お互いの意地とプライドがぶつかり合う終盤の3人。JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックスの佐藤信哉と伊藤翔吾が、渡仏直前の小橋勇利(ボンシャンス飯田)を完璧なチームプレーで下した。

マスターズ 山口きらら博記念公園の多目的ドームをバックにマスターズ 山口きらら博記念公園の多目的ドームをバックに photo:Hideaki TAKAGI2月24日(日)、山口県阿知須町きらら浜で行われたきらら浜サイクルミーティング2013年2月大会。広大な埋立地で山口きらら博記念公園や道の駅などの施設がある。その一角の駐車場を使ったクリテリウムがこの大会。2011年の山口国体へ向けて2005年から始まったもので、現在ではジュニアや子どもたちの強化・普及育成の一翼も担っている。

エリート ツール・ド・おきなわのチャンピオンが2人!エリート ツール・ド・おきなわのチャンピオンが2人! photo:Hideaki TAKAGIコースは駐車場をパイロンで区切った1周2.2kmの完全フラット。西寄りの風が次第に強く吹きつけ、エリートの時間帯頃には一番の敵に。
JCF登録者対象のエリートには、JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックスの佐藤信哉と伊藤翔吾が2名。

さらに白石真悟(シマノドリンキング)、小橋勇利(ボンシャンス飯田)そしてホストチームであるEsperance Stage/WAVE ONEからは井上無我、杉山文崇、今年から加入の神野勝らが参加。50人ほどのエントリーだがレベルは高い。注目の小橋は前日に愛媛・松山競輪場でオムニアムレースをしての連戦。
エリート 序盤、佐藤信哉(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)が逃げるエリート 序盤、佐藤信哉(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)が逃げる photo:Hideaki TAKAGI
序盤すぐに伊藤がアタック、それをほかが追い吸収後に今度は佐藤がアタック。ここへ伊藤と神野が合流、さらに小橋、江川哲治(VC FUKUOKA)、松前洋平(bicinoko.com)も加わり先頭は6人に。さらにペースが上がり結局先頭は佐藤、伊藤、小橋、神野の4人に。

動きがあったのはラスト5周、伊藤がアタックし単独先頭に。これを小橋が追い佐藤を連れて合流。すぐにここで佐藤がアタックして小橋が残される。小橋は単独で前を追いたいが伊藤を振り切れずゴールへ。佐藤が優勝、ゴールスプリントは伊藤が制し2位に。
エリート コースギリギリを突く小橋勇利(ボンシャンス飯田)とマークする伊藤翔吾(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)エリート コースギリギリを突く小橋勇利(ボンシャンス飯田)とマークする伊藤翔吾(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス) photo:Hideaki TAKAGI
優勝の佐藤は「きつかったけれど優勝できて嬉しいです。逃げが吸収されてもそこに伊藤がいるからと思って逃げていました。ラスト5周で伊藤のアタックを追う小橋に付いているときがきつかったですね。今年はチーム員が10人いるのでチーム内競争でも少しは上がれたのかなと(笑)」このレースを知り尽くしている伊藤とのタッグで優勝を勝ち取った。
エリート 優勝の佐藤信哉(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)エリート 優勝の佐藤信哉(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス) photo:Hideaki TAKAGI
プライドとメンツ、負けられない戦い

ゴール直後の小橋は開口一番、「悔しい」。ラスト5周、4人の最後尾を走っているときに先頭に出た伊藤がアタック。それに反応できずに追う立場に。小橋としては「(伊藤)翔吾さんを離して単独で前に」合流したかった。だから「1回のアタックで詰められる距離」を先頭の佐藤と保ちながら機会をうかがっていた。

だが伊藤は小橋のすべてのアタックに反応し振り切れない。小橋は横風を使ってコースの端ギリギリを走るが伊藤はピッタリとマーク。「自分に力があれば(翔吾さんを)離すことはできたはず。力がないです」とレース後の小橋。

伊藤は「ラスト5周で自分がアタックする」と走りながら佐藤に伝えた。そのときに小橋が4人の最後尾になるようローテーションの並びも変えた。佐藤も伊藤も仕事を持つ社会人。夜遅くにローラー練習しかできないときも多い。それでも実業団最高峰Jプロツアーチームのメンバー。伊藤はこのきらら浜大会で今まで優勝多数。だから相手が誰であろうと負けられない。
エリート 開口一番「悔しい」と小橋勇利(ボンシャンス飯田)エリート 開口一番「悔しい」と小橋勇利(ボンシャンス飯田) photo:Hideaki TAKAGI
いっぽうで小橋は同世代を代表する選手として活躍する高校3年生。この3年間でインターハイ、高校選抜大会、ジャパンカップオープン、ツール・ド・おきなわなどを制してきた。それらのレースに比べたら今回はレースのグレードも内容も違う。だからここでは相手が誰でも絶対に勝っておかないといけない。そして海外で活躍するプロロードレーサーの夢もある。勝負師の心に火がついたのは確かだ。
マスターズ 実力者の福島雄二がこの日2勝マスターズ 実力者の福島雄二がこの日2勝 photo:Hideaki TAKAGI
小橋勇利後援会が発足

小橋は3月1日の卒業式を終えた翌日にフランスへ渡り、ナント・アトランティックでプロへの階段の第一歩を踏み出す。次回の帰国は6月の全日本選手権前。日本にほとんどいないためその活動内容を後援会を通しても伝えていく。この日は小橋自身が後援会の案内を一人ひとり手渡しした。
後援会の案内を自ら配る小橋勇利(ボンシャンス飯田)後援会の案内を自ら配る小橋勇利(ボンシャンス飯田) photo:Hideaki TAKAGI
3年前に自転車競技の環境を求めて北海道から一人で愛媛に来た小橋。今では小橋を応援する人たち、子供たちもたくさんいる。これからふたたび一人でフランスへ向かう。目指すはプロ選手、そしてツール・ド・フランスステージ優勝。これからの小橋の頑張りを見守りたい。

なお山口県では3月に下関市でMTBの耐久レースを開催予定。そしてシクロクロスは次シーズンに山口県下でAJOCC基準のレース開催を考えている。体制などは現在協議中だ。

結果

エリート(JCF登録者)
1位 佐藤信哉(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)
2位 伊藤翔吾(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)
3位 小橋勇利(ボンシャンス飯田)
4位 神野勝(Esperance Stage/WAVE ONE)
5位 吉田慶(山陽高校)
6位 黒沢虎南(VC FUKUOKA)

エキスパート
1位 今泉喜樹(サイクルプラス福岡)
2位 森正存
3位 山根浩司(HRT)

スポーツ
1位 福島雄二
2位 宮内正臣(Team-M)
3位 大森健一(TEAM KABA)

マスターズ

1位 福島雄二
2位 大森健一(TEAM KABA)
3位 宮内正臣(Team-M)

レディース
1位 市川寿美(Kochi C.T.C)
2位 徳和友紀
3位 石松栞(サイクルプラス福岡)

ユース

1位 日野泰静(ボンシャンス飯田)
2位 山下優太(広島城北高校) 
3位 時繁佑舞(山口市立秋穂中学校)

photo&text:高木秀彰