2020/09/15(火) - 12:00
ツール・ド・フランスを戦うシマノ・グローバルサポートチームの活躍を追う本特集。現在熾烈な闘いを繰り広げている選手たちを支えるDURA-ACE、PRO、LAZERのプロダクトに焦点を当てながら、ツール第2週を振り返る。
シマノの最高峰グレードコンポーネンツ、DURA-ACEの性能と信頼性は言わずもがな。R9100系が示してきた成績と採用実績を見れば明らかである。今年のツール・ド・フランス特集ではこれまでDURA-ACEがツールで勝ち取ってきたタイトルを振り返ってみたい。
R9100系DURA-ACEが本格的にツール・ド・フランスに投入され始めたのは2017年のこと。この年はクリストファー・フルームが4回目となるマイヨジョーヌを獲得し、翌2018年はセカンドエースとして大会に臨んだゲラント・トーマス、2019年はエガン・ベルナルが総合首位の表彰台に登ったことは記憶に新しい。
それだけではない。2017年はマイケル・マシューズがポイント賞、ワレン・バルギルが山岳賞、サイモン・イェーツが新人賞を獲得し、シマノ・グローバルサポートチームが4つの特別賞を独占。2018年、19年と2年連続でペテル・サガンがマイヨヴェールに袖を通している。R9100系は常にシマノ・グローバルサポートチームとともに輝かしい成績を収めてきた。
R9100系はデビューイヤーから注目を集めてきたが、ディスクブレーキとパワーメーターは徐々に信頼を勝ち取ってきたパーツでもある。ディスクブレーキに関してはUCIルールで使用が解禁となった2018年から徐々に採用チームが増え、2020年の今大会では当たり前のように世界最高峰のチームがR9170(油圧ディスクブレーキ/DI2)を使用するようになっている。
パワーメーターも徐々に採用チーム数を伸ばしてきた実績を持つプロダクトだ。2017年の投入当時はシマノ・グローバルサポートチームの中でもシマノのパワーメーターを使用するチームはほぼ限られており、2018年、2019年とその精度と信頼性の高さから採用チームが増えていった。そして、2020年ツールに出場するシマノ・グローバルサポートチーム全てがシマノのパワーメーターを搭載。
デビューから4年、その性能と信頼性が広く深く世界中に知れ渡ったDURA-ACE R9100系。成熟の年を迎えた最高峰コンポーネンツは今もツールを戦っている。
そんな中で、フレームとは独立したパーツブランドのPROのハンドルやステムを使い続けているのがドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエ、グルパマFDJ、サンウェブだ。各チームの使用状況を改めて確認してみよう。
同一ブランドからフレーム供給を受けているドゥクーニンクとボーラはどちらもケーブルフル内装仕様だが、PROのハンドルとステムで内装化を行っている。グルパマFDJはリムブレーキ仕様とディスクブレーキ仕様、どちらもフル内装式フレームではないためPROを使用したトラディショナルなセッティング。サンウェブはフル内装ではないリムブレーキ仕様のバイクではPRO、ディスクブレーキバイクは専用設計品を使用している。
PROのパーツを使用するメリットは、様々なモデルから選手それぞれの走りや好みにあったパーツ選べるようになること。ボーラ・ハンスグローエのダニエル・オスはVIBE SPRINTという超極太ステムとVIBEハンドルを選んでいる。ステム一体型ハンドルのSTEALTH EVOを使用するメンバーも。ライダー自身が最も信頼を置けるコックピットパーツを使用することは、ストレスを極限まで減らし、集中力の向上や疲労の軽減に繋がる。結果として、スプリント、ダウンヒルなどで攻めていくことが可能になるのだ。
サンウェブはPROのサドルを使用しているチームでもある。今ツールのスプリント勝負で好成績を残しているケース・ボルは、ショートノーズモデルのSTEALTHをマイバイクにアセンブルしている。カスパー・ピーダスンはFALCON、ヨリス・ニューエンハイスはTURNIXなど選手によって異なるモデルを使用しており、ラインアップの充実を感じさせる。
