7月24日、ピレネーとアルプスでの死闘を繰り広げたプロトンがパリに凱旋し、ツール・ド・フランス2011は幕を下ろした。序盤で有力選手が相次いでリタイアするなど、波乱含みの展開となった今年のツール。そのなかで、シマノDURA-ACEは、全21ステージ中12ステージを制し、PROは、7ステージで勝利を上げ、常に安定した成績を収めた。

凱旋門に向かってシャンゼリゼ通りに突入していくプロトン凱旋門に向かってシャンゼリゼ通りに突入していくプロトン photo:Makoto Ayano
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が喜びのマイヨヴェール獲得マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が喜びのマイヨヴェール獲得 photo:Makoto Ayano マイヨアポワを初受賞したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)マイヨアポワを初受賞したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Makoto Ayano 総合敢闘賞はジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)の手に総合敢闘賞はジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)の手に photo:Makoto Ayano

そのうち、ステージ5勝を挙げたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)は、念願のポイント賞を獲得。山岳賞にはサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が輝き、マイヨジョーヌ争いでもレオパード・トレックのアンディ・シュレクとフランク・シュレク(ともにルクセンブルク)の兄弟がそれぞれ2位と3位に入る健闘を見せ、個人総合成績の表彰台をシマノDUEA-ACE Di2が独占した。

シマノのサポート選手が死闘を繰り広げたレースシーンとその活躍を支えたバイクの写真を織り交ぜつつ、ツール・ド・フランス2011を振り返ろう。

マイヨヴェールを獲得したカヴェンディッシュを擁するHTC・ハイロード。メーンコンポにシマノ製品を使うほか、PROのステムやハンドルバーを使用マイヨヴェールを獲得したカヴェンディッシュを擁するHTC・ハイロード。メーンコンポにシマノ製品を使うほか、PROのステムやハンドルバーを使用 photo:Makoto Ayano

FDJはシマノのコンポーネントとホイール、PRO製品を使用。ジェレミー・ロワ(フランス)が総合敢闘賞に輝くなど、レースでも存在感を示したFDJはシマノのコンポーネントとホイール、PRO製品を使用。ジェレミー・ロワ(フランス)が総合敢闘賞に輝くなど、レースでも存在感を示した photo:Makoto Ayano 個人総合2位と3位のシュレク兄弟が所属するレオパード・トレック。メーンコンポにシマノ製品を使用個人総合2位と3位のシュレク兄弟が所属するレオパード・トレック。メーンコンポにシマノ製品を使用 photo:Makoto Ayano

山岳賞に輝いたサムエル・サンチェス(スペイン)を擁するエウスカルテル。シマノのコンポーネントとホイールを使用した山岳賞に輝いたサムエル・サンチェス(スペイン)を擁するエウスカルテル。シマノのコンポーネントとホイールを使用した photo:Makoto Ayano
シマノとPROとのパートナーシップを長年継続するラボバンク。エースのロバート・ヘーシンク(オランダ)が大会中盤にマイヨブランを5日連続着用するなど活躍したシマノとPROとのパートナーシップを長年継続するラボバンク。エースのロバート・ヘーシンク(オランダ)が大会中盤にマイヨブランを5日連続着用するなど活躍した photo:Makoto Ayano ゲラント・トーマス(イギリス)が初日から6日連続でマイヨブランを着用するなど、存在感を示したチームスカイ。シマノのコンポやホイールの他、PROのTT用ホイールも使うゲラント・トーマス(イギリス)が初日から6日連続でマイヨブランを着用するなど、存在感を示したチームスカイ。シマノのコンポやホイールの他、PROのTT用ホイールも使う photo:Makoto Ayano


カヴのマイヨヴェール獲得を強力にサポート

ツール・ド・フランス2011最終日の第21ステージ。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が3年連続でこのステージを制するとともに、悲願のマイヨヴェールを獲得。名実ともに“現役最強スプリンター”となった。

これまでもツールでステージ優勝を量産し、今年もステージ5勝。26歳という若さながらツールで通算19勝(チームTTでの勝利を含めると20勝)を記録している。その実力は、ツールの歴史に名前を残すビッグな選手の一人として誰もが認めるところだ。

カヴェンディッシュ1勝目、第5ステージカヴェンディッシュ1勝目、第5ステージ photo:Makoto Ayano 2勝目、第7ステージ2勝目、第7ステージ photo:Makoto Ayano 3勝目、第11ステージ3勝目、第11ステージ photo:Makoto Ayano 4勝目、第15ステージ4勝目、第15ステージ photo:Makoto Ayano

