全米でも指折りの研究機関をもつ大学の人間工学研究室で生み出されたというボントレガー・インフォームサドル。医学的なアプローチによって完成した新世代のサドルは、その選び方も革新的だ。ここではバイクプラス多摩センター店の協力で、サイクルショップでのフィッティングと購入の実際をみてみよう。

自分に適したサドルをこうして選ぶ

informサドル 選択の手順

ボントレガー・インフォームサドルは「サドルサイズ」という革新的な考え方を導入した新しいサドルシリーズだ。
ライダーそれぞれサイズの異なる坐骨幅を計測し、メンズ、ウィメンズともにS、M、Lの3種類のサイズラインナップ中から選ぶというのが基本的な考え方だ。同時にサドルには乗り方や性別に合わせて数タイプの製品が用意されている。

ではここからは実際にショップを訪れて、店員さんにアドバイスをもらいながら、自分にジャストフィットしたインフォームサドルを選んでみることにしよう。

訪れたのは、バイクプラス多摩センター店(東京都)だ。

バイクプラス多摩センター店

バイクプラス多摩センター店の皆さんバイクプラス多摩センター店の皆さん
西東京のサイクリストのメッカとなっている尾根幹線道路(通称「尾根幹」)に近い多摩センターにある、総床面積100坪という明るくて広々とした清潔感のある店内が印象的なバイクプラス多摩センター店。

ロードもMTBもアクセサリーもゆっくり見て選ぶことができ、メンテナンスエリアもアメリカのプロショップを彷彿とさせる充実の設備。店長の佐藤為さんはじめスタッフの森田卓行さん、阿部洋祐さんに迎えていただきました。

〒206-0034 東京都多摩市鶴牧2-9-15
TEL:042-311-2818
営業時間:11:30 〜 20:00
定休日:水・木(祝祭日の場合翌平日)
http://www.bike-plus.com/

Step1:用途、乗車姿勢でタイプを選ぶ

インフォームサドルは、まず自分がバイクをどんな使い方をするかによって、4種類のラインナップの中から自分に適したモデルを選び、その後3つのサイズラインナップから適正のものを選ぶことで自分にぴったりのサドルを手に入れることができる。スタッフの森田さんのアドバイスを聞きながら、実際に選んでいこう。

森田さん "使い方"によって選べるタイプは4つあります。まずは"レース"ですが、このモデルは名前のとおり、レースを主体にバイクを楽しむ人向けです。空気抵抗を低減するため、深い前傾姿勢でバイクに乗るライダーにもおすすめできます。

インフォームサドルの選び方をアドバイスしてくださった森田卓行さん(バイクプラス多摩センター店スタッフ)インフォームサドルの選び方をアドバイスしてくださった森田卓行さん(バイクプラス多摩センター店スタッフ) パッドは薄目で、バイクパンツを履いて乗ることが前提です。軽量ですのでバイクの車体重量が軽くできるのもメリットです。レースで有利になりますから多くのレーサーの方に支持していただいています。プロ選手たちがいちばん多く使うモデルです。

次は2011年に新しくラインナップに加わった"アフィニティー"です。主にロングライドやツーリングなど、長距離ライドをメインにバイクライフを楽しむライダー向けですね。"レース"よりも浅めの前傾姿勢をとりたいライダーにおすすめです。サドルトップの上部に窪みがつけられているのは、恥骨が当たるのを防ぐ構造です。局所的な痛みが出る方は試す価値がありますね。

サドル中央部に穴を空ける他ブランドが多くありますが、ボントレガーの場合は穴を空けることでその周囲に圧力がかかるエッジができてしまうことを避ける設計思想です。穴空けタイプは決して効果があるとは言えないこと、むしろ逆効果が認められることが分かっています。それ以上にサドルカーブが重要で、ゾーンデンシティ(サドルフォームを適材適所で変えること)の考え方のほうが優れていることが、研究で分かっています。

サドルに接する恥骨上肢部分の幅にあったサドルを選ぶこと、サドル表面をライダーにあった適切なカーブ形状のものにすることで、上手く圧を分散することが可能になります。ボントレガーのサドルは当たるスポットがないので、痛くないと非常に好評です。

上面に窪みのあるinForm RL FIT サドル。局所的な圧迫を避けることができる上面に窪みのあるinForm RL FIT サドル。局所的な圧迫を避けることができる
レオパード・トレックやレディオシャックの選手でもアフィニティーを使用している選手がいるようです。レーサーであっても体重をかけて座るタイプの選手に好まれるでしょう。長く乗る際の快適性を重視する際にも選ばれるでしょう。

informアフィニティーサドルを愛用するフランク・シュレク(レオパード・トレック)informアフィニティーサドルを愛用するフランク・シュレク(レオパード・トレック) "エヴォーク"はMTB向けモデルです。MTBはロードに比べて路面の状況によって座る位置をめまぐるしく変えることから、サドル全体にソフトな素材が使用されています。

