マキュアンがもつ12勝の記録を塗り替える、史上最多ステージ13勝目。ワイン畑が広がる乾いた大地で、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が今大会2勝目をマークした。

何故かスタート前に入念にマッサージャーにマッサージを施す宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)何故かスタート前に入念にマッサージャーにマッサージを施す宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsujiアデレードの北には、ワインの産地として有名な「バロッサバレー」が広がっている。樹木の種類を別にすれば、どこかイタリア中部を彷彿とさせる緩やかな丘陵が延々と続いており、黄色い枯れ草と緑のカーペットのようなワイン畑が大地を覆う。

ゴール地点タヌンダはかつてのツアー・ダウンアンダーのメインスポンサーで、現在でも大会スポンサーの一つとして携わるジェイコブズクリーク社のお膝元でもある。

30km地点のKOMに近づくダミアン・ホーソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)30km地点のKOMに近づくダミアン・ホーソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji第4ステージはアデレード市内をスタート後、標高500mのKOM(カテゴリー山岳)を越えて「バロッサバレー」へ。午前11時にスタートが切られると、世界チャンピオンジャージを着るフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が集団から飛び出した。

アルカンシェルの背中を追ったのは、オーストラリアU23タイムトライアル王者のダミアン・ホーソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)。白いジャージを着る2人は、協力して3分30秒のリードを得た。

観客が詰めかけたKOMをプロトンが通過する観客が詰めかけたKOMをプロトンが通過する photo:Kei Tsuji第2ステージのゴール前ダウンヒルで落車し、総合で3分近く遅れたジルベール。「第2ステージの落車で総合争いを諦めざるをえなくなった。だからレースの目的をトレーニングにスイッチ。昨日は勝つチャンスがあったから狙ったけど(結果は3位)、今日の集団スプリントでは勝ち目が無い。だから逃げたんだ。逃げることで自分を深く追い込むことができ、目標のアルデンヌクラシックに向けての良いトレーニングになる。それにしても一緒に逃げたホーソンは強かったよ」。

30km地点にあるこの日唯一のKOMは、ホーソン、ジルベールの順でクリア。スカイプロサイクリングがコントロールする3分遅れの集団からは、ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)が飛び出して3番手通過。ボブリッジは山岳賞ジャージ獲得に成功している。

レース序盤はアップダウンを繰り返すレース序盤はアップダウンを繰り返す photo:Kei Tsuji
スプリントポイント手前で補給を受け取る余裕が無いフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)スプリントポイント手前で補給を受け取る余裕が無いフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji補給を受け取った宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)補給を受け取った宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsuji

アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)を先頭にゴールスプリントアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)を先頭にゴールスプリント photo:Kei Tsujiレース後半に入り、平坦基調の直線路に入ってもなお協力して逃げるジルベールとホーソン。しかしレディオシャック・レオパードやロット・ベリソル、アルゴス・シマノが牽引する大集団が徐々に忍び寄る。

横風を警戒するチームが入り乱れたことで集団のスピードは上がり続け、ラスト8kmでジルベールとホーソンは吸収。ここからゴールスプリントに向けての位置取りや危険回避の動きが重なり、スピードは上がり続ける。

フェラーリとキャントウェルを振り切ってゴールするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)フェラーリとキャントウェルを振り切ってゴールするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji「シーズン序盤なのでみんなバイクに慣れておらず、選手間の距離が大きいので(集団の密度が薄いので)前に上がるのに力がいる」とは、ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)のリードアウトを担った宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)の弁。オリカ・グリーンエッジやスカイプロサイクリング、ロット・ベリソルが主導権を争う中、ラスト2kmを切ったところで、キャントウェルを従える宮澤が集団先頭に出た。

スプリントで無敵を誇るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)スプリントで無敵を誇るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiキャントウェルを好位置まで引き上げた宮澤が下がると、FDJやスカイが先頭に立ち、その後ろからロットトレインが発進。他の追随を許さないリードアウトトレインが、グライペルを発射する。付き位置のロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)を引き離す圧倒的なスピードで、グライペルが勝利した。

ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)が総合首位を守るゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)が総合首位を守る photo:Kei Tsuji「レース終盤は横風が強くて、ラスト2kmからは向かい風。集団の中は本当にごちゃ混ぜの状態だった。チームメイトのおかげで集団前方の位置をキープして、またもやパーフェクトなリードアウトを受けた」と、クリテリウムを含めて今大会3勝目を飾ったグライペルは説明する。

グライペルはステージ通算13勝目、クリテリウムを含めると16勝目。ツアー・ダウンアンダー15年の歴史の中で、ステージ勝利数トップに立った。

敢闘賞はダミアン・ホーソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)の2人敢闘賞はダミアン・ホーソン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)の2人 photo:Kei Tsuji「頭では勝つイメージが出来ていたのに、まだ1月なのでパワーがあと少し足りなかった」と話すのは、ステージ2位のフェラーリ。

3位に入ったキャントウェルは「ゴールスプリントに絡むには、ポジション取りが全て。今日の3位という結果は、チームの働きの賜物だ」と、宮澤をはじめとするチームメイトに感謝する。レース後のTwitterでは「タカシの走りは素晴らしかった」とも。「最後は行く手を塞がれたので出遅れてしまい、ラスト150mからスプリント開始。かなりスピードが乗ったのに、距離が足りなかった。あと少しフィニッシュが遠ければ、2つぐらい順位を上げれていたと思う。でもワールドツアーレースでの3位という結果には満足だ」。

キャントウェルのサポートに徹し、スピードが上がりきった状態で集団先頭に姿を見せた宮澤は「優勝には届かなかったけど、チームとして大事なUCIポイントも取れたし、スプリントに向けた形が出来てきてよかった」とコメントする。宮澤=キャントウェルのタッグは、日曜日の最終ステージで再び勝利を狙う。

この日はレース終盤にかけて相次いで落車が発生。ラスト700mで落車し、骨折の疑いのあるグレーム・ブラウン(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)とバーナード・サルツバージャー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)はゴール後に病院に搬送されている。




ツアー・ダウンアンダー2013第4ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)            3h02'53"
2位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
3位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)
4位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 バリー・マルクス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)
7位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)
8位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
10位 クラース・ロデウィック(ベルギー、BMCレーシングチーム)
90位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)

個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)         9h56'17"
2位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)       +05"
3位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター)                 +06"
4位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード)         +08"
5位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)               +15"
6位 ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)
7位 ジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)
8位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・レオパード)
9位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
10位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、レディオシャック・レオパード)
81位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                  +10'42"

山岳賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)

ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

新人賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)

チーム総合成績
レディオシャック・レオパード

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia