリンターチームを引き離してくれたボドナールの走りは完璧だったよ。ゴールが近づくと協調体制が崩れ、みんな僕をマークして、僕の動きを待っていた。ファンデンベルフがアタックしたことでそのバランスが崩れ、その隙を突いて一気に仕掛けたんだ。一度飛び出してしまえば、後続の協調体制が崩れると確信していた」。

世界最多タイの今シーズン6勝目を飾ったサガンは、来週開催されるロンド・ファン・フラーンデレンの優勝候補の一角。本人はその期待をサラリと受け流す。「みんなフランドルについて聞きたがるけど、フランドルについては来週考えるよ。楽観的に、自信をもってクラシックを一戦一戦闘っている。ようやく氷が砕く(口火を切る)ことが出来たので、この流れが続けばいいと思っている。僕をフランドルの優勝候補に挙げる人もいると思うけど、予想がつかないレースなので僕は全く気にしない。集中して、全力を出すだけだ」。

40秒遅れでやってきたメイン集団は、グライペルを先頭にゴール。カヴェンディッシュは18位に終わっている。また、メイン集団内、25位でゴールしたハワードは「今日はチームメイトたち、特にフミに感謝している」とツイート。ハワードをサポートしたフミは、ゴールまで15kmを残してバイクを降りた。

選手コメントはキャノンデールプロサイクリング公式リリースより。


ヘント〜ウェベルヘム2013結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)       4h29'10"
2位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)                    +23"
3位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
4位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
5位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 マチュー・ラダニュ(フランス、FDJ)
7位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、スカイプロサイクリング)
8位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)    +24"
9位 ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック・レオパード)
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
DNF 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla
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