日本一を決める全日本選手権ロードレースが6月28日、広島県立中央森林公園に於いて開催された。ツール・ド・フランス出場を控えた新城幸也(Bboxブイグテレコム)ら海外組の出場で大きな注目を集めたエリート男子は、熾烈なバトルの末の少人数スプリントで西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)が優勝。初タイトルを手にした。

まさに夏、炎天下でさえぎるものがないコースまさに夏、炎天下でさえぎるものがないコース photo:Hideaki.TAKAGI今年も日本一を決める日本最高峰のビッグレースが広島で開催された。全日本ロードが広島県中央森林公園で開催されるのは2年連続。同大会は世界選手権ロードレース日本代表選手の選考も兼ねている。

山間部に位置する広島空港を取り囲む12.3kmの周回コースはアップダウンとコーナーの連続で、平坦区間や直線路は少なく、後半には通称「三段坂」と呼ばれる名物の上りが待ち構えている。レース当日は天気予報に反して好天に恵まれ、炎天下のタフコンディションの中で頂上決定戦は行なわれた。

応援に応える岡崎和也(梅丹本舗-グラファイトデザイン)応援に応える岡崎和也(梅丹本舗-グラファイトデザイン) photo:Hideaki.TAKAGI計16周、合計196.8kmの長丁場のレース。スタート前にはこの日ラストレースを迎えた岡崎和也(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)に花束が贈られた。レース開始後、3周目にアタックを成功させたのは、岡崎のチームメイト菊池誠晃。レースはこの23歳菊池が4時間近くに渡って逃げる展開に。

メイン集団は三段坂通過の度にペースが上がり、先頭菊池とのタイム差は安定せず縮まったり広がったり。7周目で畑中勇介(シマノレーシング)が飛び出して先頭に合流すると、ようやく集団は沈静化。タイム差は最大3分15秒まで広がり、比較的スローペースでレース後半に突入した。

9周目、逃げ続ける畑中勇介(シマノレーシング)と菊池誠晃(梅丹本舗-グラファイトデザイン)9周目、逃げ続ける畑中勇介(シマノレーシング)と菊池誠晃(梅丹本舗-グラファイトデザイン) photo:Hideaki.TAKAGI膠着状態を脱したのは、愛三工業レーシングチームの集団ペースアップによって菊池とのタイム差が1分を切った残り3周半。三段坂でアタックした新城幸也(Bboxブイグテレコム)が先頭菊池を捉えると、これに食らいついた30名が集団を形成。活性化したレースは、ここから一瞬たりとも気の抜けない終盤戦へと突入していく。

ツール・ド・フランス出場を決め、ナショナルチャンピオンジャージ獲得を狙って帰国した新城がアタックを繰り返す度、土井雪広(スキル・シマノ)や飯島誠(チームブリヂストン・アンカー)、西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、宮澤崇史(アミーカチップス・クナウフ)らがすかさず反応。この断続的なアタックにより、残り2周の時点でメイン集団は20名ほどに縮小した。

ユキヤアタック!ラスト2周頂上手前で強烈なアタックを仕掛ける新城幸也(Bboxブイグテレコム)ユキヤアタック!ラスト2周頂上手前で強烈なアタックを仕掛ける新城幸也(Bboxブイグテレコム) photo:Hideaki.TAKAGI残り1周半(ゴール20km手前)の三段坂。例年以上に多くの観客が詰めかけたこの上りで、新城は攻撃に出た。それまでの集団縮小狙いのペースアップとは異なり、新城はオフィシャルカーやプレスバイクを追い抜かんばかりの強烈なアタック。この動きにより9名まで縮小した先頭グループは、愛三工業最後のアシスト盛一大が牽いて最終周回に突入した。

ゴールまで10kmを残して先頭グループから飛び立ったのは鈴木真理(シマノレーシング)。一時20秒近いリードを得た鈴木は、残り3km地点の三段坂頂上を単独で通過。しかし下りで新城率いる追走グループ(土井、飯島、西谷、宮澤、野寺、真鍋)に吸収された。