タイムトライアル用ホイール"3-Spoke Wheel Textreme"と"Disc Wheel Textreme"は、PROのプロダクツを語る上で欠かせない存在。使用するのはグルパマFDJ、イネオス・グレナディアーズ、ミッチェルトン・スコット、ユンボ・ヴィスマ、アルケア・サムシック。今年のツールでは第20ステージまでは出番がないものの、世界王者も愛用するTT用ホイールの活躍を今から期待してもよいだろう。
ベルギーの“LAZER(レイザー)”もシマノのグループとしてツール・ド・フランスを戦うブランドであり、今年もユンボ・ヴィスマとサンウェブの2チームがレイザーのGENESISとBULLET 2.0を着用している。
GENESISは、長年フラッグシップとして君臨し続けたZ1に変わるモデルとして、2019年の世界選手権から使用され始めた新型オールラウンドモデル。EUの安全規格EN1078をクリアしながら、ブランド史上最軽量のSサイズで190gという軽量性を実現したことが最大の特徴だ。1gでも身軽さを求めるグランツールレーサーたちにとって、ヘルメットの軽量性は見逃せないポイントだろう。
ヘルメット内側のチャネル設計による優れた通気性もポイントの1つ。特に気温が高くなる夏場のレースにおいて、頭部の快適性はライダーのパフォーマンス発揮に直結する。今大会のマイヨジョーヌ候補として名高いプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)らのヘルメットとしてふさわしい存在と言えよう。
今大会スプリントフィニッシュで勝利を挙げているファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、上位に名前を連ねるケース・ボル(サンウェブ)が平坦ステージで着用しているのがBullet 2.0だ。"Bullet (=弾丸)"という名に相応しい滑らかなシェルデザインと、TT用ロングテール・エアロヘルメットの端部を切り落としたようなカムテールデザインは、優れたエアロダイナミクスに貢献している。
Bullet 2.0の特徴の1つに、Air Slideというテクノロジーがある。これはシェル中央部に設けられたスライド式カバーのことであり、シャッターのように開閉することで通気性をコントロールすることを可能にする。ユンボ・ヴィスマはこのカバーに選手名を記載しており、ファンアールトが着用するものには"WOUT"と書かれている。サングラスをしていて選手を判別できない時は、このカバーを見るのも一つの手だ。
また、このカバーには幾つかバリエーションがあり、選手によって使い分けていることも見どころ。昨年のサンウェブはシャッター搭載カバーを使用している選手が多かったが、今年のボルやカスパー・ピーダスンはファンアールトと同じものを使用している。
いつもは穏やかな休息日だが、今年のツールは1つの緊張感に包まれていた。新型コロナウイルスのPCR検査が選手と帯同スタッフ全員を対象として日曜日(第9ステージ)、月曜日(休息日)に行われたのだ。今ツールではスタッフを含めチームから2名から陽性反応が検出された場合、チーム全体がレースから撤退しなければならないというプロトコルのもと開催されている。結果は選手全員の陰性、スタッフは4チームから1名ずつ陽性となった。除外されるチームはなく、レースは火曜日以降も続行された。
休息日明けの第10ステージは本大会唯一のカテゴリー山岳が設定されない平坦コース。プロフィールだけを見ればイージーなコースではあるものの、海沿いを走るということもあり風との戦いとなることが予想され、スプリントフィニッシュに持ち込みたいドゥクーニンク・クイックステップと、警戒態勢のユンボ・ヴィスマ、イネオス・グレナディアーズが序盤の逃げも早々に吸収し、プロトンを牽引。
途中落車や横風区間での分断が発生したものの大きな動きにはならず、フィニッシュはコースプロフィール通りピュアスプリンター同士の争いに。向かい風のスプリントを制したのはサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。ツールの初ステージ優勝を雄叫びとともに飾ったアイリッシュ・スプリンターが、マイヨヴェールを奪還した。
