2013年3月6日から12日までの7日間、第48回ティレーノ~アドリアティコ(UCIワールドツアー)が開幕する。グランツールでの勝利を狙うオールラウンダーから、ミラノ~サンレモを見据えるスプリンターまで、豪華な顔ぶれが集結した。

チームTTから最大勾配27%の激坂まで。アクセントに富んだ7日間の戦い

ティレーノ~アドリアティコ2013 コースマップティレーノ~アドリアティコ2013 コースマップ (c)RCS Sportジロ・デ・イタリアと同じRCS Sportが主催する1周間の中級ステージレース、ティレーノ〜アドリアティコ。レースの名の通りティレニア海沿岸の街サン・ヴィンツェンツォをスタートしてイタリア半島を横断し、アドリア海のサン・ベネデットへとゴールする。

ティレーノ~アドリアティコ第4ステージ プラーティ・ディ・ティーボの頂上ゴールが見どころだティレーノ~アドリアティコ第4ステージ プラーティ・ディ・ティーボの頂上ゴールが見どころだ (c)RCS Sport半島を跨いで2つの海を繋ぐ行程から、イタリアでは「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれ、開催回数は今年で48回目を数える。グランツールやクラシックレースに照準を合わせる有力オールラウンダーやスプリンターがこぞって出場し、毎年熱いレースを展開することが特徴だ。同時期開催のパリ~ニースが有力どころ不在となったのに対し、今年はこのティレーノに超豪華メンバーが集まった。

2011年大会より加えられたタイムトライアルや、難易度の高い山岳ステージは今年も健在。平坦ステージからタイムトライアル2ステージ(個人TT&チームTT)まで、グランツールのエッセンスを7日間に凝縮した内容となっている。

ティレーノ~アドリアティコ第5ステージ ゴールのキエーティが勝負どころティレーノ~アドリアティコ第5ステージ ゴールのキエーティが勝負どころ (c)RCS Sport昨年同様、チームタイムトライアルから2013年のティレーノ~アドリアティコはスタート。アドリア海に面した16.9kmのコースでは、前半ステージの主導権を握るチームが選び出される。

2日目からアドリア海に向けて東進を開始するレースは、スプリンター向けの第2、第3ステージを経て、4日目から主役がオールラウンダーへと移り変わる。最難関クイーンステージとなる第4ステージは、後半にパッソ・カパネッレ(距離13.8km、平均勾配4.5%)をクリアすると、最後はプラーティ・ディ・ティーボ(距離14.6km、平均勾配7.1%)へと上り詰める。オールラウンダーとクライマーによる、激しい山岳バトルが見ものだ。

ティレーノ~アドリアティコ第6ステージ 最大勾配27%の激坂が3回登場ティレーノ~アドリアティコ第6ステージ 最大勾配27%の激坂が3回登場 (c)RCS Sportステージレースとしては最長クラスの230kmで争われる第5ステージがゴールするのは、丘の上に佇むキエーティの街。パッソ・ランチャーノ(距離11.3km、平均勾配8.5%)でふるいに掛けられた集団の勝負は、丘上都市へと至る標高差300mの急勾配で決着。最大勾配が19%に達するこの激坂で、総合優勝者が絞り込まれる。

続く第6ステージは、アドリア海のポルト・サンテルピディオを発着する209km。沿岸部に迫り出した丘陵地帯を巡る周回コースには最大勾配27%を数える「壁」が用意され、ここを通過すること何と3回。クラシックレース以上の厳しさを誇るコースでは、軽量クライマーの活躍が見ものだ。

最終日はマルケ州のリゾート地、サン・ベネデット・デル・トロントでの9.2kmの個人タイムトライアル。昨年はヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が、それまでリーダーの座に付いていたクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)を最終ITTで破り、総合優勝に輝いた。今年も最後までもつれた総合争いが見られるのだろうか。


ティレーノ~アドリアティコ2013日程
3月6日(水)第1ステージ サン・ヴィンツェンツォ~ドノラティコ 16.9km(チームTT)
3月7日(木)第2ステージ サン・ヴィンツェンツォ~アレッツォ 232km
3月8日(金)第3ステージ アレッツォ~ナルニ・スカロ 190km
3月9日(土)第4ステージ ナルニ~プラーティ・ディ・ティーボ 173km
3月10日(日)第5ステージ オルトナ~キエーティ 230km
3月11日(月)第6ステージ ポルト・サンテルピディオ~ポルト・サンテルピディオ 209km
3月12日(火)第7ステージ サン・ベネデット・デル・トロント 9.2km(個人TT)