もう一つは"ネビュラプラス"。これは主にクロスバイクなどアップライトな姿勢をとるライダーのためのモデルです。基本的に用途で選んでいただいて構わないのですが、"浅めの前傾" "深めの前傾"など、好みのライディングの姿勢によって選んでもいいと思います。

インフォームサドルの代表的な4つのタイプ

inForm Affinity RXLサドルinForm Affinity RXLサドル inForm RXL サドルinForm RXL サドル

inForm Evoke RXLサドルinForm Evoke RXLサドル inForm ネビュラプラス サドルinForm ネビュラプラス サドル

ポイント1 乗り方次第で違うモデルを選択するケースも

取材を担当したレポーターの私、今田雄飛(いまだ・ゆうひ)の個人的なケースについてもアドバイスを受けてみた。以下、項目ごとに参考モデルケースとして紹介する。

今田 私の場合、グランフォンドなどに適したロングライド向けのロードサドルを探しています。基本的な乗り方はできていると思いますが、ロードレーサーみたいには速く走れません。前傾は浅めで、やや起きた乗り方です。初心者以上、中級者未満といったところでしょうか。あと、欲張りですが通勤で使うサドルも探しています。

森田さん まずアフィニティーを選んでみましょうか。今田さんの場合は体重もあるようですし、ロングライド向けでしたら用途としてもバッチリです。通勤にはそのロードバイクを使っていますか?

今田 MTBを使用しています。市街地走行ですのでドロップハンドルは使っていません。安全に走れるようにフラットハンドルで乗っています。ただしそれなりにスピードは出しますね。


圧力スポット分布図によりゾーンデンシティーによるパッドの最適な配置が決められている圧力スポット分布図によりゾーンデンシティーによるパッドの最適な配置が決められている 森田さん ではロードレーサーとは別の乗り方として"エヴォーク"か"ネビュラプラス"から選びましょう。サドル内部のパッドは、体圧を分散する「ゾーンデンシティー」という考え方で性格付されています。

ロードモデルの「アフィニティー」とMTBモデル「エヴォーク」を例にとると、アフィニティーは着座位置が後方にあるため、後部に硬めのハードフォームを、前部には軟部組織を守るためにやわらかいソフトフォームを使用しています。一方、MTB用エヴォークは路面からの激しい衝撃を和らげるため、ほぼ全体的にソフトフォームを配置している。

このようにモデルによって、硬軟2種類のパッドを効果的に配置し、坐骨をサポートするとともに、痛みや不快感の原因となる圧力を効果的に分散しています。車種はMTBですが、乗り方やポジションによっては"ネビュラプラス"や"アフィニティー"も選択肢に入れて選んでいきましょう。


Step 2:ライダーに合ったサドルサイズを測定する

サドルサイザーに座って計測する。姿勢を正して座るだけで計測は終了するサドルサイザーに座って計測する。姿勢を正して座るだけで計測は終了する さて4つのタイプから自分のバイクの用途にあったモデルが決まったら、次はサイズ選びだ。S、M、Lの3サイズから適正なものを選んでいく。適正サイズは坐骨幅を計測する「サドルサイザー」を使用して決定される。

森田さん サドルサイザーは座面にゲル状のシートを敷いた"椅子"です。これに座ったときにお尻から飛び出ている坐骨の2つの頂点がシートに触れることでゲルが陥没して、その陥没した2つの幅を測れば、左右の坐骨幅が計測できる仕組みになっています。

ゲルの下にはメジャーが敷いてあって、Sが赤、Mが黄色、Lが青と、サイズによって色分けされていて、ゲルシートが凹んで浮かんだ色を見ればすぐに坐骨幅が分かります。

坐骨の幅は体格に比例するわけでなく、痩せている人でもLサイズだったり、太っている人でもMサイズだったりすることもあるので、きちんと図ることが大切です。インフォームサドルに用意された3サイズで、ほとんどのライダーの坐骨幅をカバーできるようになっています。

ポイント2 サドルサイザーでのサイズ選択は驚くほど簡単明快

サドルサイザーに座ってのサイズ計測は、驚くほど簡単に終わった。なにしろ座るだけなのだ。ゲルシートに座った跡がつくと、下地の色が浮かんでくる。その色がサドルサイズを示しているのだ。

サドルサイザーの上部に座った跡がつく。ジェルの下部に透けて見える色が適切なサドルサイズになるサドルサイザーの上部に座った跡がつく。ジェルの下部に透けて見える色が適切なサドルサイズになる 骨盤モデルを当ててみた状態。サドルサイザーの上面に当たる間隔を元にサイズを決めるというアイデアだ骨盤モデルを当ててみた状態。サドルサイザーの上面に当たる間隔を元にサイズを決めるというアイデアだ

