エンデュランスモデルの柱、Xシリーズがフルモデルチェンジ

イタリア・ヴェネト州、トレヴィーゾ。世界遺産に認定されたプロセッコの丘陵地帯を郊外に望むこの街で、DOGMA Xのベールが脱がれたのと同じ会場、同じ2日間のうちに、もう一つのニューモデルがジャーナリストの前に姿を現していた。エンデュランスロードの主力ライン、Xシリーズの全面刷新だ。
全力で走るアマチュアライダーに贈る最高峰モデルであるDOGMA Xの発表がストイックな熱量に満ちたものだったとすれば、こちらの空気感は少々異なるものだった。プレゼンテーションの幕開けを飾った映像に映し出されていたのは峠を攻める孤高のアマチュアではなく、仲間と連なって走り、道中でエスプレッソを味わい、美しい景色を分かち合う乗り手の姿だった。繰り返し強調されたキーワードは「オール・デイ」。大多数のサイクリストの受け皿となるXシリーズが、リリースから3年の時を経て現代アップデートを遂げた。

「他のブランドのエンデュランスバイクとは少し違いがあります」。各国から集ったジャーナリストの前で、フェデリコ・スプリッザ氏はそう切り出した。ピナレロにとってXシリーズは決してDOGMA Xの下位互換ではなく、独立したもう一つの回答として設計されたバイク。「多くのサイクリストは、プロ選手が使う最高峰バイクや、ツールを勝ったバイクへの憧れよりも、長時間乗っても疲れにくい快適性や、安全なハンドリング、軽さ、そして美しい見た目を兼ね備えたバイクを探しています」とスプリッザ氏。「かつてアグレッシブに走っていたけれど、今はペースを落として走ること自体を楽しみたいという人も実は多く、そうした層は緩やかなポジションで、それでいて走りのいいバイクを求めている」。
レースバイクは年々エアロ化が進み、ジオメトリーもアグレッシブになり、純粋にライドを楽しみたい層からすればハードルが高いモデルも少なくない。そのギャップを埋めるべく、カーボン素材からデザイン、操縦性能、ストレージ機構、そして先代よりもワイドなタイヤクリアランスに至るまで、ほぼ全てを刷新して生まれたのが新型Xシリーズだ。
X-STAYS 2.0と新型シートポストで実現する乗り心地


技術面での核となるのが、DOGMA Xにも採用されたリアエンド構造「X-STAYS 2.0」だ。DOGMA X同様に二又構造のシートステーを踏襲しつつ、先代モデルと比べて接合点を低い位置へと変更。路面からの振動をより効率的に分散させると同時に、リバウンド(跳ね返り)を抑え、スムーズでコントローラブルな乗り味を実現したという。
新たに投入された可変式シートポストも見逃せない。前後方向に10mmしなるシートポストは、先代よりも軽量かつ効率的に衝撃と振動を吸収する設計で、X-STAYS 2.0と連動によって滑らかな乗り心地を生み出すものだ。
フレーム素材は、狙う性能に応じて3種類のカーボンを使い分ける。最上位グレードのX9とX7には、反応性・軽さ・振動吸収性のバランスに優れる東レの「T900」カーボンを採用。X5は反応性を重視しつつ、より高い振動減衰性能を持たせた「T700」カーボン。そして先代モデルからの継続販売となるX3とX1は、しなりやすさを重視した「T600」カーボンを採用するという違いがある。
ロングライドを見据えた実用性と、40mmまで拡大したタイヤクリアランス

ロングライドを楽しむサイクリストの実用面のニーズも忘れられてはいない。ダウンチューブ内にアクセスポートを内蔵し、専用のコンパクトなツールバッグを収納可能にする構造は、先代モデルやDOGMA Xには採用されなかったもの。このあたりからもDOGMA Xとの棲み分けや、現代ニーズに対応していることがよく分かる。
ハンドリング面でも進化した。DOGMAなどと同じようにフロントケーブルを完全内蔵した楕円形のステアリングチューブシステムを新採用してねじれ剛性とフロント周りの精度を高め、特に長い下りや荒れた路面でより自信を持って走れるハンドリングを実現したという。なお、X1のみ従来型の機械式コンポーネントとの互換性を保っている。