フルーム、ニーバリ、コンタドール、ロドリゲス。ツアー・オブ・オマーンで総合争いをしたメンバーが再び顔を合わせるフルーム、ニーバリ、コンタドール、ロドリゲス。ツアー・オブ・オマーンで総合争いをしたメンバーが再び顔を合わせる photo:Tour Of Oman総合優勝候補の本命は、昨年最終日までもつれた戦いを制したニーバリ。直近のローマ・マキシマで追走を仕掛けるなど好調をアピールしているが、その一方で今年は多くのUCIプロチームが有力オールラウンダーを送り込んできた。

昨年大会で優勝したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、現アスタナ)昨年大会で優勝したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、現アスタナ) photo:Kei Tsuji激坂で利のあるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)激坂で利のあるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:A.S.O.厳しい登坂の多い今年のティレーノに於いて活躍が見込まれているのが、"プリート"ことホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。ティレーノではこれまでに3勝を飾っており、相性も抜群だ。TTの成績如何では総合優勝の可能性も見えてくる。

これに待ったを掛けるのがクリストファー・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ら。ツアー・オブ・オマーンでも総合争いを繰り広げたメンバーが、ここティレーノでも火花を散らす。

山岳ではフルームをリゴベルト・ウランとセルジオルイス・エナオモントーヤのコロンビア勢が、コンタドールをヘスス・ヘルナンデス(スペイン)とセルジオ・パウリーニョ(ポルトガル)が、エヴァンスをイヴァン・サンタロミータ(イタリア)らがサポート。いずれのチームも第1線級のアシストを揃え、チーム力はグランツール並みだ。

また、今年アージェードゥーゼルに移籍したドメニコ・ポッツォヴィーヴォは、昨年総合4位のリナルド・ノチェンティーニ(共にイタリア)とダブルエース体制でティレーノに望む。激坂で強みを発揮するポッツォヴィーヴォは、総合争いでも上位に絡んでくるだろう。

ストラーデビアンケでワンツーを飾ったモレーノ・モゼール(イタリア)とペーター・サガン(スロバキア)ストラーデビアンケでワンツーを飾ったモレーノ・モゼール(イタリア)とペーター・サガン(スロバキア) photo:Riccardo Scanferlaランプレ・メリダ勢は地元レースにダミアーノ・クネゴとフィリッポ・ポッツァート(共にイタリア)の2枚看板。ポッツァートはローマ・マキシマで集団スプリントを獲るなどコンディションは上向きだ。

キャノンデール・プロサイクリングからは直前のストラーデ・ビアンケでワンツーを飾ったモレーノ・モゼール(イタリア)とペーター・サガン(スロバキア)の若手最強コンビをそのまま参戦させる。昨年はキエーティのステージでサガンが勝利しているため、ステージ優勝のチャンスは十二分にある。

エウスカルテル・エウスカディのエースナンバーを付けるにはサムエル・サンチェス(スペイン)。今シーズンの仕上がりは未知数だが、必ず目立った動きを見せてくるだろう。



ミラノ〜サンレモを狙うトップスプリンターが多数出場

ツアー・オブ・カタールで総合優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ツアー・オブ・カタールで総合優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.3月17日、つまりティレーノ~アドリアティコ終了後の5日後に迎えるミラノ~サンレモに照準を合わせるトップスプリンターが今年も多くスタートリストに名を連ねる。スプリンター向きの第2、第3ステージではグランツール並の激しい戦いが繰り広げられることだろう。

ツアー・ダウンアンダーで通算100勝目を上げたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ツアー・ダウンアンダーで通算100勝目を上げたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji2009年以来の"プリマヴェッラ"制覇を目指すマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)は、ツアー・オブ・カタールで4連勝&総合優勝を飾るなど、ほぼトップコンディション。対するはツアー・ダウンアンダーから好調を維持するアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)だ。

アシストにクイックステップはベアト・グラブシュやトニ・マルティン(共にドイツ)を揃え、ロットはアダム・ハンセン(オーストラリア)やユルゲン・ルーランツ(ベルギー)がエースのスプリントをお膳立てする。

2011年のミラノ~サンレモ覇者、マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)も2人のスプリント争いに食い込んで来るだろう。

その他ツール・ド・ランカウイで2勝しているフランチェスコ・キッキ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)やドイツ期待の若手スプリンター、ジョン・デゲンコルブ(アルゴス・シマノ)も注目。

ガーミン・シャープのロバート・ハンター(南アフリカ)とタイラー・ファラー(アメリカ)、ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)、トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)、フラシスコ・ベントソ(スペイン、モビスターチーム)などなど、まさに史上最強のスプリンターたちがこのティレーノに集う。


text:So.Isobe

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