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シマノが放つ新グラベルアドベンチャー向けコンポーネンツ、SHIMANO GRXシリーズをインプレッション。グラインデューロや野辺山シクロクロス、トレイルを含むグラベルライドなどあらゆる状況で実走インプレ。オフロードを走り込んで見えたその実力とは?

テスター  綾野 真(CW編集部)

綾野 真(CW編集長) グラインデューロジャパン完走記念撮影にて綾野 真(CW編集長) グラインデューロジャパン完走記念撮影にて Photo:Grinduro Japanロード、MTB、シクロクロスなんでもこいのCW編集長。今年はオフロード系に力を入れることをテーマに、セルフディスカバリー王滝・秋100kmを7時間16分で完走。取材オフシーズンにはシクロクロスレースに取り組み、初戦の幕張クロスM2で優勝、M1クラスに昇格した。

グラベルライドには3年前からハマっており、KONAのクロモリ系モンスタークロスに45Cのグラベルタイヤで乗るのがお気に入り。そして本企画のためにGRX仕様のカーボンバイクを新調した。

シマノGRXで組み上げたコルナゴ Prestige GRV(北米限定仕様カラー)シマノGRXで組み上げたコルナゴ Prestige GRV(北米限定仕様カラー) photo:Makoto.AYANO
シマノGRXがデビューしてすぐにオーダーを入れたカーボンフレームのグラベルバイクを、DI2仕様のRX810シリーズで組み上げ、日本初開催となったグラインデューロを走ることができた。組み上がったのが大会の3日前ということで、グラインデューロがぶっつけ本番のレースとなった。Vol.1の組み上げ記事でも紹介したバイクがマイバイクであり、それを用いてのインプレッションだ。

斑尾・信越高原のグラインデューロジャパンのグラベルを走る斑尾・信越高原のグラインデューロジャパンのグラベルを走る photo:Kazushi Mikami
大型台風が襲来するなか斑尾・信越高原エリアで開催された第1回グラインデューロ。前日のコース試走時(メディア限定)は晴れたが、大会当日は雨のなかの開催。アメリカ本国の主催スタッフが認める日本における「最高のグラベル」をドライ&ウェットで走ることができた。かつその後バイクはシクロクロスレースにも投入したりと、普段から十二分に乗り込んでの中長期インプレッションだ。

特徴的な形状のGRX DI2仕様STIレバー特徴的な形状のGRX DI2仕様STIレバー
まずGRXコンポの操作感を印象的なものにしているのがそのコックピット部。とくに形状が特徴的なSTIレバーの使い心地が何より素晴らしく、気に入っている。上部に突起のあるフード形状のため荒れた路面においても手がすっぽ抜ける心配がなく、かつ中指、薬指、小指の3本をブラケット下に巻き込んでしっかりと握れる形状で、オフロードにおいて大きな安心感になる。

手全体でがっしりと握ることができるレバー形状だからこそ、逆にふんわりと握って遊ばせておくこともできる。フードを握り締めずに掌のなかにアソビをもたせることで、路面からの振動を逃すことができ、それが腕をサスペンション代わりに使えることになるのだ。これは荒れた路面を走行する際にはとてもメリットが大きいと感じた。そういえばシクロクロスに使っているロード系のSTIレバーは、オフロード路面の振動に対応できるように、レバーを上げてセットしている。それは本来レバーが使いやすい角度とは言えない。

ブラケット部のホールド性が良く、先端の突起により手がすっぽ抜けないブラケット部のホールド性が良く、先端の突起により手がすっぽ抜けない
フードのラバーに刻まれるラインテクスチャーもいい役割を果たしていて、雨で濡れても滑らず安心だ。レバーはブレーキングの際に人差し指、中指をかける箇所が面で接するような形状となっていて、より力がかけやすくなっている。レバーに施されたマット系の表面処理も濡れても滑らず、素手、指付きグローブともに具合が良かった。この特殊な表面処理はシマノのフィッシングタックル(釣り竿やリールなど)からの応用ということだ。

カーブしたレバーはドロップを持っても近く、引きやすいカーブしたレバーはドロップを持っても近く、引きやすい ウェットコンディションでも手が滑らず、握りやすい」ウェットコンディションでも手が滑らず、握りやすい」