そして5勝目。第21ステージを3年連続で制し、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)はマイヨヴェールを初めて獲得したそして5勝目。第21ステージを3年連続で制し、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)はマイヨヴェールを初めて獲得した photo:Makoto Ayano
カヴのマイヨヴェール獲得を強力に後押ししたのは、シマノのDi2とPROの製品だった。ゴール前、カヴはハンドルのドロップ部分をガッチリと握り、爆発的なスプリントを見せる。その圧倒的なパワーを受け止めるのは、PROのハンドルバー&ステムだ。

シマノ担当者によれば、ステムは開発中のプロトタイプ。以前はトラック用ステムを使っていたこともあるが、これはロード用で従来の製品よりさらに剛性を高めたモデルだという。PROのハンドル・ステムの開発には、カヴからレースを通じたフィードバックがなされ、今後の製品作りに生かされていくという。将来的にはシグネチャーモデルかレギュラーモデルとして市販されるかもしれない。

カヴが使用したPROのステムは、ロード用のプロトタイプ。マイヨヴェールカラーのスペシャルペイントも施された。以前トラック用ステムを使っていたこともあるカヴの要望に応えて開発が進んでおり、将来的には市販化の可能性もあるかもしれないカヴが使用したPROのステムは、ロード用のプロトタイプ。マイヨヴェールカラーのスペシャルペイントも施された。以前トラック用ステムを使っていたこともあるカヴの要望に応えて開発が進んでおり、将来的には市販化の可能性もあるかもしれない photo:Makoto Ayano マイヨヴェールを獲得したカヴのマシンには、ハンドルのドロップ部分にDi2のスプリンタースイッチが仕込まれていた。ドロップ部分を握りながら変速できるため、一瞬の判断が勝負を分けるスプリント時にも有利に戦いを進められるマイヨヴェールを獲得したカヴのマシンには、ハンドルのドロップ部分にDi2のスプリンタースイッチが仕込まれていた。ドロップ部分を握りながら変速できるため、一瞬の判断が勝負を分けるスプリント時にも有利に戦いを進められる photo:Makoto Ayano

また、一瞬の判断が勝負の行方を左右するゴール前では、変速のタイムラグさえ勝敗に影響する。カヴはDi2のサテライトスイッチの一種、スプリンタースイッチをハンドルバーに選択し、スプリント時のスムーズな変速を可能にしていた。これはデュアルコントロールレバー以外にも変速スイッチを仕込める、Di2ならではの強み。現役最強スプリンターのカヴは電動変速システムのメリットを最大限に生かしてマイヨヴェールを獲得した。

現在26歳のカヴェンディッシュは、今後もシマノとPROの製品とともに勝利を量産することだろう。その先には、エディ・メルクスが持つツール最多勝の34勝という数字が見えている。


個人総合上位はDURA-ACE Di2使用選手が独占

アニェル峠(標高2744m)、イゾアール峠(標高2360m)、ガリビエ峠(標高2645m)というアルプス山脈を代表する3つの難関山岳を越える第18ステージを制したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)。2位には兄のフランク・シュレクが入り、兄弟でのワンツーフィニッシュを飾ったアニェル峠(標高2744m)、イゾアール峠(標高2360m)、ガリビエ峠(標高2645m)というアルプス山脈を代表する3つの難関山岳を越える第18ステージを制したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)。2位には兄のフランク・シュレクが入り、兄弟でのワンツーフィニッシュを飾った photo:Makoto Ayano
ツールの華と言えば、やはり個人総合時間賞のマイヨジョーヌ争いだ。今年はシマノのサポートを受けるレオパード・トレックのアンディ・シュレク(ルクセンブルク)が優勝候補の有力候補と目されていた。その期待に応え、アンディは第18ステージで優勝。このステージの2位は彼の実兄フランク・シュレクで、兄弟でワンツーフィニッシュを飾った。アンディは続く19ステージで個人総合トップに躍り出て、マイヨジョーヌに袖を通した。残り2ステージとなった時点で、アンディと2位フランクとの差は53秒、3位との差は57秒だった。

アンディがマイヨジョーヌ獲得を決定的なものにするか——と思われた第20ステージの個人TT。ツールの勝利の女神は、シュレク兄弟には微笑まず、最終的な個人総合成績の順位では、2位アンディ、3位フランクとなり、最後まで目が離せない展開となった。そして2011年ツールでは、DURA-ACE Di2使用ライダーが表彰台を独占し、世界最高峰の舞台でその実力の高さとDi2のアドバンテージの大きさを証明した。