タイヤクリアランスは先代の35mmから最大40mmへと拡大したものの、45mm以上が一般化したグラベルモデルとは一線を画する設計。ジオメトリーそのものは数少ない先代からの継続要素の一つであり、DOGMA Xよりも「高く短い」という快適設定は変更されておらず、効率性と一日中の快適性のバランスを追求した先代の哲学がそのまま受け継がれている。
インプレッション:レーシングブランドが作る、「楽しさ」を感じるエンデュランサー
DOGMA Xを試した翌日に行われたXシリーズのテストライドは、プロセッコ生産地として世界遺産に登録された、美しい丘陵地帯を駆け巡る80kmコースが舞台。ピンクが目立つX9と、シックなシルバーのX7で揃えたジャーナリスト勢は、ローカルの案内がなければ辿り着けないような裏道をハイペースで巡行した。


「ピナレロ」と聞いて、真っ先に思い描くのはレースのイメージだろう。そして、バイクは硬い。なにしろグランツール通算30勝、うちツール・ド・フランスだけで16勝も挙げ、その舞台で戦うDOGMA Fは剛性に富む乗り味だからそのイメージは間違っていない。ところが、今回試したX7は、ピナレロらしい乗り味を踏襲しつつ、とても扱いやすい。
ほぼ毎年ピナレロの本国発表会に参加させてもらっている体験からすると、「ピナレロらしい乗り味」とは、芯のあるペダリングと、路面をがっちり掴んで離さない独特の低重心のことだ。X7もペダリング剛性自体は高く、長いホイールベースも組み合わさって安定感は極めて高い。純然たるレースライクな乗り味に少し高いスタックハイトを組み合わせたDOGMA Xと比較すれば相当にマイルドだが、こんなにハンドル位置が高いにも関わらず、ダルさを感じなかったのは流石ピナレロというべきだろう。
もっとも、コンセプトが快適性に寄っているからといって、このバイクからピナレロのレーシングブランドとしての血統が消えているわけではない。今回話をした全ピナレロスタッフが「ワールドツアーで実証された思想を組み込んでいる」と表現するように、新型Xシリーズの随所にはDOGMA Fを筆頭とするレースバイク開発で培われてきたノウハウが宿っていることを感じる。
単純な登坂性能や瞬発力で見れば、もちろんDOGMA Xの方が優れているものの、MOSTのULTRAFAST45ホイールを装備したX7は丘陵コースを流れるように走り、スルスルとスピードを維持できる。踏み味がマイルドだから脚力が削られる感覚も薄く、ペダリングが繋がる。総合的に見てとにかく走りが滑らかだ。
快適に、長く走れること。そのゴールに向かうアプローチそのものが、長いレースバイクの開発から着想を得たもの。ピナレロは「快適重視」ではなく、あくまで「走るロードバイク」としてXシリーズを作り上げた。



コースには荒れたグラベルルートも組み込まれたものの、積極的にしなるシートポストや、安定感のあるジオメトリーも手伝って、どかっとサドルに座っているだけでもストレスは感じない。実際にオフロードを走ったりせずとも、「このバイクはどんな場所でも走破できる」と思うだけで安心材料になるはず。一台であらゆる場所を走りたい、という贅沢なサイクリストのニーズにも応えてくれるだろう。
ファウスト・ピナレロ代表はこう語る。「新型Xシリーズは、我々のエンデュランスラインナップにとって大きな前進です。日常の路面で長時間走る実際のサイクリストが何を求めているか—パフォーマンスを犠牲にすることのない、比類ない快適性と振動吸収性—に焦点を当てました。ダウンチューブ内蔵ストレージ、楕円形のステアリングチューブ、可変式シートポストといった革新的なソリューションを取り入れたことで、X SERIESは一年を通じたエンデュランスライドに最適な選択肢になったと考えています。このシリーズは、サイクリストがより遠くへ、より荒れた路面へも自信を持って踏み出せる、そして何より、ライドそのものを心から楽しめる一台です」。

Xシリーズは単なる「お求めやすいピナレロ」ではなく、もっと根源的な「自転車に乗る楽しさ」を味わえるバイクだ「DOGMA Xとは異なるコンセプトですが、すべてのピナレロバイクの開発のきっかけは同じです。すべてのライダーにとって、最高の一台であること」。プレゼンで語られたこの言葉こそ、Xシリーズの本質を言い表している。
ピナレロ Xシリーズラインナップ



Xシリーズはピナレロジャパンによって、X9からX1まで本国ラインナップされる6つの完成車が全て国内輸入される。
最高峰のX9(税込208万円)とX7(税込110万円)はT900カーボンを採用し、それぞれシマノDURA-ACEとULTEGRAで組まれ、ホイールはMOSTのULTRAFAST 45、ハンドルバーはステム一体式モデルのTALON ULTRA FASTをアッセンブル。X5(税込85万円)はT700カーボンとFAST 45ホイールを装備したお値打ちモデルで、X3(税込47.6万円)とX1(税込36.55万円)はT600カーボンを採用する継続モデルだ。
NEW X9 ※受注発注モデル

| フレーム | TORAYCA T900 カーボン |
| コンポーネント | シマノ Dura-Ace Di2 |
| コクピット | MOST TALON ULTRA FAST E-TiCR |
| ホイール | MOST ULTRAFAST 45 DB |
| サイズ | 43、46、49、51.5、53、54.5、56、58、60(C-C) |
| カラー | J260 SHADOW VIOLET |
| 税込価格 | 2,080,000円 |
NEW X7


| フレーム | TORAYCA T900 カーボン |
| コンポーネント | シマノ Ultegra Di2 |
| コクピット | MOST TALON ULTRA FAST E-TiCR |
| ホイール | MOST ULTRAFAST 45 DB |
| サイズ | 43、46、49、51.5、53、54.5、56、58、60(C-C) |
| カラー | J270 TITAN PULSE、J272 ATLAS GLOW |
| 税込価格 | 1,100,000円 |
NEW X5


| フレーム | TORAYCA T700 カーボン |
| コンポーネント | シマノ 105 Di2 |
| コクピット | MOST TIGER CLAW ULTRA AERO E-TiCR AL STEM / JAGUAR CLAW ULTRA E-TiCR AL HANDLEBAR |
| ホイール | MOST FAST 45 DB |
| サイズ | 43、46、49、51.5、53、54.5、56、58、60(C-C) |
| カラー | J271 IRON BLUE、J282 AMBER TRACE |
| 税込価格 | 850,000円 |
X3(継続モデル)
| フレーム | TORAYCA T600 カーボン |
| コンポーネント | シマノ 105 Di2 |
| コクピット | MOST TIGER TiCR AL STEM |
| ホイール | フルクラム RACING 800 DB |
| サイズ | 43、46、49、51.5、53、54.5、56、58、60(C-C) |
| カラー | D160 DEEP BLACK、D161 KEEN RED |
| 税込価格 | 476,000円 |
X1(継続モデル)
| フレーム | TORAYCA T600 カーボン |
| コンポーネント | シマノ 105 メカニカル |
| コクピット | MOST TIGER TiCR AL STEM |
| ホイール | シマノ WH-RS171 |
| サイズ | 43、46、49、51.5、53、54.5、56、58、60(C-C) |
| カラー | D162 PEARL WHITE、D163 SHINY BLACK |
| 税込価格 | 365,500円 |
提供:カワシマサイクルサプライ
text:So Isobe
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