レバーの軸(支点)がロード用STIレバー(ST-R9150)に比べ18mm上部に設定されており、それによりブラケットを持った状態での上からのブレーキングがしやすくなっている。軽い力で抑え込むことができ、十分なブレーキングができるのだ。ドロップ部を握った際にもレバーが近い形状で、指が届きやすい。つまりハンドルのどこを持ってもブレーキレバーへのアクセスと操作がしやすい。

レバーひとつで気に入った点をたくさん挙げることになってしまったが、GRXのDI2 STIレバーは従来のロードコンポとは比較にならないほどオフロードでの操作感に優れたものになっていると感心。個人的にはマイナーな林道や山間部の農道などをロードバイクで走ることが多い自分にとって、このレバーだけでもロードバイクに採用したくなる使い心地。実際、ロードコンポとの互換性はある。つまりDURA-ACEやULTEGRAのDI2との組み合わせもOKだ。

サブブレーキレバーをセットした状態。上ハンドル部からワンフィンガーでブレーキ操作ができるサブブレーキレバーをセットした状態。上ハンドル部からワンフィンガーでブレーキ操作ができる
油圧式サブブレーキレバーはユニークな存在。今回、組み付けていただいたメカニックの三上さんのアイデアで、DI2のサテライトスイッチを取り付けてセットで使ってみた。するとハンドル上部だけでシフトとブレーキ操作の両方ができ、すべてのオペレーションが完結できるようになった。クロスバイクよろしく、ポタリング的なリラックスポジションで走るときに良さそうだ。

サテライトスイッチとサブブレーキレバーで上ハンドル部で操作が完結する。サイコンをアウトフロントマウントで取り付けるスペースもあるサテライトスイッチとサブブレーキレバーで上ハンドル部で操作が完結する。サイコンをアウトフロントマウントで取り付けるスペースもある
そしてグラベルロードにはオフロードでの安定性のために460mm幅などの広めのフレアハンドルを使うことが主流なのだが、そのため流して走るときにはハンドル上部に手を添えて(狭く)使うシーンが出てくる。下りではフレア部やドロップ部を持つが、平坦や舗装の緩い下りならハンドル上部を持つことも頻繁にでてくる。その際にもブレーキが掛けられるのだ(ブレーキがいつでも掛けられるからハンドル上部を持つことができる、とも言える)。

上ハンドルを持ったリラックスポジションで流すときにサブブレーキレバーの有効性を感じる上ハンドルを持ったリラックスポジションで流すときにサブブレーキレバーの有効性を感じる photo:Yuto Murata
常に一定の力で操作できるのが油圧式のメリット。レバーは引きが軽く、ワンフィンガーで十分な制動力が発揮できるので使い心地はとても小気味よい。

サブレバーの固定はバンド式のため、取り付けるハンドルの上部形状にある程度の自由度があるのは良い。エアロハンドルへの取り付けは無理だが、いくらか左右位置も調整できる。サイクルコンピューターのアウトフロント系マウントも難なく取り付けることができた。ライトなどの取り付けもできそうだ。ハンドル周りに何かガジェットを取り付けたい場合も苦労することは少なそうだ。ツーリング派やブルベ派にも勧められるコンポだけに、使い方の可能性が広がる。ただしフロントバッグ系を取り付けるにはクリアランスに注意したい。

SHIMANO GRX仕様のグラベルバイクでオフロードを走るSHIMANO GRX仕様のグラベルバイクでオフロードを走る photo:Yuto Murata
MTB系コンポでおなじみのチェーンスタビライザー搭載のリアディレイラーはオフロードでチェーンが暴れず、外れることがほぼ無くなる。ロード系RDでもチェーンスタビライザー内蔵のULTEGRA RXがあるが、ドロ捌けの良いプーリー形状などオフロードでの使用を前提に設計されたGRXはより安心感がある。

チェーンスタビライザーを備えたリアディレイラーはオフロードでチェーンのバタつきを防止するチェーンスタビライザーを備えたリアディレイラーはオフロードでチェーンのバタつきを防止する
リアタイヤとフロントディレイラーのクリアランスを確保するために、チェーンラインをロードモデルと比較して2.5mm外側へ移動させているという駆動系。これにより太いタイヤが装着可能となり、タイヤサイズの選択に困ることはないだろう。フロントダブルのチェーンホイール(FC-RX810-2)のギア構成は48/31Tで、歯数差はじつに17Tというワイドなもの。しかしDI2のフロントディレイラーはパワフルに動作して、小気味よく変速してくれる。