大西洋沿岸で1日過ごしたプロトンは、第11ステージで中央山塊とジュラ山脈に向けて東進を開始。この日もスプリンターを苦しめる大きな山岳は配置されておらず、フィニッシュは大集団スプリントに持ち込まれた。サム・ベネット、ワウト・ファンアールト、ペテル・サガンが競ったものの勝利はならず。サム・ベネットがマイヨヴェールのポイントを積み重ねる1日となった。
今大会最長218kmの第12ステージは、好調さをみせていたマルク・ヒルシが遂にステージ優勝を手に入れた。この日のコースは超級や1級といった激しい山岳は用意されていないものの、長い距離とアップダウンが続くプロファイルで、逃げを得意とする選手達が色気を示すのには十分だった。
レース序盤1時間の平均速度が50km/hを越える熾烈なアタック合戦の末、6名のエスケープグループが形成されるも、厳しいアップダウンとアタックによって残り50kmで小集団は崩壊。メイン集団から飛び出した新たな6名が先頭に立った。そこに入ったヒルシが、最後の2級山岳で単独先頭に踊り出た。追走が迫る中、ヒルシは逃げ切りを成功させプロ初勝利を飾ったのだ。
中央山塊に戻ってきた第13ステージは1級、3級、2級、3級、3級、2級、1級(ピュイマリーの山頂フィニッシュ)と7つのカテゴリー山岳が用意されたハードコース。ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)やワレン・バルギル(アルケア・サムシック)らが入った逃げグループは総勢17名で形成された。ユンボ・ヴィスマ率いるメイン集団は逃げを容認し、ステージ優勝と総合争いを切り分けた。
先頭グループではボーラ・ハンスグローエのマキシミリアン・シャフマンとレナード・ケムナが躍動。勝利こそ逃してしまったものの積極的に仕掛けたシャフマンは敢闘賞を獲得した。
リヨンの街に向かう第14ステージはボーラ・ハンスグローエとサンウェブが躍動した。序盤に4級、スプリントポイント、2級山岳が待ち構えており、ここでボーラはサガンのポイント賞と優勝のために動いた。スプリントポイントでメイン集団の先頭を確保し、続く2級山岳でもボーラはハイペース刻みピュアスプリンターを振り落とすことに成功。その後もボーラはペースを緩めること無く、遅れた選手たちに再合流を諦めさせた。
フィニッシュ手前で現れる4級山岳でステージ優勝に向けた争いが加速する。サンウェブのティシュ・ベノートのアタックを皮切りに、レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)も攻勢に出る。集団がケムナを捉えたところでヒルシがカウンターアタックするも、集団は逃げ切りを許さない。ヒルシが集団に引き戻されたタイミングで再びサンウェブからセーアン・クラーウアナスンがアタック。集団では誰が追うのかと顔を見合わせているうちに、クラーウアナスンのリードは拡大し、そのまま単独でフィニッシュ。
べノート、ヒルシ、クラーウアナスンの波状攻撃と、その後スプリント勝負に持ち込まれてもカスパー・アスグリーンが控えていたサンウェブの戦術が実を結んだ。若手中心のチームが今大会で花開いている。
ジュラ山脈のグラン・コロンビエール峠の山頂フィニッシュを迎える第15ステージは、前半がスプリントポイントを含む平坦基調で、後半に1級、1級、超級という山岳が待つコース設定。逃げが決まるまでの2時間の平均速度が49.9km/hという熾烈な序盤を経て、メイン集団に残ったベネットとサガンのマイヨヴェール争いはベネットに軍配が上がり、ポイント差が開く結果に。果敢に攻めるボーラがポイント賞を奪えるのかが、今大会の見どころの1つとなっている。
グラン・コロンビエールではファンアールト、ジョージ・ベネット、セップ・クス、トム・デュムランの強力な牽引がライバルたちの攻撃を許さない。ステージ優勝こそ逃したもののユンボ・ヴィスマの戦力は圧倒的。休息日前の総合争いで明らかになったのは、ログリッチ含めユンボ・ヴィスマは2週目を終えても好調を維持していること。
何が起こってもおかしくないツール・ド・フランス。マイヨジョーヌとマイヨヴェール争いから目を離せない最終週となりそうだ。
信頼を勝ち取った最高峰グレードコンポーネンツ"DURA-ACE"
シマノの最高峰グレードコンポーネンツ、DURA-ACEの性能と信頼性は言わずもがな。R9100系が示してきた成績と採用実績を見れば明らかである。今年のツール・ド・フランス特集ではこれまでDURA-ACEがツールで勝ち取ってきたタイトルを振り返ってみたい。