最終周回ラスト3km、先行する鈴木真理(シマノレーシング)に新城幸也(Bboxブイグテレコム)が引く後続が迫る最終周回ラスト3km、先行する鈴木真理(シマノレーシング)に新城幸也(Bboxブイグテレコム)が引く後続が迫る photo:Hideaki.TAKAGI牽制とアタックの末、先頭グループはなだらかな上りこう配の最終ストレートにやってきた。向かい風の緩斜面で先に仕掛けたのは鈴木。残り1kmの地点でもアタックするなど、最終周回で果敢な走りを見せた鈴木が先頭に立ったが、残り100mで後続に飲み込まれていく。

代わって先頭に立ったのは西谷。宮澤や野寺も追い上げを見せたが届かず、西谷が渾身のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、歓喜のゴール西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、歓喜のゴール photo:Hideaki.TAKAGI「1週間地元の空気を吸ってリラックスしてレースに挑めた。やっと勝てた。終盤脚を攣りながらも粘って、スプリントに持ち込みたかった」と語る西谷。「生涯で一度獲りたかったタイトル」を、地元広島で掴み取った。

愛三工業レーシングチームは、2週間前に行なわれた全日本選手権タイムトライアルで盛一大が優勝しており、念願のダブルタイトル獲得。集団コントロールに力を尽くしたチームメイトや、終盤まで西谷をサポートした盛の活躍も目立った。

1位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、 2位 宮澤崇史(アミーカチップス・クナウフ)、3位 野寺秀徳(シマノレーシング)1位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、 2位 宮澤崇史(アミーカチップス・クナウフ)、3位 野寺秀徳(シマノレーシング) (c)MakotoAYANOプロコンチネンタル登録のイタリアチーム、アミーカチップス・クナウフに移籍しながらも、登録のトラブルでシーズン前半の大半を棒に振った宮沢は、沈黙を打ち破る2位。長期の戦線離脱にもかかわらず、鈍らないレース勘と勝負強さを見せつけた。表彰式で宮沢は、シーズン後半を古巣エキップアサダで走ることを発表。そして「ユキヤ〜!ツール頑張ってこいよ〜!」と、ツール出場を控える新城に檄を飛ばした。

3位には連覇を狙っていた野寺。シマノレーシングはレース前半から畑中を逃げに送り込み、その畑中が脱落すると島田真琴がアタック。終盤の鈴木の攻撃性も光った。野寺は7年連続の全日本ロード表彰台だ。

レース後の記者会見に臨む新城幸也(Bboxブイグテレコム)レース後の記者会見に臨む新城幸也(Bboxブイグテレコム) (c)MakotoAYANOテレビ局が取材に訪れるなど、圧倒的な注目を集めていた新城は4位。チームメイトのいない状況下で自らライバルの動きに反応し、そして自ら果敢に攻撃。プロツアーライダーとしての走りを観衆に見せつけた。チャンピオンジャージを着てのツール出場は叶わなかった新城は、表彰式で「この悔しさはツールで晴らします!!」と高らかに宣言した。

バイクに乗車した高木秀彰カメラマン&綾野真カメラマンが撮影した写真はフォトギャラリーにて。


全日本選手権ロードレース2009エリート男子結果
1位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)5h22'42"
2位 宮沢崇史(アミーカチップス・クナウフ)
3位 野寺秀徳(シマノレーシング)
4位 新城幸也(Bboxブイグテレコム)
5位 鈴木真理(シマノレーシング)
6位 土井雪広(スキル・シマノ)+02"
7位 飯島誠(チームブリヂストン・アンカー)+04"
8位 真鍋和幸(TEAM NIPPO COLNAGO)+18"
9位 佐野淳哉(TEAM NIPPO COLNAGO)+55"
10位 小森亮平(TREK LIVESTRONG U23 TEAM)+1'02"
11位 伊勢直人(TEAM MASSA FOCUS OUTDOOR PRODUCTS)+1'14"
12位 普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)+1'52"
13位 平塚吉光(パールイズミスミタラバネロ)+2'00"
14位 廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)+2'05"
15位 広瀬敏(TEAM NIPPO COLNAGO)+3'03"
16位 伊丹健治(チームブリヂストン・アンカー)+3'07"
17位 早川朋宏(法政大学)+3'21"
18位 中島康晴(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)+6'04"
19位 清水良行(宇都宮ブリッツェン)+7'06"
20位 辻善光(マトリックス・パワータグ)+8'19"

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