フロントギアは48/31Tというグラベルならではのレシオだフロントギアは48/31Tというグラベルならではのレシオだ DI2のフロントディレイラーは大きな歯数差でも小気味よくシフトするDI2のフロントディレイラーは大きな歯数差でも小気味よくシフトする


アウターとインナーはGRXのクランクアームデザインにマッチする専用設計となり、一体感がある。肉厚のアウターギアは、スプリントのように強く踏んでも、少々強引に変速しても撓みを感じず、剛性感たっぷり。クランクアームが中空構造のホローテック2なので軽量でもある(FC-RX600を除く)。

新鮮なのはギアの歯数構成だ。まずはフロント48/31T、リア11〜32Tの組み合わせで使っているが、これでグラインデューロ、シクロクロス、トレイル、グラベルライドと走ってみて、ほぼすべての状況をカバーできるギア比で、自分としては標準仕様の「お気に入りレシオ」になっている。

斑尾・信越高原のグラインデューロジャパンのグラベル。スキーゲレンデの急登だ斑尾・信越高原のグラインデューロジャパンのグラベル。スキーゲレンデの急登だ photo:Kazushi Mikami
アウターの48Tという歯数は、様々な路面状況を含むグラベル(=オールロード)ライドを走り込んでみれば納得の歯数だ。舗装路やフラットダートでは思いのほかスピードが出せるし、そのときにも十分に踏み込める。インナーの31Tとリアの32Tローの「ほぼ1対1」で急勾配の坂もOK。ハイスピードの巡航から山指向のトレイルライドにも対応できる、よく考えられたギア比だと納得させられた。

インナー31Tにロー32Tのフリーギア。「ほぼ1対1」で急勾配にも対応できるインナー31Tにロー32Tのフリーギア。「ほぼ1対1」で急勾配にも対応できる photo:Makoto.AYANO
GRXには大きく言ってフロントシングル仕様とダブル仕様コンポがあり、そのどちらを選ぶかは悩ましいところだ。選択の目安としては、シクロクロスやフラット系グラベルレースなどのレース派や、逆にのんびり単独で走るツーリング派ならフロントシングルは選択肢になるだろう。

シンプルで軽く、目新しさがあり、近年のオフロード系バイクの潮流としてはフロントシングルに目がいきがちだけれど、様々な路面状況が待つグラベルライドにはフロントダブルのほうが適応範囲が広い。ダブルなら低速から高速までのスピード域への対応幅が広いし、重くも軽くもギアが足りないといったことがない。リアをクロス気味にすれば細かくギア比は選べるから、ストレスも感じない。

太めのタイヤで軽快に走れる砂利のジープロードは日本的なグラベルロード太めのタイヤで軽快に走れる砂利のジープロードは日本的なグラベルロード photo:Kazushi Mikami
個人的な実感では、ここまでの過去4年でシクロクロスとグラベルバイクでフロントシングルを使ってきたが、ギア比選択における不満が常に残ること、レース以外のほとんどのケースで使いにくい状況が出てきてしまうことから、最近はフロントダブルに回帰している。ダブルならではのギア選択の細かさは、やはり脚力をうまくセーブして効率的に走るという要求を満たしてくれる。ちなみにMTBならシングルでも不満を感じないのは、全体のスピード域が遅めだからだろう。

軽いカーボンフレームに操作感に優れたコンポのグラベルバイクはライド自体の楽しさも格別だ軽いカーボンフレームに操作感に優れたコンポのグラベルバイクはライド自体の楽しさも格別だ photo:Yuto Murata
ブレーキについてはもはや特筆するまでもなく、オフロードにはディスクブレーキ一択だ。油圧式ディスクの安定感あるブレーキングはスピードコントロールがしやすく、雨のウェット状況でも制動力が変わらない。体重60kgの私の場合、ロードバイクには前後140mmローターを使用しているが、グラベルバイクに乗って気づくのは、バイクがやや重たくなること、タイヤが太く、ホイールが重くなること、そしてオフロードでもそれなりの速いスピードが出ることなどから、制動力に余裕のある前後160mmローターがベストチョイスだと感じる。開発担当者に聞けば、前後160mmローターを標準的な仕様として考えているとのこと。

GRXのディスクキャリパー。本体はほぼULTEGRAと同等の形状だGRXのディスクキャリパー。本体はほぼULTEGRAと同等の形状だ ローターはアイステックフィン付きのオフロード用160mmを使用したローターはアイステックフィン付きのオフロード用160mmを使用した
160mmなら十分な制動力を持ちつつ高速域でも小さな速度調整をすることができる。通常の太さのグラベルタイヤ、想定されるライドシーンなら、140mmではやや心もとなく、180mmでは制動力が高すぎるだろう。メタル、レジンから選べるパッドは走り方に応じて選べば良さそうだ。オンロードに比べて雨や泥のなかを走る機会が増えると、当然パッドの減りは早い。パッドは消耗品だから定期的にチェックしたい。

GRXホイール(WH-RX570)は700C仕様を40Cと36Cのグラベルタイヤで使用してみたが、リム内幅21.6mmとワイドなプロファイルはそれらの太めのタイヤとの相性がすこぶる良い。空気量の多いタイヤがきれいな丸断面形状となり、サイドのヨレが生じず、トレッドのノブもうまく立ち上がる感触だ。

GRXホイール(WH-RX570)はリム内幅21.6mmとワイドなプロファイルで40Cなどワイドタイヤとの相性が良いGRXホイール(WH-RX570)はリム内幅21.6mmとワイドなプロファイルで40Cなどワイドタイヤとの相性が良い photo:Makoto.AYANO
初期状態でチューブレス対応リムテープが貼り付けられている初期状態でチューブレス対応リムテープが貼り付けられている GRXホイールの重さはフロント769g、リア951g、セット重量1,720g(カタログ重量)。アルミのワイドリム採用ホイールとしては軽めの重量と言えそうだ。リムハイトは22mmで、山型の断面形状とマットブラックの表面処理で泥の付着が少ないようだ。チューブレスバルブにはリム形状に合わせた専用のワッシャーが嵌められており、リムテープも貼られていて初期段階からチューブレス仕様なのも嬉しい点だ。グラベルライドでは乗り心地の面でもパンク耐性の面でもクリンチャーで使うのはデメリットがあり、やはりチューブレスで使いたいもの。

GRXコンポで組んだグラベルバイクでイベントやレースを走り回って、その新鮮な楽しさに目覚めている。新たなジャンルだが、その楽しさはグラベルバイクならではのもの。やはり「フィールドや乗り方の数だけバイクもある(=必要)」というのが率直な印象で、似ているからといってシクロクロスバイクなどで兼用するのではなく、グラベルバイクも用意するのがより楽しい、というのが結論だ。

私の場合はクロモリフレームのグラベルバイクもすでに所有しているので、そちらは太めの45Cタイヤでちょっとトレイル向きセッティングに、かつデイリーユースに。今回組んだカーボンバイクは軽めでレーシーな味付けにして、グラベルでも速く、快適に、距離を走れるように。また舗装路を含むマイナールートでのオールロードツーリングも、と乗り分ける考えでいる。そしてシーズン中はシクロクロスのレースバイクとしても使いたい。

チェーンスタビライザー機構を備えたディレイラーによりチェーンが暴れずスムーズなライドが可能。GRXホイールのレスポンスも良いチェーンスタビライザー機構を備えたディレイラーによりチェーンが暴れずスムーズなライドが可能。GRXホイールのレスポンスも良い photo:Yuto Murata
ロードコンポやMTBコンポ、あるいはそのミックスでもグラベルライドは可能だ。GRXが登場した際、XTRなどMTBコンポがリア12スピード化を済ませたこのタイミングで12スピード化しなかったのはなぜだろう? と考えたこともあった。しかし今手元にあるロードやグラベル、シクロクロスバイクとホイールを共用したり、パーツを入れ替えたりするプランを思い巡らせていると、11S系で互換性が保たれていることは非常に助かる。GRXには10SのRX400シリーズも用意されている(カセットスプロケットは36Tまで対応している)から、旧バイクや街乗りに使っているバイクのパーツ交換をして新たな役目を与えることもできる。案外そんな人は多いのではないだろうか?

バイクパッキングスタイルによるキャンプツーリングもGRXが得意とするところだバイクパッキングスタイルによるキャンプツーリングもGRXが得意とするところだ photo:Makoto.AYANO

GRXはシクロクロスレースでも使えるか?

グラインデューロから日常的なトレイルライドをこなしたのち、シクロクロスレースにもこのGRXコンポ搭載バイクで出場してみた。シクロクロッサーにもGRXを使ってみたいという人も多いことだろうし、ぜひ参考にして欲しい。

幕張クロスに初投入。そして結果から言えばマスターズM2クラスで優勝することができた。だからGRXはシクロクロスでもバッチリ使える! と言いたいところだが、ギアの選択によってはそうでないこともいくつかある。

11月の幕張クロス GRXコンポ搭載バイクで走りマスターズM2クラスで優勝することができた11月の幕張クロス GRXコンポ搭載バイクで走りマスターズM2クラスで優勝することができた photo:Yasuo Yamashita
ワイドリムのため装着するタイヤによっては太くなってしまうことに注意ワイドリムのため装着するタイヤによっては太くなってしまうことに注意 まず気をつけたいのはGRXホイールは内幅21.6mmと超ワイドなので、33mmタイヤを取り付けても35mmぐらいに太ってしまうこと。その点でAJOCC・JCX系のレースなどタイヤ規定のある公式レースだと使用できないため、他のホイールを使用した(もちろんタイヤ規定が無いレースには問題なく使用できる)。

そしてフロントダブルのギア比48/31Tは、シクロクロス用の標準となっている46/36Tに比べてアウターが大きく、インナーが小さすぎる傾向はある。幕張クロスのコースは大部分は芝の高速コースであったため、アウターの大きさはむしろ有利に働き、時折現れるドロップオフや急坂には、一気にギアを軽くできる31Tインナーも良かった。

しかしそうしたマッチするレースばかりではなく、続いて出場したラファスーパークロス野辺山では、インナーを使うには至らず、すべてアウターで。難しいセクションではアウター×ローを多用することになり、駆動効率が悪かった。チェーンに泥が付着した状態ならさらに負荷がかかって良くないはずだ。

フロントシングル仕様の例。リアはMTBカセットの11-40Tまたは11-42Tが推奨されるフロントシングル仕様の例。リアはMTBカセットの11-40Tまたは11-42Tが推奨される photo:So.Isobe
ただしGRXのクランクはダブル・シングル両仕様ともに共通のクランクアームなので、レースやフィールドによって切り替えることが可能だ。コースによってはフロントシングル仕様にして、ロー32Tや34Tスプロケットを使うのが良さそうだ。推奨されているMTBカセットの11-40Tまたは11-42Tよりもクロスレシオだからケイデンスコントロールがしやすくなるはずだ。

シクロクロスはレースでありながらもスピード域でみれば速くはなく、むしろグラベルツーリングのほうが舗装路やダウンヒル込みでスピードが出るシーンがあることが、そのギアレシオの根拠になっているところが面白い。

ダブルの場合はギア比のアンマッチな部分を感じることはあるが、GRXのブレーキや変速系統はシクロクロスにも使いやすい。とくにDI2のSTIレバーはレースでもその握りやすさ、操作しやすさで大きなメリットになってくれた。もうロード系レバーには戻れない。

泥捌けの良い大径プーリーはオフロードでメリットが有る泥捌けの良い大径プーリーはオフロードでメリットが有る
チェーンスタビライザー機構つきのリアディレイラーはレースでの激しい走りや、シケインを飛び越えたとき、担いだバイクを地面に乱暴に下ろしてしまったときなどにもチェーンが弾まず、外れることがないのがいい。前後とも変速は正確で速く、パワフル。ロード以上にオフロードではDI2シフトのメリットを享受することができる。

GRXはシクロクロスにも使えるコンポだ。すでに沢田時(チームブリヂストンサイクリング)や山本幸平(Dream Seeker Racing Team)、松本駿(Team SCOTT JAPAN)などトップ選手も採用し、実戦投入している。11Sのロード系コンポとも互換性は保たれているから、組み合わせながらGRXを積極的に導入して自分に最適なアッセンブルを見つけるのがいいだろう。

提供:シマノセールス 写真/文:綾野 真