R9100系DURA-ACEが本格的にツール・ド・フランスに投入され始めたのは2017年のこと。この年はクリストファー・フルームが4回目となるマイヨジョーヌを獲得し、翌2018年はセカンドエースとして大会に臨んだゲラント・トーマス、2019年はエガン・ベルナルが総合首位の表彰台に登ったことは記憶に新しい。
それだけではない。2017年はマイケル・マシューズがポイント賞、ワレン・バルギルが山岳賞、サイモン・イェーツが新人賞を獲得し、シマノ・グローバルサポートチームが4つの特別賞を独占。2018年、19年と2年連続でペテル・サガンがマイヨヴェールに袖を通している。R9100系は常にシマノ・グローバルサポートチームとともに輝かしい成績を収めてきた。
R9100系はデビューイヤーから注目を集めてきたが、ディスクブレーキとパワーメーターは徐々に信頼を勝ち取ってきたパーツでもある。ディスクブレーキに関してはUCIルールで使用が解禁となった2018年から徐々に採用チームが増え、2020年の今大会では当たり前のように世界最高峰のチームがR9170(油圧ディスクブレーキ/DI2)を使用するようになっている。
パワーメーターも徐々に採用チーム数を伸ばしてきた実績を持つプロダクトだ。2017年の投入当時はシマノ・グローバルサポートチームの中でもシマノのパワーメーターを使用するチームはほぼ限られており、2018年、2019年とその精度と信頼性の高さから採用チームが増えていった。そして、2020年ツールに出場するシマノ・グローバルサポートチーム全てがシマノのパワーメーターを搭載。
デビューから4年、その性能と信頼性が広く深く世界中に知れ渡ったDURA-ACE R9100系。成熟の年を迎えた最高峰コンポーネンツは今もツールを戦っている。
専用化の波に飲まれず、プロから選ばれるPROパーツ
フレームのエアロダイナミクスが突き詰められていき、レースバイクにおいてはケーブルフル内装が主流となったこの数年。フレームと同時にハンドルとステム、シートポストも同時に開発が行われ、専用品として用意されるケースも増えてきた。そのため、ハンドルとステムのチョイスに関してはフレーム設計に依存し、各チームのバイク事情に合わせたパーツがバイクに装着されている。そんな中で、フレームとは独立したパーツブランドのPROのハンドルやステムを使い続けているのがドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエ、グルパマFDJ、サンウェブだ。各チームの使用状況を改めて確認してみよう。
同一ブランドからフレーム供給を受けているドゥクーニンクとボーラはどちらもケーブルフル内装仕様だが、PROのハンドルとステムで内装化を行っている。グルパマFDJはリムブレーキ仕様とディスクブレーキ仕様、どちらもフル内装式フレームではないためPROを使用したトラディショナルなセッティング。サンウェブはフル内装ではないリムブレーキ仕様のバイクではPRO、ディスクブレーキバイクは専用設計品を使用している。
PROのパーツを使用するメリットは、様々なモデルから選手それぞれの走りや好みにあったパーツ選べるようになること。ボーラ・ハンスグローエのダニエル・オスはVIBE SPRINTという超極太ステムとVIBEハンドルを選んでいる。ステム一体型ハンドルのSTEALTH EVOを使用するメンバーも。ライダー自身が最も信頼を置けるコックピットパーツを使用することは、ストレスを極限まで減らし、集中力の向上や疲労の軽減に繋がる。結果として、スプリント、ダウンヒルなどで攻めていくことが可能になるのだ。
サンウェブはPROのサドルを使用しているチームでもある。今ツールのスプリント勝負で好成績を残しているケース・ボルは、ショートノーズモデルのSTEALTHをマイバイクにアセンブルしている。カスパー・ピーダスンはFALCON、ヨリス・ニューエンハイスはTURNIXなど選手によって異なるモデルを使用しており、ラインアップの充実を感じさせる。