2年連続で個人総合2位となったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)のマシン。メーンコンポーネントにシマノDURA-ACE Di2を採用し、ハンドルのアップバー部分にはサテライトスイッチも仕込んでいる2年連続で個人総合2位となったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)のマシン。メーンコンポーネントにシマノDURA-ACE Di2を採用し、ハンドルのアップバー部分にはサテライトスイッチも仕込んでいる photo:Makoto Ayano
アンディはTTステージでもDi2を使用。DHバーだけでなく、ブルホーンバーを握りながらブレーキングするような時にも変速できるのが最大のメリットだアンディはTTステージでもDi2を使用。DHバーだけでなく、ブルホーンバーを握りながらブレーキングするような時にも変速できるのが最大のメリットだ photo:Makoto Ayano 戦い終えて笑顔のシュレク兄弟。「来年こそ勝ってみせる」と新たな決意をにじませた戦い終えて笑顔のシュレク兄弟。「来年こそ勝ってみせる」と新たな決意をにじませた photo:Makoto.AYANO


山岳賞、総合敢闘賞もシマノのサポート選手が獲得

ツール・ド・フランスにアルプス山岳ステージが登場して100年の節目に当たる今年のツール。その記念すべき年に山岳賞に輝いたのは、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)だった。サンチェスは、ピレネー山岳3連戦の初日にあたる第12ステージを制し、この日に山岳賞ジャージを獲得。翌日にはジャージを失ったものの、アルプス山岳ステージ最終戦の第19ステージで再び山岳賞に返り咲いた。

また、総合敢闘賞にはジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)が輝いた。ロワは、第4、13ステージで敢闘賞に輝いており、最終日の第21ステージでもシャンゼリゼ周回コースで逃げグループに入って積極果敢な走りを見せた。第13ステージでは山岳賞ジャージも獲得している。

サンチェスやロワは、平地・TTだけでなく、山岳ステージにおいてもDi2にメリットがあることを証明した。

山岳賞に輝いたサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)。最終日はDi2とWH-7900-C35-TUの組み合わせ山岳賞に輝いたサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)。最終日はDi2とWH-7900-C35-TUの組み合わせ photo:Makoto Ayano
第12ステージ、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)がリュザルディダン山頂を制した第12ステージ、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)がリュザルディダン山頂を制した photo:Makoto Ayano 総合敢闘賞に輝いたジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)。最終日の第21ステージでもシャンゼリゼ周回で逃げグループに乗り、果敢な走りを見せた総合敢闘賞に輝いたジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)。最終日の第21ステージでもシャンゼリゼ周回で逃げグループに乗り、果敢な走りを見せた photo:Makoto Ayano


シマノサポート選手達の躍動と舞台裏

最後に、シマノ製品使用選手達のステージ優勝シーンやその舞台裏を、もう少し写真でご紹介しよう。

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)のバイク。第10ステージではノーマルのDURA-ACEコンポを使用していたファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)のバイク。第10ステージではノーマルのDURA-ACEコンポを使用していた photo:Makoto Ayano ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)のリアディレーラーにはゴールドのYUMEYAボルトがあしらわれ、精悍な印象ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)のリアディレーラーにはゴールドのYUMEYAボルトがあしらわれ、精悍な印象 photo:Makoto Ayano

選手達のバイクを準備するFDJのメカニック選手達のバイクを準備するFDJのメカニック photo:Makoto Ayano 手際よくDURA-ACEホイールを装着していく手際よくDURA-ACEホイールを装着していく photo:Makoto Ayano

第17ステージ、勝利を確信し、ゴール前でガッツポーズを見せるエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)第17ステージ、勝利を確信し、ゴール前でガッツポーズを見せるエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ) photo:Makoto Ayano
DURA-ACEとともに、個人TTのスタートを待つサンディ・カザール(フランス、FDJ)の足元DURA-ACEとともに、個人TTのスタートを待つサンディ・カザール(フランス、FDJ)の足元 photo:Makoto Ayano
スタート台を駆け下りるサンディ・カザール(フランス、FDJ)スタート台を駆け下りるサンディ・カザール(フランス、FDJ) ndnphoto:Makoto Ayano
第20ステージ個人TTでトップタイムをたたき出したトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)。PROのDHバーとDi2のミックスで臨んだ第20ステージ個人TTでトップタイムをたたき出したトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)。PROのDHバーとDi2のミックスで臨んだ photo:Cor Vos

ツール・ド・フランス最終日、凱旋門をバックに逃げるジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)やベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)らツール・ド・フランス最終日、凱旋門をバックに逃げるジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)やベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)ら photo:Makoto Ayano


かつてはワイヤー式が当たり前だった変速機が電動になり、それがすでにレースの世界ではポピュラーになるなど、レース機材は常に進化し続けている。シマノやPROの製品は、ツール・ド・フランスをはじめとする世界最高峰のレースの現場で磨かれ、選手の声を反映させ、常に進化を続けている。

機材の進化は、自転車レースの歴史に新たな1ページを刻む。さらに次の1ページを刻むべく、機材は進化しつづける。その歩みが止まることは決してない。

提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード