2024/12/30(月) - 18:30
RC7、RC3、そしてRC1。今夏、一挙3モデルが刷新されたシマノのエントリー/ミッドレンジロードシューズを総力特集。「ミドルグレードでいいや」から「ミドルグレードが良いな」に。それぞれに込められた開発ストーリーと共に、シマノシューズの魅力を紐解きます。
開発に携わる松井正史さんの話を聞いて、すごく良いなと思った。そして、手に入れてみたいと思った。話を聞けば聞くほど、今夏シマノがモデルチェンジを行った新型のミドルグレードシューズ3モデルが魅力的なものに見えてきた。
トップグレードのS-PHYRE(エスファイア)と違って、想定ユーザー層が幅広く、さらにコスト制限がある中で繰り返されたという試行錯誤。「エントリーグレードだから手抜き」だなんて図式はシマノのシューズに一切当てはまらない。最新のテクノロジーや素材をふんだんに盛り込み、単純に「S-PHYREのトップダウン」というだけには留まらない、ユーザーに寄り添った開発人の思いがシマノシューズ全てには宿っている。
本章ではそんなシマノが誇るミドルグレードロードシューズ、特にモデルチェンジが行われたばかりのRC703とRC302、RC102にフォーカスを当てていく。「ミドルグレードでいいや」から「ミドルグレードが良いな」に。身近だからこそ、意外と知らないそれぞれの魅力を、開発者の松井さんの話を交えながら掘り下げたいと思う。
S-PHYREのDNAを受け継ぐセカンドグレードの新型ロードシューズがRC703だ。S-PHYREと同じくサラウンドラップ構造のアッパーやスタックハイトの低いミッドソール構造を引き継ぎつつ、先代モデルRC702と比較してBOAダイヤルのモデルチェンジと位置変更、プラスチック製のワイヤーガイド廃したことによるクリーンなルックスの獲得など細かいアップデートが施されている。
マイナーチェンジと呼べるレベルに留まっているものの、これはRC702の時点でセカンドグレードモデルを上回る性能を得ていたから。「RC702時代から”S-PHYREで培った技術やメッセージ、テクノロジーをエントリーユーザーまで届けたい”という想いが明確になったんです。だからミッドソール構造を採用して、スタックハイトやソール剛性、通気性をS-PHYRE同等レベルまで引き上げることができた。その想いを引き継ぐのが、新しいRC703なんです」と、前章でも登場頂いたシマノのギア製品企画を担当する松井正史さんは言う。
さらにシマノが大切にする上質な履き心地を実現するために、可能な限りアッパーの素材量や重なりを少なくしている。例えば補強用にRC702のトー部分に使われていたレザーフィルムを排除したりとプレスリリースに書かれていない部分でも細かな改良が加えられているのだ。
RC703世代では、女性用のRC703Wもオンラインストア限定でデビューを飾ったことが大きなポイント。通常モデルのワイドサイズも引き続きラインナップされ、レーサーからロングライド派まで幅広いユーザーにマッチするよう配慮されている。
大きく変わったのがRC703に次ぐ1BOAダイヤル式のシューズ「RC302」だ。2世代前のRC300の時点で既にミッドソールとサラウンドアッパー、そしてBOAダイヤルという今に通じるS-PHYRE同様のコンセプトを得ていたが、今回はクロージャーシステムの大変更を行い、RC703同様にS-PHYREのコンセプトを引き継ぐというメッセージ性を確立している。
見た目上の大きな変化は、従来クロージャーシステムの中央に位置していたBOAダイヤルがインステップ(足入れ部分付近)に移動したこと。従来のセンターダイヤル式はシューズ全体を均一に締め上げるメリットがあったが、シマノ開発陣の中ではルックスがS-PHYREと大きく違うことが問題視されていたという。
「RC3ではプライスポイントの制約上、BOAダイヤルを1つしか使えません。どのブランドもほぼ共通ですが、このグレードのシューズの基本構造は、甲部分にダイヤルを1つ置いてワイヤーを3回折り返すというもの。ただしつま先部分を締められないという問題があるんです。そこでRC300ではダイヤルを真ん中につけて、つま先もタン部分も同時に締め上げるという斬新なアイディアを取り入れ、コンセプトを引き継いだRC301ともども好評を博しました。でも唯一、見た目には満足できていませんでした」と松井さんは苦笑いを交えながら言う。
「つまり、S-PHYREのテクノロジーを落とし込む」という触れ込みなのに、どうしても「違うもの感」が拭えなかった。だからいよいよ腰を上げて、見た目も、フィット感も両方いける製品を作ろうと決めたんです」。
1BOAダイヤルで起きる「つま先が締め込めない」問題をどう解決するか。その答えがワイヤーの折り返し位置や角度を徹底的に研究することだった。開発段階では試作品を作り、ダイヤル1回転あたりで各部位がどのくらい締まるのかを測る試行錯誤を繰り返したという。
「例えばガイドの位置ひとつとっても色々な要素が絡みます。下側に動かすのか、内側に動かすのか、ダイヤルからの距離や、ガイドの素材自体を変えることでも抵抗値が変わって締め付けテンションが変わるんです。前足部から中足部がしっかりホールドされる、でも締め付けすぎないというバランスを突き詰めました」と松井さん。結果的に、シンプルなルックスにも関わらず、他とは全く違うフィット感を備えた自信作に仕上がったという。
ここまでこだわり抜かれたRC302だが、19,800円(税込)という買い求めやすい価格に抑えられている。スタンダードサイズに加えてワイドサイズ、そして女性用モデルまでラインアップされるのも魅力的だ。
最後に紹介するのがアンダー1.5万円で購入できる新型エントリーグレードシューズ「RC102」。実はこれこそ、「最もシマノのエンジニアリングの結晶と言えるシューズです」と松井さんがイチオシするモデルなのだ。
3本ベルクロ式というシマノエントリーシューズの伝統構造を引き継ぐRC102だが、今作ではついにミッドソール構造を取り入れたことが最大の話題。言わずもがな、ミッドソール構造を採用すればスタックハイトが大きく下がり、S-PHYRE同様のダイレクトなペダリングを手に入れることができる。コスト制約の都合上、どうしても従来設計を維持せざるを得なかったエントリーシューズが進化したことは、賞賛に値すべき事態と言えるだろう。
「従来のRC100はどうしてもコスト制限ゆえRC300/RC301と比較するとスタックハイトが高く、"S-PHYREコンセプトをエントリーモデルまで"というモットーを実現できていませんでした。今回RC102を開発するにあたって、RC302のミッドソールをそのまま流用するという案を取り入れました。製造コストを下げることができて、しかもスティフネスインデックス(ソール剛性)もRC302と同じ。大きなメリットを与えることができました」と松井さんは言う。1時間に及ぶ松井さんとの話の中で、最も熱量高く語られたのがこのRC102だった。
「コスト的にどうしてもBOAダイヤル採用は難しいというが、一方で3本ベルクロには前足部から中足部、インステップ部分までしっかりと締め上げることができるというメリットがある。どうしても1BOAダイヤルが合わない人にとっての助け舟的存在となるシューズと言えるだろう。
今夏、一挙3モデルが総刷新 珠玉のシマノのエントリー/ミッドレンジシューズ
開発に携わる松井正史さんの話を聞いて、すごく良いなと思った。そして、手に入れてみたいと思った。話を聞けば聞くほど、今夏シマノがモデルチェンジを行った新型のミドルグレードシューズ3モデルが魅力的なものに見えてきた。
トップグレードのS-PHYRE(エスファイア)と違って、想定ユーザー層が幅広く、さらにコスト制限がある中で繰り返されたという試行錯誤。「エントリーグレードだから手抜き」だなんて図式はシマノのシューズに一切当てはまらない。最新のテクノロジーや素材をふんだんに盛り込み、単純に「S-PHYREのトップダウン」というだけには留まらない、ユーザーに寄り添った開発人の思いがシマノシューズ全てには宿っている。
本章ではそんなシマノが誇るミドルグレードロードシューズ、特にモデルチェンジが行われたばかりのRC703とRC302、RC102にフォーカスを当てていく。「ミドルグレードでいいや」から「ミドルグレードが良いな」に。身近だからこそ、意外と知らないそれぞれの魅力を、開発者の松井さんの話を交えながら掘り下げたいと思う。
RC703:ルックスとスムーズな締め付けを両立したセカンドモデル
S-PHYREのDNAを受け継ぐセカンドグレードの新型ロードシューズがRC703だ。S-PHYREと同じくサラウンドラップ構造のアッパーやスタックハイトの低いミッドソール構造を引き継ぎつつ、先代モデルRC702と比較してBOAダイヤルのモデルチェンジと位置変更、プラスチック製のワイヤーガイド廃したことによるクリーンなルックスの獲得など細かいアップデートが施されている。
マイナーチェンジと呼べるレベルに留まっているものの、これはRC702の時点でセカンドグレードモデルを上回る性能を得ていたから。「RC702時代から”S-PHYREで培った技術やメッセージ、テクノロジーをエントリーユーザーまで届けたい”という想いが明確になったんです。だからミッドソール構造を採用して、スタックハイトやソール剛性、通気性をS-PHYRE同等レベルまで引き上げることができた。その想いを引き継ぐのが、新しいRC703なんです」と、前章でも登場頂いたシマノのギア製品企画を担当する松井正史さんは言う。
さらにシマノが大切にする上質な履き心地を実現するために、可能な限りアッパーの素材量や重なりを少なくしている。例えば補強用にRC702のトー部分に使われていたレザーフィルムを排除したりとプレスリリースに書かれていない部分でも細かな改良が加えられているのだ。
RC703世代では、女性用のRC703Wもオンラインストア限定でデビューを飾ったことが大きなポイント。通常モデルのワイドサイズも引き続きラインナップされ、レーサーからロングライド派まで幅広いユーザーにマッチするよう配慮されている。
RC302:1BOAダイヤル式シューズの基本構造を尽きつめた自信作
大きく変わったのがRC703に次ぐ1BOAダイヤル式のシューズ「RC302」だ。2世代前のRC300の時点で既にミッドソールとサラウンドアッパー、そしてBOAダイヤルという今に通じるS-PHYRE同様のコンセプトを得ていたが、今回はクロージャーシステムの大変更を行い、RC703同様にS-PHYREのコンセプトを引き継ぐというメッセージ性を確立している。
見た目上の大きな変化は、従来クロージャーシステムの中央に位置していたBOAダイヤルがインステップ(足入れ部分付近)に移動したこと。従来のセンターダイヤル式はシューズ全体を均一に締め上げるメリットがあったが、シマノ開発陣の中ではルックスがS-PHYREと大きく違うことが問題視されていたという。
「RC3ではプライスポイントの制約上、BOAダイヤルを1つしか使えません。どのブランドもほぼ共通ですが、このグレードのシューズの基本構造は、甲部分にダイヤルを1つ置いてワイヤーを3回折り返すというもの。ただしつま先部分を締められないという問題があるんです。そこでRC300ではダイヤルを真ん中につけて、つま先もタン部分も同時に締め上げるという斬新なアイディアを取り入れ、コンセプトを引き継いだRC301ともども好評を博しました。でも唯一、見た目には満足できていませんでした」と松井さんは苦笑いを交えながら言う。
「つまり、S-PHYREのテクノロジーを落とし込む」という触れ込みなのに、どうしても「違うもの感」が拭えなかった。だからいよいよ腰を上げて、見た目も、フィット感も両方いける製品を作ろうと決めたんです」。
1BOAダイヤルで起きる「つま先が締め込めない」問題をどう解決するか。その答えがワイヤーの折り返し位置や角度を徹底的に研究することだった。開発段階では試作品を作り、ダイヤル1回転あたりで各部位がどのくらい締まるのかを測る試行錯誤を繰り返したという。
「例えばガイドの位置ひとつとっても色々な要素が絡みます。下側に動かすのか、内側に動かすのか、ダイヤルからの距離や、ガイドの素材自体を変えることでも抵抗値が変わって締め付けテンションが変わるんです。前足部から中足部がしっかりホールドされる、でも締め付けすぎないというバランスを突き詰めました」と松井さん。結果的に、シンプルなルックスにも関わらず、他とは全く違うフィット感を備えた自信作に仕上がったという。
ここまでこだわり抜かれたRC302だが、19,800円(税込)という買い求めやすい価格に抑えられている。スタンダードサイズに加えてワイドサイズ、そして女性用モデルまでラインアップされるのも魅力的だ。
RC102:エントリーシューズがいよいよS-PHYRE同様のペダリング感覚を獲得
最後に紹介するのがアンダー1.5万円で購入できる新型エントリーグレードシューズ「RC102」。実はこれこそ、「最もシマノのエンジニアリングの結晶と言えるシューズです」と松井さんがイチオシするモデルなのだ。
3本ベルクロ式というシマノエントリーシューズの伝統構造を引き継ぐRC102だが、今作ではついにミッドソール構造を取り入れたことが最大の話題。言わずもがな、ミッドソール構造を採用すればスタックハイトが大きく下がり、S-PHYRE同様のダイレクトなペダリングを手に入れることができる。コスト制約の都合上、どうしても従来設計を維持せざるを得なかったエントリーシューズが進化したことは、賞賛に値すべき事態と言えるだろう。
「従来のRC100はどうしてもコスト制限ゆえRC300/RC301と比較するとスタックハイトが高く、"S-PHYREコンセプトをエントリーモデルまで"というモットーを実現できていませんでした。今回RC102を開発するにあたって、RC302のミッドソールをそのまま流用するという案を取り入れました。製造コストを下げることができて、しかもスティフネスインデックス(ソール剛性)もRC302と同じ。大きなメリットを与えることができました」と松井さんは言う。1時間に及ぶ松井さんとの話の中で、最も熱量高く語られたのがこのRC102だった。
「コスト的にどうしてもBOAダイヤル採用は難しいというが、一方で3本ベルクロには前足部から中足部、インステップ部分までしっかりと締め上げることができるというメリットがある。どうしても1BOAダイヤルが合わない人にとっての助け舟的存在となるシューズと言えるだろう。
シマノ ミドル/エントリーグレードシューズラインアップ
RC703 | |
重量 | 244g(size 42) |
カラー | ブラック、ホワイト |
スタンダードサイズ | 38~48(ハーフサイズ39.5~43.5) |
ワイドサイズ | 38~48(ハーフサイズ39.5~43.5) |
価格 | 36,300円(税込) |
RC703W | オンラインストア限定 |
重量 | 224g (size 40) |
カラー | ブラック、ホワイト |
スタンダードサイズ | 36~44(ハーフサイズなし) |
価格 | 36,300円(税込) |
RC302 | |
重量 | 252g(size 42) |
カラー | ブラック、ホワイト、ネイビー |
スタンダードサイズ | 36~48 |
ワイドサイズ | 36~48 |
価格 | 19,800円(税込) |
RC302W | |
重量 | 237g(size 40) |
カラー | ブラック、ホワイト、セージグリーン |
スタンダードサイズ | 36~40(ホワイト)、36~44(ブラック、セージグリーン※オンラインストア限定色) |
価格 | 19,800円(税込) |
RC102 | |
重量 | 268g(size 42) |
カラー | ブラック、ネイビー |
スタンダードサイズ | 36〜48(ブラック)、36〜48(ネイビー) |
価格 | 14,300円(税込) |
RC102W | ※オンラインストア限定 |
重量 | 246g(size 40) |
カラー | ブラック、バイオレット |
スタンダードサイズ | 36~44 |
価格 | 14,300円(税込) |
提供:シマノセールス | text:So Isobe