タイムトライアル用ホイール"3-Spoke Wheel Textreme"と"Disc Wheel Textreme"は、PROのプロダクツを語る上で欠かせない存在。使用するのはグルパマFDJ、イネオス・グレナディアーズ、ミッチェルトン・スコット、ユンボ・ヴィスマ、アルケア・サムシック。今年のツールでは第20ステージまでは出番がないものの、世界王者も愛用するTT用ホイールの活躍を今から期待してもよいだろう。
ユンボ・ヴィスマとサンウェブを守るヘルメットブランド“LAZER”
ベルギーの“LAZER(レイザー)”もシマノのグループとしてツール・ド・フランスを戦うブランドであり、今年もユンボ・ヴィスマとサンウェブの2チームがレイザーのGENESISとBULLET 2.0を着用している。
GENESISは、長年フラッグシップとして君臨し続けたZ1に変わるモデルとして、2019年の世界選手権から使用され始めた新型オールラウンドモデル。EUの安全規格EN1078をクリアしながら、ブランド史上最軽量のSサイズで190gという軽量性を実現したことが最大の特徴だ。1gでも身軽さを求めるグランツールレーサーたちにとって、ヘルメットの軽量性は見逃せないポイントだろう。
ヘルメット内側のチャネル設計による優れた通気性もポイントの1つ。特に気温が高くなる夏場のレースにおいて、頭部の快適性はライダーのパフォーマンス発揮に直結する。今大会のマイヨジョーヌ候補として名高いプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)らのヘルメットとしてふさわしい存在と言えよう。
今大会スプリントフィニッシュで勝利を挙げているファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、上位に名前を連ねるケース・ボル(サンウェブ)が平坦ステージで着用しているのがBullet 2.0だ。"Bullet (=弾丸)"という名に相応しい滑らかなシェルデザインと、TT用ロングテール・エアロヘルメットの端部を切り落としたようなカムテールデザインは、優れたエアロダイナミクスに貢献している。
Bullet 2.0の特徴の1つに、Air Slideというテクノロジーがある。これはシェル中央部に設けられたスライド式カバーのことであり、シャッターのように開閉することで通気性をコントロールすることを可能にする。ユンボ・ヴィスマはこのカバーに選手名を記載しており、ファンアールトが着用するものには"WOUT"と書かれている。サングラスをしていて選手を判別できない時は、このカバーを見るのも一つの手だ。
また、このカバーには幾つかバリエーションがあり、選手によって使い分けていることも見どころ。昨年のサンウェブはシャッター搭載カバーを使用している選手が多かったが、今年のボルやカスパー・ピーダスンはファンアールトと同じものを使用している。
グラン・コロンビエールでの決戦へ ツール第2週を振り返る
いつもは穏やかな休息日だが、今年のツールは1つの緊張感に包まれていた。新型コロナウイルスのPCR検査が選手と帯同スタッフ全員を対象として日曜日(第9ステージ)、月曜日(休息日)に行われたのだ。今ツールではスタッフを含めチームから2名から陽性反応が検出された場合、チーム全体がレースから撤退しなければならないというプロトコルのもと開催されている。結果は選手全員の陰性、スタッフは4チームから1名ずつ陽性となった。除外されるチームはなく、レースは火曜日以降も続行された。
休息日明けの第10ステージは本大会唯一のカテゴリー山岳が設定されない平坦コース。プロフィールだけを見ればイージーなコースではあるものの、海沿いを走るということもあり風との戦いとなることが予想され、スプリントフィニッシュに持ち込みたいドゥクーニンク・クイックステップと、警戒態勢のユンボ・ヴィスマ、イネオス・グレナディアーズが序盤の逃げも早々に吸収し、プロトンを牽引。
途中落車や横風区間での分断が発生したものの大きな動きにはならず、フィニッシュはコースプロフィール通りピュアスプリンター同士の争いに。向かい風のスプリントを制したのはサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。ツールの初ステージ優勝を雄叫びとともに飾ったアイリッシュ・スプリンターが、マイヨヴェールを奪還した。
