世界最高峰のロードレース、ツール・ド・フランス。その最高の栄誉が、総合優勝者に与えられるマイヨジョーヌだ。この黄色い栄光ジャージをかけて、世界各国から総合力のある精鋭たちが集う。注目はコンタドール(スペイン)とアームストロング(アメリカ)擁するアスタナだ。

注目度ナンバーワンはアスタナ

2007年のツール覇者アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)2007年のツール覇者アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos今年で開催96回目を迎えるツール。マイヨジョーヌ争いはアスタナを中心に繰り広げられるだろう。名将ブリュイネール監督率いるこのカザフスタンチームは、チーム力で他を圧倒している。

アスタナのエースは、2007年にツールを制し、昨年ジロとブエルタを制してグランツール全制覇を成し遂げたアルベルト・コンタドール(スペイン)。その総合力は現役選手ナンバーワンだ。山岳で突出した力を発揮し、タイムトライアル(以下TT)でもスペシャリストと遜色無い走りを見せる。今年はTTでスペインチャンピオンジャージを着る。

ツール7連覇達成後に引退し、3年半のブランクを経て復活したランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)ツール7連覇達成後に引退し、3年半のブランクを経て復活したランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) photo:Cor Vosしかしコンタドールには申し訳ないが、世界中から最も注目を集めているのは、かつてツール7連覇を達成し3年半のブランクを経て現役復帰したランス・アームストロング(アメリカ)だ。初出場のジロを総合12位で終えたかつての帝王は、このツールに向けて更にコンディションを上げているハズ。コンタドールをアシストすることを明言しているが、自らも総合上位に絡んでくるだろう。

他にもリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)やアンドレアス・クレーデン(ドイツ)といった、他チームでは100%エース級の選手が揃うのがアスタナの強み。表彰台候補が4人いると言っても過言ではない。


アスタナに対抗するエヴァンス、サストレ、メンショフ、シュレク兄弟

悲願のマイヨジョーヌ獲得を目指すカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)ステージ2位悲願のマイヨジョーヌ獲得を目指すカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)ステージ2位 photo:Cor Vos2年連続スペイン人選手に敗れて総合2位のカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)は、今年こそ念願のタイトル獲得なるか。山岳でライバルたちと対等に闘い、TTでリードを広げる“インデュライン的”な走りが持ち味。前哨戦ドーフィネ・リベレでもTTでライバルを凌駕したが、山岳でスペインの牙城を崩せず総合2位だった。

エヴァンスをアシストする予定だった昨年ツール総合3位のベルンハート・コール(オーストリア)は、ドーピング違反で現役引退。さらにトーマス・デッケル(オランダ)までも2年前のEPO陽性でメンバー離脱。今年もエヴァンスはアシスト体制に不安を残す。

ジロの山岳2ステージを制したカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)ジロの山岳2ステージを制したカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ) photo:Kei Tsujiタイトルホルダーのカルロス・サストレ(スペイン)は、プロコンチネンタル登録のサーヴェロに移籍して連覇を狙う。マイヨジョーヌ候補の中では最も優れた登坂力を誇り、ジロでは2つの難関頂上ゴールを制した。本来生粋のクライマーだが、近年サストレはTTもそつなくこなす。チーム力に疑問を投げかける声も聞かれるが、山岳でリードを広げることが出来れば連覇に近づく。

5月のジロで死闘を繰り広げ、ブエルタに次ぐ2つ目のグランツール総合優勝を飾ったデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)も参戦。メンショフはこれまで8回ツールに出場しているが、重要な局面で遅れる場面が多々あった。ジロで見せた安定感ある走りをツールでも見せることが出来れば、グランツール全制覇も夢ではない。

ジロの新王者に輝いたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)ジロの新王者に輝いたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) photo:Kei Tsujiチームとして連覇を狙うサクソバンクは、アンディとフランクのシュレク兄弟(ルクセンブルク)を送り込む。中でも弟アンディは2007年ジロで驚きの総合2位に入った新鋭で、昨年ツールではピレネーの難関ステージで遅れながらも総合11位。同時にマイヨブラン(新人賞)を獲得している。今年も新人賞対象選手だが、ロードレースの将来を担うと嘱望されるこの若手急先鋒の目標はマイヨジョーヌ獲得だ。

アンディと同じく、若手がエースを担うのはリクイガス。ロマン・クロイツィゲル(チェコ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の2人がエースとしてツールに挑み、ジロ総合3位のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)がこれをサポートする。

今季リエージュで優勝しているアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)今季リエージュで優勝しているアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosアスタナに所属しない北米出身選手としては、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)にも期待。昨年ツールで総合5位に入ったこのアメリカンオールラウンダーは、ジロの序盤ステージで落車し、肋骨を骨折。しかし何とかツールまでにコンディションを戻してきた。

ドイツの期待を背負うリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)や、昨年マイヨジョーヌ着用&総合7位のキム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)、バルベルデの欠場に伴いエースを担うパリ〜ニース覇者のルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、新生ロシアチームを率いるウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)らが総合上位に絡んでくるだろう。世界最高峰レースだけに、出場メンバーは実に豪華だ。参考までに昨年の結果を以下に記しておく。

2008年ツールの総合トップ10(チーム名は当時の所属チーム)
1位 カルロス・サストレ(スペイン、チームCSC・サクソバンク)87h52'52"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+58"
3位 ベルンハート・コール(オーストリア、ゲロルシュタイナー)+1'13"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+2'10"
5位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、チームガーミン・チポレ)+3'05"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、チームCSC・サクソバンク)+4'28"
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+6'25"
8位 キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)+6'55"
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)+7'12"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+9'05"

歴代のツール総合優勝者
2007年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年 オスカル・ペレイロ(スペイン)
2005年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2004年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2003年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2002年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2001年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2000年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1999年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1996年 ビャルヌ・リース(デンマーク)
1995年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1994年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1993年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1991年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1990年 グレッグ・レモン(アメリカ)