今田 姿勢を正して座るだけなんですね。簡単です。

森田さん それだけで最適なサドル幅が選べます。インフォームサドルのパッケージにもその色がステッカーで記されています。幅が3種類というのもおおざっぱに思えるかもしれませんが、それでほとんどすべてのユーザーのケースをカバーできます。サドルサイザーで計測してみると、男性と女性の骨盤の形状が違うことに驚くとともに、見た目の体格に比例するわけでないのにも驚きます。ただし、サドルサイザーを使えば一目瞭然です。適切な幅のサドルを素早く選ぶことができます。

Step3:予算と重量をみながらサドルグレードを選ぶ

使用タイプ、サイズが決まったら最後はグレードを選んでいく。

「どれぐらいの前傾姿勢になるかによってサドルのモデル選びも変わるんです」と森田さん。一般的にはレースほど前傾がきつく(深く)なる「どれぐらいの前傾姿勢になるかによってサドルのモデル選びも変わるんです」と森田さん。一般的にはレースほど前傾がきつく(深く)なる 森田さん アフィニティーを例に挙げると、同シリーズの中に"レースXライト""レースライト""レース"と3つのグレードがあります(注:2グレードのモデルもある)。グレードの差によって何が違ってくるかと言えば、価格と重量の差になっています。

レースXライトが最軽量のモデルで、レールの素材に中空チタンが用いられています。またベース部分にはカーボンを使ったものが採用されていて、軽さへのこだわりをもったライダーにおすすめのグレードとなっています。ヒルクライムなど、バイク重量の軽さがメリットとなる走り方を重視する人なら、積極的に選んで欲しいモデルですね。

"レースライト"はクロモリレール等を採用した中級モデル、"レース"はエントリー用のモデルとなっています。後者になるほど耐久性が増すというふうに考えることもできます。

このように重量・価格には差があるのですが、3グレードとも形状的な違いはありません。ですので使用感に差はないと思っていただいてOKです。予算や使用目的で選ぶ際の参考にしてください。

ポイント3 重量をとるか、予算を取るか

レポーターの今田の場合、ロードバイクと通勤バイクの2つを別々のバイクに取り付けるということで選んでみた。

今田 ロングライド向けのサドルはアフィニティーにしましたが、グランフォンド八ヶ岳などの山岳イベントに出ることが今年の目標でもあるので、中空チタンレール採用のモデルを選んでみます。予算は少しアップしますが、おそらく練習不足で苦しむことは今から目にみえているので、バイクが軽くなるならそれをカバーしてくれる良い買い物だと信じることにします(笑)。

もう一方の通勤用バイクにはネビュラプラスを選んでみました。ロードより遅く走る通勤ですが、それなりにスポーティに走ります。ネビュラプラスは中空クロモリレールを採用して400gと、特別軽量ではありませんが、通勤用としては十分なスペックと、スタイリッシュなルックスが気に入りました。¥4,300という価格もお手頃ですね。

森田さん 良い選択だと思います。ネビュラプラスは体重を広い範囲に分散してくれ、アップライトポジションでの走行に適応しています。サドルレールにはペダリング時の動きに合わせてわずかに傾斜するFlexFormシステムを搭載しているので、よりスムーズな走行が可能です。サドル表面は硬い印象ですが、非常に快適なスポーツサドルです。このサドルでの長距離ツーリングも十分快適だと思います」。

今田 お陰さまで間違いのないサドル選びができました。イベント出場に、通勤に、悩みと無縁の充実のサイクルライフが送れそうな気がします。ありがとうございました。

森田さん どういたしまして。サドルは乗る方のレベルや走力、乗車姿勢など変われば自ずと適切なサドルも変わるという性質のものです。ですから乗り込むうちに身体に合わなくなってきたなと感じたら、いつでも相談にいらしてくださいね。ありがとうございました。

最後に...

自分に合ったサドルがなかなか見つからず、とっかえひっかえ探し続けるライダーもいれば、合わないけれども痛みを我慢して乗り続けるライダーもいる。サイズを測って自分のライディングスタイル、バイクの使い方によってモデルを決めていくボントレガー・インフォームシリーズのサドルの選び方は的確でスピーディー、とても合理的だと思った。ショップのスタッフさんにマンツー・マンでアドバイスを受けながら選べるのも、非常に良いシステムだと感じた。

サドル選びは理論だけではダメだし、生きたアドバイスを併せて受けられることが重要だと改めて感じることができた。サドル選びの近道、ボントレガー・インフォームサドルをあなたも試してみてはいかがだろう。

なおボントレガーのサドルはトレックストアおよびトレック・ジャパンの特約店で取り扱われている。最寄りの販売店はトレックジャパンホームページの「販売店検索」で可能だ。(今田雄飛)

提供:トレックジャパン 企画/制作:シクロワイアード