大西洋沿岸で1日過ごしたプロトンは、第11ステージで中央山塊とジュラ山脈に向けて東進を開始。この日もスプリンターを苦しめる大きな山岳は配置されておらず、フィニッシュは大集団スプリントに持ち込まれた。サム・ベネット、ワウト・ファンアールト、ペテル・サガンが競ったものの勝利はならず。サム・ベネットがマイヨヴェールのポイントを積み重ねる1日となった。
今大会最長218kmの第12ステージは、好調さをみせていたマルク・ヒルシが遂にステージ優勝を手に入れた。この日のコースは超級や1級といった激しい山岳は用意されていないものの、長い距離とアップダウンが続くプロファイルで、逃げを得意とする選手達が色気を示すのには十分だった。
レース序盤1時間の平均速度が50km/hを越える熾烈なアタック合戦の末、6名のエスケープグループが形成されるも、厳しいアップダウンとアタックによって残り50kmで小集団は崩壊。メイン集団から飛び出した新たな6名が先頭に立った。そこに入ったヒルシが、最後の2級山岳で単独先頭に踊り出た。追走が迫る中、ヒルシは逃げ切りを成功させプロ初勝利を飾ったのだ。
中央山塊に戻ってきた第13ステージは1級、3級、2級、3級、3級、2級、1級(ピュイマリーの山頂フィニッシュ)と7つのカテゴリー山岳が用意されたハードコース。ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)やワレン・バルギル(アルケア・サムシック)らが入った逃げグループは総勢17名で形成された。ユンボ・ヴィスマ率いるメイン集団は逃げを容認し、ステージ優勝と総合争いを切り分けた。
先頭グループではボーラ・ハンスグローエのマキシミリアン・シャフマンとレナード・ケムナが躍動。勝利こそ逃してしまったものの積極的に仕掛けたシャフマンは敢闘賞を獲得した。
リヨンの街に向かう第14ステージはボーラ・ハンスグローエとサンウェブが躍動した。序盤に4級、スプリントポイント、2級山岳が待ち構えており、ここでボーラはサガンのポイント賞と優勝のために動いた。スプリントポイントでメイン集団の先頭を確保し、続く2級山岳でもボーラはハイペース刻みピュアスプリンターを振り落とすことに成功。その後もボーラはペースを緩めること無く、遅れた選手たちに再合流を諦めさせた。
フィニッシュ手前で現れる4級山岳でステージ優勝に向けた争いが加速する。サンウェブのティシュ・ベノートのアタックを皮切りに、レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)も攻勢に出る。集団がケムナを捉えたところでヒルシがカウンターアタックするも、集団は逃げ切りを許さない。ヒルシが集団に引き戻されたタイミングで再びサンウェブからセーアン・クラーウアナスンがアタック。集団では誰が追うのかと顔を見合わせているうちに、クラーウアナスンのリードは拡大し、そのまま単独でフィニッシュ。
べノート、ヒルシ、クラーウアナスンの波状攻撃と、その後スプリント勝負に持ち込まれてもカスパー・アスグリーンが控えていたサンウェブの戦術が実を結んだ。若手中心のチームが今大会で花開いている。
ジュラ山脈のグラン・コロンビエール峠の山頂フィニッシュを迎える第15ステージは、前半がスプリントポイントを含む平坦基調で、後半に1級、1級、超級という山岳が待つコース設定。逃げが決まるまでの2時間の平均速度が49.9km/hという熾烈な序盤を経て、メイン集団に残ったベネットとサガンのマイヨヴェール争いはベネットに軍配が上がり、ポイント差が開く結果に。果敢に攻めるボーラがポイント賞を奪えるのかが、今大会の見どころの1つとなっている。
グラン・コロンビエールではファンアールト、ジョージ・ベネット、セップ・クス、トム・デュムランの強力な牽引がライバルたちの攻撃を許さない。ステージ優勝こそ逃したもののユンボ・ヴィスマの戦力は圧倒的。休息日前の総合争いで明らかになったのは、ログリッチ含めユンボ・ヴィスマは2週目を終えても好調を維持していること。
何が起こってもおかしくないツール・ド・フランス。マイヨジョーヌとマイヨヴェール争いから目を離せない最終週となりそうだ。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード